帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

110 / 379
少し未来のネタバレが入っておりますのでそういうのがお嫌な方は読まないようにしてください。

このお話には整合性が取れるかも怪しい未来ネタが含まれております。
時期は皇歴2022~2023度後半にあたります。

ただ駄弁っているだけのお話です。

本スレでのご指摘を受け少し加筆修正いたしました。
また誤字脱字があったら申し訳ありません。


苦悩する大陸国と要らないものは要らない夢幻会

 

 

 

 

 南天条約機構軍をジルクスタン、中華連邦の二国より退けた北側諸国。正確には大日本帝国と神聖ブリタニア帝国の国民、皇族、華族・貴族、政治家は沸きに沸いた。

 

 皆それぞれが、南天の一部とは言え、南天軍との衝突に初勝利したことを祝っていた。『数の南天』南天諸国を個としてみたときの呼び名。

 

 それは『二つ名の超大国』を表わす意味で、激突すれば相応の被害は覚悟しなければならない。『技術の日本』『力のブリタニア』であってもだ。それだけ南天とは強大なのだ。

 

 そして、大方の予想通り、相応の被害が出た。日本は死者行方不明者合わせ500,000人以上。ブリタニアは死者行方不明者合わせ700,000人以上。膨大な被害数だ。

 

 だが、日本は全体の4%の損耗率に収まり、ブリタニアは5%ほどの被害に押し止めることが出来たともいえるだろう。

 

 これは、『二つ名の超大国』を相手に全面激突した割には、まだマシな被害である。

 

 引き換え、戦地となったジルクスタンおよび中華連邦では無視できない被害が出た。

 

 ジルクスタンは国土のほぼ全土が南天による空爆などを受け荒廃しきり、中華連邦も西部全域が壊滅状態にまで陥り中華連邦軍全体の20%強の兵力の消耗を出してしまった。

 

 南天の30個という途方もない数の戦闘群が抱える航空機により、インド軍区、中華本土にも多数の空爆による被害が出た。首都洛陽も空爆され、政府高官にも死者を出す痛恨事。

 

 二国とも日本・ブリタニアの力を借りてとは言え確かな戦勝国となった。戦勝国の筈なのに、まるで敗戦国のような有様なのだ。

 

 そうして三か月が経とうとしていた。

 

 

 

 

 苦悩する大陸国と要らないものは要らない夢幻会

 

 

 

 

 首都洛陽 中華連邦議会

 

 

 議会はお通夜状態だった。いや、まだしも通夜が開けるだけマシな方なのだろうか。下手を打てば通夜さえ開くことかなわずの可能性すらあった。

 

 日本に・ブリタニアに助けを求めなければ終わっていた。全て何もかもが終わっていた。オセアニアの、南天の属国へと転落していたのだ。今頃全国民は『全天に美しき世界の実現の為に』そう唱和させられていたかも知れない。

 

 それをおもわば、通夜が開けるだけマシであると考えなければならないのだ。

 

「で、全体の兵力の消耗は約27%というのは、きちんと統計を取った上での数値なのだね?」

 

「確かな話だ。南天の死兵どもに約三割の兵を食い殺された……痛恨事だ」

 

 ある高官が言った。たったの一会戦、陸、海、空による被害統計だ。

 

「20,000,000と数だけは多い陸軍だが、奴らには全く歯が立たず、6,000,000の被害を出した。壊滅的と言って良い。海は9個の空母戦闘群の内、5個を喪い半壊した。それに対して南天は今や40個の空母戦闘群にまで増大している」

 

 化け物だ。40個群とは何をどうすれば。10倍の戦力差が生まれてしまったのか? こちらの損害をものともしない工業生産力。超大国とかどうとか、そんなレベルの話ではない。

 

「空も酷い、我が方の戦闘機は、南天の統合打撃戦闘機相手に全く戦いになっていなかった。キルレシオは1対100だ。我が中華連邦軍は南天に対しかすり傷を負わせるのでやっとだったというわけだ。地上戦艦竜胆、大竜胆も何艦擱座させられたやら。連邦軍は事実上の壊滅状態だよ。こうしてここで息をしていることが不思議なくらいだ」

 

「正直な話こんな強大極まる国だとは思ってもみなかった。我が中華連邦は列強の一つだぞ? それがこんな、弱小国の様に食いつぶされるなんて」

 

 嘆く高官。誰もが嘆く。洪古も、周香凛も、皆嘆いていた。己の力のなさを。力がないゆえに南天に食いつぶされた自国の惨状を。

 

「嘆いてばかりいても仕方がない。先を見て物事を考えていこうではないか」

 

 さあ、被害統計の話しは終わりだ。いつまでもこんな話をしていても何の生産性も無い。まずは荒廃した西部域の国土の回復。ジルクスタンの復興支援。

 

「ジルクスタンは大丈夫なのか?」

 

 ジルクスタンと言えば彼の国はもっと酷いことになって居るそうだ。国全土が戦場になったからな。日本軍が間に合わなければジルクスタンは確実に白化していた。

 

「最早一刻の猶予も無い。日本式の土下座をしてでも良い。大日本帝国に旧敵国条項を削除して貰うよう請願し、北側諸国同盟への加盟を果たすべきだ。中立でいられるほど、中立を許してくれるほど南天は甘い国ではなかったということだ」

 

 発言したのは黎星刻。黒く長い髪は膝にまで伸び、端整な顔立ちをしたその青年、中華連邦の武官にして、若くして高位の政治家に上り詰めた天才であった。

 

 その星刻が、一刻の猶予も無いと発言したのには理由がある。南天は現在中東にまで撤退。日本ブリタニア連合軍とにらみ合いを続けているが、いつこの均衡が崩れるか分からない。何せかの国には80,000,000の殺戮マシーンが存在するのだ。本気で来るならば日本・ブリタニアが相手でも早々引かないだろう。そして本気ならば北側諸国全土に動員令が発令され、世界は一気に北南世界大戦に突入する。

 

 だが、まずとりあえずのところ、日本ブリタニア連合軍がいる間は南天も動かない、南天も大きな被害を出している。分析では7,000,000前後の兵を喪ったとみられている。だが、その補填は南天に限り幾らでも可能だ。所詮今回動いている兵の50,000,000の内の7,000,000。12%の損害だ。

 

 大日本帝国・神聖ブリタニア帝国連合軍28,000,000名の介入で達成された数値だが、これだけの損害を与えてさえまだ本気ではない。本気なら80,000,000という途方もない数を動かして来ただろう。

 

 全所属国が国民皆兵制度を取り、神のために死ぬことを悦びとし、兵を数としか見ていない頭のおかしな国ばかりなのだ。数の補充なら幾らでも効いてしまう。中華連邦如きがどうこう出来る相手ではない。

 

 ましてやジルクスタンなど白化こそ防げたものの壊滅的打撃を受けている。日本・ブリタニアは今回の戦争でクウェートと合わせて、我が中華西部とジルクスタンを対南天の最前線の一つと位置付けるかもしれない。

 

 そして我が国はもしもその方針打ち出されたところで、文句の一つすらいえないのだ。事実上の敗戦国たる我が国には。

 

 実際のところ、日本もブリタニアも南天も、本気ではなかったからこそこれくらいの被害で済んだと言える。

 

 日本もブリタニアも今回の戦争ではそれなりに被害を出しているが、まだ十二分に戦える。それどころか、戦前よりも戦力数が増えている。日本は24個の空母戦闘群が30個に、ブリタニアは42個が56個に、浮遊航空艦艇・KMF・戦車装甲車・作戦車両・戦闘機数軒並み増えている。このあたりは南天と同じだ。南天はこの三か月で80,000,000の兵力と喪失した戦力の補填は済んだとみて良い。

 

 日本、ブリタニアも喪失した兵力の補填は済んでいるだろう。本当に化け物共だ。中華連邦はその化け物の一国に敵国条項を適応されている。日中戦争以来百と数十年。

 

「プライドに固執しているときでは無い、日本軍も、ブリタニア軍も、いつまでもジルク・中華と中東の国境に戦力を張り付けてくれているわけでは無い。彼らにも彼らの役目や日常があるのだ。故に我らより、大日本帝国へ請願しなければならない。旧敵国条項の削除を。仲介には、引き続きブリタニアを頼ろうと思う。現在我が中華連邦と日本との仲介が可能な国はブリタニアのみだからだ」

 

 まだできたばかりで超大国への枠組みへと駆け上がったAEUを頼るのも手だ。だがAEUと日本では“格”が違う。格の同じ超大国はブリタニアと南天だけ。この内南天は明確なる現敵国。中華連邦は列強だが、今回の戦争ではっきりした。日本がその気ならば中華連邦など簡単に踏み潰せる程度の中小国と何ら変わらないのだと。それは南天、南側諸国から見ても同じだろう。

 

 故に今、くだらないプライドに固執して、頭を下げる瞬間を見誤っては、中華連邦は再び南天からの侵略を受ける。だが、天子様に頭を下げさせるわけにはいかない。それだけは絶対に出来ない。

 

「ブリタニア帝国を仲介者として日中会談を開きたい。その場で日本に対し中華連邦に掛けられている対中敵国条項削除の請願をする」

 

「し、しかし星刻よ、そんな都合のいい話を家族とも言える間柄のブリタニアや、懐に入っている北側諸国以外に日本が……、日本は内側には優しく寛容な国だが、外側に対しては厳しく恐ろしい国なのだぞ?」

 

「だからこその請願だ。こちらから頭を下げ、必要とあらば土下座でも何でもするのだ。必要だと思われることは全てし、過去の贖罪を申し出る」

 

 もし、その場で腹を切れと言われたならば、腹を切りもしよう。それで中華連邦が助かるのなら安いものだ。

 

「そこまでの覚悟を……、分かった、星刻。私は貴殿の意見に賛成する。どうだね諸君。星刻の意見に掛けてみないかね?」

 

「私は賛成だ。なに、超大国『技術の日本』長命種といっても同じ人間だ。話せば、こちらが請願すれば分かってくれる」

 

「そうだな。その気が無ければ態々我が国の救助要請を受けてくれたりはしない。あの恐るべき南天と戦うリスクまで負って、我が国を助けてくれるものか」

 

 星刻は議場の椅子から立ち、賛成してくれた同志たちに頭を下げた。

 

「みんな、済まない。ありがとう」

 

「しかし、こうなるとジルクスタンの高官も共に連れて行くべきだな」

 

「先ほど言われた北側諸国への加盟を目指すと?」

 

「我が国やジルクスタンのような小国がこの化け物共がにらみ合う世界で生き延びるには、その懐に入り込むしか無い。北側諸国という国家連合があるのだ。そこに属さなければ我らは中東の二の舞になる事が今回の戦争で良く分かったろう? どうかね諸君」

 

「だが、北側加盟にまで辿り着けるかどうか……」

 

「それこそ政治家の政治力が試されるときではないかね」

 

 中華連邦の高官達は、それぞれの思いを胸に、ブリタニアへと連絡を取り。

 

 ブリタニアより連絡を受けた大日本帝国は日中会談を快諾。

 

 実に百数十年ぶりとなる日中会談はピリピリすること無く進んでいき。本題へと入っていった。

 

 ※

 

 対中敵国条項の削除。星刻は頼み込む。星刻以外の中華連邦側の議員たちは皆一斉に過去の謝罪を始めた。

 

「もしも貴国が我が国西部を南天への壁としたいとお考えなのならば、我が中華連邦は貴国に対し、過去の件も含め連邦西部を割譲しても良いと考えている。その程度で済むのならば安きもの。どうか。我が国に掛けられている条項を削除願いたい。どうか、どうか」

 

 日本側は慌てるでも無く冷静にこれを聞いていた。この会談でこの話を出されること、大凡見当が付いていたからだ。

 

 そして中華側の請願と、謝罪に次ぐ謝罪を聞き終えたところで枢木宰相は言った。

 

「黎星刻殿、100年以上も昔のことに拘るのは、愚かなことだと思われませんか」

 

 日本側はそれ以上の謝罪も請願も必要ないと、中華連邦側を止めさせた。

 

「そのお気持ちが本気である。それが分かれば充分です」

 

 そうして枢木は立ち。

 

「大日本帝国、宰相枢木ゲンブの名の下、ここに対中敵国条項を破棄することを宣言いたします。これは上帝陛下、御帝ご快諾の上での発言とお受け取り下さい。これで両国の間には何のわだかまりもありません。共に世界平和のために歩んで参りましょう」

 

 澤崎も間に入った。

 

「貴国の西部割譲も必要ありません。我々は貴国の北側諸国同盟への加盟を無条件で支持いたしましょう。もちろんジルクスタンの加盟についてもです。加盟に関する会議でも恐らく全会一致で両国の加盟は認められるでしょう」

 

 皆それぞれ南天には痛い目に遭わされておりますからなと笑う枢木。

 

「枢木総理……」

 

「澤崎殿……」

 

 

 ※

 

 

「そう、それでいいのですよ。最早カビの生えた対中敵国条項は国家100年の大系にとって邪魔以外の何ものでもありません」

 

 この会談を遠くから見ていた夢幻会は、それぞれの意見を出していく。

 

「さて、中華連邦とのくだらないわだかまりは消えました。一部の国民は天子に土下座させろと言っていますが。分かってるんですかねそれ。上皇陛下や御帝に土下座しろと言ってることと同じだと」

 

 阿部が呆れて言うと。

 

「僕に土下座しろと言われたら僕は土下座くらいするけれど」

 

 上下とも白を基調に、青と金で彩られた宗教指導者が着るような豪奢な司祭服。表地が漆黒、裏地が薄い紫のマントを着た。踵まで届く長すぎる淡い金髪を、黒い金縁の髪留めで抑えた、紫の瞳の少年。

 

 この場でただ一人異色の姿の少年、容貌もブリタニア人の少年の姿をした、実年齢はこの場にいるメンバー達と同年代の少年、V.V.が微笑みながら言う。因みに会議用の椅子に座っているのだが足が床に着いていなく、ぷらんぷらんしている。

 

 長い髪の毛は椅子の上でぐるぐると渦を舞いて散らばっていた。年齢の割には子供にしか見えないのは、彼の年齢が10歳くらいで止まっているからだ。その理由をこの場にいる大体が識っている。嶋田や山本は後から識った。

 

 ついでに、この種の服装は大凡のブリタニア人の階級の高い者の正装な為、誰も何も言わない。飲み会ならばどんな衣服でも構わないが、この場では正装で来るのが普通である。

 

「V.V.よ、貴様の土下座には意味があるまい。貴様色々手広くやっとるようだが一般人だろう」

 

 杉山が至極当然の事を告げる。

 

 V.V.がなぜここにいるか? それは一応V.V.も夢幻会関係者だからだ。会合顧問という立場でこの場にいる。

 

 彼は、彼が辿るはずだった運命を聞かされ、彼が我々と共に歩むというなら手を取りませんかと誘われ、夢幻会という組織に入った。

 

 ただ、彼は会合関係者の昭和時代を識らないため、教えられない秘密もあるんだなと考え、納得しながらこの場で会議に参加しているのだった。

 

 正直言ってびっくりした。日本の政財界の大物や、影の支配者と言われている者ばかり。さらには伏見宮博恭王殿下が姿を現したときは、ジ家の皇子だった頃と同じ応対をしたくらいだ。

 

「まあ、一般人かと問われたら一般人。でもま、ギアス嚮団の嚮主でもあるけれど」

 

 頬杖を突き、笑みを深くし、この瞬間だけは凄みを出すV.V.。さすがは夢幻会会合の補欠要員になるくらいだと警備員は感心する。

 

「ギアス嚮団の運営は次席責任者に丸投げにしているとお聞きしますが」

 

「マサノブ、せっかく大物感出してた処なのに台無しにするの止めてくれない? あとまあ、ランペルージグループの会長でもあるね。実権は社長のシャルルにあるけれどさ」

 

 杉山が気になっていたことを聞いてみた。

 

「V.V.よ、貴様ジークフリートには乗れるのか」

 

 KGFジークフリート。原作での彼の愛機である。その質問にあっさり答えるV.V.。

 

「乗れるよ? ただしジークフリートⅢだけどね。全高も全長も50m前後の球形で、戦闘力はジークフリートの10倍以上はあるかな。ジークフリート10騎同時に相手をしても僕の腕なら勝てるよ。超小型フレイヤ炉を搭載した永久可動式さ。ギアス嚮団含めたブリタニアでも最新鋭機KGFの一つだよ」

 

「ほお、夢幻会の個人最強戦力だな。身体能力は10歳児だが」

 

「うるさいよっ、人が気にしていることをっ!」

 

 辻が少し驚き交じりに呟く。

 

「KGF用と小型艦艇や小型可翔艦用にうちでも超小型フレイヤ炉は作りましたが、また一気に技術が進んでますね」

 

 その言葉を受けて怒鳴るV.V.。君らに言われたくないっ!と。そうだ。ブリタニアはどんなに頑張っても日本に追いつけないのだ。その原因こそ日本であり夢幻会でもある。V.V.も夢幻会の一員な為、日本の為に頑張らないといけないわけで、そも国籍も日本に変えて日本永住者になっているから、日本の為に頑張ることに異論はないのだが、それでも引っ掛かるところはある。誰が異常技術を作り出しているんだと。

 

「君たちが技術を加速度的に進めてるんじゃないか!! おかげで世界のパワーバランスが滅茶苦茶になって、日ブ南天で十回以上世界を消滅させられるようになっちゃったんだぞ?!」

 

 そうなのだ。夢幻会が技術加速を行う関係上、世界全体が技術加速され、とくにブリタニアと、南天が、異常な速度で技術加速して行っているのだ。それでも日本に追いつかない。

 

「皆さんだんらんはそのくらいで。主題は中華をどうするか。ジルクをどうするか。あと、大陸で得た我々の権益についてです」

 

 阿部がもう一度言う。すると倉崎翁が。

 

「我々としては今回大いに儲けさせて貰った。スメラギとの軋轢も無いことだし、これ以上は何も要らんな。少々作りすぎたくらいだ」

 

 艦艇のことである。主力水上艦艇、航空母艦、強襲揚陸艦、30艦・30艦体制という前代未聞の艦艇数になったことで、倉崎重工は大儲けだ。この儲けはスメラギにも出ていた。浮遊航空艦艇の共同開発で小型可翔艦を含め千数百艦の浮遊航空艦艇を建造し、ウハウハなのだ。大日本帝国の予算ならばこれくらいならばまだ充分維持範疇なため、戦後は対南天でこの膨大な戦力を維持することが決まっている。

 

「僕のところのランペルージグループも大いに儲けさせて貰ったよ。まさか100,000t超えの航空母艦56艦体制になっちゃうとは、いやはや、我が祖国ながら恐ろしい工業生産力だ。質で日本には負けてるけどね」

 

「V.V.さん、あなたもう日本人でしょうに」

 

「あ、そうだった」

 

 杉山、東条。

 

「日本もブリタニアも喪った兵が痛いな。補填が効くとはいえ、南天のように兵を数では見ておらんからな我々は。よく頑張ってくれたと弔意を送りたい。見舞金もだ。恩給もな。本当に彼らには頑張ってもらった」

 

 暫し全員が黙とうする。

 

 そして、山本が続く。

 

「海軍としては増えすぎた艦艇の扱いだな。訓練に使うにしろ、親善訪問にしろ、ここまで膨大な数になるとは思わなかったので少々困惑しておる。といったところで、俺自身は今はもうブリタニア人なのだがな」

 

 この場はある種、おかしなことになっていた。日本・ブリタニア両属の者が何人かいるのだ。山本はブリタニア国籍の元日本人ながら、日本の夢幻会会合に日本海軍責任者として出席している。

 

 V.V.は既に元ブリタニア人の日本国籍ながら、ブリタニア帝国のランペルージグループの会長でもある為、ブリタニアの利益も考えないとならない立場にあった。

 

 南雲忠一もまたブリタニア人でありつつ、会合に出席していた。

 

 大日本帝国と神聖ブリタニア帝国が共に歩み来て160年以上。リカルド大帝の頃以前より日本とは親しき仲にあった為に、実際はそれ以上の年月を共に歩んできた。超古代文明の時代にまで遡ればもう何年の時を家族国として過ごして来たのやら。

 

 そんな長き時を共に生きてきた日本と・ブリタニアは、夢幻会という枠組みにおいても、変質し始めているのだろう。昭和の人間は昭和の秘密を抱えたまま、それより昔となる平成の人間は平成の秘密を抱えたまま、V.V.の様な新世代の人間も取り入れて。その多様さを増していくのだろう。やがて来る日本・ブリタニア連合帝国の時代を目指して。

 

 それぞれがそれぞれ、その様な思いを胸に抱えながら、これからを思い描いていたところに。

 

 嶋田が挟み込んだ。

 

「あとだれも言い出しませんけど、大陸どうします? 高麗と清国の領土合わせて結構な領土が手に入っちゃったんですけど」

 

 この話は正直に言って面倒だった。第二次シベリア戦争の強制終結後、ヒトラーとも話したが、AEUとしては第一次シベリア戦争時に清と高麗に奪われた土地を取り戻せれば、後は興味が無いと言う話しで。

 

 権益は日本とブリタニアで分配することになったのだ。

 

 辻は。

 

「要りませんよ大陸の土地なんて」

 

 と、言うが、これに続いてV.V.までもが。

 

「一応ブリタニア代表としもこの場に立つ立場にある者として発言させて頂くと、まず飛び地となる時点で管理がややこしい。中華大陸に領土なんて要らない。飛び地として得る領土としては広すぎるこの三点を以てブリタニアとしては辞退させて頂きたい。日本が全部貰っちゃえば?」

 

 V.V.の意思で決めているのでは無い。ブリタニアの総意として決めている。昔々に侵略戦争をやっていた頃なら経営の難しさも考えずに飛びついていたかも知れないが、現代ブリタニアはそのややこしさを識っている為、要らないものは、要らないのだ。

 

 振られた嶋田が伏見宮に投げた。

 

「要らんな我が帝国も。大陸に領土など持っても経営が一々面倒だ。だが、戦勝国がわれわれだけだからややこしい。といって放置しておく訳にもいかん。こちらとしては正直ブリタニアが嬉々として受け取ってくれるものと思っていたのだが」

 

 V.V.に再度、ブリタニア側に大陸の領土的な権益を進めてみたが、彼は拒否。彼の拒否は即ちブリタニアが拒否したことに他ならない。

 

「要~ら~な~い~よ~。とくに高麗半島なんて絶対に要りません。お断り。そもそもあそこの人民と日本人・ブリタニア人は根本的に合わないんだから……、そういえば例の北京を超兵器でふきとばした李承朝って大統領閣下の身柄は?」

 

 高麗人を嫌うV.V.。別にV.V.だけに限らない。この場にいる面子全員が高麗人が嫌いだった。高麗人の全てを嫌っている訳ではないのだが、日本嫌い、ブリタニア嫌いで嘘つきな高麗人を、当然二国共に信用しておらずとなるのは仕方のないことであった、V.V.の問いには阿部が答えた。

 

「我々が抑えておりますが、中華連邦に引き渡す予定です」

 

 東条が言った。

 

「死刑確定だな」

 

 再びV.V.が皆に聞く、大体は決まり切った質問だが北側の一員として質問はしておかなければならない。

 

「で? 中華とジルクが北側諸国同盟への加盟を申請してきた場合は?」

 

 す、すすっ、一人二人三人手が上がっていく、V.V.も手を挙げる。

 

「夢幻会としては賛成と」

 

「断る理由もありませんし、南側の北側に対する封じ込めにも一役買います。まあ、もう既に一部中東という地域に侵入を許してしまっているのですがね」

 

 辻は油断成らない。油断しては成らないと警戒の意思を露わにし、告げる。

 

「これ以上の民主共和制原理主義の浸透を阻止すべきです。どの地域であっても」

 

 大体の議題が出そろい、さあこれからが本格的な会議だとなったとき。

 

 嶋田が全員を一巡りして、V.V.を見ると、V.V.はふいっと目をそらした。どーせ話題が戻るだろうという予感がしたからだ。

 

 伏見宮・嶋田・辻・富永・杉山・山本・南雲・阿部・倉崎翁・V.V.etc(中華大陸に領土なんか要らないんだよ・とくに高麗なんか要らん)

 

「で、どうします? 大陸の権益」

 

 

 結局日本・ブリタニアの得た大陸の権益については一時保留ということになった。

 

 枢木ゲンブや澤崎敦、シュナイゼルとも相談しないといけないということを名目にして。

 

 

 ※

 

 

 嶋田とV.V.の帰り道。二人は手を繋いでいた。黒マントの少年と、スーツ姿の男性という変わった組み合わせ。

 

 下手をすると誘拐犯とでも疑われそうな様相だが、二人がにこやかに、楽しそうに歩いているのを見ては、そういう気分も失せるだろう。あの後恒例の飲み会になったのだ。

 

 嶋田もV.V.も大いに飲んだ。普段控えめなだけに多少は羽目を外しても良いのでは? そんな気分だったのである。

 

「ねえ、シゲタロウ」

 

「なんですかV.V.さん」

 

「もうすっかり君に背を追い越されちゃったんだねえ。僕は未だに10歳児のまま。昔僕よりも背の低かった君が、今では僕より背が高い。不思議でちょっと寂しいかな」

 

「でも、子供のままには子供のままの利点も数多くありますよ例えば」

 

『全部子供料金!』

 

 手を繋ぎ合ったまま、お互いを指さす。

 

「でも、飲み屋じゃ疑われるよ? まあ行きつけの居酒屋も増えたから、昔みたいに困ることもなくなったけどさ」

 

 少し寂しげに言うV.V.。そう言えば今飲み友達でもある玉城くんは、と思い出した嶋田は。

 

「ちょっといいですか」

 

 一言告げて、V.V.の前にしゃがみ込むと、彼の小さな身体を抱き締めた。

 

「ん、どうしたんだいシゲタロウ」

 

「いえ、俺も、私も昔を思い出していたんですよ、お兄さん」

 

 お兄さんと呼ばれたV.V.。幼い頃、シゲタロウはいつも自分のことをお兄さんと呼んでくれていた。兄弟でもないのに、兄弟の様に遊び過ごした。

 

 そんな彼の頭へと手を伸ばすV.V.は、嶋田の頭を撫でる。子供の頃の様に。

 

 嶋田もまたV.V.の髪を撫でた、踵まで届く淡い金色の髪。昔はもっと短かった。時の流れを感じる

 

「お兄さん、髪の毛伸びましたね……、すっごーく、長いですよぉ」

 

「ふふ、酔ってるねェ、出来上がっちゃってるねぇシゲタロウ。もう何年僕が髪切って無いか、自分でも分からなくなっちゃったよ。切ろうとしたら家族に怒られるし」

 

「ここまで長くなってしまっては、切る方がもったいないと思いますよ? まあ昔のお兄さんの髪型もかっこよかったですけど。今は今で可愛らしいです」

 

 嶋田は長すぎるほどに長いV.V.の髪の毛を指に絡めて幾度も梳くように救い上げる。段々慣れてくると頭の上から髪の毛の先まで、髪を梳き下ろようになった。何度も、何度も。昔語りに花を咲かせながら。

 

「男に可愛らしいって言われて嬉しい気持ちになるだなんて不思議だねェ。幼馴染だからかなあ。ふふ、僕の髪の毛で遊ぶだなんて、シゲタロウもいつまでも子供だねェ」

 

「おじさん同士でなにやってんですかね俺ら」

 

「酔いが回っちゃってるんだよ。だから変なことしちゃうのさあー。ほら、お空に伸びるスカイツリーがくるくる回ってる」

 

「ああー、ホントですねえ」

 

 自分で始めたV.V.をちょっと励まそうとした、ほんのお遊び程度の気持ち。それが二人の酔いをこれ程はない程に回していく。

 

 でも、気分が良い、シャルルさんがいなかったときに、V.V.さんと二人で遊んだ小さなころを思い出せて。

 

「蝉取りしましたねー」

 

「したねー」

 

 ぐっとV.V.が強めに肩を掴むと嶋田のスーツに皺が入る。

 

「川で遊んだよねー」

 

「遊びましたね。魚獲ろうとして獲れませんでした」

 

 同じようにぐっと強めにV.V.の背中で嶋田の指が立てられる。黒いマントに皺が入る。

 

 お互いに昔はこんな大人の衣服は着ていなかった。

 

「ずっと、子供のままで居られたらよかったのにね」

 

「そうですね」

 

 姿は少年でも既に六十代の大人。背は高く姿もそれなりの六十代の大人。

 

 二人共、何も考えずに遊びまわっていた子供の頃が懐かしい。

 

「そーれっ。俺はお兄さんよりもでっかくなったんだぞお!!」

 

 叫び嶋田は小さなV.V.の身体を持ち上げて、その場でぐるぐると回り始めた。ぐるぐるぐるぐるぐーるぐる。場所も時間も考えずに騒ぐ二人。V.V.は不死身だからという理由で普段からSPを付けていない。

 

 もちろん、周りからは付けろと言われている。ロロからもクララからも。最もそのクララが実質的なSPと言えなくも無いが。

 

 一方の嶋田にはSPが付いている。俄かに護衛対象が騒ぎ出したものだからSPたちは慌てた後、呆れた。おっさん二人で何をやっているのかと。

 

 勢いよくV.V.を回す嶋田の動きに合わせて、V.V.の長い髪がふわふわと宙を漂い、金色の線を空中に描いていく。

 

「わははははっ、こら、シゲタロウっ、僕は君より年上なんだぞおっ、あははははーっ」

 

 くるくる回されながら、楽しく懐かしく、そして嬉しい気分になるV.V.も大声で笑った。

 

 昔だったらこんなことは出来なかった。昔は自分の方が背は高かったが、今ほどの体格差があったわけじゃ無い。

 

 あの頃のシゲタロウに出来なかったことが、今の大きくなったシゲタロウには軽く出来てしまう、これが…………時の、流れ。

 

 やがて静かに回転は収まり、さらりと大きくV.V.の髪は流れ、彼の背中に足下に戻っていく。嶋田はその場にしゃがみ込む。降ろされたV.V.は嶋田と向き合うようにして立つ。

 

「俺たち、大人になっちゃったんですね。なんだか、寂しい気持ちです」

 

「ははっ、今度はシゲタロウが寂しい気持ちか……、やっぱり僕も寂しい気持ちだよ。別に飲み友達でもあるバカが居ないからって訳じゃあ無いぞ? 大人になっちゃったことの寂しささ……」

 

 自分もシゲタロウも大人になってしまった。もう昔のように虫取りも川遊びも、気軽には出来ない。草原を走ったり、野山を駆け巡ったり。楽しかった思い出たち。

 

 所詮はあの頃は良かったなあっていう昔を懐かしんでいるだけで、今だってきっと楽しいはずなんだけれどね。子供達が出来た。仲間達が出来た、その人達との新しい関係性が始まった。昔を楽しんでばかりいちゃいけないのは分かってるさ。

 

 でも、今夜くらい良いだろう? シゲタロウといっぱい、時間も忘れて遊びたいのさーっ。

 

「もう一軒いくかあ!!」

 

「……そうですね……もう一軒行きましょうっっ!!」

 

「飲むぞおおっ、シゲタロウーっ!!」

 

「飲みますよお、朝まででもV.V.さんには付き合ってもらいますからねェー!!」

 

 スーツの上を脱ぎ叫ぶシゲタロウ。

 

「シゲタロウこそ、朝まで僕に付き合わせるからなあ!!」

 

 髪とマントを大きく風になびかせながら叫ぶ僕。

 

 あーこんな夜中に迷惑な酔っぱらいどもだよ。クララがいたら言われそうだね。うるさいんだよまったくもーってさー。

 

 

 そんな二人は、ふらふら、ふらふら、とまっすぐに歩けないまま、夜の居酒屋へと消えていった。

 

 

 

 

 

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
  • レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。