帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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136 :帝都の休日 第6話:2013/02/03(日) 20:14:34


提督たちの憂鬱のキャラがギアス平行世界に転生
性格改変注意
嶋田さんロマンスで独身設定
嶋田さんユフィと婚約してる
ユフィ未登場だけど甘い話
恋愛話100%
R15


帝都の休日 第6話

 

 

 帝都の休日 第6話

 

 

 

 コゥ義姉さん

 

 

 

 

 

 都内某所にある在日神聖ブリタニア帝国大使館。

 

 日本が唯一同盟を結ぶ国であるブリタニアはその大使館も他国と比べて大きく、また豪奢な作りをしている。

 

 絶対君主制であり貴族制という封建主義体制も関係しているのかも知れないが、天井や壁などには多数の調度品や絵画などの美術品が飾られており、大使館というよりは王侯貴族の屋敷といったような風情が感じられた。

 

 まあ実際の処、この大使館の主である在日ブリタニア大使コーネリア・リ・ブリタニアと、その補佐官であるユーフェミア・リ・ブリタニアの二人は、

 

 その名が示すとおりブリタニアの皇族である為、王侯貴族の屋敷という表現は決して間違ってはいないのだが。

 

 そんなブリタニア大使館の応接室にて緊張した様子の男が一人、来客用のソファに腰掛けて人を待っていた。

 

 柔和で優しそうな印象の平凡な顔つき。痩せすぎでも太りすぎでもない健康的な体型。

 

 一言で言うなら中間管理職のサラリーマンという感じの中年男性。

 

 いや、中年よりは少し上、初老の手前といった処か? 

 

 男の名は嶋田繁太郎。世界で二番目の超大国であるここ大日本帝国で総理大臣を務めていた男だ。

 

 もう五年以上前に政界は引退したのだが、この国を陰から支える夢幻会という組織の最高幹部でもある彼は、表舞台から退いたとはいえ未だ忙しく、隠居生活にはほど遠い毎日を送っていた。

 

 そんな仕事に追われる日々のなか、彼がある休日に出会った一人の少女。

 

 膝裏まである艶やかな桃色の髪。

 

 慈愛に溢れた藤色の優しげな瞳。

 

 春の花のような香りと、暖かい空気。

 

 一緒に居るだけで心が癒されるその少女──神聖ブリタニア帝国第三皇女ユーフェミアと嶋田の付き合いは出会ったその時から始まった。

 

 ユーフェミアは満十七歳で今年漸く十八になるという花も恥じらう乙女。

 

 嶋田は今年で六十一になる還暦の男。

 

 年齢差は実に四十三と下手をすれば孫と祖父ほどに離れていたが、年齢など関係なく仲良くなった二人は友人という関係を得て互いに恋心を抱くようになる。

 

 ただ嶋田は頑なにそれを認めず、自分が抱くユーフェミアへの想いに気付いてしまった日から彼女を避け続けていた。

 

 しかし、穏やかで優しい春の空気を持つ少女は、それでいてこうと決めたその一点に於いては決して引かない強さを持って彼が作った壁を力尽くで打ち壊し、自分を拒否するその心を溶かしてしまったのだ。

 

 もう自分の気持ちを認めざるを得なくなった嶋田に『わたしを好きになりなさい! その代わりわたしが貴方を好きになります!』と迫るユーフェミア。まるで逃がさないとでも言うような強引極まりない彼女の告白。

 

 逃げ場を失い遂に折れた嶋田は彼女を好きというその気持ちに向き合った。

 

 疾に気付いていたその気持ち、ユーフェミアに抱いた恋という名の気持ちに。

 

 そして彼女の気持ちを素直に受け入れ、二人は恋人という関係になったのだ。

 

 ただそれだけでは終わらなかった。

 

 恋人になった証とでも言うべき口付けの後、彼はユーフェミアに『手折って欲しい』と迫られたのだ。

 

 手折れ──その言葉が意味しているのは言うまでもなく『抱いて欲しい』ということ。

 

 抱き締めるではない。ユーフェミアと男女の秘め事をするということだ。

 

 彼はそんなこと考えても居なければ、するつもりもなかった。

 

 恋人となった以上いつかは行う行為なのだが、よりにもよって今すぐこの場で抱けというのだ。

 

 どうすればいいかと思いその場にいた友人に助けを求めたところ『男なら覚悟を決めろ』と逆に諭される始末。

 

 友人──辻の言葉とユーフェミアの想い。それらを自分の中で噛み締めた彼は、暫しの逡巡と彼女への最後の確認をして…………抱いた。

 

 

 

 嶋田はユーフェミアを愛し、心と身体の両方で触れ合いながら、自身の想いを彼女の中へと解き放つ。

 

 それを受け入れるユーフェミアもまた、己が全てを持って嶋田を愛した。

 

 互いの温もりを感じながら、辻に与えられた時間の中、幾度となく求め合った。

 

 甘く切なく、そして燃え上がるような熱い時間。

 

 いつまでもこうしていたい…………そう思えるほどに心地良い至福のひととき。

 

 永遠とも思える熱い時を共に過ごした後、彼はユーフェミアに結婚を申し込んだ。

 

 合意の上とはいっても抱いてしまったのだ。中途半端なままでいるのは許されない。

 

『男としての責任を取る』

 

 それが嶋田の偽りのない気持ちであった。

 

 それに、求め合った事で改めて思い知らされたのだ。自分が抱くユーフェミアへの気持ちの大きさに。

 

 恋人という甘い関係で居るのもいい。それもまた大事なことなのだから。

 

 しかし、どうもそれでは収まりそうになかった。更に一歩進んだ関係になりたい。

 

 恋という気持ちを自覚したが故の我が儘であると言えた。

 

 だからこそのプロポーズ。

 

 そしてユーフェミアは……そのプロポーズを受け入れてくれた。

 

 

 

 結婚の約束をした二人は恋人という関係を飛び越え婚約者という間柄になった。

 

 だがそれは二人の間でだけ交わされた物。唯一嶋田の友人である辻が知っている訳だが、それはまた別の話だろう。

 

 彼は飽くまでも友人であって、家族ではない。

 

 そう、家族。家族である。家族、肉親、親兄弟。

 

 結婚する以上その人達に認めて貰わなければならない。

 

 無論、親類に黙って駆け落ち同然に一緒になる男女も居るには居るが、生憎二人の場合立場上それが出来ないのである。

 

 片や日本の元総理にして夢幻会の大幹部。

 

 片やブリタニアの皇女。

 

 そんな二人が駆け落ちなどと許されるわけがない。尤も、端から駆け落ちなど考えても居ないのだが。

 

 ならばどうするか? 決まっている。家族に報告。それ以外の何があるというのか。

 

 残念ながら嶋田の両親は既に鬼籍に入っている為、墓前への報告しか出来ない。

 

 となれば家族への報告、挨拶は、必然的にユーフェミアの方に搾られるわけだ。

 

 

 

 

 

 今までを振り返っていた嶋田の頭にユーフェミアとは別の人物の姿が浮かぶ。その人物こそ彼が今日会いに来た相手であり、ユーフェミアとの馴れ初めを報告しなければならない相手。

 

(ちゃんと伝えなければな)

 

 ユーフェミアを何よりも大切にし、彼女が生まれたときから彼女を溺愛している家族──そう、ユーフェミアの姉、コーネリア大使だ。

 

 無論ユーフェミアの父親であり自身の友人でもあるブリタニア皇帝シャルルや、彼女達の母親にも挨拶に行かなければならないが、一番に知らせなければならないのはコーネリアだろう。

 

 目に入れても痛くないほど溺愛している彼女の妹を奪ってしまったのだから……。

 

 

 

 *

 

 

 

「お待たせしました嶋田卿」

 

 彼が考えを巡らせていた処で、応接室の扉を開けて入って来たのは背中まで伸びた桃色に近い紫の髪の女性。

 

 意志の強さを感じさせる鋭い目。その瞳は妹のユーフェミアと同じ藤色。

 

 口には髪と同じ色の紫のルージュを引き、襟から腹部に掛けて金色の模様が入った赤い服に同色のパンツルックという、タイトスカートの公務服のユーフェミアとはまた違う雰囲気のスタイル。

 

 この女性こそが、在日ブリタニア大使を務めている神聖ブリタニア帝国第二皇女コーネリア・リ・ブリタニアだ。

 

「いえ、こちらこそお忙しいなか失礼します」

 

 軽い挨拶を終えたあと、二人は対面する形でソファに座った。

 

「して、火急の用とは一体何なのでしょうか?」

 

 口火を切ったのはコーネリア。

 

 本来なら彼女の休日の日に会いに来るべきなのだが、どうもここ最近忙しいようで夜遅くまで仕事をしているらしく、こういった形でしか面会することが出来なかった。

 

 仕事で疲れている彼女のプライベートを邪魔する訳にも行かず、自分が休日の日である今日に合わせて予めアポを取っておいたのだ。

 

 その際『火急の用事がある』と言った為このような聞き方をされた訳である。

 

「ええ、実は」

 

 嶋田は隠すつもりも、遠回しに言うつもりもなかった。

 

 そんな事をしても意味が無いし、自分の中でケジメを付けると決めた以上、ハッキリと伝えるだけ。

 

 緊張する自分を奮い立たせながら大きく深呼吸をする。

 

 そして再度口を開いた。

 

 紡ぐ言葉、吐き出す言葉はただ一つ。

 

「コーネリア殿下……花を、暖かく咲き誇る春の花を、貴女の大切な春の香りを持つ花を…………手折りました」

 

 ジッと見つめていたコーネリアの瞳が大きく見開かれ、動揺の色を見せた。

 

 何を言われた? 自分の大切にしている花を折っただと? 心に浮かぶ疑問ではあったが花とは何だと口にはしない。

 

 だがざわめく心に支配され言葉が出なかったのは一瞬の事。

 

 次の瞬間には眼を細め、嶋田を睨み付けてきた。

 

「嶋田卿……」

 

 彼女とて今伝えた言葉の意味が分かっている筈。

 

『貴女の大切な春の花』

 

 そんな物はこの世に一つしかないのだから。

 

「私は……私は今からただのコーネリアとなります」

 

 ただのコーネリア。

 

 在日ブリタニア大使でも、神聖ブリタニア帝国第二皇女でもない。

 

 ただ一人の女。大切な妹を思う一人の姉となる。

 

 そんな心の声が聞こえた。

 

「わかりましたコーネリア殿下……いや、コーネリアさん」

 

 ならば自分も同じ立場に立つだけだ。

 

 この場には肩書きなど要らない。

 

「それなら私も大日本帝国元総理ではない、ただの嶋田繁太郎になります」

 

 彼女はユフィの姉で、自分はユフィを奪った唯の男。

 

 それだけで十分だ。

 

「それではただの嶋田繁太郎に聞く」

 

「はい」

 

「先ほどの言葉……もう一度、仰って頂こう」

 

 嘘偽りは許さない。私の目を見てハッキリと言え。

 

 伝わってくるのはそんな彼女の意思。

 

 ここまで来ればもうオブラートに包む必要もないだろう。

 

 これ以上はお姉さんに対して失礼だ。

 

「貴女の大切な春の花……ユフィを、抱きました」

 

「ッッ!!」

 

 驚愕に見開かれたコーネリアの藤色の瞳には激情の色が浮かんでいる。

 

「ユフィと、求め合いました」

 

 だが彼は言葉を止めずに続けた。

 

 ここで止めてどうなる? これは伝えなければならないこと。

 

 他でもないユフィを抱いた自分が、自らの口で彼女に伝えなければいけないことなのだ。

 

「ですが、私は軽はずみな気持ちでユフィを抱いたのではありません。彼女を真剣に愛しているからこそ抱いたのです」

 

 還暦の男が十七の少女相手に何を血迷ったことを。普通ならばそう思われても仕方がない。

 

 最近でこそ歳の差婚など珍しくなくなってはいるが、世間一般の常識で考えればやはり想像するのは難しい事。

 

 だが彼は真剣だった。ユーフェミアを想う気持ちに嘘偽りなど無いのだから。

 

 だからこそ事の次第を包み隠さず全て話す。

 

 ある日の休日の公園にてユーフェミアと出会い、共に帝都を見て回ったこと。

 

 コーネリアの大使就任祝いの席上での再会。その時から互いに愛称で呼び始めたこと。

 

 彼女を一人の女性として意識し始めたのはその時した別れ際のキスだということも。

 

「私は、私はユーフェミア・リ・ブリタニアという少女を──」

 

 その後、会う約束をしては休日の日に出掛けるようになった。

 

 ただ共に過ごす。それ以上のことは何もしていない。

 

 クリスマス、手編みのマフラーをプレゼントされた。

 

 編み物などしたことがないだろうボロボロのマフラー。それは今日も首に巻いている。

 

「愛しています」

 

 去年の末、首相官邸にて見た違う世界の彼女が夢への一歩を踏み出すという幸せな光景。

 

 優しく幸せな、笑顔一杯の夢だというのに、胸に去来した悲しい気持ち。

 

 その時、偶然にも官邸を訪れていた彼女の姿に涙を流し、縋り付いて泣いた。

 

「この気持ちに嘘偽りはございません」

 

 以後、自分が抱いた彼女へ向けられている感情に気付き、戸惑い、避けるようになった。

 

 今ではない過去に於いて大勢の人間を殺してきた自分が、日の光と春の暖かさを持つ一点の穢れも無い少女に懸想するなど有ってはならないと。

 

 だが『昔は昔、今は今! そんなこと関係ない! 私を好きになれ!』と、せっかく築いたその壁を叩き壊され、彼女に心を奪われてしまった。

 

 その果てに求め合った……。

 

 それら全てを一言一句違えず、コーネリアの前で明らかにした。

 

 無論前世がどうとは話してはいない。それは飽くまでも夢幻会や昭和の世界から共に渡り来た仲間達、そしてユーフェミアだけの秘密。

 

 それ以外の全てを洗い浚い話した。

 

 そして最後にこの一言を彼女に言わなければならない。

 

 これこそが今日尤も勇気の要る一言であり、口にするのが怖いことでもある。

 

 だからといって逃げたりはしない。それこそコーネリアへの……お姉さんへの侮辱だ。

 

「ユフィを、妹さんを……」

 

 

 

 “私にください”

 

 

 

 伝えたいのはこれだけ。これ以上は何もない。

 

 ユーフェミアとの馴れ初め。その全てを明かし、自分の気持ちを伝える為、コーネリアと対面したのだ。

 

 その目的はこれで果たした。後はただコーネリアの言葉を待つ。

 

 いきなり来て孫と祖父ほども歳の離れた男に『妹さんとの結婚を許してください』など言われて『はいそうですか』と納得できる物ではない。

 

 何を言われてもいい。罵倒されても侮辱されても。いや、殴られたって構わない。

 

 コーネリアが自分を殴るというなら甘んじて受けるつもりだ。彼女の拳を自身の身体で。

 

 それだけの事をしたのだから。

 

「……」

 

 沈黙が支配する室内。ただ時計の秒針が時を刻む音だけが聞こえている。

 

 大使館内には他にも大勢の職員が働いている。しかし、この部屋だけが世界から切り離されてしまったかのように静かだ。

 

 互いに言葉を発しはしない物の、視線だけは合わせたまま外さない。

 

 コーネリアの藤色の瞳には様々な感情の揺らぎが見えた。

 

 怒り、悲哀、喜び、安堵、あらゆる感情が混ざり合っているその様子から、今聞いた事を自分の中で整理しているのかも知れない。

 

 突然こんな事を聞かされたのだから彼女が混乱するのも当たり前だ。

 

 嶋田に出来るのはただ待つだけ。彼女が言葉を紡ぎ出すのを……。

 

 

 

 *

 

 

 

 永遠とも思える沈黙の時間。だがそれも漸く終わる時が来た。

 

 コーネリアは一度目を瞑りその場で立ち上がる。

 

 彼女に合わせて嶋田もソファから立った。

 

 そのままどちらともなくテーブルから離れ、遮る物の無い場所で二人は向き合う。

 

「全て……事実なのですね?」

 

「ええ、事実です」

 

「そう、か……」

 

 事実だというのを確認したコーネリアは顔を下に向け右手をグッと握り締めた。

 

 相当な力が入っているようで握り締めた拳が小刻みに震えている。

 

 その様子に嶋田も覚悟を決めて歯を食いしばった。

 

 殴られて当たり前なのだ。彼女の大切な妹を奪ったのだからその拳を受けるのは自分の義務。

 

 寧ろそれで彼女の気が済むなら何発食らってもいい。

 

 気が済むまで殴ってくれれば……。

 

「よく、言ってくださいました……」

 

 震える声で紡がれた言葉にはコーネリアの気持ちがそのまま乗せられている。

 

「覚悟は……。覚悟は出来ているのでしょうね?」

 

 こんな事をした以上覚悟は出来ているのか? 

 

 疾に出来ている。自分が手折った相手はユーフェミア。

 

 皇帝の、父であるシャルルが許したところで、妹を溺愛しているコーネリアが許す筈がない。

 

 だが、こちらも引くわけにはいかないのだ。

 

 他の誰に認められようが、コーネリアに認められなければ意味が無い。

 

 彼女に認めて貰わなければユフィを悲しませる事になる。

 

 もう二度と泣かせないと誓ったユーフェミアを、お姉さんと自分とが原因で泣かせる訳には。

 

「ふざけるなあァァァァッッ!!」

 

 振り上げられる拳。沈黙に支配されていた部屋に彼女の怒号が響き渡る。

 

 鬼や悪魔も裸足で逃げ出してしまいそうなその叫びにも嶋田は動じたりせず、ただコーネリアの目を見据えたまま。その場を動かない。

 

 視界の隅に捉えられた拳が勢いよくこちらに迫ってきた。

 

 

 

 *

 

 

 

 当然、物理的法則に従って振り抜かれたコーネリアの拳に嶋田の身体は後方へとぶっ飛ばされ、床に叩き付けられる──その筈だった。

 

 だが──。

 

「え……?」

 

 自分へと振り抜かれたコーネリアの拳は、頬に当たるその寸前で停止されたのだ。

 

「どう、して?」

 

 何故だ。どうして殴らない? 大切な妹を奪った俺を何故? 

 

 疑問に思い困惑する嶋田。そんな彼に寸止めされた拳を下ろしたコーネリアは答えた。

 

「貴方が、貴方がもう少し若ければ……この拳を振り抜いていた」

 

 彼女は自分を落ち着かせようと大きな深呼吸を数回繰り返して心を静める。

 

 そして一度心を落ち着かせてから再度口を開いた。

 

「尤も、それは自分の遣り場のない感情を貴方に叩き付けるだけで、何の意味も無い行為でしょうが……」

 

 激情に駆られて行き場のない感情を相手にぶつけたところで何も解決しない。

 

 寂しそうな声で呟くように言った彼女は、拳を開いてそっと差し出してくる。

 

「コーネリア……さん……?」

 

 それは手の平を大きく開いた握手を求める物。

 

 一転してコーネリアは穏やかな表情に変わった。

 

 まるで憑き物が落ちたかのように。

 

「貴方とはまだ短いお付き合いだが、信用の置ける方だというのはわかっている。貴方がユフィに非道な行いをする筈がない」

 

「……」

 

「それに、貴方は一瞬たりと私から目を逸らさなかった。その目から伝わる真剣な思い、覚悟を決めた者にしか持てない目だ。本音を言えば沢山言いたいことはある。あの子が生まれたときからずっと見守ってきたのですから……

 

 だがあの子が選び、自ら求めた貴方にこれ以上何を言えばいい? それに薄々気付いて居ました……ユフィが貴方に好意を抱いているというのは」

 

 嶋田の話をするときのユーフェミアの表情。

 

 友人の事を話す顔ではなく、女の顔の顔をしていた。

 

 その時のことを思い出しながら話を続けるコーネリア。

 

「ユフィが貴方と会う約束をしていた日はいつも嬉しそうでしたし、一時貴方がユフィを避けていたときの落ち込みようなど見るに堪えなかった……」

 

 嶋田に避けられていた僅かな時、彼女はユフィが泣いているのを何度も見ていた。

 

 繋がらない、繋がっても直ぐに切られる携帯を握り締めて悲しそうにしているユフィを見かね、辻に連絡を取り嶋田と会わせようとしたのは他ならぬコーネリアなのだから。

 

 ただの友人ならそこまで落ち込んだりしない。愛している人だからこそ悲しみ涙していたのだ。

 

 それ程までにユフィが思う相手は父シャルルが『心友』と呼ぶ程の男。そんな男がユフィに酷いことをしたりする筈がない。

 

 互いを想うが余りに求め合ってしまったのだろう。

 

「貴方にユフィの温もりが必要であるように、ユフィにも貴方の存在が必要だ」

 

 その証拠に自分がした行為。そこへと至るまでの馴れ初めを語り、男としての責任を取る為彼はこうして挨拶に来ている。

 

「コーネリアさん……」

 

「ユフィを、幸せにしてあげてください。私に言えるのはこれだけです」

 

 そんな彼ならばユフィを託せる。いや、彼だからこそか。

 

 もう何も言うことはない。ユフィが愛し求めた彼との仲を自分が認めぬ訳には行かない。

 

 祝福しよう。二人の門出を祝おう。二人を快く認め受け入れることが姉としてすべきこと。

 

 コーネリアは自分の仲で答えを出した上で、嶋田に妹を託した。

 

「お約束します。必ず……必ずやユフィを幸せにすると」

 

 ならば自分も責任を持ってユフィを幸せにする。

 

 今までユフィを護っていた彼女に変わってこれからは自分が護っていくと、ユーフェミアを託された嶋田は決意した。

 

「誓えますね?」

 

「ええ……ああ、違いました」

 

 そして彼は誓えるかというコーネリアに、ある言葉を思い出す。

 

 ブリタニアの皇族に対する了解の意味を込めた返事を。

 

「そう、確か──」

 

 “イエス・ユア・ハイネス”

 

「でしたか?」

 

「ええ、それで合っています。ただ、その言葉を私の前で口にされたということは、約束を違えること許されませんよ?」

 

「無論、約束を破ったりはしませんよ」

 

「ふふ、信じましょう」

 

 信用のおける男として妹を託してくれたコーネリア。

 

 差し出されたまま握り返していなかったその手を、嶋田はしっかりと握った。

 

 

 

 *

 

 

 

「しかし、そうなるとこれから嶋田卿は私の義弟(おとうと)になるのですね?」

 

「あ、言われてみればそうですね、コーネリアさんは私のお義姉さん(おねえさん)になるんでした」

 

 1月13日に29歳の誕生日を迎えたばかりのコーネリアが義姉で、今年の9月24日で61歳になる嶋田が義弟。

 

 何とも不思議な姉弟関係が出来上がってしまった。

 

「ユフィに合わせてコゥ義姉さんと呼んだ方が良いでしょうか?」

 

「姉さん、か……親子ほど歳の離れた嶋田卿──いや、シゲタロウにそう呼ばれると何か変な感じだな」

 

 コゥ姉さんと呼んだ嶋田に合わせてコーネリアもユーフェミアと同じように嶋田を下の名前で呼ぶ。

 

 更に口調も弟や妹、親しき仲にある者達に対するのと同じ物に切り替えた。

 

「ではプライベートの場では義姉さんと呼びますよ?」

 

「わかった。では私もプライベートの場では貴方のことを義弟としてシゲタロウと呼ばせて頂く」

 

 

 

 

 

 ユーフェミアとの結婚を認めてもらい、これより家族となる二人は互いの呼び方を決めた後、この場に居ないユーフェミアの話に移った。

 

「しかし、ユフィの行動力というか強引さには驚かされましたよ。私としては自分の気持ちに気付いた後も、生涯独身を貫くつもりだったのですが……」

 

「まあユフィに見初められた段階でそれは無理だな。シゲタロウ、貴方も知っているだろうがあの子は譲れない一点に於いてはとても強情で欲張りだ。人を好きになる気持ちというのは存外厄介な物で、譲れない一点の最たる物」

 

「確かにそうでしょうね。ユフィを好きという気持ちが否定できなかった私は身に滲みてわかってますよ。結果こうして捕まえられてしまいましたから」

 

 苦笑いする嶋田。

 

「それだけでは済まないぞ? あの子の貴方を思う気持ちはおそらく想像できないほどに大きな物だ。この先もし浮気でもしようものなら怖いことになるかも知れない……」

 

「ね、義姉さん、脅かさないでくださいよ、あんなに優しく穏やかな性格のユフィが怖いことするって……」

 

「他の女に奪われるくらいなら──とかな」

 

『シゲタロウを殺してわたくしも死にます』

 

 コーネリアの言葉に一瞬そんな声が聞こえた嶋田は「ないない!」と首を振って想像をかき消すのだった。

 

 

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
  • レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
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