530: 名無しさん :2018/01/26(金) 03:41:13 ・
それからはよく覚えてない
パトカーが来て、救急車が来て、俺は事情聴取されて、ほぼ白だってそのまま帰されて
ふらふら戻ってきた自宅でまたいつものようにパソコンと向かい合っていた
相変わらず掲示板では騒ぎが続いている
俺はその文字だけで羅列された喧騒を見ながらそっとキーボードから手を離した
もう、なんか、書き込みする気にもなれないや
あんなに好きな掲示板なのに
みんながバーテンを心配しているのに
すべてが嘘っぱちな言葉の羅列に思えて
だから俺はひとり、静かにパソコンの電源を落としていた
「ああ、綺麗だな、月」
窓から見える晴天の夜空には、変わらず月が浮かんでいた。黄色にも白にも見えるその月はただありのままの姿で俺を、世界を見下ろしている
ふと、俺にはその月があいつの笑顔に見えた
今日会ったあの名前も知らないあいつの
どこまでも変わらない、リアルなあいつの笑顔に
"好きになった子のために頑張った。俺の初めてにして最強の頑張りはたぶんあのときだったんだろな"
頑張った・・・か。
あはは、あいつも昔は恋愛してたんだな
玉砕して人間不信を招いちゃったみたいだけどさ
"残りの借金は生命保険で一括返済可能だぜ。受取人は子供みてーなおっさん。だから安心して逝けるってもんだ"
あいつも考えていたんだな。なんにも考えてないようで、万が一があれば返済できるように
でもさ、俺、もっとおまえと話したかったな
馬鹿やったり、旅行してみたり、いっぱいいっぱい遊んでみたかった
「遊んでみたかったんだ・・・」
無意識に呟いた俺の言葉は、答えの帰ってこない月明かりの虚空へと消えていった
ピンポン
しばらくの間虚空に浮かぶ月から目を離してぼーっとしながらテレビを着けてニュースを眺めていた俺の家にインターフォンの音がなり響いた
時間はもう深夜を迎えてる。12の数字は短い針にも置き去りにされているそんな時間に誰が訪ねてきたのか?
ふらふら、ふらふら
酔ってはいたけどしっかりしている意識に足腰はしかし千鳥足のまま玄関まで体を運んでいく
施錠していた鍵を開ける
相手が誰なのかを確認もしないで
混乱しているからか
呆けているからか
迂闊にすぎる開錠を俺は行っていた
その行いはやはりというか、そういった応答となって跳ね返ってきた
一瞬。きっと表現するならそんな陳腐な言葉が似合いそうな目にも止まらない速さで俺の首筋に冷たい刃が当てられていた
綺麗な、豪奢な装飾の施されているナイフ
ナイフじゃないかな? ナイフよりも刃渡りのある短剣だった
短剣の持ち主はひどく冷静で、でもひどく激昂しているようにも見える
「答えなさいッ! お兄様に危害を加えたのはッ・・・お兄様を刺したのは貴方なのか否かを答えなさいッ!」
月明かりに照らされて煌めく薄紅色をした、腰まで届くだろう、頭の左に束ねられたサイドテールの長い髪
高い声音には品があり、聞いたことのある声
そしていまはマスクもサングラスもしてないその顔を俺は見たことがある
「違うよ俺じゃない・・・なんで、なんで友達の俺がバーテンを刺さなきゃいけないんだよふざけんな!!」
なんでこんな冷静になって答えられるんだろう
首筋に短剣を押し当てられながらなんで押し付けてくる相手に怒鳴れるんだろう
相手が昼間に会ったあのサングラスさんだからか
髪型も髪の毛の色も背丈も体格も、サングラスさんと同じ女性からは射すような視線を向けられているのにちっとも怖くない
それともサングラスさんが実は・・・テレビやニュースで何度も見たことあるブリタニアの皇女様だったから、感覚が追い付かなくて麻痺しているんだろうか
「やめなさい! やりすぎよマリー! その人が犯人じゃないのは日本の特高から既に確認済みの事なのよ!」
サングラスさんのその後ろからは、背中くらいまである濃色の金髪をツインテールにして束ねた、サングラスさん、マリーさんと同じ年頃の女性がマリーさんを停めに入ってきた
「VV様や辻卿からも軽挙妄動は慎むようにと言及されていたでしょう!」
叫ぶような声はだけど周囲を騒がせないように配慮された静かさ
きっとこのマリーさんや俺の精神が不安定なことも察してるんだと思う
いつもなら震え上がってる俺がいまのマリーさんを前にして冷静でいられるのがそもそもおかしいんだから
「でも、でも・・・、オルドリ、ン、お、お兄様、シンお兄様をっ、こ、ころ、殺しっ」
「死んでない! マリーっ!死んでないわマリー! 貴女の大切なあの男はまだ死んだ訳じゃない! あの腹の立つけどしぶとそうな悪運だけは強い男がそんな簡単に死ぬわけないじゃない!! それなのにマリーがそんなに取り乱してどうするの! しっかりしなさい! しっかりしなさいマリーベル・メル・ブリタニア!!」
言っちゃったよ? フルネーム
マリーベル・メル・ブリタニア
知ってはいたけどさ、勿論彼女を停めるこの女性のこともね
オルドリン・ジヴォン
"技術"の日本と並び"力"と称されて世界から恐れられている日本の同盟相手神聖ブリタニア帝国
その帝国の頂点に君臨する皇帝の息女のひとり、第88皇女マリーベル・メル・ブリタニアに仕えるナイトオブナイツにして大グリンダ騎士団の筆頭騎士だ
俺だって伊達に貴族スレに常駐してない。どっちも知ってるのが常識な大物だった
「俺・・・ほんとにやってない・・・。ブリタニア系の変なおっさんがバーテンを刺したんだ。大切なもの壊す大切なもの壊す大切なもの壊す大切なものぶっ壊すってぶつぶつ言ってて、それ以上は知らない・・・警察にも話したことだよ、それで何もなく帰された。サングラスさん、いえマリーさん、あんただって知ってるはずだろ。こんな親のすねかじりなクズの話なんか」
ああやっぱし俺も精神がおかしくなってる
同盟国ブリタニアの皇女様やナイトオブナイツを目の前にしてタメ口聞いて物怖じしないなんて、絶対にあり得ないことなのに
知らないと俺は言った。でも知ってることもある。このお姫様も、ナイトオブナイツも、バーテンから信用されてないってこと
馬鹿だなホントバカヤローだよバーテン
おまえ、ほら見てみろよ。マリーベル皇女の、マリーさんの目を
目を真っ赤にして頬を張らしながら涙ポロポロポロポロ溢してんじゃん
なにが信用されてないだよ
どこが好かれてないんだよ
嫌いな男を思って泣く女性が世界のどこにいるんだよ馬鹿ヤロー
「ごめんなさいね。マリー、いま凄く動揺しているから」
ナイトオブナイツが謝る
「べつに、いいです。俺だって頭ん中ぐちゃぐちゃで無茶苦茶だから」
無礼も非礼もやってしまってる
「に、いさま、がお亡くなりに、なったら、わた、くし・・・」
「マリー大丈夫。ね? 馬鹿は死んだりしないの。死んだら、もしも死んだらマリーと一緒にあの世へ攻め込んで首に縄を引っ掛けてでも連れ戻してやるわ。地獄の閻魔様には悪いけれどあの馬鹿男は全部マリーの物だってね」
過激だなブリタニアの騎士は
淑女然としたモニカ・クルシェフスキー駐在官なんかと偉い違いだ
「張り付いて正解でしたね」
黒塗りセダンの中。丸い眼鏡をかけた中年過ぎの男が、隣に座る足首まで届く薄い金の長髪を持つ少年に話しかけていた
「まったくだ。予想はしていたけれどまさかホントに襲撃紛いの事をするなんてね。あの子もことあの馬鹿が絡むと激情しやすいから。しかしマサノブ。君が出てきたという事はこの事件は」
丸眼鏡、マサノブと呼ばれた男性は冷静その物な表情を崩さず答えた
「ええ、犯人は既にこちらの手で拘束しておりますよ嚮主VVさん。そしてその犯人には強力な思考誘導が施されているようであの青年の供述通りに同じ言葉を繰り返しています。大切なものを壊す大切なものを壊すと」
マサノブに嚮主VVと呼ばれた少年は大切なものを壊す?と訪ね返した
「ええ大切なものを壊すと。殺人"未遂"犯の取り調べを行っている特高の対ギアス犯罪課の話ではどうも特定条件が重なった時にあるキーワードを見る。または聞くなりすると必ず発動する遅延タイプだと。直接発動も可能なようですが、これはどちらかと言えば貴方の分野に該当する筈ですが、殺人未遂犯フランク・ロズベルト元ブリタニア男爵の日本渡航までの形跡を調査願えますか?」
「わかった。すぐに動かせてもらうよ。それと引き続き犯人の行方は不明で公表してもらえるよう圧力をかけておいてくれたら助かる。全部が確定しても"真犯人"については伏せておきたいしね。じゃないとマリーベルが暴走しかねない」
「クララさんもでは?」
「僕直属のクララなら抑えられるけどマリーベルは無理だ。シャルルが親馬鹿振りを発揮して大グリンダをブリタニア正規軍とは別枠扱いにしてしまったせいでマリーベル個人の私兵軍化してる。戦力も旗艦のアヴァロン級浮遊航空艦艇1隻にカールレオン級浮遊航空艦艇15隻。陸上騎士団として10個騎士団12万人。航空母艦1。強襲揚陸艦1。巡洋艦4。駆逐艦4。潜水艦2。補給艦艇・輸送艦艇各1。作戦機230からなる馬鹿みたいな戦力になってるんだよ。それも絶対命令権を持つのもマリーベルだけだ。もしあの子を暴走させて無差別攻撃の指示でもさせてしまったら南ブリタニア諸国とのせっかく築き上げてきた友好関係が完全に破綻してしまう」
「10個騎士団と1個空母打撃群にKMFを除いての航空機だけで230機ですか・・・相変わらずですが個人の持つ戦力ではありませんね。まあ南ブリタニアのペンタゴン殲滅には必要だったのでしょうがあまりにも規模が大きすぎますよ。マリーベル皇女殿下が万一憎しみに駆られてしまえばそれだけで戦争になりかねません。強力な思考誘導のギアス・・・ジェファーソン・デイビスでしょう?」
「検討はついてるんだね流石は魔法使い達だ」
「使ってませんよ魔法は。我々が魔法を行使できる流れよりこの世界は完全に外れてしまいましたので、既に未来は未確定にして霞の中です」
「ふーんまあいいけどね。それは別として僕も大グリンダ騎士団については南ブリタニアの諸問題が片付き次第なんとか規模を縮小させたいところだよ。一個人が持つには大きすぎるからね。ま、無理なら無理で使いようもあるけどさ」
「簡単に言ってのけるだけブリタニアの国力物量はとんでもないですよ」
「それを言うなら技術は常に半歩前を進む日本もとんでもないよ」
「ま、否定は致しません。・・・クララさんは?」
「・・・いまは帝都総合病院にいるよ。馬鹿に付きっきりで看病してる。下手に情報は流さずマリーベルもあいつの傍から離れないように誘導しておくつもりだ。起きた時に君がいなければクララに盗られるよとでも言っておけばなんとかなるかな」
「クララさんもマリーベル殿下も一途ですね。バーテンーーーーー玉城くんには勿体無いですよ。どうするんですか。貴方はクララさんとの仲をお認めだと承知しておりましたが?」
「クララは勿論マリーベルとの仲も成就するなら認めるよ。国内からは反対の声が上がるだろうけどね。いまのマリーベルの行動の原動力は間違いなくあのお馬鹿だ。あの馬鹿がいたからこそマリーベルはグリンダを創設し、自らグリンダの長となって剣を取り、そして国内からは不穏分子の一掃を、南ブリタニアではペンタゴン殲滅への道筋につき見事に南ブリタニア大陸の混乱を平定せしめた。悔しいし認めたくもないけどあの馬鹿シンがクララやマリーベルの一番大切な存在になってるんだ」
「ブリタニア流一夫多妻ですか?」
「まさか。そんなの僕やシャルルが文句つける以前にクララとマリーベル自身が認めないよ。二人とも狂気的なまでに独占欲が強いからね。負けたらたぶん快く譲るだろうけれど二人ともの両立なんて土台不可能な話さ。ただ、二人はあれでお互いを認めあってるよ」
「所謂ライバル関係ですね。クララさんが玉城くんを好きなことも、マリーベル殿下が玉城くんを好きなことも、認めあった上での勝負。修羅場ですね。観ている分には面白そうですが当事者になりたいとは思いません。しかしどうするのですかお二人は」
「簡単さ。相手に軍配が上がれば自らは身を引く。おそらくそうなる。ただし、あの二人はお互い以外の女性がシンイチロウとの関係を築く事にはこれを一切認めずに全力排除に動くだろうけどね。まあシンイチロウには選択の自由も逃亡する自由もないかな? とくに今回の一件が決定打になったと見るべきだ」
「失礼ですが彼は日本の平民です。華族でも士族でもありませんが、マリーベル殿下に軍配が上がった場合のその辺りの調整は如何するのですか?」
「クララが勝ったならクララの好きにさせるよ。玉城姓でもランフランク姓でも好きに名乗ってくれたらいいしね。クララは血縁上ブリタニアの皇族に連なる人間だ。当然嚮団関係者と皇族は反対するだろうけどそれは僕が抑える。僕の娘が愛するひとを選んだんだから親として口出しさせないってね。マリーベルの場合はマリーベル・メル・ブリタニアとしては生涯未婚となるだろう。 でもマリーベル・ランペルージとしてならばシンイチロウと結婚できる。それで行くつもりさ。必要ならば僕の捨てたジ家嫡男としての名をあげてもいい」
「名を差し上げるとは、思いきりますね貴方も」
「思いきらなきゃ無理な話だからね。あの子はシンイチロウ以外に一切興味がないみたいだからシンイチロウがクララを選んだなら結局生涯未婚を貫く可能性が大いにある。オルドリンがあの子の部屋であの子の書いただろう日記を何冊も見つけた時には戦慄を覚えたんだってさ。全ページ隙間無くシンイチロウへの求愛の言葉で埋め尽くされていたらしい」
「それはまた・・・病んでらっしゃいますねマリーベル殿下も」
「クララと同類だって言ったろ? 思い込みと執着と独占欲が凄いんだよ。思わず引いてしまうほどに」
「なるほど。つくづく悪運の星に愛されていますね彼は。美少女と美女に愛される。しかしながらそのお二人は病んでらっしゃる」
「ま、好意を抱かれたのが運の尽きかな」
言葉のキャッチボールをしながらも、マサノブとVVはマリーベルから目を離さない
なにかあれば待機させているマサノブ、辻の選りすぐった警護員とギアス嚮団の戦闘部隊で現場を抑えにかかるつもりだ
「本当にたまらないよあの駄目男には。クララとマリーベルの心を盗んで、自分は生死をさ迷い関係ないと来た。本当ふざけるんじゃないぞシンイチロウ。僕は許さないからね。金を返したら無関係? 返せばそれでいい? だったら借金返済なんてしなくていいからクララとマリーベルの件に決着をつけてくれかな・・・バカ息子」
少年が呟くひとりごとにマサノブの表情は緩む
こんな世界があってもいい
こんな平和があってもいい
VVが、クララが、マリーベルが、あんな馬鹿なお調子者を相手にして笑い合う世界があっても
それは駐日駐在武官ナイトオブトゥエルブ モニカ・クルシェフスキーにも
駐日ブリタニア大使補佐官ユーフェミア・リ・ブリタニアにも
日本に留学中のルルーシュ・ヴィ・ブリタニアにも、ナナリー・ヴィ・ブリタニアにも
ヴィ家の親衛隊員ジェレミア・ゴットバルトにも、キューエル・ソレイシィにも
ヴィレッタ・ヌゥにも
京都六家にも
現大日本帝国宰相 枢木ゲンブにも
ゲンブの息子枢木スザクにも
官房長官 澤崎敦にも
ブリタニア皇帝シャルル・ジ・ブリタニアにも
その正妻的なマリアンヌ・ヴィ・ブリタニアにも
その他の人々にとっての平和な世界があってもいい
玉城真一郎もまたそのひとり
平和な世界で平和に生きる一般人としての幸せ・・・・・・
「については叶わないかも知れませんが生きていてくださらないと困りますよ玉城真一郎くん。女性の前では格好つけたいのでしょう?」
帝都総合病院での手術はもう終えている。できる限りの事はした。手は尽くした
しかしまだ、彼は目覚めない
手術室の前では非情で気丈、笑いながらひとを殺すギアスを行使できるはずの狂気を持つ少女クララ・ランフランクが泣きじゃくっていた
テロリズムを許さないブリタニアの戦姫マリーベル・メル・ブリタニアはいま一軒家の玄関で無職青年の首に宛がっていた短剣を取り落とし、オルドリンにすがり付きながら咽び泣いている
「玉城くん。彼女たちを泣かすのは女性に格好つけたい願望持ちのうざくてお調子者な貴方には合いませんよ。そういうのをね、ただのカッコ悪いというのです」
マサノブは、辻正信は、一度瞑目した後、雲に陰る月をなんとなしに見上げていた
どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。
-
嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
-
嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
-
山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
-
南雲忠一×ドロテア・エルンスト
-
玉城真一郎×クララ・ランフランク
-
玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
-
澤崎敦×井上直美
-
レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
-
原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
-
ルルーシュ(休日)×ミレイ
-
オデュッセウス×皇神楽耶
-
ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
-
枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
-
コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
-
高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
-
鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-