帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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聖女

 

 

 

 夜の横須賀は三笠公園。

 

 たくさんの噴水はイルミネーションに彩られ、カップル達が集う中、一人おっさんが黄昏れている。奇妙な光景に移るだろう。

 

 絵にならん。実に絵にならんなあ。映画の一場面でこんな場面があっても良いかもしれないけれど。

 

 現実にしてみると本当に絵にならない。すれ違うカップル達の視線が痛い。

 

 あの人一人で何してるの? さあ、ただの酔っ払いだろうなんて声が聞こえるくらいだ。別に酔っても無ければ素面だ。ただ、彼女と落ち合う約束をした場所がここだっただけ。そう、偶然にもこの場所だったんだよ。

 

 この場所は、俺の二回目の始まりの地と言っても過言では無い場所。

 

 現代戦艦と比べればそのサイズは300mを優に切る小型戦艦がここにはある。これの一回目が稼働していたあの時に俺の二回目は始まったのさ。

 

 一回目のこれはもっともっと小さかった。こいつと比べると駆逐艦に感じてしまうくらいに。それくらいこいつがデカすぎるんだがそれでも100年前の日欧戦争時の戦艦だ。現代艦からしてみれば古臭い。

 

 コイツが古臭いとか、どれだけ異常な技術水準の世界なんだろうかここは。

 

 

 戦艦三笠

 

 排水量:74,000トン(基準)

 

    :79,000トン(公試)

 

    :84,809トン(満載)

 

 全長 :285.0m

 

 水線長:276.0m

 

 幅 :40.9m

 

 吃水 :11.3m

 

 倉崎式ブレイズルミナス:8基

 

 主機 スメラギ式エナジーフィラー:4本

 

 出力 183,553馬力

 

 最大速力 30.76ノット

 

 航続距離 16ノットで10,200海里

 

 乗員 竣工時:2,800名

 

 最終時:3,772名

 

 兵装

 

 新造時

 

 50口径00年式46cm3連装砲塔:3基9門

 

 60口径01年式15.5cm3連装砲塔:4基12門

 

 45口径12.7cm連装高角砲:12基

 

    25mm3連装機銃:10基

 

    13mm連装機銃:4基

 

 最終時

 

 50口径46cm3連超電磁砲塔:3基9門

 

 60口径15.5cm3連装砲塔:4基

 

 45口径12.7cm連装高角砲:12基

 

    25mm3連装機銃:60基

 

     25mm単装機銃:12基

 

     13mm連装機銃:4基

 

 装甲 舷側 450mm+15mm(傾斜20度)

 

 対水雷防御隔壁 245mm~105mm

 

 最上甲板 55mm~80mm

 

 主甲板 270mm〜300mm

 

 合計甲板装甲 300mm

 

 バルクヘッド 390mm~350mm

 

 主砲防盾 700mm

 

 主砲側面 300mm

 

 主砲後面 240mm

 

 主砲天板 320mm

 

 主砲バーベット 600mm~420mm

 

 司令塔 550mm~440mm

 

 搭載機 8機(カタパルト2基)

 

 

 

 聖女

 

 

 

 日露戦争。あの一回目の転生の時、巡洋艦和泉で俺は目が覚めたんだったよな。戦艦三笠。この艦もまた俺の運命の艦の一つなんだろうと思う。同じ日露戦争を戦っていたのだからな。こっちの世界じゃ日欧戦争で俺は関わっちゃいないが。

 

「運命の艦、か」

 

 俺の運命の始まり。

 

 この手を真っ赤にする運命の。

 

 今でもあの『衝号』は必要だったと思うしやるべきだったと思う。日本を、大日本帝国を完全勝利に導くために。

 

 ただ、それでも、もう一人の俺が人殺しと叫ぶのさ。現代社会をただのサラリーマンとして生きてきた一回目の俺には関係の無い戦争に口を出して大勢を殺し。

 

 最終的に億の人間を殺して見せた殺人鬼だと。覚悟した。覚悟を持って嶋田繁太郎はそれに望んだ。

 

 だが、神崎博之はどうか?サラリーマン神崎博之にその覚悟はあったのか? それを問われると無かったとしか言えないのかも知れない。

 

 だって仕方が無いだろう。現代で戦争とも人殺しとも無縁で生きてきた神崎博之に、その覚悟を求めるなんて、土台無理な話なんだ。

 

 だから俺は見える。神崎博之の方には見えてしまう。億の生命の真っ赤な鮮血が、この両手からドクドクと溢れ出てくる様が。

 

 何時いかなる時でも見えてしまう。戦いの中でも、政治の中でも、普通の生活の中でも、会合の中でも、そして彼女と居る時でも。

 

 だから俺は思うのさ、全ての人に平等なる正義をを信念とし、正義とは人種種族問わず全ての人に降り注ぐべきもの。

 

 そんな心情を持つ彼女といるのが辛いと思うときが俺にはあるんだ。彼女と俺は逆位置の人間。俺は必要であらば人種種族問わず全てを殺す人間。

 

 彼女は救う者、俺は壊す者、本来交わり逢えないものが交わり合っているこの異常な状態。ふと、嘔吐するような感じがして吐瀉物も出ないのに俺は嘔吐。

 

 出てくるのは、胃液ばかり、英霊達の眠る三笠記念公園でなんてことをしているのだろうか。

 

 億の血で穢し、嘔吐でも穢すのか。神崎博之、お前は嶋田繁太郎になりきれ。そうすれば軍人として行うべきを行ったという名目が立つ。

 

 それが逃げだとしても、覚悟をしたのは嶋田繁太郎なのだから。

 

 

 ――嶋田さん!!――

 

 

 ああ、来てしまったじゃ無いか彼女が。神崎博之のままな俺の前に彼女が。

 

 神崎博之とは、嶋田繁太郎とは逆位置に住む彼女が。

 

「大丈夫ですか嶋田さんっ!!」

 

 具合を悪くしうずくまっていた俺の目に、長い真っ直ぐな金色の髪と、白いリボンが見えた……白い、リボン、俺がプレゼントをしたリボンを、結んでくれているのか。

 

 いつものように、両の横髪を身体の前に流し、髪にリボンを結び、余ったリボンをくるくると髪に巻き付けて。俺と同じで辛い過去を持つ優しい彼女は其処にいた。

 

「あ、ああ、なんでもないんだ。ちょっと、嘔吐感がしてね」

 

 両手から溢れ出してきた血を見て。

 

「気にする必要は無いよ」

 

 そう、キミには関係の無いことだ。これは過去の俺の事、嶋田繁太郎の犯した大罪で有り、神崎博之の犯した大罪だから。キミには。

 

 ふと見上げたとき。俺の目は奪われた。真っ白い服を着た彼女が、モニカ・クルシェフスキーがそこにいたからだ。

 

 嘔吐感が消えていく……。その美しき彼女に触れられる……、それだけで。まるで何もなかったかのように胸のつかえも消えていった。

 

 いつもと同じで、いつもと違う彼女。髪はいつも通り背中に流され、白のファーのコートに身を包んだ天使が、噴水のイルミネーションを背後にして立っていた。

 

 聖女――一瞬そんな言葉が口から漏れていた。聖女はそこに佇み、俺の心配をしている。美しい白と金色にはとても似合わない暗い顔だ。ダメじゃ無いかそんな顔をしちゃ。キミの美しさが台無しになってしまう。

 

 ああ、違う。俺が、他でもないこの俺が聖女モニカの顔を曇らせているんだ。

 

 俺はその場に立ち上がる。

 

「大丈夫だよモニカさん」

 

「本当に、大丈夫なのですか。ご気分が優れないのでしたらお出かけはまた明日にでも」

 

「いや、本当に大丈夫だ」

 

 サラリーマン神崎博之、軍人嶋田繁太郎、モニカ・クルシェフスキー。せめて君の前では強い俺でいさせてくれ。衝号の覚悟を決め、実行したあの強き自分の時の俺で。

 

「モニカさん、リボンしてくれたんだね。白いリボンを」

 

「彼処へ行くときいつも喪服で行きます。ですから今日は白い自分であろうと思いました。似合って居るでしょうか?」

 

 キラキラ光る白い衣服。リボンも光っていて、髪は当然キラキラ。俺はついその美しく犯しがたい聖女の如き彼女に手を出していた。

 

「モニカさん……」

 

 綺麗な白い彼女。悲しい黒では無い、いつもの黄緑でも無い、汚れ無き白一色。

 

「し、しまだ、さ、」

 

 頭から触り。長い髪を五指に絡めて撫で梳く。滑らかな髪はするりと滑り抜けていき、指に髪の感触を残す。

 

 白い衣服、白いヘッドドレスから触れ、柔らかな手触りを楽しみながら。肩の衣服を止める白いリボンの胸元を触る。

 

 もちろんリボンを外したりはしない。そこから、白いドレスを身体の線に沿って触れていき。最後に身体の前に流されている金色の長い髪を何度も何度も撫でてて。彼女の両頬に手を当てた、

 

「冷たいね」

 

「ふ、冬、ですから、わ、たし、その、」

 

 両頬に触れたまま俺は何も言わず、何も聞かず、白い聖女の唇を奪っていた。

 

「ん、う……」

 

 聖女は抵抗をしなかった。ただただ、俺の唇を受け入れてくれた。聖女様、俺には罪があるのです。誰にも言えない大罪が。シャルル・ジ・ブリタニアの罪がかすれてしまうほどの、貴女と逆位置にあるほどの罪が。

 

 俺は唇を通じて彼女に告げた。もちろん彼女には言葉も思いも伝わらない。ただ口付けを交わしたという事実だけがある。

 

「ん、んん……」

 

 でも、そこからの口付けは普通で、俺はどうしてだろう。モニカ・クルシェフスキーを求めてしまった。美しくも儚く、儚くて悲しい。望まれて生まれてきたはずなのに、誰にも祝福されない彼女を。

 

 なら、俺が、嶋田繁太郎が祝福してあげよう。祝福させて欲しい。だって。

 

「ん……俺は、君と出会えて幸せだよモニカさん」

 

 そういって白い聖女を抱き締めた。

 

「し、まだ、さ、」

 

「生まれてきてくれて、ありがとう」

 

「ッッ……!!」

 

 俺は見なかった事にした。イルミネーションと噴水が照らし出した聖女の瞳から、一筋の涙が落ちたことを。

 

 

 しばらく、そのまま抱き締め合っていた。十分だろうか二十分だろうか。

 

 聖女が。

 

「買い物、行きましょう」

 

 嬉しくも恥ずかしく、はにかみながら言うまでの間。

 

 

 

 

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
  • レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
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