帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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あいつとさぁ、飲んでるときあいつ、

 

 

940:名無しの無職

あいつとさぁ、飲んでるときあいつ、

 

『この金の内手元に残すのは5万だけで残りは借金返済に回すんだ。そしたら今月の給料は丸々手元に残るわけでさ、俺そいつで以てあいつらとさ、それと小柄な方のやつの親父にプレゼント買ってやるんだ。へへっ、柄にもねーだろ? 博打しまくりの駄目人間な俺が汗水垂らして稼いだ金の方で人様にプレゼントとか。でもなぁ、あいつらってさ頭いいし、家柄もいいし、世界が俺を裏切っても自分は最後まで味方だーっなんてバカ言うような良いやつらだし

俺みたく脳みそ2ビットの三流高卒で、クソみてーにいい加減で、調子乗りヤローに付き合ってくれてる勿体無いなんて言葉じゃ片付けらんねーような良いダチなんだよ。普段ゼッテー口にしねーんだがテキトー人生の俺の一生の宝物みたいなやつらなんだわ。ホントさ、なんで俺みてーなアホと遊んでくれるんだろうな? 俺みてーなアホヤローはよ、世間様の嫌われもんで良いのに、あいつらもおっさんもみんな良くしてくれんだ。見捨てりゃいいのになぁこんなクソは』

 

『バーテンおまえ・・・そうかおまえ、自分のことわかってたのか』

 

『おいおいー戦友、そこはイイヤツだったんだなとか意外だなとか掛けてくれてもいいじゃんよー』

 

なんて話して何がいいかなー、喜んでくれっかなー? て、嬉しそうに相談してくるんだよ・・・

 

それなのに、なのになんでそんな矢先に刺されてんだよ! わけわかんねーよ!

なあ、あいつ、あいつ死んじゃうのか?!

 

俺が止めてたら、間に合ってたら刺されなかったのかっ!?

どうしよ、どうしよ俺っ、あの場にいたのにっ

 

941:名無しの他人

 >>938

恐らくは間違いないかと思います

 

942:名無しの無関係

 >>940

とにかく落ち着けって。おまえが悪いんじゃないんだから

 

最悪おまえまで刺されてたかも知れんしこれはどうしようもなかった

 

刺されたバーテンも意識不明だがまだ重傷と出てる。より命の危険性が高い重体じゃない。助かる可能性がまだ充分ある

 

画面の向こう。広がり続ける混乱

名無しも、コテハンも、常連も、ROM専も関係ない

 

一つの事件を巡ってのやり取りがただ流れていく

 

無駄なのにな

 

画面の向こうで何を言おうと何一つとしてそれらが解決に繋がることはない

だって、コイツらは誰もバーテンのこと知らないんだからさ

 

所詮インターネットでなされるだけのやり取り

 

所詮インターネットだけでの、名前も顔も出さない軽薄でくだらない繋がり

 

カレン様や子爵様ら貴族様でも例外じゃない

 

直接会って、顔をつき合わせて会話を交わしてなどいないうわべだけの話し合い

その人となりを知らない者同士の空虚な会話でしかないんだから

 

動揺を隠せずにキーボードを打ち続けていた俺は、それをどこか冷めた目で見つめていた

 

 

「ああーちっきしょう・・・痛ッテェ・・・、はぁはぁ、ちくしょ、くっそ痛ってぇ、わ・・・」

 

「バーテンおいっ、バーテンしっかりしろっ!」

 

「ア、ハハ、さっきの、おっさんに、やられたわ、おお、スッゲ痛ェ・・・刺されたとこ、熱くなって、こんな、痛ぇん、だな」

 

赤い液体が流れ出る

 

どこまでも流れ出続けていく

 

止まることなくバーテンの腹から流れていく

 

「喋んな! いま警察と救急に連絡したから!」

 

「・・・・・・」

 

事実だけを伝えるとバーテンは押し黙る

しかしまた口を開き話始めた

 

「あ、あ、さんきゅ、な? はは・・・でもなぁ、たぶんコレ・・・駄目だわ・・・、ハハッ・・・俺みてぇな、駄目ヤローはやっぱ、あれよ、駄目なんだよ・・・」

 

「そ、そんなことねーって! 大丈夫だって! 救急だって直ぐに来るし警察だって!」

 

生を諦め始めているバーテン

顔が徐々に青白くなってきて、血の気が引いている事を嫌でも見せつけられて、それでも俺は励まし続けた

 

だが

 

でも

 

俺も、俺にだって本当は分かってる

バーテンの傷はかなり深い

駄目かもしれないって

 

でもだからって、気力が砕けたらそう、僅かばかりにあるもしかしたら生きられたかも知れない生命力だって、風の揺らぎに消えてしまうように思えたんだ

 

だから、俺は俺なりに話続けた

 

気力を失わないよう

まだ確かについているバーテンの灯火を消さないように

 

しかし、そんな努力も虚しく、彼は彼で諦めている

諦めきっていた

 

生きることそのものを

 

どうしてか。それはーーー無駄だからなんだと彼は言った

 

「あー、ムリ、ムリだって・・・見ろ、よ、コレ・・・ぜーん、ぜん、とまんね・・・破裂した水道管・・・、に見える血道管・・・なん、ちって、さ」

 

止まらない赤い液体。流れ出る赤い液体が止まることはない

こんな時でも馬鹿な冗談を言うバーテンは力なく笑いながら自嘲していた

 

すごい量だ。夥しい量だ。リアルなグロい事に耐性の無い俺には嘔吐感が込み上げてくるようなら量だった。それだけ大量の赤い液体がバーテンの体を中心に広がっている

 

嘔吐感に耐えながら傷口を手で押さえてもまるで無駄だった

 

俺の手も赤い液体に濡れていくだけでけして止まらない液体は流れ続ける

 

その様は、まるでひねった蛇口からあふれでる水にさらされた手のようだ

 

それが赤いか透明かな違いがあるだけ

 

鉄錆びの臭いがあるか、臭いがないかな違いがある。ただそれだけ

 

やがてそんな俺を見ていたバーテンは、夜空に浮かぶ月を見上げながら、こんな場には似つかわしくない自分語りな話を始めた

 

「な、あ。ちょっと、だけ。話、付き合って、くんね?」

 

ちょっと

 

きっと言葉の通りのちょっと

見ればわかる。疑う必要さえないちょっとなのだと

 

「バー、テン」

 

了承も何もしてない俺を余所にしてバーテンは勝手に話始めた

 

「おれ、さあ、こんなじゃん? 昔っからで、さ。嫌われ者、だったんだ・・・、調子乗りで、馬鹿なことばっか・・・やってよ・・・んで、いっつも、嫌われてやがんの・・・、へへ、いくら、馬鹿でも、わかんだぜ? 他人の、悪意・・・うざい、うざい、同級生からも、うざい・・・ 好きんなった子からも、気持ち悪い・・・そんな、風にさぁ、思われてるの・・・、そんなか、で、 一番キツかったの、は・・・ はは、あれだわ・・・ 雨ん中で、捨てられてた、子犬拾って、そんで好きな子から、軽蔑されたやつ・・・、もち、下心、あったぜ・・・

いいとこ、見せたい、ってさ・・・でも、なんで、軽蔑されんだろ・・・? ずっと、引っ掛かってて、恋もできなくなって、おまえも、知ってる、だろ? いまだって、俺が、嫌われてんの・・・」

 

昔語り。何てことのないありふれた昔語り

 

出てくるのは駄目な自分

 

語られるのは馬鹿な自分

 

蔑む言葉が向けられる相手は嫌われ者

うざがられてばかりな自分自身

 

自分は嫌われている

 

誰からも好かれてなんかない

 

昔もいまも、変わらずに

 

「死ぬ前って、意外と、冷静に・・・なれる、もんなんだな・・・すげ、な・・・俺、なんかでも、自分、みつめ、なおせ、る・・・、でさ、俺、やっぱ、クズヤロー、だわ・・・色んな、こと、思い出して、ろくなこと、やってねー・・・はは、そりゃ、誰からも、嫌われる、つーの、ばっかじゃ、ね、なあ?」

 

嫌われて当たり前

 

嫌われることばかりしてきたから

 

冷静だからこそ、見つめることができる自分

 

その自分を、バーテンは語る

 

馬鹿で、いい加減で、調子に乗っては嫌われている

 

それが俺なんだと

 

「そんな、そんなことねーよ! ほ、ほら、今日一緒にいたあの女の子と女性はさ、おまえのことーーー」

 

だから俺は否定した。あの二人の女性からは嫌われてない!

 

あんなに好かれてるって

 

でもバーテンは違うのだと話す

 

「ばっか、あいつら、超エリート様、なんだぜ? 超、金持ち、の・・・お嬢ども、なんだぜ?・・・は、哀れみで、アホな俺によ、こんな、クソみてぇ、貧乏人で、いい加減で、むけい、かく、な、ギャンブル、やろ、に、付き合ってくれてる、だけだ、っての・・・ だいたい、ちっこい、ほうには、すきだ、すきだ、って、よく、言われてっけど、よ、あいつにゃ、100以上、借金してて、さ・・・ほんとに、好かれてるわけ、ねーじゃんか、

ちっこい、ほうの・・・親父にゃ、散々っぱら、迷惑、かけてるし、グラサンの、ほうにはよ、夢、諦めた、おれなんか、心ん、なかじゃ、軽蔑、されてる、っての・・・

夢、叶えよ、ってよ、グラサンのと、むかし、むかしに、語り、あってた・・・、けっ、きょく、叶えたの、あいつ、だけで、おれ・・・あき、あきらめ、て、だから、わかん、だよ、それに、あいつら、の・・・周りの、やつらだっ、て・・・、おれ、の、こと、嫌って、るし、あいつ、だけじゃ、なくて、あいつ、の、家族だって、おれのこと、軽蔑、してんし、る、るる、からは、めに、みえ、て・・・ な、なちゃん、からも、うわべ、は優しい、けどよ、ほんと、はどうか・・・ お、やじ、にも、おふく、ろ、にも、愛想、つかされ・・・・・・いき、る、かち、ねーじゃん、な?」

 

自分を見つめることでたくさんの事に気づく

 

自分の行いで自分自身がどれだけ嫌われてきたのか

 

俺の知らない彼の交友関係は、事実、そうなのかも知れない

 

だって、俺には、何もわかんないんだからさ

 

俺は今日はじめて顔を会わせたばかりなんだから

 

「わかった!わかったから!もういいから!だから!」

 

喋んな!

 

でも、バーテンは喋るのをやめない

 

黙ると時間が勿体無いと言って

 

何の時間かなんて聞くまでもない

 

終わりの・・・時間だ

 

「おれ、さ、信じて、ない、みてぇ、なんだ、わ・・・、むかし、好きだった、あの子に、けー、べつ、されてから、ずっと、ひとのこと、だれも・・・、人間、不信、ってのかな? ・・・家族も、おっさん、も、おっさんの、家族も、ま、りー、も、くら、ら、も、だれ、も・・・、信じて、なかった、みてぇ、いまに、なって、わかる、んだ、なんと、なく・・・みな、みとか、ダ、チ、だって、ぜって、おれ、みたい、な、の、まとも、に、あいて、して、ね、だろ、な・・・」

 

本当は誰も信じていない

 

信じられるひとなんていない

 

嫌われてるから

 

軽蔑されてるから

 

うざったい、やなやつだから

 

昼間の二人だって、心の奥底では自分のことなんて嫌ってる

 

断言する彼の言葉を否定する材料が俺にはない

 

掲示板では鬱陶しがられていた

 

他スレでは嫌われていた

 

あいつうざい、あいつくんなよ

 

アホの相手なんかしてらんね

 

バーテンへの悪口には事欠かなかったように思う

 

リアルでだってアッシュフォードなんてエリート校の生徒に無理を言って競艇に来させた

 

なにか訳ありそうなサングラスの女性に無理を言って来させていた

 

全部普通なら嫌がられることばかりだから

 

嫌がられてうざがられてばかりな事実がそこにはあったから

 

だから俺には否定することができなかったんだ

 

「けど、今日、さ・・・ちょっと、楽しかったんだ・・・ おれ、みたいな、あった、ことねー、やつの、連絡に・・・ おまえ、来て、くれて・・・ はなした、こと、ねーのに・・・ りあるで、でも、おまえ、きて、くれた、じゃん?

おれ、ちょっと、うれし・・・しんよう、して、くれた、のか、なって? お、まえは、へへ、なんか、うれし、むかし、みたい、に、うれし、おれ・・・」

 

他の誰よりも、俺みたいな名前も知らないやつが来たことを、嬉しいとバーテンは言う

口から、赤い液体を流しながら

涙を流しながら、顔に苦痛の色を浮かべながらも

青白い顔になっていく中にあっても

俺なんかと、単なる無職の親からの仕送

りで生きてるクズなんかと遊べて嬉しいと、楽しいと、そう心からの笑みを浮かべている

 

「さ、いご、に、であ、えて、のんだ、の、おま、えで、よかっ、た、わ、なんか、それだけ、で、満足、しちまって、る・・・、おれ、なんかの、誘いで、来て、くれて、あんがと、な・・・」

 

「そ、それ、は・・・それは、・・・だ、ダチ、だから。だから俺来たんだよ」

 

なにが、なにかまダチだよ、嘘つけよクズヤロー!

 

俺だってこいつのこと信用なんてしてなかったくせに!

 

馬鹿にしていただけのくせに!

 

バーテンのこと、なんにもしらないくせに!

 

俺は、嘘つきだ!

 

サイテーな嘘つきヤローだ!

 

匿名の掲示板で目に見えない場所から誹謗中傷ばかりしていた

 

文句ばかり付けていた

 

人が嫌がることばかりしていた

 

不満だらけを書きなぐっていた

 

書かなくても良いような相手の感情を傷つけることばかり書いていた

 

心の中だけに留め置けば良いようなことを態々書き込みして相手を嫌な気持ちにさせてきた

 

ただの糞でクズなゴミ人間じゃねーか!

 

でも

 

それでも

 

俺も、いまきっと

嬉しいと、感じてる

 

画面越しの付き合いがリアルな付き合いになって

また遊ぼうって約束して

友達のいない俺なんかの初めての友達だって、言ってくれて、友達だって思ってくれてるんだって

 

「お、おれ、も・・・うれし、かったよ。楽しかったよ! 友達いなくって、おまえが、バーテンが初めての友達で・・・、嫌だよこんなの! せっかく友達になれたのに何でおまえいなくなっちまうんだよ!」

 

初めての友達。まだ友達というには早すぎるだろう友達

でも、次に遊ぼうって約束してた

これからは本当の友達になれるかも知れないのに

 

「わり、駄目男、は、やなヤローは、やっぱし、約束の、ひと、つ、守れねー、みたい、だわ・・・なあ、無職・・・」

 

 

 

 

 

こんなクズにだけはならないでくれよな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一言を最後にバーテンの意識は無くなった

 

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