帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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もしも、ある首長国が存在していたら

 

もしも、ある首長国が存在していたら

 

 

 

 

「大変光栄なお申し出ありがたく存じ上げておりますが、お断り致します」

 

 

響いた拒絶の声

 

それは一つの首脳会談における軍事同盟の議題に入ったときであった

 

「貴国もご存じの通り、我が国はありとあらゆる軍事力を持たず・作らず・持ち込ませずを国是として貫いて来ております」

 

とある太平洋の首長国

太平洋戦争の折り、南の大国に侵攻され蹂躙され尽くした旧大洋州連合構成国の、ただ一つの生き残りである島を中心とした島国であった

 

彼らの理念は争いの萌芽となりうる軍事力の永久放棄

何処の経済圏からも距離を置き、敵味方とならぬよう尽くす完全中立の立場の維持

 

彼らは信じていた

太平洋戦争の戦火より逃れ得たのは、自国が何処の勢力にも属さず、唯一大洋州連合に属しながらも軍事力の放棄を謳っていたことで、南の巨大国家よりの侵略を防げていたのだと

 

「しかし、貴国の立ち位置は微妙です。我が大日本帝国とも、ブリタニア帝国とも距離を置かれ、さりとて中華連邦の庇護の下にあるわけでもない。己を守る為の刃すら持たず、彼の合衆国の隣国として永世中立を保っている事は勇気ある政治的方針かと受け止めてはおりますが、このままではいつか」

 

「くどいですぞ嶋田宰相閣下。我が国が貴国を訪れたのは新たな通商条約の締結についてが主題。軍事同盟の話などでは断じてありません」

 

「そうですか……」

 

1998年

南洋の島国と大日本帝国は新しく通商条約を結ぶに至った

主題の裏側に大きな不安を残す形となった会談は、日本宰相嶋田繁太郎と、南洋の島国の首長の、平行線となる話し合いを最後に終了となった

 

 

 

やがて、時は2019年へとその舞台を移す

 

 

 

 

夜空に伸びた幾筋もの光の柱を、南洋の島国の人々は不安に駈られながら見上げていた

 

「何の光だ」

 

行政府である首長府の近くに集まった聴衆がざわざわと騒いでいた

 

「海の方からだわ」

 

光の柱は次々と数を増していき、次第に南洋の楽園である島国の星空を覆い隠していく

まるで光のアートに失敗したかのような光景に、聴衆の不安は一層深まっていた

 

 

 

 

「首長…まさか!」

 

首長府のテラスからも見える光は、南西方向から照らされていた

慌てる首長国首長筆頭書記官が、南西方向を睨み付ける首長に自らの予測を口にした

 

「サーチライトの光だ」

 

夜空を埋め尽くすほどの海から来るサーチライトを搭載した何かは、島国には存在しないはずの物からのものであった

軍艦も、沿岸警備艇さえ持たない国には、そもそも初めからない

夜は小さな中心都市の明かりくらいで海からの光などないはずなのだ

 

「ついに、来たか…」

 

絞り出すような首長の声には、後悔と決意がない交ぜになった思いが含まれていた

20年前、島国との積極的な外交姿勢を打ち出していた、時の日本嶋田政権からの打診を受け入れていれば

このような事態を招く事などなかっただろう

しかし、一方で国の信条を捨てることなど、時の首長にはできなかった

 

建国より百数十年余り、一度として戦火に見舞われたことがない島国は、変えない国是こそが、非武装永世中立の理念こそが、この国を守ってきたからと信じていたからだ

 

首長も、政治家も、国民も、皆がそれを信じて生きてきた

 

この国で根を下ろして苦難を共にしてきたのだ

 

今さらどうして捨て去れようかという理念であった

 

 

 

「お父様…!」

 

少女が一人、駆け込んでくる

首長の娘、カガリであった

 

「姫っ」

 

駆け込んできた首長の娘が、畏まる書記官を横目にして、強張る表情を隠せない父を見て伝えた

 

「彼の、彼の国の艦隊が我が国の領海を!」

 

「わかっている」

 

ドォーン!

 

「わかっているとも…!」

 

首長が答えた直後、まるで返礼でも行ったかのように海の方角から大気を震わせる発砲音が轟いた

 

 

 

 

島国沖

 

大小7隻の船の内の1隻が、前甲板に据え付けられた76ミリ単装主砲を45度の角度で固定して発砲を続けていた

 

その船、世界標準で言うコルベット艦の艦長は艦隊指令からの命令で発砲を続けながらぼやいた

 

「たかだかフリゲート2隻とコルベット4隻に揚陸艦1隻で事足りるようなちっぽけな国をなんだって取る必要があるんだ?」

 

副長が答える

 

「なんでもニューギニア・南ブリタニアと失敗続きの軍の面子を保つ為だとかなんとか」

 

「また政治に振り回されるわけか。たまったもんじゃないぜ」

 

「艦長、指令より通信です。予定通り砲撃で地ならしをしたのち、KMFを上陸させ、首長国を一気に制圧するとの事です」

 

「了解、まあ所詮は沿岸警備艇の1隻も持たない無抵抗の相手だ。やり過ぎないようにやってやるさ」

 

 

 

 

 

日本

 

 

 

「嶋田さん」

 

嶋田家の居候にして駐日武官であるモニカ・クルシェフスキーが白い騎士服に袖を通し、黄緑色のマントを羽織ながら入ったばかりの報告を嶋田に伝えた

 

「首長国が合衆国オセアニアの強襲を受けたそうです…」

 

これから大使館に向かうのだろうモニカの様子に、嶋田は「そうか」とだけ呟き

 

「20年前、首長国をなんとか説得できていればこんなことにはならなかったかもしれないな」

 

かつて臨んだ一つの首脳会談を思い出しながら南の空を見上げながら力無げに肩を落としていた

 

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
  • レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
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