帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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ユフィルートしげちー×日本国召喚クロスの続きです。今回はレミール視点ではありません


小さな幸せ4

 

小さな幸せ4

 

 

奇妙な箱のような大きな銀色の鉄の怪鳥が沖合いより低空飛行で飛んで来た

 

全長にして20mはあるだろうか?

 

明らかにワイバーンよりも大きなそれは、同じく空中を飛行する5mほどの体長を持った、マスケットとはまた違う巨大な銃を備えている白と青で彩られた鉄のゴーレムを4体伴わせながら、やがて陸地にまで辿り着くと、ゆっくりと下降を始め、エストシラント港の開けた場所に向けて静かに降りてきた

 

キィーンという、かん高い音を立てて降り立ち、暫しして音を消した怪鳥、箱の名はVTOL。人員や兵器を輸送するための飛行機械の一種なのだという

鉄のゴーレムの方は名をKMF、ナイトメアフレームというらしく、近接戦、中長距離戦もこなせるやはり機械仕掛けの兵器らしい

 

「垂直離着陸が可能な飛行機械に、人が乗る戦闘用の鉄のゴーレム…」

 

パーパルディア皇国には無い純粋な科学技術でのみ作られているというこの飛行機械たちは、どのような原理で空中を飛ぶのかも、なにを以て稼動しているのかも不明であった

 

「そして…」

 

エストシラント港の上空には、信じられないことに船までが飛んで来ていた

数は4隻だ。その巨体は優に200mはあろう空飛ぶ戦艦であった。地上からでは下部しか見えない船体には、幾つもの砲が搭載されていることが見てとれる。砲数こそ少なく、距離感からわかりづらいが、そのどれもが皇国の持つ戦列艦の砲よりも大きいのだろう

 

世界第二位の列強ムーの保有する戦艦ラ・カサミよりも巨大な戦艦が、空を飛んでいる非現実的な光景だった

 

それら空飛ぶ艦隊の周りにも数十体の鉄のゴーレムが浮いており、パーパルディア皇国皇都エストシラントを見下ろしていた

 

 

港に駆け付けていたパーパルディア皇国第3外務局局長カイオスは、周囲を警戒している皇軍の兵たちや、空を飛び交うワイバーンロード、ワイバーンオーバーロードに騎乗する兵たちと共にそれらを視て、息を呑む

 

先見の明があり聡い彼は、外務局監査室の皇族レミールが、ある時、皇国との国交開設を願い出てきた文明圏外の国の外交官と接触し、交友を深めていくに伴い、徐々に焦りにも似た何かを持つようになっていった事に感付いていた

監査室のレミールと言えばとかく冷酷非情な人間であり、多少の事にも動じたりしない、いやさ動じたりした場面を誰もが見たこともないほど傲慢で冷徹な女性であった。そのことはカイオスも彼女の人となりをこの暫くの間に調べて知っていた

そのレミールは当初、平身低頭で土下座までしてきた外交官の態度をいたく気に入り、彼の外交官の国との交渉は自分預かりとすると宣言。随所で彼の外交官朝田と共に居るところが目撃されていた

 

この接触初めの頃は、焦りを見せるどころか、傲慢その物な態度を崩していなかったのだが、彼女の態度は日を追うごとに変わり始めた

 

朝田との仲が深まれば深まるほどに、冗談すら飛ばしあっているところが見られれば見られるほどに、一人でいる時の彼女の態度は変化していった。遠目で視てわかるほどにだ

 

特にムーの大使との会談後、「デンシケイサンキ」なる物や、魔導通信にも似た「ムセンキ」なる物を朝田より贈られ、それを技術を扱う部署で調べさせた後からは、最早焦燥に近い様相を呈していることもあった

 

朝田との仲は良好で、良好であればあるほどに焦りを見せていくレミール

少し前の帝前会議でもそうだった

 

『ルディアス陛下…、陛下に御報告したき事が御座います』

『申してみよ』

『はっ、実はいま去る文明圏外国との国交開設の準備に取り掛かっているところなのですが、その国は我がパーパルディア皇国にとり非常に重要な相手国となる可能性が御座います…』

 

顔色悪く述べていたレミールは、ある文明圏外国が皇国にとって重要な相手国となり、この国を相手にして常のような教育的外交を行えば、皇国は取り返しのつかない一歩を踏み出すことになる

そうルディアス皇帝に進言、忠告したのだ

この一言は、当然ながらルディアス皇帝の不興を買っていた

 

『レミールよ、予が知らぬとでも思うたか?お前がたかが一文明圏外の蛮国の外交官を相手に、パーパルディア皇族としてあるまじき対応をしていることを。随分とその蛮国を遇しているそうではないか。報告を耳にしてより見下げ果てさせられたぞそなたの行動にはな。それにあろうことかこの場においてまでその様な戯れ言を申すとは。列強パーパルディア皇国の皇族としての誇りは無いのか?』

『へ、陛下っ、しかし、しかし彼の国はやもすればミリシアルやムーをも!』

『もうよい。そなたの戯言をこれ以上聞いている暇など無いのだ。下がれ』

『……』

 

それでもレミールは彼の国への対応は慎重にと進言し続け、ルディアス皇帝との仲は悪い方向へと流れていた。文明圏5ヵ国、文明圏外67ヵ国、大小合わせて72ヵ国もの属国を従えるまでに巨大化したパーパルディアのこんにちの繁栄は、ルディアスの覇道があったればこそだ

現実主義で己の覇道をゆくルディアスに、聞いたこともない無名の文明圏外国を特別視し相手にするようなレミールの姿勢は軟弱であり弱腰であると映っていた

だから距離が生まれてしまったのだ

だが、彼女はこれだけはとそれとなく何度も警告していた。無論ルディアスには軽くあしらわれていたが、しかし何故そこまで文明圏外国を重要視するのか?それが不思議で、同時に皇帝と不仲になってまで忠告をしていた彼女の姿勢に何かあると、そのことにカイオスもまた危機感を覚え、レミールが調べさせていたというデンシケイサンキの事を調べてみたが、なにもわからなかった

技術部門の誰もが解析不能という壁にぶち当たっていたのだ

この袋小路の中で唯一判明したことは、レミールと一部の人間だけが彼の国の姿を朧気に掴んでいたということであった

ムーの駐パーパルディア大使ムーゲからの情報として

問題は内容があまりにもあり得ない話ばかりなので、虚偽情報だろうと切り捨てられる類いの物であったのだが、カイオス自身レミールやムーゲの話をもっと精査しておくべきだったと後悔していた

 

 

 

 

その彼の国こそが、レミールが焦燥感さえ浮かべさせながら警戒していた国こそが、その焦りの原因こそがこれだったのだ

この科学技術で作り上げられた箱や、同様に作られた鉄のゴーレムに空を飛ぶ戦艦

中天の時、エストシラント沖でとてつもなく巨大な水柱を立てさせる砲撃を行った

 

「大日本帝国…!」

 

カイオスは口に出して叫んでいた。余りにも余りにすぎる現実を前に

 

 

日本の使節団だというこれらを最初に発見したのは、皇国観察軍東洋艦隊所属の竜騎士レクマイアだった

レクマイア、彼は魔導通信で告げていた。叫んでいた

 

空を飛ぶ戦艦

全長にして300mを越えている超巨大戦艦

海原を進む200隻以上の鋼鉄の艦隊

鉄のゴーレムや、ムーの持つ飛行機械マリンのようでマリンなど話しにならないほど速いマリンのような飛行機械

まだいるのだ、沖合いの空と水平線に点のように見える粒全てが巨大な戦艦群なのだ

 

「大日本、帝国」

 

その名を噛み締めるようにもう一度口にした時、隣に立っていた彼の国の外交官、朝田泰司が返答した

 

「はい。我が国、大日本帝国の使節団です。と言いましても使節団艦隊の一部ですが」

 

つまり、いま自分が目にしているものは、報告にあった内のまだほんの一部に過ぎないのだ

ほんの一部で「これ」なのだ

 

カイオスがここに来たのは正解だった。国家の上層部の人間が直に目にしなければ、この重圧は伝わらない

カイオスはいち早く自分の目で確かめて良かったと思った。相手をはかり損ねていたらどうなっていたことかと。第1外務局はこの事実のほんの触りまでは知っているだろう、監査室のレミールが直接ことに当たっていたのだから

実はこの使節団の出迎えには当初レミールが直接出向くと言っていたのだ。自分が担当している相手国であるからと。何よりレミールは日本に対しては人一倍気を使っていた

だが、それは流石に皇国としても面子の問題があるので是とするわけにもいかなかった

皇族であるレミールを文明圏外国の外交使節団の出迎えに出す。それでは列強としての面子が丸潰れだと

 

かといってだ、これは最早列強がどうのという話ではない

カイオスは自分が来て正解だと思っていたが、レミールが来ても正解だったのだ。もっと言えばルディアス皇帝が来ていれば、この恐れを体験した方が後々に間違いを犯さないで済むだろう

いや、すでにもうパラディス城よりこの光景を御覧になり、敗北感や憤怒に顔を歪めているかもしれない

皇都エストシラントが見下ろされている、パラディス城が見下ろされているのだから

そのルディアス皇帝が、怒りと覇道のままに日本と向き合えば、あの空の戦艦からの砲撃がエストシラントに降り注ぐ事だろう

 

文明圏外の蛮国?

魔法も使えない蛮族?

 

とんでもない

 

蛮国どころか列強など遥かに及ばない超文明国だ

魔法など必要としないだろう超機械文明国だ

 

その超機械文明国の鉄の箱の扉がいま開かれる

 

まず最初に出てきたのは、見たこともない白い服を身にまとう数人の男たちであった

皆一様に扉の両脇に控えて並び立つ

様子からして軍人だろう

次に出てきたのは、短い髪を後ろに撫で付けた、少し厳めしい顔立ちの壮年男性だった。こちらは日本外交官朝田と同じ様な服装をしていた

男性は、カイオスに目を向けると静かに歩み寄ってくる

 

「このエストシラント港の空までお借りし、お騒がせしてしまい申し訳ありません。そちらの朝田よりお伺いしております、パーパルディア皇国第3外務局局長カイオス殿ですね。わたくし、大日本帝国は枢木内閣で官房長官を務めさせていただいております、澤崎淳と申します。本使節団の団長として参りました。宜しくお願い申し上げます」

 

大日本帝国外交使節団団長、官房長官澤崎淳。老獪な政治家といった風体の男であった

差し出された彼の手をカイオスは握る

握りながら、心の動揺を表には出さないようにして返事をした

 

「これはご丁寧に、遥か大東洋より遠路遥々ようこそお越しくださいました。既知のようですが、パーパルディア皇国第3外務局局長カイオスです。こちらこそ宜しくお願い申し上げます」

 

文明圏外の蛮国を相手にするような接し方ではない。皇国内ではレミールを含め、一部の者だけがそうしているように、五大列強に名を連ねる国々を相手にするような応対をしていた

何事も第一印象は大切だ。文明圏外の国というイメージは、上空に止まる艦隊と、巨大な銃を備える数十体のゴーレムを視たことで一切捨て去っていた

「早速の質問で失礼ですが、空のあれは何なのですか?」

 

カイオスは聞いた。おとぎ話に出てくるような、古の魔法帝国のような空飛ぶ船のことを

誰もが知りたがっているだろう。あれはなんだと

 

「浮遊航空艦隊のことですな?」

「浮遊航空艦隊…」

「簡潔に申し上げれば空中戦艦で構成された艦隊です。あの1個艦隊4隻は貴国の港湾に入港できない帝国海軍の大型艦艇の代わりですよ。浮遊航空艦隊につきましては今回の貴国訪問では3個艦隊12隻で来ておりますが、やはり港湾への入港には事前通知が必要でしたかな。第三文明圏唯一の大国、列強であるパーパルディア皇国に対しては失礼の無いようにそれなりの艦隊を揃えようとして精一杯手配した物なのですが…、ああ、彼処に見えますのが旗艦の飛鳥です、その他が順に庵戸、板蓋、朝倉です」

 

斑鳩級浮遊航空艦:飛鳥

 

全長:200m

兵装:主砲ハドロン重砲2門

副砲76㎜単装リニア砲2門

57㎜単装リニア砲8門

対空・対艦ミサイル発射基各4基

バルカンファランクス2基

ブレイズルミナス

 

列強には持てる限りの礼儀を尽くす。この世界の常識としては力を誇示することがそれにあたる。弱肉強食の世界なのだから当たり前のこと。日本はただそれを行っているだけなのだ

弱い力を見せて見下し見下された結果、不幸な行き違いが起こるということのないよう、力を示すのは当然のことなのだ

もしも日本がこれだけのものを用意せず、沿岸警備船のような船を少数だけで来ていたら、パーパルディア側の対応は一気に日本をただの一文明圏外の蛮国という位置付けに変えていた事だろう

それほどまでに力の誇示は大切なのだ

国家間の無用な軋轢を避けるためにも

 

「なるほど。まあ、正直に申し上げれば、空を飛ぶ船を見るのは初めてでしたので誰もが気になっていました。ましてや我が国領空を飛ばれては、不意な事故的に我が国の誇る"第三文明圏最強の"竜騎士たちが混乱のままに導力火炎弾で攻撃してしまう可能性がありましたので」

「ああ、それならば大丈夫ですよ。我が国の浮遊航空艦やKMFには防御機構としてブレイズルミナス、簡単な説明としては特殊な膜のような防御壁が展開できますので、ある程度の相手からの攻撃なら簡単に通るようにはなっておりません。まあ、お互いに物騒なお話は止めにしましょう。戦争をするわけではありませんので」

 

ワイバーンオーバーロードの導力火炎弾でも通用しないのだろうかと考えてしまう。しかし見たところあの空中艦隊も金属でできている様子。恐らく通用しないだろうと直感で考えたカイオスは気持ちを切り替える

戦争をするわけではないのだ。戦争などになれば、レクマイアの報告が本当なら

皇国が、栄華を誇る我がパーパルディアが一夜で滅びてしまう。事を荒立てないようにする事が第一である

 

「そうですな。では、あちらに馬車を用意してありますので」

「これは、列強である貴国よりのお心遣い、大日本帝国を代表して御礼申し上げます」

 

そうして、カイオスが、国交開設の条件の擦り合わせと、本格的な国交締結を目指すべく、日本外交の一切を取り仕切っているレミールの待つ皇宮へと移動するため馬車へと乗り込もうとしたとき

 

VTOLと呼ばれる箱の中より、もう一人別の男が出てきた

 

「待ってください澤崎団長。私も御一緒させていただきますので」

 

それは、朝田や澤崎と同じ様な意匠をした、焦げ茶色の衣服を身にまとう、特徴的な丸い眼鏡をかけた男であった

 

 

 

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