帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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131 :楽隠居?と円卓の少女 第2話:2012/12/24(月) 20:25:04
では投下


提督たちの憂鬱とギアスクロス
嶋田さん独身設定で嶋田さんロマンス
平和そのもの
性格改変注意
クルシェフスキー家の爵位想像


楽隠居?と円卓の少女 第2話

 

 

 楽隠居? と円卓の少女 第2話

 

 

 

『みんな~、今日は何の日か知ってる~?』

 

『は~いっ!』

 

『じゃあ何の日かな~?』

 

『クリスマス~! サンタさ~ん!』

 

 テレビから聞こえる無邪気な子ども達の声。

 

 みんな笑顔でサンタクロースの話をしている。

 

 夕方に放送されている子ども向けの教育番組の一コマだ。

 

「サンタさん……か」

 

 自分以外誰もいない居間でぽつりと呟いたのは長い金色の髪の女性。

 

 目の上辺りで切り揃えられた前髪のせいか少し幼げな印象も受けるしとやかな風貌。

 

 テレビの画面に向けられた空の色を思わせる碧く澄んだ瞳。

 

 真っ直ぐに腰の下まで伸びた髪の一部は顔の両側から身体の前に流されて赤いリボンで束ねられていた。

 

 彼女はその髪の房を指で弄びながら愁いを帯びた表情を浮かべている。

 

 一見すると深窓の令嬢を思わせる彼女。いや、深窓の令嬢である事に違いはない。

 

 但し、それでいて鋭い切れ味を持った剣でもあるのだが。

 

 神聖ブリタニア帝国皇帝シャルル・ジ・ブリタニア直属の騎士にして最強の12騎士の末席に座する貴族の少女ナイトオブトゥエルブ モニカ・クルシェフスキー。

 

 それが彼女だった。

 

 モニカは現在ブリタニアと並ぶ大国であり同盟国でもある大日本帝国に駐在武官として滞在している。

 

 下宿先としてシャルルの友人であり日本の元総理、嶋田繁太郎宅に住んでいる彼女だったがいまその大家たる嶋田の姿はない。

 

 なんでも急な用事で遅くなるとのことで先に寝ててと電話があったのだ。

 

「あの人の居ないクリスマス……」

 

 彼女は今日という日を嶋田と共に過ごしたかった。

 

 由緒正しい厳格な貴族の家に生まれたモニカは幼少期を除いて厳しく育てられてきた。

 

 その為、物心ついた頃からクリスマスの祝い事などしていない。

 

 パーティーなどは幾度となく行われていたが、それは所詮貴族の社交パーティーでしかなく心から楽しんだ記憶が殆ど無いのだ。

 

 かといって両親が彼女に愛情を抱いていないという訳ではない。

 

 一般的な家庭と同じように娘を愛していたし大事に思っている。

 

 しかし一人娘であり、いずれはクルシェフスキー侯爵家の当主となる娘を甘やかせる事はできない。

 

 自分でも分かっているのだが理解することと納得することは違う。

 

(お父様もお母様も私のことが嫌いなんだ)

 

 幾度となくそう考えたし今でもたまに思うことがある。

 

 そんな彼女に惜しみない優しさと思いやりを与えてくれ、貴族の令嬢ではなく一人の少女として接してくれたのが嶋田繁太郎だった。

 

 別に彼とクリスマスを祝う約束をしていた訳ではない。

 

 ただこの日を共にして欲しかった。それだけだ。

 

 

 

 *

 

 

 

 やがて夕食時を過ぎ時計の針が次の日に移行する時間になっても彼は帰ってこなかった。

 

 彼女にはそれでも待つという選択肢があったし、そうしたかった。しかし明日もまた公務が待っている以上それはできない。

 

 人の上に立つべき自分が周囲に迷惑を掛けるようなことがあってはならないのだ。

 

「………………寝よう」

 

 彼女は心にぽっかりと穴が開いたような錯覚を覚えながら突っ伏していたこたつを出るとそのまま寝室へ向かいパジャマへと着替える。

 

『今日は何の日か知ってる~?』

 

『クリスマス~! サンタさ~ん!』

 

「……」

 

 パジャマに着替えたモニカがそのまま畳に敷いた布団に入って寝ようとしたとき、ふと夕方に流れていた教育番組の内容が思い出された。

 

『みんな良く聞いてね~? 今日はサンタさんがみんなにプレゼントを持ってきてくれるから、寝るときには窓のところに靴下をぶら下げておかなきゃダメだぞ~?』

 

『は~いっ!!』

 

 実に子供だましの馬鹿馬鹿しい内容ではあったがあの子ども達はみんな信じているのだろう。

 

 笑顔であれが欲しいこれが欲しいと自分が欲しい物を叫んでいた。

 

 そのときの子ども達の笑顔を思い出したモニカは自分でも(何をしているのでしょうね)と思いつつ自分の靴下を部屋の窓にぶら下げていた。

 

 黒い靴下は夜の闇よりも尚暗く見える為、もしサンタさんが来てもそこに靴下があるとは気付かないかも知れない。

 

 入ってなかったら見えなかったのだと思えばちょっぴりクリスマス気分を味わえるだろう。

 

 そんなことを考えながら今度こそ寝ようと布団に入って目を瞑った。

 

「おやすみなさい……」

 

 

 

 *

 

 

 

 眠りについてからどれくらい経っただろうか? 

 

 部屋に人の気配を感じたモニカは深い眠りから一気に覚め、布団から飛び起きて身構えた。

 

「何者ですか!」

 

 伊達に円卓の騎士の末席に名を連ねてはいない。周囲で気配があればすぐに分かるし対処も出来る。

 

 剣術は勿論のこと体術その他の格闘技でも常人では計り知れない実力を持つのが彼女達ナイトオブラウンズなのだから。

 

「あ、あわわ……」

 

 そんな超人の域に達している騎士の殺気を浴びせられる方は堪ったものではない。単なる泥棒や不審者には対処のしようがないのだ。

 

 そしてこの時モニカの部屋に居た人物もまた戦闘的な部分に於いては普通の人。

 

 モニカは相手がそれなりの訓練を積んでいた人間であると判断した物の、純粋な戦闘能力では自身よりも遥かに劣ることが分かった。

 

 彼女はそれが分かっても構えを解かないし油断もしない。どんな相手であれ一瞬の油断が命取りになることを知っているから。

 

(え……? この、感じ……)

 

 だが感じ取った相手の気配と目が慣れてくるにつれ見え始めたその姿に、彼女は自然と構えを解いた。

 

「や、やあメリークリスマス」

 

「……」

 

 それは赤い服と赤いズボン、更に赤い帽子をかぶって口の周りに真っ白なヒゲを蓄えた老人──サンタクロースだったのだ。

 

「よ、よい子のモニカちゃんにプレゼントを持ってきたんだけど……驚かせちゃったかな?」

 

 無論それがサンタクロースなどではないことなど彼女にはハッキリ分かっている。

 

 何せよぉ~く知っている気配と声なのだから多少の変装など簡単に見破れるというものだ。

 

 それに変装が完璧であって気配も違ったとしても恋慕う相手を間違えたりなどしない。

 

「こ、こんばんはサンタさん」

 

 嬉しいと同時にプレゼントと言われた瞬間モニカの最強の騎士の仮面はあっさりと剥がれ落ち、変わって年頃の乙女の姿になってしまった。

 

 姿形は違っても、恋慕い待ち望んでいたあの人が自分へのプレゼント片手に目の前にいるのだから。

 

 彼女は高鳴る鼓動を抑えながらちらりと時計に目を遣る。時刻は午前二時。完全なる遅刻であった。

 

「ほら、これが君へのプレゼントだ」

 

 差し出されたのは赤い包装用紙に包まれた二つの箱。

 

 それほど大きな物ではない。

 

「あ、ありがとうございます……あの、靴下を用意したのでそちらに入れてくださると……」

 

「おお、そうだったそうだった! いや、まさか君が目を開けちゃうとは思わなかったもので」

 

 おどけたように言うサンタにモニカは「くすり」と笑った。

 

「さあさあプレゼントは入れたし、よい子は寝る時間だよ」

 

「貴方とお話していられるのなら悪い子でもいいですよ」

 

「困ったなぁ~」

 

 サンタに扮するこの人と話をしていられるのなら別に悪い子でも構わないというモニカ。

 

 サンタはそんなモニカに「でも──」と続ける。

 

「でもそれじゃプレゼントあげないよ? 悪い子のモニカちゃんはプレゼント要らないんだね?」

 

 いい子は寝るもの。

 

 いい子じゃないモニカにはプレゼントあげない。

 

 そんなことを言い出したサンタにモニカは慌てて彼を引き留める。

 

「だ、ダメェっ!! ダメです!! いい子にしてますからくださいっっ!!」

 

 プレゼントを取り上げようとする自分を必死になって止める彼女がかわいらしくてもう少しいじわるをしてやろうかと思うサンタだったが、彼女が泣き出しそうになったのを見てやめにした。

 

 やめにして泣きそうになってしまったモニカの頭をよしよしと撫でてやる。

 

「よしよしわかった。モニカちゃんはいい子だ、いい子だから泣いちゃダメだよ~」

 

「な、泣いてませんっ……!」

 

 抗議の視線で睨み付けてくるモニカにサンタはひたすら頭をなで続けて宥めてから手を離した。

 

「さあモニカちゃん……もう寝ようね」

 

「はい……寝ます」

 

 ちょっぴり名残惜しかったがこれ以上は本当にプレゼントを取り上げられるかも知れないと布団に入るモニカ。

 

 だがふと思い出す。今はもうクリスマスの日を2時間も過ぎていることを。

 

「サンタさん……寝る前に一ついいですか?」

 

「ん~なにかなぁ?」

 

「遅刻……してますよ」

 

 時計を指さす彼女。

 

「ああ~、ちょっと遅れちゃったみたいだねぇ」

 

「サンタさんは遅れたらダメなんですよ? 遅れたらプレゼントを待ついい子が悪い子になってしまいますから」

 

「そ、そうだね~」

 

「私、サンタさんのせいで悪い子になっちゃいそうです」

 

「え、い、いや、ちょっと待って」

 

 事実を指摘されたサンタは焦り出す。

 

 じゃあどうすればいいのかと。

 

「プレゼントもう一つください」

 

「い、いや持ってないよ」

 

 プレゼントを要求されてももう無い。

 

 飽くまでもモニカへのプレゼントは今渡した二つだけなのだから。

 

「では私がプレゼントと判断する物を頂きますけど……いいですよね?」

 

 なら代わりに彼女がこれだと判断する物でいいというのだ。

 

「う、うう~ん……わかった」

 

 彼女の事だから無茶な要求はしてこないだろうと考えたサンタが了解すると、彼女は「顔を近づけてくれ」と言い出す。

 

「こ、これでいいかい?」

 

「はい、いいですよ……そのままじっとしててくださいね」

 

 ヒゲもじゃのサンタに顔を近づけて貰ったモニカは布団から少し身体を起こすと──

 

「んっ」

 

 遅れた分のプレゼントを頂くのだった。

 

 

 

 *

 

 

 

「おはようございます嶋田さん」

 

「あ、ああおはようモニカさんっ」

 

 爽やかに挨拶するモニカに対し嶋田の方はぎこちない。

 

「どうしたのですか? 奥歯に何か詰まったような感じですが」

 

「い、いやなんでも」

 

「うふふ、おかしな嶋田さん」

 

 そんな遣り取りの後モニカは身体の前に流した自分の髪を触り始めた。

 

 彼女がいじる髪を束ねるのはいつもの赤いリボン…………ではなく真っ白なリボン。

 

「ん? その白いリボンはどうしたんだい?」

 

 髪を触りながらちらちらと嶋田の方に視線を飛ばすいじらしいモニカに、彼はいま気付いたとでもいうようにいつもとは違う部分を指摘した。

 

「これですか? 実は昨日の夜サンタクロースが来て私にくれたんです……触ってみますか?」

 

「い、いいのかい?」

 

「はい……」

 

 モニカは白いリボンで束ねた自分の髪の房を嶋田に差し出す。

 

 差し出された彼はその長い金糸を束ねて出来た房を手に取ると優しい手つきで撫でながら話を続けた。

 

「金色の髪に白いリボン……なにか神秘的な感じもするね」

 

 指を絡めて撫でたり梳いたりしながらモニカの髪を優しく愛撫し続ける嶋田。

 

 そんな彼の手に触れながらモニカは幸せを感じ取る。

 

「サンタさんが幸せを運んでくれたんです……。嶋田さんのこの手のように、温かい手で……」

 

「ほ、ほぉ~? それにしてもサンタクロース?? ホントに居たんだ……」

 

「ええ、この白のリボンともう一組、青いリボンをもらいました」

 

「そ、そうか、それは良かったね。……いいクリスマスの思い出になったじゃないか」

 

「はい♪ でも、実はもう一つプレゼントを頂いたんです……」

 

 そう言いながら自分の唇を指でなぞるモニカ。

 

 彼女の頬には赤みが差していて、目も少し潤んでいるように見える。

 

「へ、へぇ~、三つも貰ったのか……っ、そ、それは太っ腹なサンタだね」

 

「はい……最高の、プレゼントでした……」

 

 俯き加減で細められた目と紅潮した頬。

 

 唇に当てられたままの指。

 

 そんな彼女の視線は最終的に嶋田に向けて注がれるのだった。

 

「来年こそは……一緒に過ごしましょうね」

 

 

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
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  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
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