帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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台風の日

 

台風の日、玉城は勝手知ったる第二の自宅といっても過言ではないV.V.邸に避難していた

 

今年もっとも強い台風の被害に遭わないためだ

建て直して強度もしっかりしている自分の住むアパート、とはいえ

不安があった

楽天的な彼も一人の人間

自然災害への不安くらいあったりする

 

そこで彼は帝都東京での自分の身元引き受け人でもあるアパートの大家さん、V.V.に電話して避難させてくれと申し出たのである

 

「シンイチロウ、君でも危機管理くらいは出来るんだね」

 

踵まで伸ばされた淡い金色の髪を揺らしながら外見上は小学生高学年くらいの少年の姿をしたV.V.が布団を敷いている玉城に話しかけた

ここはV.V.邸のV.V.の部屋

純和室造りの畳の部屋に甚平を着たV.V.と、パジャマ姿の玉城の二人はいた

 

「危ないとわかってれば俺だって避難くらいするぞ。今度の台風はすごいらしいじゃねえか。避難勧告だって出てるしなあ」

「へえ、大人的な考え方だね」

「俺は大人だよ」

「わかってるよ。誰が見ても君が大人だってことなんて。ただね、君の向こう見ずな行動を見ていると僕は時々君が大きな子供に見えてしまうんだ。すぐに調子に乗っては痛い目を見るしさ。クララと一緒に小学生みたいなことをしていたりするしね」

「ガキっぽいところがあるのは自覚してるよ。同年代の奴等と遊びに行ってる時には良く感じてる。ああ、みんな大人になっちまったんだなってな」

 

玉城が敷く布団は一つ

V.V.の布団だった

よく遊びに来ては泊まっていく為にV.V.邸には玉城の布団もあったりするのだが、たまたまロロやクララの兄妹たちが泊まりに来ていた為に今日は貸し出されていた

小さい子供が五人ほどと多く

布団が足りないので玉城の布団を子供たちに渡したのである

 

彼も大人だ

小さな子供に優先してあげることくらいするのだ

 

クララも今夜は妹と寝る為にクララの布団にも潜り込めない

ルルーシュやナナリーもそうだ

V.V.の子供たちと寝る

 

「それにしてもおっさんって子供多いな」

「まあね。血の繋がりのある子から引き取って育てている子までたくさんいるよ」

 

誇らしげなV.V.に、布団を敷き終えた玉城は無造作に彼の小さな身体を抱き上げていた

 

「なにするんだい急に」

「いやあ、こんなちっこいのにガキのいる親父さんなんだよなあと思ってな」

 

V.V.を抱き上げた玉城

玉城に抱き上げられたV.V.

日本人とブリタニア人

人種の違いから兄弟には見えずとも、近所のお兄さんと子供くらいには見える

しかし、実際には大人の玉城が年下で、子供に見えるV.V.が年上で、しかもおじさんと若年者といった関係だ

 

 

「体が小さいのは確かなことだけど、僕は君の倍以上は人生の先輩なんだよ」

 

脇の下に手を通されて抱き上げられていたV.V.は、自由になっている両手で玉城の頭をくしゃくしゃ撫でる

 

「や、やめろよ俺ガキじゃないんだから」

「僕のことを子供みたいに抱き上げている君が言えることじゃないね。それに、僕にとっては君もまた僕の子供みたいなものだよ」

 

V.V.に優しく撫でられること

それは玉城にはあまり経験のないことだった

どちらかと言えば彼はV.V.にいつも叱られているからだ

 

「手の掛かる馬鹿息子って感じかな」

「うっせえよクソ親父」

「ふふ、親父か。父上・父さん・お父様・パパとは呼ばれているけれど父親としての親父ってのは呼ばれたことがないな。ちょっと新鮮な響きだ。よければもう一度呼んでみてよ」

 

V.V.の手が玉城の両ほっぺを掴む

小さな手だ

子供の手だ

だがいま玉城にはその小さな手が、包み込むようなほど大きな手に感じられた

 

「……お、親父」

「なんだいシンイチロウ」

「こ、小遣いくれ」

「残念だけど、一応は独り立ちした息子にお小遣いはあげられないかな?」

「んだよそれ。あー、なんかだんだん恥ずかしくなってきたぜ」

 

玉城は抱き上げていたV.V.を下ろした

 

「寝るか」

 

ゴォゴォとなる風の音

雨戸を叩く水の音

台風が近づいている

 

玉城は敷いた布団に入った

V.V.も同じ布団に入った隣同士の枕

天井を見る二人

眠気はまだ来ない

 

「風すごいな」

「そうだね」

「雨もな」

「うん」

「なんか、こうしてると子供の頃の台風が来る夜を思い出すぜ。わくわくしたあの感じ、大人になったいまじゃ不安しか感じないけどな」

「そうかい。なら、僕は大人として君を守ってあげなくちゃいけないね」

 

V.V.が玉城に身体を寄せ、彼の頭を撫でてあげた

 

「またそれかよ」

「嫌かな?」

「べ、別に嫌な訳じゃないけどなあ、ガキ扱いがちょっと」

「ふふふ、言ったろ。君も僕の子供みたいなものだって。子供を子供として扱うのは親として当然だよ。それによく言うだろう、出来の悪い子ほどかわいいってね」

「出来が悪いってだけ余計だぜ」

 

玉城も手持ちぶさたな手をV.V.の頭に当て、子供にしか見えないその小さな頭を撫でていた

 

「お父さんの頭を撫でる心境かな?」

 

撫でられて気持ちよさげに目を細めながらV.V.は言った

 

「どうだいお父さんの頭は」

「ちっこい」

「まあ小さいからね」

「体が小さいままなのは体質かなんかか?」

「後天的な体質だよ」

「なんだそれ」

「知らなくていいんだよ」

「クララもおっさんも隠し事多すぎだろ」

「息子を危険に晒さないためさ」

「まだやるのかよ親子ごっこ」

「いいじゃないか」

 

びゅうびゅう

風の音

ザーザー

雨の音

 

そのなかに、くしゃくしゃとV.V.が玉城の頭を弄り撫でる音と

しゅっしゅっと玉城がV.V.の髪をすき通し触る音

 

一夜限りの父と子の温もりを感じさせる音が混じっていた

 

 

おしまい

台風の夜に不安がる息子玉城と、そんな息子を守ってあげるV.V.お父さんの様子でした

 

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