小さな幸せ2
中央暦1639年6月22日
第3文明圏最大にして最強の国、パーパルディア皇国の、第1から第3外務局、果ては監査室まで、およそ外交を司る全部署は大混乱に陥っていた
或いは恐慌をきたしていると言ってもいい事態だった
それは、外務関係だけにはあらず。軍から民間まで、皇都エストシラントに存在するの全ての人間が恐れおののいた表情を浮かべて、エストシラント沖の海上を眺めていた
「あれは、なんだ?……なんなのだあれらは?!」
本日は一月と少し前に交わした大日本帝国の外交使節団が訪れる日
その日、エストシラント沖海上を30ノットという高速で皇都に向かい接近してきている、全長にして優に300mを超える巨大な鋼鉄製の軍艦が、自国の哨戒騎たるワイバーンオーバーロードにより発見されたという
そんな馬鹿な。あり得ない
レミールの頭をよぎったのは、そう思い込みたい自分の心の声だった
宮廷服飾職人の仕立てたドレスは冷や汗を吸い重くなり、心の重圧と共に彼女の気分を落ち込ませ、また、掻き乱す
*
この一月。レミールはひたすら平伏外交に徹していた日本の朝田という外交官と幾度もの協議を重ねながら、大東洋と呼ばれる東の最果ての広大な海の西側にあるという、聞いたことの無い国について、情報収集をしていた
その一環として、偶然にも日本と既に国交を開いており、日本をよく知るというムー国大使ムーゲの話を聞くことができていた
ムーゲ曰く「彼ら大日本帝国は我々ムーよりも、いやあえて宣言しておきましょう。神聖ミリシアル帝国よりも強大な国力と軍事力を持つ、機械文明国家」なのだという
無論レミールは一笑に伏した。たかが文明圏外の、それも未開の新興たる蛮国が、第二文明圏や第一文明圏の列強よりも発展しているなどと、信じられないと
しかし、その自信は、呼び出した当のムーゲよりの更なる情報開示により不安へと変わる
出された情報は写真だった。写真に写るプロペラの無い戦闘用飛行機械の
ムーゲは言う。我々ムーの飛行機械マリンにはプロペラが付いている。しかし日本の飛行機械にはプロペラが付いていない
この差はプロペラ機とそうでない物の物理限界の差ゆえのものだという
ムーの最新鋭戦闘機を指して限界が低く、日本の戦闘機はその限界を超えている
にわかには信じがたいが、ついでというように差し出された情報で、日本の戦闘機は音の速さを超えているという、あり得ない話まで飛び出していた
更に机に並べられた写真の中には日本の首都だという、帝都東京の様子までが写し出されていた
日本の帝都東京。それは、ブロック状の構造体に、幾つあるかも分からないほど無数の摩天楼が林立する、超巨大な都市だという
高層建築物やブロック状の構造体は、どこが継ぎ目かも分からない不思議なものである
その全てに高価な窓ガラスが張り巡らされた、一見しただけでこの世界の大国とは隔絶した圧倒的な発展度がうかがえた
ムーゲの言葉は続く「軍にしても、技術にしても、大日本帝国は我々よりも遥かに高いし、先を進んでいるのです。我々の調査では神聖ミリシアル帝国よりも遥か先を進む科学的・軍事的超大国であるとの結論に達しました。また大日本帝国の他にも、大日本帝国の同盟国だという二つの超大国が存在しています。こちらも大東洋に存在する神聖ブリタニア帝国という国、そしてAEUと彼らは呼んでおりましたが、複数の王政復古国家による連合国家だそうです。現在我々ムーは大日本帝国を頼り、神聖ブリタニア帝国、AEUとも国交開設の準備に取り掛かっております。信じられないことかと思われますが、全て事実です」
最後にムーゲは付け加えていた「くれぐれも対応を誤らないようにしてください」パーパルディアの今までの歩みを振り返っての注意勧告だったのだろう
パーパルディアは常に国土拡大政策に邁進してきた
反抗する国は叩き潰し、蹂躙し、服従させ。庇護を求める国には引き換えとして多くの宝物や資源を献上させてきた
ムーゲは暗に語る、日本に対して同じことをすれば、パーパルディア皇国は滅亡すると
何もかもが信じられない事ばかりだった。レミールはムーにより技術を与えられた日本による、ムーの間接的な侵略行為か、或いは謀略かとも考えた
だが、あの写真の数々と、汗を流しながら真剣に話をしていたムーゲの言葉が頭から離れない
これらの情報を得てからも朝田の様子に変わりはない。平身低頭の平伏外交に徹していた。無論レミールは皇帝ルディアスにもこの報告を上げようとした
しかし、現実主義のルディアスが聞き入れるはずもないと、日本という国の存在がかなり重要である事を仄めかす程度に留めていた。かの写真やムーゲの真剣な様子から「まさか」と考えていたレミールでさえも、本心では眉唾物の話だと考えずにはいられないからだ
一方で、もしも本当だったのならば、といった考えを抱くようにもなっていた
常に最悪を考える。今までは楽観主義的に事を進めてきたレミールが慎重にならざるを得なくなってしまった
朝田への態度も、文明圏外国の役人を相手にするような態度を改めて、五大列強国の役人を相手にするような対応に切り替えた
もちろん対日本の担当は引き続きレミールが行うようにして、毎日のように第1外務局へと呼び出しては、これからの外交の話から、些末な日常的な話まで、席を共にしながら、時には本当に談笑をする間柄にまで関係を深めていた
たかが文明圏外国を相手に何をやっているんだという思いと、もしもの時に備えて日本の外交官朝田と縁を深めておけば、それだけでも皇国の為にはなろうと自らに言い聞かせながら
レミールのこの姿勢は「蛮国を相手に甘すぎる」というルディアスの叱責や不興を買ったりもしたが、それでも彼女は感じていた悪い予感を信じて、朝田との友好関係を深めていた
朝田も、そんな彼女の変化を感じ取ったようで、平伏外交姿勢はそのままながらも、プライベートな話もするようになっていた
「私も最近は悩み事が多く困っているのですよ。仕事柄あっちへ、こっちへと、出張を繰り返す日々でして、そのうち身体を壊してしまいそうです」
「なるほど。だが、外交官ならば仕方あるまい。国と国を行き来し、相手国との連絡役、ひいては友好の為にもその役目は大事となろう」
「レミール殿下よりの激励の御言葉、この朝田、まことに有り難く存じます」
「気にするな。国交を開く間柄、文明圏外国とはいえお前は全権大使のような立場なのだろう。苦労の一つ二つはあろう」
「はあ、苦労しっぱなしでして。浮いた話の一つもないところですよ」
「ほう。ならば私が立候補でもしてやろうか?同じ外交の場に身を置く者同士だ。釣り合いもとれよう」
「お、お戯れを。列強パーパルディアの皇女殿下であらせられるレミール様よりの、文明圏外国の一外交官でしかない私への身に余りすぎる御言葉は感激の限りに御座いますが。レミール様にはルディアス皇帝陛下という御方が」
「最近、そのルディアス陛下が私に素っ気ないのだ。文明圏外国を相手にいつまでくだらぬ事をしているのかと。まるでお相手くださらない」
「はは、それは皇帝陛下のお立場ともあらば、たかが文明圏外国相手に時間を割くなと仰せになるでしょう。こうして私のような者にまで、お目をかけて戴ける事はこの上もない喜びに御座いますが」
朝田との交友は次第に公私に渡り始める。その程度の者であったかとでも言わんばかりの素っ気ない態度になったルディアスの空気をつぶさに感じ取ったレミールは、捌け口に朝田を求めたのだ
時には私邸にまで呼び出してはパーパルディアの事を話し、日本の事を聞き出そうとするレミールに、しかし朝田は多くを語らず、ルディアスとの不仲より寂しさを感じ始めていたのであろう彼女の話し相手として振る舞うに留まっていた
朝田も、こちらも時に、外務省職員として誇りを持ち仕事をこなしながらも、友好国間を駆け回る忙しさに休みがほしいといった愚痴を呟いたり
レミールは朝田との友好関係を確実に深め、当初の頃とは打って変わり、二人の関係は友人といっても差し障りがないほどにまでなっていった
そうしてやってきた、その日が今日だった。この今であった
始まりは早朝の朝田からの面会要請から
この日の朝田は丁寧ながらも、平身低頭ではなかった
「レミール様、朝早くに失礼致します。本日は貴国との国交開設の為の我が国の使節団がここエストシラントへ訪れる事となりますが、我が国の使節団を乗せた船団、艦隊は1隻1隻の規模が大きく、貴国に対して不自由を強いる事となるかも知れませんが、その点に付きましては予め謝罪をしておきます」
「規模が大きい……まさか、我が国が誇る100門級戦列艦隊のような大艦隊が来るとでもいうのではあるまいな?」
「いいえ、戦列艦は1隻も御座いません。ただ、空母。貴国の竜母と同じように運用する艦艇や、大型艦艇がエストシラント沖に入ることになりますので」
「戦列艦ではない大型艦艇だと」
レミールの頭にムーゲの言葉がよぎる
日本はムーを遥かに超える超大国
もし、それが本当ならば、大型艦艇とは、ムーの誇る巨大艦ラ・カサミのような艦艇かもしれない。それが何隻も訪れるとなれば、確かにパーパルディアの総力を上げる必要が出てくるだろう
背中に滲み出す冷や汗を隠しながら、レミールは朝田に告げた
「よい。本日の日本船団の訪問は陛下も預かり知るところ。日本との外交については私が全権を預かっている。よってパーパルディア皇国皇族レミールの名の下に日本使節団が我が国の領海へ入ること、およびエストシラント港への入港を許可する」
レミールは待つ。ただその時を。そうして太陽が中天に差し掛かるとき。その轟音は鳴り響いた
ドォォォォォォン!!!
大地が地響きに揺れる。窓ガラスがバリバリと震える。エストシラントの遥か沖合いから轟く雷鳴のような轟音は、鳴り響く音と合わせてエストシラント沖に巨大な水柱を立てていた。レミールと共にいる朝田曰く、これが「礼砲」なのだという
戦列艦ではない「戦艦大和」の60㎝主砲によるパーパルディアへの礼砲なのだというのだ
「60㎝砲だと?!」
「はい。我が国が誇る戦艦大和による60㎝主砲です。領海内で発砲したことは改めてお詫びします」
監査室内がざわめく。第1から第3外務局内が、港の水夫たちが、エストシラントの臣民たちがざわめく
やがてワイバーンオーバーロードの哨戒騎より魔信が入る
『エストシラント沖を北上中の超巨大艦を発見。全長300m以上の艦艇が目視で超巨大戦艦2隻、超巨大な竜母らしき船が4隻。その他巨大竜母らしき船がいずれも200mから200超で12隻、ラ・カサミ級を超える巨大戦艦が100隻以上、更に巨大戦艦艦隊上空には200mはあろう空を飛ぶ戦艦が12隻と戦艦の周囲を飛行する5mほどの鉄のゴーレムが無数、全て日本の国旗を掲げている日本船団、大日本帝国艦隊である模様っ!!』と
その魔信を伝える竜騎士の声は最早叫び声であった
この世ならざるものを見たとでもいうような絶叫だった
絶叫は伝播する。レミールにも
「全長300mを超える戦艦や竜母っ?!ラ・カサミを超える戦艦が100隻以上っ?!空を飛ぶ戦艦に鉄のゴーレムだとっっ!?」
魔信はパーパルディア海軍、陸軍にも伝わり、にわかに厳戒体制が取られる事となり、やがて水平線の向こう側より信じられない程の巨砲を備えた超巨大戦艦と、同じくらい大きな超巨大竜母、ムーのラ・カサミなど話しにならない戦艦群がエストシラント沖合いに姿を現し始めた
空には竜母より飛び立った鉄の竜が音を遅らせて飛び交い、鉄竜の上空には空飛ぶ戦艦が艦列を成して飛行している
その様はまるで古の魔法帝国の進軍を思わせる光景だった
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