帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

139 / 379
小さな幸せ12

 

 

 

 小さな幸せ12

 

 

 

 

 

 中央歴1640年7月4日

 

 

 

 

 コンコンっ。

 

 扉を叩く音。

 

「入れ」

 

 直ぐさま反応するは麗しの美女。二十代後半くらいの美しい長い銀髪の女性。身体の線は細く、その線を隠すように黒を基調とした豪奢なドレスを身に纏い、頭に戴いた金のサークレットが蛍光灯の光を反射させている。

 

 パーパルディア皇国皇族レミール駐日大使であった。一年前の彼女ならば確実に、追い返せと指示していただろう、気軽な口調の入室許可に。彼女は彼女で気軽に応じる。彼女はこの一年日本であらゆる物に触れ目に入れ、また。

 

 彼女の隣で書類作業を補佐していた大日本帝国外務省職員にして外交官の朝田泰司と、深い愛を育むようになって随分と変わった。もちろん良き方向に。

 

 これらをよく知る駐日パーパルディア皇国大使館の職員は、レミール大使がパーパルディア皇国の皇族とは言え、安心して話しかけることが出来るようになったのだ。狂犬レミールなどと言う不名誉な二つ名を影で囁かれていた頃の人物と同一人物とは思えないような変わりよう。

 

 弱小国パーパルディアを突きつけられた今、ようやく彼女は真人間になれたのだろうと皆がホッとしていた。

 

 それと無駄に手入れの時間が掛かるロールヘアーの髪型は今はして居らず、髪は真っ直ぐの直毛に伸ばして外見的にも変わっていた。こちらは朝田外交官のアドバイスあってのことらしいが、膝下へ伸びる真っ直ぐな銀色の髪は、レミール皇女の美しさを引き立てていた。

 

 ただ巻き髪だった頃の髪でも髪先は膝に届いていた。それを真っ直ぐなストレートヘアーに降ろし変えたのだから、その髪先は優に膝下にまで届く長さとなっており、別の意味で手入れが大変だとのこと。その手入れを任されている朝田外交官は愚痴一つ言わずにお付き合いをしている。それだけ愛し合っているのだろうと大使館職員内では専らの噂。

 

 噂では昼頃に二人揃って大使館内の何処かへ姿を消す二人はそこで行為に及んでいるのではないかという話も上がっており、口さがない者などレミール皇女が朝田氏の子を身籠もるのはいつ頃だと推測するか? 等と言った、実に不敬極まりない話までしているのだから困った物である。

 

 まあ、実際いつもの場所と二人だけの隠語で呼ばれる場所で、朝田とレミール皇女は愛し合っている。ドレスを着たままのレミール皇女を朝田は上手に愛し、スーツを着たままの朝田に上手に愛されるレミール皇女。達するときは最奥で。熱い物を受け入れながらもレミール皇女は大きな声を出さず二人は静かに愛し合う。そんな日々なのでレミール皇女の妊娠が時間の問題だという話は、実は見事に的を射ていた。

 

 とにかくそうして柔らかくなったレミール皇女の下に誰かがやって来た。

 

 誰でもやって来る。大使なんて仕事をしていれば第三文明圏と大東洋諸国の人間ならば誰でも。反面日本の人間はほとんど訪れない。パーパルディア皇国という国自体には観光客が多く駆けつけているらしい。彼ら曰く「中世ヨーロッパの空気が生で味わえる」だそうで物珍しいらしい。

 

 出来れば日本のようなビルだらけの国にはなって欲しくないと観光客達は言うが、パーパルディアも発展しなければならないのだ。無論昔の景観を残した都市も数多く残すつもりで都市計画は進んでいるらしいが。皇都エストシラントは東京をモデルに発展させたいと考えていた。ただ東京が余りにも巨大すぎて、真似しようにも中々真似をするのが難しいと言った難儀さも有り、一朝一夕には行かない物だとため息を吐いていた。

 

「失礼します」

 

 入室してきたのは、国家戦略局のイノス。未だ覇権主義を掲げ第三文明圏の制服を画策している時代遅れのロウリア王国へと、勝手に軍事支援をしていた男。中分の肩までの長髪をしたかつてはみすぼらしかった男。日本赴任後の今は肥え太っており、ダイエットに励んでいるという。日本の食事が彼には余程合ったのかと思えば、ただのジャンクフードの食べ過ぎらしかった。

 

 別にレミール皇女としては好きなものを好きなように食べれば良いと思う。しかし、日本人、ブリタニア人は、若さを保ちながら平均年齢百五十歳まで生きるという長寿の種族。

 

 日本へ赴任、引っ越してきてからという物、レミール皇女自身もその例に漏れず恩恵を受け始め、髪と肌の艶が以前とは比べものにならないくらいに良くなった。体力自体も以前より付き、皇居マラソンとも呼ばれている巨大な皇居の外周を一蹴する運動も時々行い、身体のメリハリも以前以上に。この時の髪型はポニーテールにしている。

 

 正直一人でのんびりと走りたいところなれど、パーパルディア皇国皇族という身分がソレを許さず。SPが何人か付いてのマラソンとなり酷く物々しい。彼女以外にもSP付きのランナーは幾人と見た。嶋田閣下やクルシェフスキー卿、山本閣下、ヴェルガモン卿、コーネリア皇女、ユーフェミア皇女、ルルーシュ皇子にナナリー皇女、皇居に住んでいる伏見宮殿下や皇神楽耶大日本帝国皇女殿下などもその一人で、朝の挨拶を交わしたりもした。ガチガチに緊張しながら。

 

 そうした普段の努力も有り、以前よりお美しいと褒め称えられてきたが、今では更にお美しいと言われる機会が増えた。

 

 そんな良き環境にありながらイノスは醜くとは言わないが、太ってしまった。油ギッシュな彼を視て思うことは、「こいつ大丈夫か」である。彼女は彼女なりに、国家戦略局から左遷されて、ある意味出世して日本の駐日大使館勤務となっていた彼を心配していたのである。これもかつての傲慢だった頃の彼女には見られなかった気質であった。

 

「人の事をどうこうと口出しするつもりはないがイノス。お前、食生活を改めぬと糖尿病になるぞ?」

 

 日本へ訪れて知った糖尿病やガンと言った、これまでのパーパルディア皇国の常識では図れなかった病気の数々。おかげでこのたった一年の間にパーパルディアの医療技術も発達してきた。

 

 だからこそ糖尿病が最悪、脚の壊死を呼び込み、脚を切断しなければならない大事に繋がると知っているからこそ、レミール皇女は忠告したわけだ。

 

「はッ、ですから現在絶賛ダイエット中であります」

 

「運動しながら油ものばかり食べていては結局変わらぬぞ?」

 

「うッ!」

 

 レミール皇女の鋭い指摘にイノスの顔色は悪くなる。

 

「やはりか……。別にお前が好きな物を食べようが自由だが、病気には気をつけよ。後で後悔するのは己だからな。で、要件は?」

 

「あ、は、はい。大日本帝国および神聖ブリタニア帝国両国よりの支援項目と、供与品の受領が終了致しましたのでご報告に上がりました」

 

 そうして油ギッシュな彼の手より渡された項目を見て、レミール皇女は頭がふらつきそうになったが、違う、常識とは掃いて捨てる物なのだと自身に言い聞かせて。受領項目の品目だけを目に入れた。

 

 朝田が心配そうに立ち上がりレミール皇女の肩を支えるも、大丈夫だと微笑んで断るあたり、彼女もここ暫くの間に急成長という名の開き直りをしてしまったのだなと悟る。

 

 恐らく大日本帝国の本当の意味での実態や、更なる物を見せれば、また一々白黒させて目を回しぶっ倒れるだろう。エナジーウィング機を生で見たら。第六世代統合打撃戦闘機を生で見たら。数万機のKMFが大空に展開しているところを生で見たら、浮遊航空艦大艦隊、海軍大艦隊を生で見たら。その都度肩を支えることになるだろうなと朝田は思った。

 

 北側諸国の合同軍事演習にこの世界の者は招待されていないし、ましてやフレイヤ起爆実験など見せてもない。そんな物を見せたら対等な外交関係を築くどころか、皆平伏してくるからだ。そんな外交関係は望んでいない。第三文明圏、特にパーパルディア皇国を衛星国とし、要の国とする案は出ている。

 

 パーパルディア皇国はルディアス前皇帝の覇権主義から、周辺国への融和主義に政策を大きく転換させたとは言え、この異星世界の基準で言えば列強。それも今や第四列強国から恐らく第一列強国となっているだろう、この世界で時々行われているらしい先進国会議的な基準で言えばだが。他の不確定要素までを加えるのならば現時点では分からない。

 

 ただ、それなりに強化したパーパルディア皇国を第三文明圏の要とする。だからこその、この世界ではトップクラスに君臨できるだろうおもちゃの軍隊を鍛えているのだ。おもちゃを飛び越えて、超旧式のナイトメアフレームに、旧式初期型の浮遊航空艦というプレゼントまで与えられた。

 

 これはレミール皇女もよくよく理解できていた。これだけの信じられないほどの軍事力を無償供与してくれ、朝田曰く歴史上最強のパーパルディア皇国となったと言うからにはそうなのだろう。

 

 無論本当にそうなのだろうかといった疑問も抱いてしまうが。それも無理ない。800隻以上あった戦列艦が24隻の軍艦に。今ほど供与された分を加えても40隻ちょっと。戦車とKMFが強力なのは何となく分かるが、これで歴史上最強のパーパルディア皇国だと言われてもピンとこない。レミール皇女も日本という国を勉強してきたつもりだが。

 

 そして、一応の処最強となってるという現パーパルディア皇国の、その最強に強化した事の意味するところとは? 馬鹿=ルディアスに心酔していなければ元々頭は良かったレミールにも、大凡は分かっていたのだ。くだらない戦争ごっこの代替役と第三文明圏の盾役として期待されているのだと。

 

 今日までの日本、ブリタニアからの支援でパーパルディア皇国は大きく発展してきた。奴隷も必要としないシステム、クワ・トイネから日本からブリタニアからの穀物の移送と食事事情の大幅な改善。大型高層ビルディングの建築に科学文明の産物の安価な輸入。病院施設の設置と各種病気に対する対策と学習。義務教育の施行による国民の能力の向上。

 

 そこへレミール皇女から見て800隻もあった艦船の数が、再供与分含めたったの四十余隻と、数は少なく感じてしまったが、説明を受けている間に強大に過ぎることが分かった軍事力の無償提供だ。少なくともパールネウス型戦艦についてはピンとは来なくとも、とてつもない戦闘力である事は分かった。そんなパーパルディア皇国は丁度第三文明圏の玄関口にも当たる。ここを大きく発展させる意味は。【第三文明圏に余計な手出しをするな】だろう。

 

 暫し思考の海に沈んでいたレミール皇女。

 

「レミール皇女…!レミール皇女!」

 

「ん、ああ、すまぬ」

 

 現実に引き戻したのはイノスだった。朝田はまた考え込んでいるのだろうなと彼女の肩を支えていた。

 

「泰司も、もう大丈夫だ。考え事をしすぎていただけだ」

 

 レミール皇女は自分を支えてくれている朝田の手に、やんわりと自身の手を重ねた。

 

「イノスさんが不安がっておりましたので、お考え事も程々にしてくださいよ?」

 

 少し名残惜しそうに朝田は彼女の肩から手を離した。

 

「うむ。……で、イノス。品目を」

 

「はッ。こちらになります!」

 

 

 基準排水量70000t級パールネウス型戦艦×4隻(一番艦命名者辻政信大日本帝国元財務相)

 

 基準排水量1100t級001型コルベット艦×12隻

 

 基準排水量10500t級001型戦車揚陸艦4隻

 

 60式主力戦車×1000輌

 

 90式VTOL×16機

 

 旧式無頼・旧式グラスゴー×500機

 

 90式VTOL輸送用×500機

 

 軽斑鳩級浮遊航空艦×1隻

 

 カールレオン級浮遊航空艦×2隻

 

 

「こ、こうして品目にして、書類にしてみると凄まじい。これだけで第三文明圏を統一できそうな。なんでもこの60式主力戦車の90㎜ライフル砲はリントヴルムを一撃で粉微塵に出来るそうだ。私もBlu-rayで発射と標的の粉砕を見せられたがとんでもない代物だぞ? 日本風に言わせればこれでもおもちゃだそうだが」

 

 無償供与、譲渡品目を見て、冷や汗を搔くレミール皇女の額や頬を、朝田が自身のハンカチでこまめに拭いてあげる。

 

「す、すまぬな泰司」

 

「どういたしまして」

 

 そんな夫婦でもないのに夫婦なやり取りをする二人は事実上の婚姻関係。大使館内ではもう知れ渡っている事であり、本国の皇室、貴族の間でも知れ渡っている。

 

 そんな事は疾うに与り知っているイノスは、仲の良い二人を横目に、震えながら声を絞り出していた。

 

「……浮遊航空艦はパールネウス型戦艦同様にフレイヤ炉搭載型だそうで、その航続距離と稼働時間は∞だとか……レミール皇女殿下、我々は、我々はいったい何をさせられようとしているのでしょうか? こんな大戦力を無償供与というのが私には不安で不安で」

 

 

 

 軽斑鳩級

 

 全長191m

 

 時速巡航450㎞

 

 最高速度1000㎞

 

 ブースター装着時マッハ2~3

 

 乗員230名

 

 充足時340名

 

 フレイヤ炉搭載

 

 航続距離∞

 

 

 カールレオン級

 

 全長190m

 

 最高時速960㎞

 

 乗員210名

 

 充足時315名

 

 フレイヤ炉搭載

 

 航続距離∞

 

 

 

 

 

 冷や汗を流して不安がるイノスに、レミール皇女はハンカチを渡してやる。

 

「こ、これは皇女殿下のハンカチを」

 

「かまわぬ。洗って返してくれ。……それと、日本が我が国にさせようとしていること。掻い摘まんで言えばだが、第三文明圏の玄関口から中口までの安定を担わせようと言ったところだろう。日本とブリタニアが自ら出て行く案件は大東洋と第三文明圏東部、それにロデニウス大陸やグラメウス大陸に限定したいのかも知れぬ。無論、私程度に彼の国々が何をお考えなのか与り知ることかなわぬが」

 

 これまで黙って事の成り行きを見守っていた朝田はここで合いの手を入れるように口を挟んだ。

 

「まあ、レミール皇女もイノスさんも、小難しく考える必要はありませんよ。我が大日本帝国と我が心邦=家族は多くを求めておりません。貴国への援助も貴国の戦列艦や竜騎士団、地竜や歩兵部隊が余りにも脆弱に過ぎる。これに金や鉱物をつぎ込むことは無駄と考えた末の判断ですので。第三文明圏の発展度は他の文明圏のソレよりかなり劣っております。ですのでその発展の手助けの一環としておもちゃを差し上げただけなのでしょう」

 

「朝田殿、しかしおもちゃというには強力に過ぎませんか?」

 

 それでもと、レミール皇女のハンカチで流れ落ちる冷や汗を拭うイノスは反論するも。

 

「では例を挙げましょうか。基準排水量70000t級戦艦パールネウス。我が国なら一発の砲撃で沈められます1000㎞は離れた場所から」

 

 レミール皇女は戦艦大和と武蔵のことだなと黙っていた。直に見たことがある故に知っているのだ。そして戦艦は自身の主砲では装甲板を貫通できないことも学んでいた。つまりパールネウスの46㎝超電磁砲では大和・武蔵・ブリタニアの戦艦などにかすり傷も付けられない。逆に大和の60㎝主砲だとパールネウスは一撃で貫通するか吹き飛ばされて終わり。格が違う以前の話、異次元の差がある。

 

 そのことを勉強していなかったらしいイノスは、い、一発?!と取り乱す。パーパルディア皇国の職員は無勉強な者が多かった。元々列強だったという驕りと。反面日本へ渡り来た者はその圧倒的文明力を知り、無気力症候群の様な状態に陥ってしまうのだ。無理からぬだろうとレミール皇女も思う。列強列強と驕り高ぶっていたところへあの鋼鉄の大艦隊と空飛ぶ艦隊を見せ付けられたのだからな、と。

 

 だが、それでも前へ進もうとする大使館職員も増えてきて、最近では活気づいてきていた。自ら積極的に学ぶ者。その文化を少しでも取り入れられないかと努力する者。千差万別様々だが、レミール皇女は学ぶ者であり、世界を超えて朝田泰司という愛する男性と巡り会った希少な人間であった。

 

「ね? その程度のおもちゃなのです。多少マシなのが名無しの旧式浮遊航空艦と、超旧式の初期型KMFくらいで、それ以外は見るところも無い骨董品ばかりです。まあ、懐かしいなとか、この頃の戦艦はここが素晴らしいとかお年寄りが語り合うくらいです」

 

 言葉を失うイノス。70000t級の超巨大戦艦が骨董品で、一撃で沈められる大したことの無いおもちゃなのだと告げられたのだから。おもちゃおもちゃとこれまで何度も聴かされてきたが、彼ら日本やブリタニアからすれば本当におもちゃらしい。

 

「それを、貴国は新品で我が国に?」

 

「こんなおもちゃの中古品なんて残ってませんからね。一から新造するしかないわけです。とまあこんな感じでしょうか。辻閣下風に仰るならばですが」

 

「……」

 

 完全に黙ってしまったイノスにレミール皇女がヒントを与えた。

 

「イノスよ。これは私が辻卿より授かったお言葉だが、お前にも教えておこう」

 

 

 常識とは掃いて捨てる物。

 

 

 

 ◇

 

 

 常識とは掃いて捨てる物。そう聞かされたイノスにもう昼だから休憩に行ってこいと送り出したレミール皇女。彼女は彼女で別のことで頭を抱えた。

 

「なあ、ところで泰司よ。船は未だ良い。空飛ぶ船……浮遊航空艦も良い。だが、戦車とナイトメア? どうやってパーパルディアまで持って行くのだっ!」

 

 あああ~っと頭を抱えるレミール皇女。陸の兵器を海を渡ってパーパルディア皇国へと輸送する。

 

 皇国には輸送艦だけは大量にあるが、皆木造船ばかりであり、戦車やナイトメアフレームのような鋼鉄製の兵器の輸送には向いていない。そもそも不可能だろう。

 

 VTOLまで含めるのならば輸送する数は2000。けして少なくない数だ。悩むレミール皇女。前傾姿勢で机に突っ伏すレミール皇女。長い銀の髪が一房、しゅるりと彼女の肩を流れ落ちる。

 

 だが、これも執務机の上に置かれた品目を手に取って、再度目を通して、朝田があっさりと答えを出した。

 

「我が国の超大型RORO船で運べますよ。50万t級の奴で。全部」

 

「はあッ?! ご、50万t級の船だとッ!? た、泰司、書類仕事のしすぎで狂ったか?! そのような船があるわけがないだろうッ?!」

 

 朝田の何でも無いよと言う言葉に、突っ伏していた机からばっと頭を上げ狂乱するレミール皇女。思わず頭に戴く金のサークレットが外れそうになった。

 

 今自分で常識とは掃いて捨てる物とイノスにかっこつけて語った女性と同じとは思えない。だが、朝田は淡々と事実だけを語る。

 

「ありますよ普通に20万t級、30万t級のも。タンカーもRORO船もそんなのいくらでもありますよ。まあ三隻もあれば充分でしょう。普通あり得ないのですけれどね。潜水艦やら敵艦の攻撃を考えてRORO船で兵器を輸送するのは。RORO船は主に自動車と重機を運ぶ船なのですよ。ですがまあ戦車・装甲車用、KMF用のも一応はあったりしまして、第三文明圏では危険も無いでしょうし」

 

 パーパルディア側の港湾施設の問題で、超大型船を直付け出来ないだろう問題は、戦車揚陸艦に搭載されたVTOLで片が付くだろう。場合によっては戦車用のVTOLを貸してもいい。余りまくっているのだ。

 

「……泰司、私にはまだ掃いて捨てられない常識があるようだ」

 

「我が国と、ブリタニア、AEUおよび北側諸国の内情を知っていけば行くほど、更に出てきますよ。掃いて捨てられない常識が。まあレミール皇女はこの一年間で大分我が国のことを知ったのです。歴史から何からと。これからまた知っていけば良い。それだけです」

 

「分かった。分からないが分かった……しかし、これらの兵器を私が指揮し、本国へと輸送するのか……」

 

 レミール皇女は駐日大使だが、大使としての実務は首席公使が担っている。これはレミール皇女が一外交官として朝田と共に各国を回り、現場の勉強をしていきたいからといったパーパルディア皇国皇族恒例の強権からだが。

 

 実際に別の国での大使経験のある首席公使の方が実務に向いていると判断され、レミール皇女が大使館に不在の際は、パーパルディア皇国大使館では首席公使が大使として繰り上げられている。

 

 今回、大日本帝国と神聖ブリタニア帝国という二大超大国より用意されたおもちゃを本国へ届けるにあたり、里帰りも兼ねてレミール皇女が輸送の指揮を執る運びとなったのだ。

 

 指揮と言っても、こちらも指揮するのは現場の人間であり、素人の彼女には何もすることはなく、精々が隊員や作業員の鼓舞をするのみ。

 

 それもまた皇族として立派な責務であり公務の一つなのだが。これに一外交官であり、彼女の補佐役でもある朝田がついて行くのである。レミール皇女と常に職場を共にする彼の日常だが。

 

 おもちゃの艦隊とは言えそこは本物の兵器。現場で兵器を取り扱う仕事の手伝いをするのは朝田も身が引き締まる思いだった。

 

 

 

 

 

 昼、いつもの場所

 

 

 いつもの場所で愛し合う朝田とレミール皇女。深くいて、静かで、レミール皇女も朝田も共に感じながら、会話を行う。

 

「あッ、はあッ、たい、じッ、ろ、ロウリ、ア、が、不穏なッ、動きを……ッ、しておると、いう」

 

 愛し合う行為のさなかの意見交換。頭の熱が沸騰している状態でのこういった話は、時に事を冷静に見つめられる。

 

 朝田とレミール皇女が昼に愛し合うのは、愛を交換するためだけにはあらず。

 

 こうした意見交換も兼ねてのことであった。ただ愛し合う為だけならば家ですれば良い。二人は共に暮らしこの一年愛し合い続けてきたのだから。

 

 夜は純粋な愛の時間だが、昼は愛し合いも兼ねた意見交換、情報交換の時間でもあるのだ。

 

 時に愛し合いながら会議でもするかのように二人は言葉を交わす。そんな事もままあった。

 

 二人だけの愛の時間。二人だけの雑談にして会議。大切な行為を行いながら、重要な話をする。それは何も二人だけではない。多くの人間がしていることだ。多くの愛し合う者同士が。

 

「だい、じょうぶ、であろうか? ロウリア、はッ、六千、せ、き、の。はあッあ、か、艦船を、揃えッ、我が国へッ、攻め込まんとしてッ、いるッ、とッ、ああッ、報告ッ、がッ、上がって、おるッッ!」

 

 ロウリア軍は六千隻の艦船。ワイバーン1000騎、これでパーパルディア皇国へと攻め入らんとしている。

 

 そんな情報は日増しに多くなっていた。そして既にその強大な軍集団は統合され、後はロウリア王国大王ハーク・ロウリア34世が号令を掛けるだけという、瀬戸際まで来ていると言った情報まで舞い込んでいた。

 

「大丈夫ですッ、よッ、レミール、皇女ッ、パーパルディア、にはッ、我が国が、ご提供したッ……、ゼロ戦ッッ、600機がッ、ありますッ、ふ、ううう――ッ」

 

 瞬間弾ける朝田。大きく背を反らせるレミール皇女の長い銀色の髪が宙に舞い、銀の軌跡を残していく。

 

「ああァァァッッ!」

 

 上り詰めた朝田。受け入れたレミール皇女。二人は共に抱き締め合い、頬を擦り合わせながら衣服越しに互いの熱を共有し合い、情報交換の続きを行う。

 

「はあ、はあ、ッはあ、たい、じ、それは、分かっておる、だが、ふうふう、だが、それでも数の差が、はあ、はあ、不安、なのだ……ッ、1000対600、数の差で圧倒的に劣る故にな、はっ、はうう、」

 

「ふうううう、それこそ、取り越し苦労というものですよレミール皇女。我が国の最後期のプロペラ機の一つである零戦52型の速度は700㎞を超えます。巡航速度でも600㎞を超えてきます……ふう、」

 

 行為による心地良さと抱き締め合ったままの心地良さ。二つを味わいながら、身体を火照らせたまま、息を整えつつ、朝田とレミール皇女は意見を交換する。

 

「12.7㎜重機関銃6門21式ロケット弾12発搭載。これでは負けようがないのですよ、先ほど説明しました速度についても再度申し上げますが、貴国が保有していたワイバーンオーバーロードで430㎞でしょう? それをさえ遙かに凌駕した速度なのです。たかがワイバーンとかいうトカゲ如きに追いつかれませんよ」

 

 レミール皇女もその速度を聞いていた。ムーのマリンという戦闘機の二倍近い速度を誇るゼロ式の速さを。その目で見ていたが、それでもどうしても不安は付きまとう物。

 

「だが、船はどうする? もう我が皇国には800隻の戦列艦は無い。皇国途上のアルタラスも攻められよう。アルタラスの防備は?」

 

 パーパルディア皇国本土の手前には人口1500万人のアルタラス王国がある。ロウリア王国軍がこれを無視するとは。

 

「いえ、ロウリアは先にパーパルディアを狙う可能性が高いです。アルタラスは見かけ上は何の戦力減少もしていない。この状態でアルタラスを攻めるとは考えづらい。いえまあ私は一外交官に過ぎず専門家ではありませんので確実な事は言えませんが。とりあえずで話させて頂きますと、アルタラスに引き換えパーパルディア皇国には何の戦力も無いとロウリア側は下に見てきます。こちらを攻める方が安全だとも」

 

「それでは尚更皇国の危機ではないかッ?! 私の持ち帰る戦艦パールネウスの戦闘力は私自身が把握しているが、エストシラントに残っている24隻の艦隊で6000隻に――」

 

 レミール皇女の言葉は斬って捨てられた。今も尚抱き締め合っている朝田に。

 

「勝てます。むしろ戦力過多なくらいですね。40000t級空母4隻。14500t級重巡洋艦4隻。2200級駆逐艦16隻。これでロウリア艦隊に負ける方が無理、不可能です。前にも言いましたがパーパルディア皇国は今が歴史上最強なのです」

 

 自信を持って述べる朝田がレミール皇女の中より外へと出て、ティッシュで自分と彼女を拭う。一筋、二筋と、彼女の脚を伝い落ちたが、それも拭き取り。

 

 綺麗にしてから朝田も居住まいを正し、レミール皇女のドレスのスカートの中を少し触って。

 

「ん、んん」

 

 声を漏らす彼女のその綺麗な声に耳を擽られながら、彼女の肌に付ける衣服を元に戻す。

 

 序でドレスのスカートを戻し、ドレスを綺麗に着付け尚させ、全て事を終えた。続きは何も考えずに愛し合える夜、寝所でだなとレミール皇女が考える中。

 

 朝田は、後は残りとばかりにレミール皇女の膝下へと届く長い銀髪を手指に絡めて梳き通しながら、髪の乱れを元に戻し行く。

 

「私も勉強はしたし確かにお前の口より直接聞いている。間違いなく我がパーパルディア皇国は歴史上最強なのだろう……だが、だが、本当なのか? たったの24隻なのだぞ?」

 

 自身で日本の歴史を学び、自身の眼で大昔の日本帝国海軍の姿を見た。それでも不安なのだ。本国の人間も凄い凄いと通信機器を通してレミール皇女に伝えてくるが、彼女はこの一年本国に帰っていないから知らないのだ。だからこそむくむくと不安がわき上がってくる。

 

「んーまだご不安ですか。ならば、そうですねえ……、そう、レミール皇女は以前、ムー国のラ・カサミ型戦艦にはパーパルディア全軍で当たらなければ勝てないと仰られておりましたよね?」

 

「んっ、随分以前の話だがな」

 

 800隻の戦列艦全てで当たらなければムーの巨大な機械動力艦には適わない。愚帝ルディアスがそう言っていたし自分でもそれは感じていた。

 

「我が国が供与した重巡洋艦。排水量だけならそのムーの戦艦と同等クラスと分析されております。まだムーとも正式に国交を開設しておりませんが、衛星写真で判断したところではまず間違いなく」

 

「なっ?! ほ、本当なのか?! あれらがムーの戦艦ラ・カサミと同等だというのか?!」

 

「当然戦艦と巡洋艦ですから。砲口径は劣るでしょう。が、排水量は。つまり、パーパルディア皇国は今この時点でもロウリア軍に圧勝できるんです。レミール皇女のお土産無しの状態でです。その上でレミール皇女のお土産。もうこれどうやって負けたら良いのでしょうね」

 

 朝田は笑いながらレミール皇女の髪を手放した。

 

 さらりと彼女の背に戻る煌びやかな銀髪。行為によって外れ掛かっていた彼女のサークレットを朝田が戻してやり。

 

 昼の情事は幕を下ろした。

 

「泰司、で、では本国が大丈夫として私はどうすればいい? 浮遊航空艦で先に帰るべきか。航空艦は下限で400㎞は出ると辻卿に伺ったことがある。旧型でも最高速度なら900㎞とか、正直この目で見てきたが信じられん」

 

 旧型の浮遊航空艦で下限平均400㎞前後、最高900㎞前後、特殊なブースターを使えばマッハ2や3というとてつもない速度が出るという事は、レミールも知っていた。旧型でこれだ。日本の最新型ならば更に桁外れだ。

 

「航空艦の速度を海上の艦隊に合わせて超鈍足飛行にして共にパーパルディアへ帰還すべきか?」

 

 そうなのだ。だからこそこの問題が出てくる。浮遊航空艦と海上艦隊。どちらで先に帰るべきか。どちらと合わせるべきか。

 

「そうですね、インパクトを考えるのなら全艦艇で一気に帰還した方がロウリアにも、パーパルディア皇国自身にも与える印象は変わってきます。急ぎでないならば浮遊航空艦を海上艦隊の速度に合わせ、まあレミール皇女は戦艦パールネウスか三隻の浮遊航空艦のどれかに座乗となるでしょう。まさか皇女殿下をRORO船には乗せられませんので」

 

 うーむ。考えるレミール皇女。暫し考えて。

 

「ロウリアの動きは気になるが、全艦で帰るべきなのだろうか?」

 

 全艦での帰還へと舵を切り掛けていた。

 

 

 

 

 パーパルディア皇国に供与された浮遊航空艦スペック

 

 軽斑鳩級

 

 全長191m

 

 時速巡航450㎞

 

 最高速度1000㎞

 

 ブースター装着時マッハ2~3

 

 乗員230名

 

 充足時340名

 

 フレイヤ炉搭載

 

 航続距離∞

 

 

 カールレオン級

 

 全長190m

 

 最高時速960㎞

 

 乗員210名

 

 充足時315名

 

 フレイヤ炉搭載

 

 航続距離∞

 

 

 スペックが少々ヤバい事になっておりますがこれですら旧型です

 

 

 

569:二二三:2023/04/12(水) 16:56:11 HOST:KD106155012012.au-net.ne.jp

終わりです

 

早くロウリアを動かしてあげたいパーパルディア皇国を征服して7000万人の奴隷を手に入れて

ロウリアの大王様はレミールを性奴隷にしたいみたいなので

 

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
  • レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。