E.U.ユーロピア共和国連合大統領。
皇歴2019年某月
国防四十人委員会。
革命暦元年の発足当初、その呼称で呼ばれていた委員会は、今や委員数二百名~三百名にまで膨れ上がっていた。
その二百名以上でありながら国防四十人委員会という名の委員会は、蜂の巣を突いた騒ぎになっていた。
「どういうことだ! 南天は動かずと誰が言ったんだ!!」
「我々は南天ではない! 南天の動きなど分かるはずもなかろうが!」
通称南天――南側諸国。正式名称を南天条約機構。
盟主国合衆国オセアニアを筆頭に。
マダガスカル自治州。
合衆国東アフリカ。
イエメン民主共和国。
旧大洋州連合。
ニューギニア民主共和国。
イラク社会主義共和国。
カメルーン民主共和国。
民主主義中央アフリカ。
民主主義ガボン。
コンゴ原理主義共和国。
ルワンダ民主共和国。
ブルンジ民主共和国。
アンゴラ原始民主制共和国。
民主原理性ザンビア。
ジンバブエ民主共和国。
原理主義人民ナミビア国。
ボツワナ原理主義人民共和国。
南アフリカ原理主義人民共和国。
レソト原理性共和国。
エスワティニ原理性共和国。
総計二十一ヶ国地域が加盟する国家連合体であり、集団安全保障機構でもあり、集団攻勢機構体でもあった。
ある日の国防四十人委員会
中央アフリカより南はここ50年の間に侵食され、民主共和制原理主義が根付き、ユーロユニバースから切り離された地域。
より正確を期すれば2010年前後までは名義上・便宜上はユーロユニバースの土地であった。これを自然に奪われたのがここ数年の期間だ。それも南天条約機構の動員無しに。
それほど地方地域。アフリカ南部などにユーロユニバースは見限られていたのである。
そして宗教的浸透についてが何よりも大きな遠因となっていただろう。原始民主制の亜種とも言える、唯一神を戴き神の下に選ばれた代行議員候補の中より、国会議員等を選ぶシステム。
選別は神が行うが、時の代行議長や、代行統、総代行主などが行っても良いとされている。神の手は何処までも届き。神は全てを視ている、が。同時に全てに対して干渉するわけでは無い。
故に平常時は自由な暮らし、安全な暮らし、豊かなる暮らしが約束されている。世界中に根を張る民主共和制原理主義組織の総本山“白い翼”と、唯一神をあがめ、古代遺跡を探索する十二億の信徒達で構成された“光の嚮団”が集めてくる潤沢なる資金。
同時に合衆国オセアニアを中核として発展に発展を重ねてきた強大なる国力が、老いも若きも、男も女も、子供も赤子も、人種も関係無く、全てに“豊かさ”という名の恩恵をもたらし、唯一神への信仰へと変えてきた。
だからこそ彼らは戦時には武器を取り、神の闘争、聖戦、全天に美しき世界を実現するために。世界の浄化を始めるのだ。
それは、新参であるアフリカ勢でも変わらない。彼らの根底には100年以上の昔より発展し行く、東アフリカとオセアニア自治州への憧れがあったからだ。
神のため、唯一神のため、全天に美しき世界の実現の為に。彼らは時として妄信的なる戦闘民族へと変わる。国家の壁など無い。人種の壁など無い。民主共和制原理主義の下一つの統一体となり、進軍するのである。
時に笑顔の仮面を張り付けて、時に無機質なる深層を表出させて。
そして時は現代。皇歴2019年の中頃。神の啓示が舞い降りた。曰く中東を教化せよ。白く染め上げよと。それは南天の傘下に収まっているイラクのユスフ書記長の下にも降りた。
ユスフ書記長は共産主義者であって、民主共和制原理主義者ではない。しかし、自ら望み南天条約機構に加盟した。オブザーバー加盟ではあったが、加盟した以上は南天の庇護の下には入れるわけである。
覇権主義者でもある彼は、大日本帝国・神聖ブリタニア帝国を中核とする北側諸国同盟には参画できない。北側諸国同盟とは非侵略が基本であるからだ。
自然、世界最大の覇権主義国であるオセアニアの下へと付くこととなり、中東で猛威を振るい、中東戦争ではサウジアラビア王国北部とヨルダン王国東部を占領することに成功した。
この時、南天は特に動かず、イラクも南天に働きかけずだった。己が欲しくば己で動け。南天側の無言の回答であったのだ。無論、南天からの援護はあった。彼らはイエメンに兵を集める気配を見せたのだ。
これだけ。たったそれだけでサウジアラビア王国は動けなくなってしまった。南部にも兵を割かずに居られなくなり、北部の戦力は目に見えて減った。これをユスフ書記長は突き、サウジアラビア北部を手にしたのだ。
イラクにも降りた此度の啓示。当然オブザーバー参加の彼らは無視しても特に何も無い。だが同時に何も得られない。これ以上の領土の拡大が望めない。ジェネラルは言った『欲しければ動け』。
ユスフは動きイラクは巨大化を果たしたのだが。
ここで再び時計の針を戻す。
※
「皆さん静粛にっ!!」
欧州は行政府に充たる、国防四十人委員会のとりまとめ役である議長が会場のざわめきと混乱を鎮める。このままでは話し合いも出来ない。
「だが、南天は既にイエメンに10,000,000を超える兵を集結させているそうじゃ無いか。おかげでイエメンでは物が飛ぶように売れて超好景気だとか。諜報員、ああいや、連絡員から情報が入っている」
諜報員では無い、連絡員だ。これは南天側より許可を貰って入らせているからである。なんでも好きなだけ調べていけば良い。南天側のメッセージだ。
「10,000,000どころの話しじゃない。まだまだ増える様子だ。中東戦争の時イエメンに集めたお遊びの5,000,000じゃない。一ヶ月単位で3,000,000前後と跳ね上がるように増えていっている。我が国では絶対に不可能なことだ」
「それに兵器の増産数。噂では航空母艦の8隻同時起工を始め船体はできあがりつつあり、他の護衛艦艇や戦艦まで着工を始めてまだ軍事力を増やそうとしておる。南天だけではない。南天に合わせるように日本もブリタニアも大軍拡いや超軍拡を始めおった。我らや他の国では到底ついて行けん」
事実、現在南天は2~3年内の30個空母戦闘群体制を目指しており、ほぼこれを完遂しつつある。この南天の大軍拡に対抗して、北側諸国の中核国である大日本帝国と神聖ブリタニア帝国も大軍拡を始めている。
連絡員の報告書を見ていたある議員は南天のことを指して呟いた。
「ば、化け物だっ……、こんなのと対抗することなど……ッ」
これを耳にした隣の議員は呟いた議員を叱責する。
「馬鹿なことを言うな! 我がユーロユニバースは最初から南天と事を構えるつもりなど無い! 滅多なことを言うんじゃない!」
そうだ。滅多なことを言うべきでは無い。総数で1,700,000,000を数える南天の信徒は既に欧州にも根を張っている。噂の段階でしかない世界的企業、鉛筆からロケットまでを合い言葉にする企業ホワイトブラザーズは、南天の傘下だと言われている。
白い翼のフロント企業だとも。
誰もが怖いのだ南天のことが。表面上ユーロユニバースと南天はイーブンの関係だが実際は違う。国際社会でも言われている。E.U.は南天の小間使いと。事実だから文句も言えない。誰が抗うことかなおうか、彼の強大なる国家連合に。
「……」
「……」
皆、一様に口をつぐむ中、手を挙げた人物がいる。
「げ、ゲルツェン大統領」
短い白髪に鋭い蒼い瞳をした痩せ型の男が立ち上がる。
ユーリー・イワノヴィッチ・ゲルツェン。ロシア州の首相にして、E.U.ユーロピア共和国連合のトップに君臨する三大統領の一人であった。
「皆さん何を恐れているのです?」
あたりを睥睨し彼は告げた。
「南天は我々の秘密の友好国ではありませんか。確かに南天には中央アフリカ以南を奪われました。しかし、あの地域には既に100年も前から種が植えられていたのです。今の話しではありません。我々の前の前のその前の世代の話し。我々がどうこうと話しても意味が無いではありませんか。それに一度教化された地域は余程のことが無ければ元には戻らないのは皆様も御存じの筈です。結局南天が動く先は何処に対してであるか? そこが大事なのではありませんか?」
薄ら笑いを浮かべながらゲルツェンは続けた。
「一応念のため、我がE.U.ユーロピア共和国連合には南天条約機構と戦えるような力はありません。南天条約機構は白いカーテンの向こう側に隠されているためほぼ情報が伝わってきません。漏れ聞こえてくる情報や、連絡員などの情報では、通常戦力で50,000,000。最大戦力80,000,000の兵を持ち、絶大な生産力、重工業力、国力、経済力を持つということです。彼の国家連合『数の南天』と事を構えることができるのは、技術の超大国大日本帝国、力の超大国神聖ブリタニア帝国の二国のみ。他には存在しません。仮に我が国と中華連邦が手を組み戦いを挑んだとしても、死兵と呼ばれる兵と質の高い兵器の波に押しつぶされておしまいです。それと、連絡員の話しでは純正のKMFらしき物の存在も確認されており、これで南天のKMF保有論も確実となりました。序でと言っては何ですが浮遊航空艦と80,000t以上の戦艦の存在も確認済みです。ですが、恐らくこれらも相手が日本やブリタニアでは無いから一線二線級下の代物でしょう」
ざわざわ、KMFまで、ざわ、80,000,000とは……あり得ない、ざわざわ。
「静粛に静粛に!!」
場が静まるのを待ち、余裕の笑みを浮かべるゲルツェンは続けた。
「斯様に恐ろしき国家的組織ですが、敵対しなければ何もしては来ません。むしろイラクのように傘下に入ってしまえば何もされませんよ」
「ば、馬鹿なっ!! ゲルツェン大統領閣下は祖先が築き上げてきたこの民主主義の牙城を売り渡そうというのですか!!」
一人の議員が噛みつくが、ゲルツェンは一瞬目を閉じただけでやれやれという仕草を見せた。
「民主主義の牙城ぉ~? 失敗作でしょう。大衆迎合主義、政治的無責任主義ィ、そしてェッ!無関心主義ィィッッ――!」
そこまで行って。
バンッッ
大きく机を叩いた。
「一体何の三本柱なのだねェェッ?! 腐敗を無視しッ、地方を苦しめッ、中央だけが富めば良いッ、自分たちだけが栄えれば良いッ、ノブレス・オブリージュをゆくブリタニアの正反対ではないかねッッ!! 王族を皆殺しにしッ、貴族共を処刑しッ、彼らを追い出しッ、ナポレオンまで処刑して創り上げたユートピアがこれかねッ?! こんな腐れた国が民主主義の理想郷なのかね?! ええ?どうなんだね諸君ッッ!!」
誰もがぐうの音も出ない。皆が目をそらす。政治腐敗、金権政治の恩恵は誰しもが受けていたからだ。この場にいるほとんどが。
「そして……、私の了承も無く極東から兵まで引き抜いた。中央を守る為に。ユーロ・ブリタニアの攻勢から深奥だけを守らんが為に。ならば、いっそォ、我が国も南天条約機構に加盟してしまえば良いではないかッ。彼らは来る者は拒まず。イラクのように立ち回れば教化も回避できるだろう。どうだね諸君ッ?」
冷たい目で、自身から目をそらす議員達を眺めながら、ゲルツェンが再び口を開き掛けたとき。
「異議あり」
一人の男が異議を申し立てた。ゲルツェンと似た風貌ながら少し髪を伸ばした白髪に赤い目の男だ。名をグレゴリー・ミハイロヴィッチ・ラスプーチン。ロシア州の副首相を務める男。
「ほう、君がこの私に楯突こうというのかね? 同志ラスプーチン」
「楯突くつもりは無い同志ゲルツェン。私はあなたの考え方に間違いがあると言った」
「ふむ、ならば君は極東から兵を引き上げる指示を出したこの屑共をどう思うかね?」
屑共とはっきりと言い切るゲルツェン。彼の権勢は国防四十人委員会、欧州三大統領の中で最も強く、時にこの種の暴言も許されるのだ。屑と言われて誰も何も言わないことこそ、その証明。
「それについては私も思うところはあり許せない気持ちで一杯だ。だが、それとこれとはまた別だ。私は、いや、私も彼ら民主共和制原理主義者とは幾度も会い、幾度も会話をしたよ。皆無機質な瞳をしていた。笑っていても泣いていても、悔しがっていても、怒っていても、その瞳の奥底は常に無機質で冷たいのだ、今のあなたのようにな同志ゲルツェン」
「……」
「私は、私は偉大なる祖国ロシアの子供達にあの様な無機質な瞳になって欲しくない。させたくないのだ。ただそれだけだ。その為に必要ならば。私はE.U.ユーロピア共和国連合とユーロ・ブリタニアの融合もまた一つの選択肢だと考えている」
「……ラスプーチン、君は体ユーロ・ブリタニア融和派だったのかね」
「特に派閥にはこだわりは無い。ただ、私は貧困に喘ぐ子供達に未来を与えたいと考えている。それだけだ」
お二人ともそこまでにしてください。と、議長が告げると、ゲルツェンは冷たい無機質な瞳のままに席に着いた。
ラスプーチンはただ愁いを帯びた瞳のままに席に着いた。
「議題の趣旨から外れましたが、南天の目指すところは」
「決まっているじゃないか。イエメンに兵を集めているということは――」
中東だよ。
そして。
あるいは、その先へ。
南天条約機構軍の中東侵攻は始まりに過ぎず、ジルクスタン、中華連邦への侵攻までもを示唆して、この日の議会は閉幕した。
以上です。
ユーリー・イワノヴィッチ・ゲルツェン=こちらは歴史上の人物をモデルとしております。
グレゴリー・ミハイロヴィッチ・ラスプーチン=こちらはあるゲーム・アニメの人物をモデルとしておりますが某KGB長官もモデルにしております。
どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。
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嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
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嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
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山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
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南雲忠一×ドロテア・エルンスト
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玉城真一郎×クララ・ランフランク
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玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
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レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
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