帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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アドバイスもあり移動させました。


ジヴォン家で誕生日

 

 

 

 その日。6月6日。

 

 その日はあるジヴォン家のある二人にとってのめでたき日であった。

 

 そう、6月6日とはオルフェウス・ジヴォン、オルドリン・ジヴォン兄妹の生まれた日。誕生日なのであった。

 

 それも今日は二十歳の誕生日。いつも以上のお祝いにジヴォン家当主、オリヴィア・ジヴォンも大いに張り切っていた。

 

 

 ドーンッ! ドーンドーンッ!

 

 

『おめでとーッ!! オルフェウス兄さんッ! オルドリンッ!!』

 

 この場に、ジヴォン邸。といっても外観。内装。どうひいき目に見ても、お城か宮殿としか思えない広さを持つ邸には、かなり大勢の人物が駆けつけていた。

 

 本当はグリンダ騎士団の№2であるオルドリン・ジヴォンのお誕生日とあって、皆が皆『是非ともお祝いさせて頂きたいのです筆頭騎士様ッ!!』といって聞かなかったから、後日全体集会の時にでも挨拶するという話になった。

 

 因みに本来ならばクラッカーを鳴らすのが普通であるのだが、ジヴォン家の当主であるオリヴィアが。

 

『どうせなら本場である盟邦大日本帝国から花火職人を呼んで、三尺玉でも打ち上げて貰いましょう』

 

 などと、実に無意味且つ勿体ない、真昼に三尺玉を打ち上げてしまったのである。

 

 これにはアホの玉城も。

 

『俺を超えるアホがいた』

 

 などとオリヴィアに向かって命知らずにも言い放ち、オリヴィアの、ジヴォンの剣を受けたのである。

 

 予想外にもこれを全て避けきった(圧倒的悪運の強さで適当に逃げたら避けられただけ)玉城真一郎に、そんな馬鹿なと崩れ落ちるオリヴィア。同時に素晴らしいとも褒め称え賞賛を送りもし。

 

 調子に乗った玉城がオルドリンに。

 

『俺お前の母ちゃんの剣を避けきったぞどーよ? え? これが俺様の実力なんだよ。これからは玉城様と呼びなさいオルドリンくん』

 

 などと迫った物だから。

 

『調子くれんなーアホのタマキがーッ!!』

 

 と、尻を蹴り上げられるアクシデントが序盤に発生した物の。

 

 オルドリン、オルフェウス兄妹の叔父であるオイアグロ・ジヴォンが。

 

『信じられん。姉上の剣を全て避けきるなどと、常人には不可能だ』

 

 など、これまた驚いていたり。

 

 序盤から実に騒がしい誕生日になっているのである。

 

 

 

 

 

 ジヴォン家で誕生日

 

 

 

 

 

「オルフェウス。エウリア嬢とは上手くいっているのかしら? 続報を聞かないけれど、お母様は早く孫の顔が見たいのよ?」

 

「ま、孫の顔って、母上はまだお若いというのに孫も何も無いでしょうっ」

 

 オリヴィアは絶賛、婚約者として認めている平民の子女であるエウリアと長子オルフェウスとの子を求めている。

 

「覚えている? あなたが平民であるエウリア嬢を私に紹介したとき。私は平民と婚姻するというのならば私から一本を取ること。判定は弟にさせるといって、私の剣を受け、全身を傷だらけにしてまでこの私から一本を勝ち取った事を」

 

 オリヴィアが弟を見る。

 

「はい、姉上。あの時のオルフェウスの一撃は紛う事なき一本で御座いました。我が目に狂いはありません」

 

 こくんと肯くオリヴィアはその上で告げる

 

「そしてあなたは帝国に仇なす者を打ち倒す、皇族の影としての定めを背負い、陰惨で薄暗い匂いのするジヴォンの剣を体得した。プルートーンとして生きる道を選んだ」

 

 オルフェウスは黙って聞き入る。敬愛する母の言葉を。

 

「はっきりと、この祝いの席だからこそ伝えましょう。私はその道をあなたが選ぶ事には正直反対でした」

 

 プルートーンとして生きると言うことは、皇室を影から守り支えることを意味する。

 

 それは、皇室の汚れ仕事、暗殺や破壊工作なども為し得ねばならぬ上に、オリヴィアとしてはけして相対して欲しくない、彼の南天条約機構とも裏からぶつかると言うことを意味している。

 

 謎のギアスの力を多く持ち、盟主とも神とも呼ばれる超常の存在が率いる17億の信徒を世界中に分散させている悪辣にして強大極まる組織。プルートーンに入ると言うことはこの巨大組織を相手取ることでもあるのだ。

 

 オルフェウスのプルートーンへの加入、これはオイアグロも大いに反対した。それはもう家財道具一式を破壊する勢いで。

 

 愛おしい甥が、愛する甥が、プルートーンに加入するという事は、プルートーンとして1億の構成員を持つコングロマリットにして、裏世界の帝王たる、白い翼を筆頭とした巨大な地下組織群と対峙する事を意味するからだ。

 

 正直命を喪う可能性とてあろう。その可能性は極めて高い。南天の仕業だと目されている『空白の三十分事件』この犯人を追ったプルートーンの部隊員は幾人も失踪している。

 

 恐らく死体も残さずに始末されたのだろうというのが大凡の見方。

 

 こんな危険で巨大な組織と戦って欲しくない。

 

 嘘偽らざる想いだ。

 

 だが皮肉な事に、オルフェウス処か、オルドリンまでもが表側よりグリンダ騎士団の筆頭騎士として対テロ。

 

 即ち最終目標として白い翼を相手取り、制圧する組織に身を置いた。無論、フローラを頂点としたブリタニア皇室メル家を支えるジヴォン家。

 

 暗部組織として皇室に必要な貴族家にして、その組織でもある。光有れば影有り、共に揃っている状態こそが通常の状態。

 

 どちらかが無ければ、どちらも存在が成立し得ない、自然の摂理。

 

 弱肉強食でも何でも無い。この世の理なのだから。

 

「オルドリンっ」

 

「あっ、はいお母さま! このアホっ、私の肉取ったら尻蹴り上げてやるからねっっ!!」

 

「ふっ、てめえのお母様の剣を全て避けたこの俺様が、お前如きひよっこの蹴りなんぞ――」

 

 ドンっっ!

 

「痛でェェェェーーーっ!!」

 

「ふんっ! だーれがひよっこよっ。このアホっっ」

 

「いてててて、……淑女らしくて可愛らしいと思ったらこれだよ」

 

「か、かわっっ……。た、タマキの、く、く、くくせにににっ」

 

「オズが壊れたにゃー」

 

 ※

 

「オルドリンこちらへっ」

 

「は、はいお母様っ!」

 

 アホと肉の取り合いに発展していた上に、変な一言にどぎまぎさせられていたオルドリンが呼び出される。

 

 今日は誕生日と言うことで、ロールヘアーや二つ結びにして纏めている普段の髪型ではなく、気品有るお嬢様としての格好をし。

 

 背から腰の中程に届く濃色の金髪を降ろし、風に煽らせている、薄緑の双眸を持つ淑女な愛娘。

 

 兄のオルフェウスが左に泣きぼくろがあるのに対して、右に泣きぼくろがある、妙な色気を感じさせてアホを圧倒したりしているのだが、それは秘密。

 

「貴女は自分の選んだ今の道に後悔はないの? あなたもまた別の形でジヴォンの剣を取ったわ。オルフェウスは裏側から、そしてあなたは表側から」

 

 オリヴィアに続いてオイアグロが言葉を引き継ぐ。

 

「無論、メル家の皇女殿下であらせられる、マリーベル・メル・ブリタニア殿下を補佐する素晴らしい任務で有り、我がジヴォン家としては誇らしいんだよ。私も、姉上もね」

 

 オルドリンが神聖ブリタニア帝国第八十八皇女マリーベル・メル・ブリタニアの筆頭騎士となった。

 

 この日は誕生日や他の祝い事とは別にパーティーも開いた物だ。

 

 ジヴォン家は爵位こそそれ程高くは無い物の、旧家にして名家だ。そこらの新興の下位伯爵家くらいなら圧倒できる発言権や権力を有している。

 

 お屋敷に勤める使用人の数の数百人は居るだろう。

 

 なにも二人揃ってジヴォンの剣を取らずとも、一人には平凡に生きる選択だってあった筈なのだ。

 

「この様なことを皇室の裏側にお仕えする私たちが言葉にすべきではないだろう。だが、私も姉上も」

 

 姉に振るオイアグロ。こくんと引き継ぐ姉オリヴィア。

 

 実は二人とも顔が真っ赤なのである。

 

 いつもならばこんな大勢が居る、何百人と参加しているパーティーの席で、こんな話を公にしたりしないのだが。

 

 オリヴィアが、オイアグロが、二人を抱き締め。

 

「お、叔父上っ?!」

 

「お、かあ、さまっ?!」

 

 瞳を閉じて本音を語る。

 

「南天の魔の手が、お前達に」

 

「貴女たちに」

 

『及ぶことが怖いのだ』

 

 白い翼。

 

 表社会、裏社会、双方に根を張る巨大組織は、プルートーン。グリンダ騎士団が相手取るには余りにも大きすぎる組織。

 

 世界の超巨大企業は大きく分けて四つ存在する。一つは大日本帝国の倉崎、一つは同じく大日本帝国のスメラギ、一つは神聖ブリタニア帝国のランペルージ。

 

 そして最後の一つが慈善団体ピースユニオンと全く同じ名の企業――ピースユニオングループ。

 

 これが白い翼の表企業と目されており、南側諸国を中心にユーロユニバース、中華連邦、その他の中小諸国にも入り込んでいる。

 

 同時にこの企業の裏の顔こそが世界最大のテロ組織白い翼だと言われている。

 

 白い翼は数多くの秘密結社やマフィアなどの裏組織、同じ民主共和制原理主義組織の総本山と目されており。

 

 その上位にこそ南天の存在がある。

 

 情けない話だが、オリヴィアも、オイアグロも、我が身に南天の牙が届くことについては当然として考えており、命を懸けて迎え撃つ覚悟も出来ている。

 

 その為のジヴォン家であり、その為のプルートーン。皇室に仇為す敵を討つ事こそが使命なのだから。

 

 だが、子供達にはこの家に生まれ来た以上は仕方の無いこととは言え、子供達には出来る事ならば平穏なる時代を生きて欲しいのだ。親の、叔父の欲目であった。

 

 誰しも我が子は可愛い。子煩悩で知られる皇帝陛下然り、誰しもが子供が可愛いのだ。

 

 しかし、気弱な。普段ならば絶対に言わないような心の本音を口にした、母と叔父を、二人は優しく抱き締め返した。そして告げる。

 

「お母さま、叔父さま」

 

「母上、叔父上」

 

 

 ――私たちを舐めないで頂きたい。

 

 

「オル、ドリン?」

 

「オル、フェウス……?」

 

「数々のテロ組織と戦って参りました」

 

「数多くの闇組織との戦いを経ました」

 

 

『我らのジヴォンの剣で』

 

 

「あなたたちの」

 

「ジヴォンの剣……」

 

 

「はい、お母さま叔父さま。私たちのジヴォンの剣です」

 

 皇族の影としての定めを背負い、陰惨で薄暗い血にまみれたジヴォンの剣ではない。

 

 世界を闇で覆わん南天という大魔王と魔神と対峙し、その闇に捕らわれんとして居る者達を一人でも多く救うため。

 

 その者達、死兵からの救いを求めんと、邪悪なる神の手から逃れんとせん人々の為に我らが剣を振るうため。

 

 我ら兄妹、光と闇を併せ持つ、勇者としての剣とならん。

 

「母上、この世には闇も必要なのです」

 

「お母さま同時に光も必要なの」

 

 

 ――光と闇は共に在ってこそ自然。

 

 

「闇を超えた死で世界を覆わんとする南天は、我ら新たなるジヴォンの剣、俺という闇の剣」

 

「私という光の剣が」

 

 

『必ずや打ち払いましょう』

 

 

「だから、安心してお母さま、叔父さま。私たちは私たちの意思でこの手に剣を取ったのだから」

 

「母上、叔父上、御安心を。このブリタニア内に救う癌は、闇の剣たる俺が切除致しましょう」

 

 オリヴィアとオイアグロは双子の決意と、新たなるジヴォンの剣という言葉。南天を死と呼び、光と闇こそがその死を打ち払うに必要たる物という言葉を聞いて。笑った。

 

「くふふふ、はははっ、人間結局最後には死ぬんだぞ? その死もまた必要なのではないのかね?」

 

「叔父さま、南天のような汚れた死は地獄です。死とは安息であるべきなのですよ」

 

 汚れた死とは地獄。南天は事実としてこの世界に地獄を作り上げている。合衆国オセアニアを中核とする南側諸国の民は、最早完全なる死兵。

 

 神の為に、神と一つにならんが為に、この世に多くの死をまき散らす地獄だ。そこに彼ら以外の安息など無い。

 

 あまりにも異質、光と闇ですら無い、地獄たる場所。南側諸国。北側諸国とは永遠にわかり合えないだろう。北南冷戦が終わらないのはその在り方故だ。

 

「地獄の死ではなく安息の死をもたらす為に、必要とあらばプルートーンの力を使う。地獄の苦しみから人々を解放するために地獄の使徒白い翼を討つ、その為のグリンダ騎士団」

 

 オイアグロは思っていた以上に考えていた二人に祝杯を上げんが為、その手にクルシェフスキー産大吟醸の一升瓶を持つ。

 

「そう、あなた達はもう、自分の剣を見定めているのね……。いいでしょう。その剣、どこまで通じるのかこのジヴォン家当主。オリヴィア・ジヴォンが見届けてあげましょう」

 

 オリヴィアは既に我が手を離れている。立派な騎士として成長を遂げたオルフェウスとオルドリンに満面の笑みを浮かべながら、弟が手にする物と同じブランドの大吟醸を手にする。

 

『オルフェウス・オルドリン、二十歳の誕生日と立派な騎士になった事を祝して、カンパーイっっ!!』

 

 キンっ、ではなくゴツンと重い一升瓶同士がぶつかる音がして、オリヴィアとオイアグロは豪快に一升瓶ごと一気飲みをして、一気に酔いが回ってしまった。

 

 

 ※

 

 

「ねえ、オルドリン~っ、オルドリンには決まった相手は居るのぉ~っ」

 

「お兄ちゃん助けてっ、お母さま酔っ払いになっちゃってるっ!」

 

「すまんオルドリン。こっちはこっちで叔父上が吐きまくっているから大変なんだ。母上の面倒までは見れん」

 

「そんなぁ」

 

 当たり前である。一升瓶を一気飲みなんぞしたら普通はぶっ倒れるところだ。

 

 そもそもが、オルフェウスとオルドリンに思うところを吐き出していた時点で、この母と叔父は酔いが回っていたのだから。

 

 そうでなければジヴォン家の裏話や、プルートーンの話などするはずがない。何を考えているのかと言ったところだろう。

 

 そこへ。

 

 

 ――任せろオルドリン。お母さまの介護はこの俺がやってやるから安心しろ。

 

 

 えっ。手伝ってくれるのっ! ありがとうと思って振り向いた先には。

 

「うへへへっ、年上のお姉様の介護はこの俺様に任せろよ~」

 

 酔っ払ったアホの姿である。

 

「あらぁ~、ありがとう坊やぁ~、お礼にちゅーしてあげるぅ~っ」

 

 オリヴィアの酒臭くも瑞々しい唇が、アホの唇に近づいていく、このままでは敬愛する母が浮気だなんて馬鹿なことをしてしまうことに。

 

 というか、なんだかアホがマリー以外の女というか、女を女と意識してキスに及ぼうとしていることが、自分でも良く分からないが腹立たしく思った。

 

「ダメェ~っ! ダメよお母さまっっ! ダメなんだからねアホっっ、絶対にキスとかダメなんだか――」

 

 

 ――に~い~さ~ま~。

 

 

 また一人助けが入ったが、これはこれで爆弾だった。

 

 神聖ブリタニア帝国第八十八皇女マリーベル・メル・ブリタニア様、主君のご降臨である。

 

 いや、先ほどから中庭のバーベキューコーナーなり、フランクフルトなり、ベビーカステラにラーメンに、綿飴、お好み焼きコーナーにとアホの後ろをカルガモの子の様に引っ付き回っていただけなのだが。

 

 ちょっと見ていたが、まるでストーカーだった。オルドリンちのハウスメイドで有り、グリンダ騎士団の一員であるトトに事故で接触しそうになったときは、オルドリンが蹴り飛ばしていた。

 

 こんなアホとトトに触れて欲しくない。トトに「では御自身は如何なのですかお嬢様?」と問われたとき、何故かオルドリンは顔を赤くしていたりする。

 

 酔っ払ったアホがオルドリンに辛み酒をしてきたときも、オルドリンと言えば優しく介抱してあげたりなんかして、その際に髪を撫でられて。

 

「髪下ろしたら結構長いな。腰近くまであるじゃねーか」

 

 そう言い、五指を髪に差し入れられて優しく梳き通されていたオルドリンは、益々顔を赤くして戸惑いながら。

 

「えっ、ちょっ、た、たま、きっ、お、女の、髪にっ、そ、そんな勝手にっ、さわっ、って」

 

 しどろもどろになりながらも、何も言えなくなるという醜態をさらしていた。

 

「オルドリンの長い髪~っ、ふだん~っ、意識してねー分思うけど~っ、キレーじゃんかあ~っっ。いっつもドリルにしてんのもったいねーよお~っポニーテールとかあ、ストレートに降ろすとかあ、色々やってみい? 元が美人なのにもったいねーじゃんかよお~、ヒック」

 

「あ、あうううう~っ、あ、アホ~っ」

 

 アホを殴るのだが、へちょ~っ、っとなってしまい殴る威力は攻撃力ゼロなのである。

 

 え? なんで? どーして? わ、私、別にタマキのことなんかっっ?! 混乱するオルドリンに、じーっと怖い視線を送るマリーベルに気付いてドンっ、無理矢理突き飛ばして身体を離したのだが。

 

 髪の毛を触られて、撫で梳かれていたことについては、別に気持ち悪くはなかったし怒りも湧かなかった。何故だか分からない。

 

 そんなアホが今度はお母さまに手を出そうとしてきて、お母さまも酔っ払ってるから年下の坊やを可愛がるモードに変なスイッチが入っちゃって。

 

 もうちょっとでキス~というところに大魔王降臨である。単にアホの後ろにくっついてきていただけなのだがここは助かった。

 

「ま、ま、ま、マリーしゃん、お、お、お前なんかこわかねーぞお~っ。俺様は奇跡の玉城様だあ~っ。女子供なんかこわくねーんだあ~っ」

 

 酒が入って気が大きくなってる。ダメだわコイツ。たぶん次の瞬間。

 

「うふ、うふふふふ~っ、怖くないのですわよねえ~わたくしなんて~っ」

 

 あ、マリーもお酒飲んでる。

 

 ああ~分かって来ちゃったこの後の展開が。もう読めたわ。

 

 ぽんっ。

 

 上司が部下の肩を叩くように、顔を赤らめたマリーが凄い笑顔で、もう片方の手でアホの右肩を。

 

 ごきんっ!

 

 凄い鈍い音がした。あれ完全に肩逝ってるわね……南無。

 

「ぎにゃあああああ~~~~っ」

 

「うふふふふ~っ、怖くないのでしょうわたくしなんてえ~っヒック、もう一本逝っておきますかあ~っ」

 

「ま、待て、待ってくれマリーベル皇女殿下っ!」

 

 あ、酔いが吹き飛んだみたい。普段使わないのに皇女殿下だって、そう言えばこのアホってマリー相手でも乱暴な言葉遣いしてるけど、不敬罪にはならないのよね。

 

 マリーが許してるからってのもあるだろうけれど、こ、恋ってそういうものなの? 私もコイツに髪を触られても何も嫌な気がしないけれど……。え?! ち、ちがっ! 私はこんなアホなんかに!!

 

 第一コイツには……マリーが、いるし……。

 

「ん、んふふふっ、オルドリンはあの坊やに気があるのかしらあ~っ?」

 

 酔っ払いなお母さまが何か言い出したーっ!!

 

「な、ないない、ないわよ、あんなアホにっ!! だ、大体アイツ日本の平民なんだから士族階級でも華族階級でもないただのへ・い・み・ん、ジヴォン家は爵位は低いけれど旧家の名家。あんなアホを迎え入れるだなんてあり得ないわ」

 

「でも、マリーベル殿下は皇室に迎え入れる気でいらっしゃるのでしょう? ブリタニアで言えば平民は第1階位、マリーベル皇女殿下は第12階位、婚姻だなんて絶対にあり得ないけれど。それならばまだしもうちの婿にするなんってことも~ヒック」

 

「だから無いんだってばあこの酔っ払い~っ!!」

 

 

 ※

 

 

「マリーしゃんん~っ、肩戻してくれ~っせっかくのパーティーなのに食べられねえよお~っ」

 

「兄さまにはあ~っ、わたくしが手ずから食べさせて差し上げますのでーっ、何も御心配は為さらなくてもよろしいのですよ~っヒック」

 

 頼み込んでもクソッタレな酔っ払いは元に戻してくれない。ここはも最後の手段だとアホは行動に移す、左肩は外されていないのでこの手段が取れた。ついでにマリーが直ぐ隣にいたからだ。

 

「マリーっっ!!」

 

 ぐいっっ!

 

「きゃっっ!?」

 

 マリーを左腕で抱き寄せ抱き締める。まるでお前は俺の女だとでも言わんばかりのその手際。マリーベルの酔いで赤くなった頬が益々の薔薇色へと濃くなっていく。

 

 マリーの頭をなでなで、背中にも手を回しながら薄紅色の長い髪を捉え、彼女の首の後ろから髪の中に手を差し入れて、指に絡ませながら、優しく撫でる。

 

「俺のマリーベル、俺のマリー、せっかくのパーティー、俺、マリーにお好み焼きを作ってやりてえなーと思ってたのに、こんな腕じゃ作られねーよ。戻してくれ肩を……マリー」

 

「に、兄さま、あの、この様な場所で――んんっ」

 

 マリーベルも一人の女。皆の目がある場所でこの様に抱き締められるのは恥ずかしい。幾らマリーベルにとって身内ばかりの人間が揃っているとは言え。キスまでされて。

 

 玉城真一郎。普段からマリーとクララにキスされまくったおかげで、この二人との口付けが挨拶程度に感じるくらいに難易度が低下していた。もちろん、真剣なときの口付けは別で、いつも通りあうあうあうあうと大慌てしているが。

 

 逃げるためなら軽く口づけるくらいは。酒の勢いも強い。

 

「ティンク隊員っ! またマリーベル様とたまきんがイチャついておりますぞっ!!」

 

 ソキアは目聡く見つけた。実は彼女。オズとアホが良い雰囲気になっているところにも気が付いていたが、どうせ後でマリーベルの雷が落ちるだろうと見過ごしていたのである。

 

(しっかし、オズってばマジであのアホに気が湧いて来ちゃったー? あのアホと幸せになるにはマリーベル様級の盲目的な愛が必要なのわかってんのかにゃー?)

 

 あのアホと幸せになろうと思ったら並大抵の愛情では無理だ。ソキアの知る範囲でならマリーベル皇女殿下とクララ様だけ。そのレベルの愛情を抱くのは非常に難しい。

 

(まあなるようになるさー。でもソキア姉さんとしてはアホのたまきんとオズは応援しにくい。オズが不幸になる未来しか見えないにゃー)

 

 ブリタニアにだって賭博場は腐るほど有る。たまきんの大好きな賭博場。ジヴォン家は旧家で有り名家。超金持ち。あのアホがその金に手を出さないかなと心配なのだ。

 

 まあ、あのアホにも見所はあるし、グリンダで働いてるからそのお金での範囲内なら。

 

(ああ、そいや仮にアホがジヴォン家に婿入りしたところで、オリヴィア様があのアホに好き勝手させるわけ無いか。ふむ。となれば下馬評としては本命マリーベル殿下、時点クララ様、穴でオズってところかにゃー)

 

 見知らぬ年上のお姉様という線も、大穴としてあるにはあると考えた事もある。だがどうせマリーベル殿下に叩き潰されるに決まってるさーというのが、ソキアの考えだった。

 

「マリーベル殿下は超の付く美人なのに何故タマキ卿はマリーベル殿下を選ばないのだろうか」

 

「ティンク隊員、あのアホの好みは年上のお姉様、好みを変えさせるのはマリーベル様ほどの美女を以てしても難しい物なのだよ」

 

 そんな話をしているとレオンハルトとマリーカがやってきた。

 

 レオンハルト、レオンは片手にフランクフルトを持ち、マリーカはベビーカステラを持ち頬張っていた。

 

「しかしタマキ卿はいい加減マリーベル殿下お一人に決めるべきです、僕のようにマリーカさん一筋に――」

 

『どの口が言うか』

 

 ティンクとソキアが同時に突っ込んだ。レオンハルトの目移りは今に始まったことではない。アホは年下が好みではないというだけで、別にマリーベルのことを嫌いだとも言ってなければ見てない訳でも無い。

 

 単に年下が好みの対象外というだけだ。それも皆が聞いた話ではマリーベル殿下とアホが出逢ったのは皇歴2012年、まだマリーベル殿下が子供の頃。子供を愛しろと言われてハイそーですかとは中々行かない。

 

「っかし、オズの家も結構ヤバいにゃー。噂には聞いていたけどプルートーンとはね」

 

 ソキアの呟きにマリーカが続く。

 

「プルートーンって皇室の暗部と、ブリタニア帝国の暗部だと伺いましたが」

 

「その通りですよマリーカさん。正真正銘ブリタニアの暗部組織です。皇室への翻意を抱く貴族家の抹殺や、南天と繋がっている貴族家の粛正が主な任務です」

 

「間接的な南天との戦いという意味ではあたしたちと同じさー。あたし達が戦ってるテロ組織の大本は白い翼その白い翼の親分こそがっ」

 

 

 ――南天。

 

 

 マリーカがベビーカステラを口に放り込みながら話す。

 

「思えば私たちってとんでもない敵と戦っているんですね」

 

「正確にはその細胞組織や中規模組織だけどニャー。白い翼が全力を上げて蜂起したらそれこそ世界大戦さー」

 

 

“皆様、大変遅くなりました”

 

 

 フローラママンやって来ましたー。

 

 髪の長い美人な女性。誰がどう見てもマリーベルの家族だろうと思われる目鼻立ちや特徴を持っている。

 

 フローラ・メル・ブリタニア。

 

 神聖ブリタニア帝国の皇妃様が、オルフェウスとオルドリンの誕生日を祝いに、ジヴォン家を訪れたのである。

 

 その場に居た皆が一同、同時に跪く。皇妃なのだ当然の事である。一人を除いて。

 

 

「オルフェウス・ジヴォン卿、オルドリン・ジヴォン卿、二十歳のお誕生日、おめでとう御座います」

 

「フローラ様よりの祝辞のお言葉を賜り。オルフェウス、光栄の至りに御座います」

 

「同じく、オルドリン、恐悦至極に御座います」

 

「オリヴィアもいつも通り元気ね。いつもお会いしているからそれ程特別感はございませんけれど、ふふっ」

 

「元気そうねではないのかしらね? それにその言い方。少しは息災であるかとかお声がけして下さらないかしらフローラ」

 

「元気なのはいつものこと。承知しておりますもの。それにわたくしたちの間柄ですもの今更でしょう? 余計な気遣いこそが不要です」

 

 オリヴィアとフローラ。立場は違えども立場を超えた大切な親友、娘と息子の晴れの二十歳の誕生日に駆けつけてくれたことを嬉しく思う。

 

 ジヴォン家双子へ心からの祝辞を述べたフローラは、続き、オリヴィア、オイアグロと挨拶を交していき。切り出した。

 

「ところで」

 

 

 ――タマキ様あ~、タマキシンイチロウ様はどちらにぃ~?

 

 

「へ?」

 

「お母さまこちらですッ! 兄さまほらッ!」

 

「やッ? へ? 俺なに言えば言い訳?! 別にお前と付き合いも何もしてねーだろ俺?! なんでお前の母ちゃんに俺が挨拶しねーといけねーわけッッ?!」

 

「あらあら、うふふふ、あなたが」

 

 ざああっと道が開かれる。玉城がキスしていたマリーベルへと続く道が

 

「娘と結婚を前提としたお付き合いをなさっているタマキシンイチロウ様なのですね~?」

 

「なんでンな話になってんだよおッッ?!」

 

「あなたとは娘とのことでゆっくりとお話があるのです」

 

 怒っている。笑顔で起こっている事が全員に分かった。マリーベルと同じタイプの人間であると。

 

「オルドリンほらっ」

 

 オリヴィアがオルドリンを突く。

 

「マリーベル殿下に取られちゃうわよ彼」

 

「お、お母さま、だ、だからあいつとはそんなんじゃないんだってばッッ!!」

 

 

 

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
  • レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
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