帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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事件処理3

 

 

 

事件処理3

 

 

 

 

 

「それで君たちはどう動くのかな?」

 

雪の降りしきる中でV.V.は問う。フランク・ロズベルトによる玉城真一郎刺傷事件の背後にいたのはかなり大きな組織だった。一度とはいえラプラタという国家を乗っ取り、合衆国オセアニアを南ブリタニア攻略へ引き出そうとしていた巨大民主共和制原理主義組織だったと

 

路肩の石ころつついてみたら大蛇が出てきたのだ

 

現在太平洋経済圏で国際テロ組織として指定されている組織は世界中を見据えても数多ある。その中で下部構成員まで含めた総数100万人超過の組織はペンタゴンだけであった

 

これに対するには『戦争』というくくりで性根を入れて掛からねば痛い目を見る

現に200年ほど前のかつてのアラウカニア=パタゴニアはペンタゴンを甘く見て大ダメージを受けている

ラプラタ戦争においてもアラウカニア=パタゴニアが最も多くの民間人犠牲者を出していた

とはいえ、所詮は国家基盤を喪失した一組織でしかない。図体こそ大きけれども大グリンダによる掃討戦にて打撃を受け、最高幹部の大半を喪い指揮系統もズタズタにされている

ただし、最高指導者である太平洋同盟国第一級特別指名手配犯ジェファーソン・デイビスは尚も健在であり、彼の男が健在である以上はペンタゴンの崩壊はない。これを踏まえての日本側、魔法使いたちはどの様に動くのか?

V.V.が尋ねているのはそこの部分であった

 

「粗方決まってますよ」

 

10歳ほどの少年の姿をした同年代の男に対して、精神年齢ではV.V.の2倍以上を生きている男辻政信は事も無げに返した

 

「真実を真実のままに公表して終わりです。神聖ブリタニア帝国元男爵フランク・ロズベルトによる刺傷事件としてね。背後関係など不要な情報を明らかにしたところで誰も得はしませんので」

 

「ふーん、クララやマリーベルが聞けばさぞかし憤慨しそうだ」

 

「それこそ一個人の感情や思惑に国家を引きずり回すのはそれは違うでしょうと返答させていただきますよ。・・・ただ、此度の件は日本側としても看過できない事柄です。故に我が大日本帝国からも対テロ特殊作戦軍を組織して南ブリタニアに派遣するつもりですよ。これを機に我々日ブのお庭よりペンタゴンを狩り尽くすか追い出すかして彼等を退場させてしまいましょうか。玉城くんも陛下の、日本皇室の子供たる大日本帝国の臣民の一人です。その日本国内でここまで舐めた真似をなされては日本側だけペンタゴンを放置するなどと筋が通りませんよ」

 

それに

 

「玉城くんが亡くなっていたケースも我々は考えました。その上で我々といたしましては彼の異常なまでの人間関係を鑑みた結果この事件は一刺傷事件で済まなかった可能性が窺えるとの判断を下しましたよ。まあ最もな話でもあるのですがね」

 

「へぇ、君たちも同じ結論だったんだね」

 

「もちろん。まず玉城くん自身は平凡な、まあ少しばかりやんちゃが過ぎる不良のなりそこないみたいな極々普通の、そう、一般家庭で育ってきた人間です」

 

「うん。あれが華族だとか言われたら僕は耳を疑うよ」

 

「そこを突くのならばロズベルト男爵元当主のフランクさんは貴族ですがどうなります?」

 

「痛いところを突くね。まあ、彼がブリタニア貴族の名を汚した事実はどうしようもないことだから僕としても言い訳はしないよ。まあこの際そこは置いておこうよ。で、一応聞くし答えなんて分かっちゃいるけれども、マサノブたちはどう考えたんだい」

 

「はい。まあ一言で申し上げましょうか? 最悪のケースでは我々としては第二次ブリタニア北南戦争が勃発していたとの分析結果に辿り着いた次第ですが。そちらは?」

 

「・・・最悪、そうなっていた可能性が7割以上かな」

 

ではなぜそのような結果が導きだされたのか?

 

「最悪玉城くんが亡くなっていた場合、ギアス嚮団嚮主の血を引くクララさんは嚮団で自らの影響力を発揮し、玉城くんの死の真相究明に全力を注いだことでしょう。それこそV.V.さん、貴方が止めようとしても勝手に動いてね。そして事はマリーベル皇女殿下にも波及します。ペンタゴンの暗躍という真相へと辿り着いたクララさんは復讐心に駈られるままに最も教えてはならないマリーベル殿下へと伝えたでしょう」

 

「クララがマリーベルへ教える・・・か。そうはならない可能性だってあるはずなのにえらく確信を持って言うもんだね」

 

「ええ、確信を持ち得るだけの感情がクララ・ランフランクという少女の中には渦巻いておりますので。そう、玉城くんへの愛情ですよ、狂う愛と書いて狂愛が。クララさんが持つ玉城くんへの依存性は我々の計り知れない段階にあると見てもよろしいでしょう」

 

41: 名無しさん :2018/02/18(日) 20:41:44

 

「元々そのけはあったんだけどね。クララがシンイチロウへの恋心を抱いたのが初めてあった日からの一目惚れだったとするなら、片思いの期間はもうじき10年になる。一途なんだよあの子は」

 

クララ・ランフランクは一途だ。誰よりも一途で誰よりも純愛に生きていて、それが故にひとつにして最大のピースが欠けてしまえば全てが揺らいでしまう危険性をはらんでいる

 

「そんなクララさんがただひとりライバルとして認めたマリーベル殿下へ、自ら辿り着いた事の真相を語らないはずもない。どうです?」

 

ライバルとは敵対関係にあり

だが敵対関係にありながらも志を同じくする同志とも取れる

クララは恋破れたとしてもその相手がマリーベルならば素直に祝福し、逆もまた然り

二人はそんな関係である。が故に二人が譲れない玉城真一郎という男性に危害を加えようとする存在は存在自体を許さないのだ

 

「ま、ほぼほぼそうなるね。あの独占欲の塊みたいなクララが認めたマリーベルにならシンイチロウの死の真相を話すだろう。そうさ、マサノブ。君の答えに間違いはないよ。クララはマリーベルに話す。クララとマリーベルは」

 

V.V.の言葉を辻が引き継ぐ

 

「復讐に走り、周囲の意見などに耳を傾けることなどなくなってしまうてましょう。なにせマリーベル殿下もマリーベル殿下でクララさんと似たり寄ったりな恋してますからね。青春・・・そう考えられるのは玉城くんが元気であればこそ。彼が欠けた瞬間に彼のお二人はディザスターやカラミティ、いや下手を打てばカタストロフへと早変わりです」

 

「はぁ、まさかあのお馬鹿が太平洋経済圏のバランサーのひとつになり得るなんて考えてもみなかったよ」

 

クララとマリーベルの復讐は南ブリタニアの災禍、災厄、崩壊、に繋がりかねない危険性がある

 

「マリーベル殿下はご自身の危険極まるギアスを用いてまで大グリンダ全軍を投じて、クララさんもまた自身の危険なギアスを駆使して、南ブリタニア諸国への無差別攻撃を開始していたことでしょう。事によってはご自身方が自ら動いて周囲の被害など顧みずに容疑有りな人物がいるかもしれないというだけでその都市を灰塵に帰したりと破壊マシンと化してしまいます。それができるだけの戦力を貴方の弟さんはマリーベル殿下個人に与えてしまっておりますので」

 

「アヴァロン級まで含めた浮遊航空艦艇10艦超、10個騎士団超の地上軍に天空騎士団4個、空母打撃群1個、遠征打撃群2個、補助艦艇多数。もう一国の軍隊だよ。こんなのがマリーベルのギアスを受けて無差別攻撃に動き出せば立派なカラミティだ。どれだけの犠牲が出るか」

 

「大都市圏も無関係で行くなら3桁の犠牲も有り得ると考えます。南ブリタニアも人口多いですからね・・・そして、そうなってしまえばユーロブリタニアがブリタニアの弾劾を始めるでしょう。南ブリタニア諸国との繋がりが一番深いのはユーロブリタニアですから。その先で対応を誤れば待っているのは日ブとユーロブリタニアの協定崩壊、南ブリタニア諸国とユーロブリタニアの同盟および神聖ブリタニア帝国への宣戦布告の可能性です。第二次北南戦争ですよ。日本側としては条約に基づきブリタニア帝国側で参戦となりますが、戦場は我々の庭と我々の本土。最終的には勝てるでしょう。ですが疲弊した日ブを見てオセアニアは北進を開始します。第二次太平洋戦争。或いはユーロピア共和国連合や大清連邦・高麗までも参戦しての第一次世界大戦の勃発となります。最後は進退極まってのフレイヤ乱れ撃ちでもしますか? 世界の終わりですよ。玉城くんが生きていたことでその心配は無用となりましたが。ま、最悪に最悪が重なって大凶を10回連続引けばそれはあり得た話でした」

 

「そうなる前に僕らが止めるからね。シャルルも国主としてそのくらい覚悟してるだろうし。なんにしても、なにも喪われずに済んで良かったよ・・・でも」

 

「彼等ペンタゴンには慰謝料の請求をしなければ、いえ払ってもらわなければなりませんね。我々を舐めてくれたツケを、ね。クララさんは真相に辿り着いたようですがマリーベル殿下にも?」

 

「知ってるよ。だから一気に攻勢へと転じた。ただし、周囲に被害を及ぼさないよう注意を払いながらね」

 

「玉城くんが生きていたから、なのでしょうね。といって変に一般人である玉城くんへ警護要員など付ければ却って玉城くんこそがマリーベル殿下の弱点であることを気取られますので警護を付けたりはしませんが」

 

42: 名無しさん :2018/02/18(日) 20:47:48

 

「結果は出たのフランクの」

 

「ええ。大切な物を奪え壊せ。これはあの方が大切な何かを奪われた時に発動し思考が誘導されてしまう仕掛けでした。大切な物を奪った者から大切な物を奪え壊せといったように」

 

「デイビスのギアスで確定か。しかしフランク・ロズベルトの大切な物って?」

 

「地位、名誉、財産・・・腐敗した俗物が取り付かれる典型的な欲望ですよ」

 

「なるほどね。それを奪ったのはシャルルというわけだ。そして、シャルルの大切な物はシャルル自身の子供達。時期的に最もシャルルが苦しむ方法はマリーベルの暴走と虐殺による数多の犠牲。そして都合よくもマリーベルには大切な物があった。それがシンイチロウだった、ということか。マリーベルの大切な物が何かなんてのは今以てジェファーソン・デイビスにもわからないだろうけれどね。まさかあんなナースにセクハラしてるようなお馬鹿だとか想像もできないだろ」

 

「正確には貴方の弟さんがフランク・ロズベルトより奪い取ったのではなく、先代ロズベルト家当主と一族が爵位を返上なされただけなのですがね」

 

「・・・引き渡しはいつに?」

 

「いつでも。ですが、念のために掛けられていたギアスをキャンセルしてからになります」

 

「そっちは頼んだよ。こっちはこっちでロズベルト家による仇討ちに持ってけるように動くから。日本での犯罪については引き渡された後にロズベルトの娘が討伐することで差し引きでいいかな? シンイチロウに聞いたら『俺生きてるから慰謝料と治療費の請求だけでなにも要らない』って言っていたよ。刑事事件としては?」

 

「刺されたご本人が元気ピンピンですのでまあ情状酌量として懲役10年が妥当ですが、そちらでは更に重くなりそうですね」

 

「公金横領が発覚してるからね。ブリタニアでは貴族による犯罪には厳罰が基本なんだ。でないと臣民に対し示しがつかない。西海岸と五大湖も黙ってないし日本での事件と合わせてロズベルト家の娘による一族没落の仇討ちが妥当かな? 仏心を出して無期禁固」

 

「人死に無しでの仇討ち、実質死刑とは中々重いですねぇ。まあ、フランク・ロズベルトの裁きはブリタニア側に任せますよ。日本じゃ甘い刑罰で終わりますのでね」

 

「ロズベルト家の娘次第かな?」

 

 

 

まだ雪は降っている

白いボタンが空から落ちてくる

止まることなく落ちてくる

 

「・・・しかし、どれだけ積もるのかな?」

 

「暫くぶりの大雪ですからね。昨年以上の。もしかしたら記録を更新するかも知れませんよ。ところでV.V.さん、貴方頭に雪積もってますが」

 

最悪あったかもしれない物騒な話を終えた二人は歓談へと移っていく

 

「ああホントだ。いつの間にか肩にまで」

 

「V.V.さんは体が小さく肩幅が狭いのでまだましでしょう。私なんてほら」

 

辻の肩にも雪は盛り上がっている

 

「盛り上がるのは楽しい話や嬉しい話、幸せな話だけで充分なのですが」

 

二人は頭や肩に積もる雪をパッパと払う

 

「髪濡れてくしゃくしゃだ」

 

「踵までの長さですからねえV.V.さんは」

 

「自分でも伸ばし過ぎだと思ってる。またシンイチロウに髪の毛といて貰おうかなあ」

 

「そんなことされていたのですか?」

 

「うん。さっき見舞いに病室行った時、なんかシンイチロウにこっちこいって言われてね。クララが幼い頃からあの子の髪を良くといてるらしいから慣れてるんだろうな。あんな目付きの悪い顔して不器用な癖に中々気持ち良くて上手だった」

 

「ふふ、玉城くんのそういう小さな積み重ねがクララさんから好意を寄せられるようになった切っ掛けだったりするのかも知れませんね。V.V.さんがクララさんを託せるとお思いなのもそんなちょっとした気遣いが関係しているのでは?」

 

「ないない。クララが心底惚れ込んじゃってさ、自分が養うとか言い出したからもうクララの好きにさせたげるのがあの子の幸せなんだろうと思って二人の仲を認めたんだよ。でなきゃあんな甲斐性無しに愛娘をあげたりするもんか」

 

「くく、シャルルさんは親バカが病的ですが、V.V.さんも結構な親バカ振りじゃありませんか?」

 

「娘を嫁にってさ、父親にとって結構堪えるんだよ」

 

43: 名無しさん :2018/02/18(日) 20:49:09

 

さてと。と、V.V.はもたれていた欄干より反動をつけながら身を起こす

 

「どうされるのですか?」

 

「クララにはもうこれ以上先走らないように釘打つんだよ」

 

と電話した

 

『なにパパ。クララいまお仕事で忙しいんだけどー?』

 

「それは悪かったね。でもねクララ。もうその話は付いたからいまのを謳わせたら残りは特高に大人しく引き渡すんだ。ギアスまで使って、君のやってることは独断専行の越権行為なんだよ」

 

『・・・・・・だからなぁに? この人たちお兄ちゃんを傷付けようとしたのに殺しちゃ駄目なの?』

 

「駄目だ。これはお願いじゃないんだよ? ギアス嚮団嚮主としての僕の命令なんだ。君のお仕事はもう終わり。終業時間はとっくに過ぎてる。残業も認めない。わかったらいま捕まえてる事件の関係者を特高に引き渡して帰ってきなさい。いいね?」

 

『・・・・・・はーい』

 

不満そうな娘の声に、V.V.はサービスだとばかりに話した

 

「シンイチロウが君に会いたいって言ってるよ。面会時間も限られてるんだから特高との連携を確認した後はもう早く帰っておいで。こっちも」

 

辻を見ると積もる雪をまた払いながらね帽子をあげてにこりと笑っていた

 

「話は終わったから。それじゃシンイチロウの病室で落ち合おープツン」

 

「どうでした?」

 

「納得してないけど納得したみたいな感じだ。たぶん現場はお掃除が必要かも」

 

「掃除くらいは構いませんが、あまりオルゴールを壊されると情報の引き出しができなくて困るのですが」

 

「そこはごめん"社長として"謝罪するよ」

 

「ま、良いですよ。長年一緒にお仕事をしてきた我々の関係ですしね。クララさんはどうなさると?」

 

「シンイチロウの話を出した途端に電話切っちゃったよ・・・まったく困った娘だ」

 

「ふふ、なら業務終了ですか。しかし本当に玉城くんはクララさんにマリーベル殿下にと、悪運の女神に愛されてますねえ」

 

「その暴走超特急娘の調整してる僕としては気苦労が多くて疲れるよ・・・」

 

「社長なら仕方ないでしょう?」

 

「マリーベルはうちの従業員じゃないんだけど」

 

雪はまだ降り積もる

 

終わりがないほどのボタン雪が次々と落ちてくる

落ちくる大粒の雪を見つめながら辻も何処かへ連絡をしたあと、V.V.と二人、玉城の病室へと戻っていった

 

 

 

 

"わりぃ看護婦さん手がすべ"

 

"お兄ちゃ~~~んっ!お兄ちゃんの愛しいクララちゃんが会いに来、ああ~~~っっ!?"

 

白衣の天使に手が滑ったと言い訳しながらボディタッチしている玉城

と、その玉城を見て塊るクララ

 

そんな二人を生暖かい目で見やりながらまた辻は呟いた

 

「とことん悪運の女神に愛されてますねえ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

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