帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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バレンタインネタ 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー


嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー 小ネタ
バレンタインネタ 嶋田さん×モニカさん


 

 

 

 2月14日に悩む女と男

 

 

 

 まだ、出撃命令は下りない。南天が僅か二週間でサウジアラビア・オマーン・アラブ首長国連邦・カタール・バーレーン。

 

 中東諸国を次々と攻略し、盟邦大日本帝国と共に我が祖国神聖ブリタニア帝国の衛星国となる形で難を逃れたクウェートを横目に。

 

 ヨルダン・パレスチナ・シリアと、中東全土が南天の手に落ちてよりこの方。国際社会では南天の覇権主義に対して抗議の声が上がっては居るが。

 

 どの国も、南天と完全に国土を接することとなってしまった中華連邦さえも、大きな行動には出られない。

 

 声は上げてもその先、事を起こさない。それもそうだろう。南天に抗える国などほぼ無いのだから。

 

 南天に抗することが出来るは盟邦大日本帝国と、我が神聖ブリタニア帝国の二国のみ。

 

 力のブリタニア、技術の日本とはよくいったもの。これに追いついてきたのは南の大国、南半球の実質的な支配者たる数の南天。

 

 その名の通り、南天条約機構軍は絶大な数を傘下に持つ。最大80,000,000の正規軍、最大100,000,000のテロ組織、そして最大1,700,000,000という途方も無い数の唯一神・南天の現人神を信奉する狂信者。

 

 まさしく数の南天だ。その南天が進めようとしているのは中華侵攻。南天の小間使いなユーロピアでは無い。私には南天の求める物が分からない。

 

 一見彼らの侵略行動は無作為に見えるが、そこに作為を感じるのは何故だろうか? 考えすぎか?

 

 そして南天と高麗、彼の国々の関係性は? あのシベリア戦争で使われた驚異の兵器は一体なに? あんな代物を高麗如きが開発できるはずが無い。シベリア南部を焼き尽くすほどのあのような物を。

 

 何もかもが分からない。

 

 ただ、ただ一つだけ言えることは、彼らに正義など無いと言うこと。嘘で塗り固められた偽善しか彼らには無い。

 

 彼らが真に正義を語るならば、正義を行う者が居なければならない。私の――。

 

「はっ!ははっ、 ――なんとも傲慢、ですね……私の様になどと。所詮は国と国の正義。どちらも正義に違いありません。それを傲慢にも私の様になど……」

 

 招集が掛からない為か、情報が降りてこない為か。私は少しばかりいらだっているようです。

 

「まったく、らしくもありませんねナイトオブラウンズ第12席次。モニカ・クルシェフスキー。貴女には常に冷静さが求められます。時に陛下の御座艦であるグレートブリタニアの指揮も執らねばならぬ身だというのに」

 

 まるで冷静さに欠けている。自嘲する私。これでは駄目だ。この様なことではナイトオブトゥエルブ失格だ。そうして落ち込んでいるとき。

 

 そう、そうして落ち込んでいるときに必ず。必ず……。

 

「モニカさん――」

 

 彼は声を掛け、私に触れてくださるのです

 

 

 

 ※

 

 

 清国、大清連邦。正直彼の国はなんの問題も無いとしか考えて居なかった。よもや、よもやその属国でしか無い高麗があんな……。

 

 シベリア戦争、我が国では失笑を買う呼び名であるシベリア紛争は予想外の結末を迎えた。

 

 高麗が高麗海軍と高麗陸軍があれらを動かし、この世界には存在しないはずの猛毒をまき散らす火球兵器を使ったのだ。

 

 司令部で隣にモニカさんが(嶋田繁太郎の護衛)居る中で「バカなッッ!!あれが存在するはずがッッ!!」シベリア戦線の前線を映し出していた無人偵察機の捉えた映像に、夢幻会一同、幾人かの人を除いて驚いていた。

 

 モニカさんも「ど、どうしてあんなものが存在しているの?!」と隣で驚いていたが。

 

 辻さんと、伏見宮殿下は「やはりな」と仰っていた、すでに高麗が、いや高麗じゃ無い。高麗如きがあんなもの、この世界に存在しないはずの兵器を作れるわけが。

 

『南天、合衆国オセアニア』

 

 知っていたのだ。そう言えば何度も夢幻会の席で言っていた。オセアニア近海、ニュージーランド近海での群発地震について。

 

 これがその答えだと言うならば分かる。

 

「はぁ~」

 

 まさか高麗如きを警戒せにゃならん日が来ようとは。

 

 何発だ。何発持っている。

 

 中華牽制用として清・中華国境に一発、シベリア前線に二発これでユーロピア軍は総崩れとなった。

 

 まだあるだろう。まだ持っている。少なくとも防衛・挑発の為にあと一発はある

 

 そんなものを持ち込ませてしまった。ギアス能力の中には通称無貌と呼ばれるギアスがあるという。

 

 このギアスは恐らく南天の盟主と見られる男と、もう一人使える者、通称無貌が居る。

 

 効力は対象者・対象物の世界からの隔離。衛星にも映らなくしてしまえる完全なるジャミング。

 

 このギアスで持ち込まれた可能性が高い。高麗半島など完全に我が日本の警戒網の中だからな。

 

「はぁ、いかんな。あまり考え込むとろくな事にならない」

 

 戦争は終わった清国。高麗共和国軍の圧勝で。それが結果だ。推移はまた時間のあるときにでも振り返ろうか。

 

 廊下を歩き居間へと行き。今から見える縁側を見つめたとき。

 

 

 そこには見事な黄緑色をした足首まである丈の長いマントを床に大きく扇状に広げ、マントの上をさらりと滑る美しい金色の真っ直ぐな髪は長く、床にまで付いて渦を巻き。

 

 後ろ姿だけを見てもその美しさに魅了される我が家の同居人御年二十歳の――。

 

「モニカさん」

 

 モニカ・クルシェフスキーが縁側に座っていた。

 

 

 

 ああ、いつもだ。いつもだな。悩み、苦悩し、答えの出ない漆黒の坩堝にこの思考が落ち込んでいるとき。

 

 いつも彼女はこの目にその姿を映し出してくれる。鮮やかな黄緑色のマントと、美しい金色の長い髪を輝かせ、靡かせて。

 

 まるで、まるでそう。俺を、嶋田繁太郎を思考の渦から救い出してくれる天女のように。

 

 そっと、近づく。足音を立てずにそっと静かにだ。無論無駄だろう。ここはもう彼女の射程距離。

 

 疾うに気付かれているだろうに、悪戯心に押されて。六十超えたおっさんが何をやっているのか。

 

 だがこの美しい女性に、心の奥に住み着いた女性に、俺は俺を隠しきれないんだ。

 

「モニカさん」

 

 斯くして、悪戯は成功してしまった。後ろから抱き着くなどと言う昨今のカップルがやる「だーれだ」「俺でしたー・私でしたー」なんて悪戯が成功してしまった。

 

 しかも相手はあのナイトオブトゥエルブ、モニカ・クルシェフスキーだぞオイ?! 成功しちゃってどうするんだよ?! この後なにも考えてないぞ!?

 

 俺の腕に圧されて皺を刻むマントは裾が少しめくれて、裏生地の紫色の生地を見せている。そう言えば表の生地は黄緑で、裏の生地は紫色だったな。

 

 このマントの色も彼女によく似合う。黄緑と紫、ナイトオブトゥエルブのマント。俺の大好きなマントの色だ。

 

「繁太郎さん……」

 

 モニカさんの黒い手袋が、俺の、彼女の身体を抱き締めている俺の手を捉えた。

 

 繁太郎さん……彼女が俺の名を下の名で呼ぶようになってまだそれほど経って居ないというのに、これ程しっくりくる感覚なんだな。

 

 運命で結ばれた人、きっとモニカさんは嶋田繁太郎の運命の人なのだろう。

 

「いま、少し考え込んでおりました」

 

「偶然だよ。俺も思考の坩堝にいた」

 

 考えることは違えども、思考の海に沈んでいたのは同じ。

 

 俺はふとモニカさんの首の後ろに左手を入れて、その長い金髪を一息に撫で梳いた。

 

 

 

 少しばかり指を入れての撫で梳く髪は長く流麗。手に擦れる触感はこの世に二つと無い麗しさ。

 

 長すぎる髪は腰下を越え、臀部へと下がり、床に広がる黄緑色のマントの上に渦を巻いていて。俺はその毛先までも綺麗に梳き通した。

 

「あ、あの」

 

 戸惑うモニカさん。その横顔は心なし赤い。確かに赤い。鬼灯の色。

 

「髪、長くて綺麗なモニカさんの金色の髪の手触りを楽しんでいたんだ。表地が黄緑色と裏地が紫色このマントもとても似合っていて、モニカさんは美しいね」

 

 歯の浮く台詞がこうもすらすらと出てくるのは、たぶん今日が世間的に盛り上がるあの日だからに違いない。

 

「せ、背中に当たる繁太郎さんの胸板も、とても、たくましいです……。腕も、枯れ枝のような腕では無く、太く逞しい……私の主君の腕です」

 

 

 ※

 

 

 背後から忍び寄る気配。いつもなら簡単に捉えられるのに、今の私には捉えることが出来なかった。

 

 そっと、首の両側より延ばされたのは、私の知る手で、私の安心できる両手で、私はその手の行方に身を任せました。

 

「繁太郎さん……」

 

 私の主君、私の大好きな方、私の、モニカ・クルシェフスキーの愛を捧げている男性。この愛は死しても変わらない。来世でも再来世でも、私は繁太郎さんを愛することとなるでしょう。

 

 その愛する方が私を抱き締めている。ああ、なんて愛おしいのでしょう。愛おしさが募り行きます。

 

 私の首の下に彼の右手が入れられる。そうするのかは分かります。いつも為されている事ですから。

 

 一息に私の髪を撫で梳いていくのです。指を入れて慈しみを込めてくださりながら。

 

 床に広がるマントの上で渦を巻く私の髪の毛先のその先まで、彼の手指は梳き通されます。

 

「あ、あの」

 

 

 少し照れくさいです。こうされることが分かっていても、それでも女としては照れくさい。

 

「髪、長くて綺麗なモニカさんの金色の髪の手触りを楽しんでいたんだ。表地が黄緑色と裏地が紫色このマントもとても似合っていて、モニカさんは美しいね」

 

 髪を褒め、マントを褒め、次に褒めるのはきっと。

 

 ですので、先に私から責めてみました。その心の思うままに。

 

「せ、背中に当たる繁太郎さんの胸板も、とても、たくましいです……。腕も、枯れ枝のような腕では無く、太く逞しい……私の主君の腕です」

 

 帝国海軍出身の繁太郎さんは、そこらのなよなよとした男性には無いたくましさがある。

 

 心技体、全てが揃っているご本人は否定なさいますけれど、彼の過去を知り、その過去を乗り越えた今に居る彼を知る私には、そうだと言えるのです。

 

「モニカさん、顔、見せてくれるかな」

 

 ああ、私に責めさせてはくださらないのですね。

 

「い、今はその」

 

 今はきっと私の顔は鬼灯の色に染まっていることでしょう。とてもこの様な顔を見せるのは恥ずかしい。

 

 ですが、繁太郎さんは少し強引に。

 

「ナイトオブゼロモニカに告ぐ私の方に向きなさい」

 

「せ、せこいです。ずるいです。それは命令ではありませんか!」

 

 命令をされてしまいました。ナイトオブゼロ、嶋田繁太郎の騎士としての命令を。

 

「そんな事は聞いてないよ。答えは?」

 

「い、yes・MyLoad」

 

 うう、恥ずかしいです。

 

「……やっぱりだ」

 

「え?」

 

「やっぱり君のスカイブルー、マリンブルー、二つの蒼に例えても良い蒼い瞳は美しいよ。眉が隠れるくらいで切り揃えられた前髪も。身体の前に流された二本の赤いリボンで纏められ巻き付けられた横髪も。モニカ・クルシェフスキーの全てが美しいよ、美貌の我が騎士――ん」

 

 褒め殺しのような予想できた言葉に続いたのは――続いたの、は、まさ、か、の接吻、でした。

 

 

 

「し、し、し、し、繁太郎さっ、く、口付けっっ」

 

「あ、あははっ、すまん。だが、その、モニカさんとは、最近、時々、キス、してるから、さ……いいかな~って、今日、バレンタインだし、ね……その、俺とモニカさんは、こ、こ、婚約者、だしね」

 

 ええ、はい、そうです。私ことモニカ・クルシェフスキーと、彼こと嶋田繁太郎さんは、一身上の都合により婚約関係にあります。

 

 も、もちろん、行為は口付けまでで、夜の、所謂、せ、せ、せ、性行為は、結納が済むまでは致しません。

 

 繁太郎さんの、大日本帝国側はともかくブリタニアの大貴族とも成れば格式もあり、そう簡単には。

 

 さ、昨今はその様な古い考え方よりも、新しき考え方や価値観をこそ取り入れていくべきだと考える派閥も増えてきておりますが。

 

 我がクルシェフスキー家は1000年を数える歴史と伝統を持つ格式高き侯爵家という上位貴族。そう簡単に事は運ばないのです。

 

 ど、ど、ど、同衾等と、いや、同衾一緒に寝るまでは毎夜しております。もしかすれば繁太郎さんは私を抱きたいとお、お、お、お、お想いなのかもし、知れません。

 

 わ、わ、わ、私にも、その様な邪な考えが、な、な、な、無いわけでも無いのです。

 

『嶋田さん、押しに弱いですからねえ、モニカさんが押せば簡単に事は成就を見ますよ?』

 

 はっ!? い、いけません、辻卿の悪しき言葉に惑わされては。私はモニカ・クルシェフスキーはナイトオブトゥエルブとしても、クルシェフスキー侯爵家次期当主としても、淑女たらんを第一義としなければならないのですから。

 

「し、繁太郎さんお退きをっ」

 

「うわっ」

 

 つい押し退けるようにして繁太郎さんを私は押しておりました。

 

 押して、押して、押し倒しておりました。

 

 そうです。男と女と言えども六十代の男性と、二十歳のラウンズとでは力の差があったのです。

 

 

「……」

 

「……」

 

 私のマントがバサリと広がり、私と繁太郎さんの身体を覆い隠します。

 

 マントの裏生地の紫色が濃い闇を私と繁太郎さんの間に創り出します。

 

 しゅるると音がしたのは私の髪の毛がマントの生地を滑り落ちた音でしょう。

 

 身体の左右に綺麗に分かれて髪の毛は滑り落ちたようです。マントの裾の間だより金色の髪が見えておりますからね。

 

 

 

 ※

 

 

 

 ええーっと、いやこれ。これは俺、モニカさんに襲われてるのかなと一瞬現実逃避。

 

 身体の位置的に少しずれたせいで、フェイスとフェイスはぴったんこな状態で、頬はくっつき合っている。

 

 広がるマントの視覚的には表地の黄緑よりも、裏地の紫色がよく見える。

 

 丁度そう、モニカさんのマントにモニカさんと俺が、掛け布団でも掛けられているような体勢と言ったところ。

 

 毎夜一緒に寝ている状態が、今この場で、この甘いことをしてしまっている場で、再現されてしまっている。

 

 山本は『リーライナとはもうその、寝た。日本男児、惚れた女を抱かずして何が男か』そんな事を言っていたが、こっちは単なるサラリーマンなんだよ。モニカさんといずれはそうなると分かってても、こんな覚悟も無いトラブル的な物で致すとかそれは違うだろ。

 

 俺は改めてモニカさんを、モニカ・クルシェフスキーを見る臀部を越える長い金髪は真っ直ぐでくせっ毛も無い。蒼い、碧いその双眸には一遍の曇りさえも無い。正義は全ての人に平等に降り注がれるべき。目鼻立ちに容姿と合わせてその信念さえもが美しいときた。

 

 ああ、ただしく。正しく。いい、女だ。このいい女と俺は……。

 

「繁太郎さん――あ、ン」

 

 二度目のキス。今度のキスは、キスと呼べる物を越えていた。

 

「あむっ、ん、ちゅっ」

 

 俺は自分の舌をモニカさんの口の中に入れてしまい。彼女の口内を荒らし回った。

 

 

 

「んっ、ンンっっ」

 

 歯茎から始まり、歯茎をなぞっていっては歯の溝も同じようになぞる。

 

 歯の裏に侵入しては下口内を舐め尽くし、上へと上がっていくときには序でとばかりに彼女の舌の裏側を優しく舐める。

 

 舐めて舐めて、舐めてやっては絡みつく。

 

「んんっっ、はっ、あんンうっっ」

 

 両手は彼女の背に回し。彼女の両側左右の身体に分けられるように垂れ下がっていた金の髪を手で手繰り寄せ集め。

 

 手の平で一本に掴んではその艶々でさらさらの、長く、長く、美しい金髪の触り心地を堪能する。

 

 手の指で梳き、何度も梳き、その髪先は長くこの指は届かなくても、俺の物なんだと俺自身を擦り付けるように、擦り込む。

 

 ああ、モニカ、モニカ・クルシェフスキー。俺の嶋田繁太郎の、神崎博之の女。ああ、モニカ、君は俺の女なんだ。俺の運命の人なんだっ!

 

「ん、あむぅ、い、いけ、っ、いけませんっ」

 

 必死に抗ったのだろう。彼女の抵抗が実を結んだのか、俺の舌を自身の口内に入れたまま器用に発されたその声音に、俺はハっ?!となってモニカさんの口内から舌を抜いた。

 

「こ、これ以上は、その」

 

 い、勢いに任せてやってしまった。女性相手に、モニカさんを、愛する彼女を相手に何をやってるんだ……!

 

「お、俺こそ、俺の方こそ君を傷つけるような事をして、ごめん」

 

「い、いえ、傷ついてはおりませんっ。ですが、その、歯止めが掛からなくなってしまいます、その、私、も……」

 

「き、君も……?」

 

「繁太郎さん、私は自制心の強き騎士です。誇り高き騎士です。ですが、ですが、一人の女……、なのですよ? 愛する繁太郎さんからの本気の求愛を、私は、モニカ・クルシェフスキーは、受け入れるでしょう」

 

 そうすれば婚前交渉となってしまう。それはクルシェフスキー侯爵家としては少々具合が悪い。絶対に駄目だとは言わないが。伝統貴族の中でもかなりの力を持つ貴族だけに立場という物があるのだ。

 

 そう告げるモニカさんは、俺の唇に静かに自身の柔らかい唇を落として、その場に立つ。

 

 マントを払い、少しだけ愛着深そうに俺の触っていた彼女自身の髪を、彼女は梳き払い。

 

「ほら、繁太郎さん」

 

 言って、俺に手を伸ばした。

 

「モニカさん……ありがとう」

 

 応じて手を取る。黒い手袋に包まれた彼女の手を。

 

 

 

「そう言えば縁側で何を?」

 

「南天の事と、高麗の手に入れた大量破壊兵器について考えていたのです」

 

「はは」

 

「如何なされました?」

 

「いやなに、考えることまで同じだなあと」

 

 少し静寂が二人を包む。

 

 開いた縁側の戸から風が吹き込み、モニカのマントと見事な金色の髪を揺らせる。

 

「綺麗だね」

 

「えっ?」

 

「え、ああいや、モニカさんは綺麗だねって」

 

「そ、その様なこと……私は、普通ですよ」

 

「いやいや、モニカさんを普通と言ったら世界の七割が残念なことになってしまうよ」

 

「そんな、大げさですっ」

 

 また静寂が訪れ風が吹く。

 

 切り出したのは嶋田だった。

 

「そういえば今日は」

 

「2月14月覚えておりますよバレンタインデー。忘れるわけが無いじゃ無いですか。恋する乙女として」

 

「ははっ、それは嬉しいな。モニカさんの独特な味を今年も楽しめるなんて」

 

 感性豊かで独特な味だ。うっかり昇天しそうになるくらいに美味しい。

 

 人は不味いなんて言う人も居るけれども、俺はモニカさんの味が好きなんだよ。

 

 俺を知ってくれた彼女のその味が。

 

「独特とは、不味いとでも言いたいわけですか?」

 

「そんなことないさ。君のチョコレートは心の底から美味しいから」

 

「……」

 

 静寂は続かない。

 

 モニカはバサッと金縁とブリタニアの紋章、そして黄緑色と紫色に彩られたマントを翻す。長い金髪と共に。

 

「それでは今から作ります」

 

「い、今からかい?」

 

「はい。作り置きよりも当日に愛を込めてお渡ししたいのです。私の、モニカ・クルシェフスキーの愛情を嶋田繁太郎――神崎博之さんへ」

 

 神崎博之さんへ。この言葉を、この名を告げるときのモニカが本気である事は嶋田も、いや博之も知っている。

 

 秘密の名前であるからこそ彼女と婚約したその日に全てを告げた。自分は最悪の殺戮者。億の人間を殺してきた殺人者であると。

 

 自嘲気味に、自分を責めるように告白する博之にモニカは、それは過去のあなたがあなた自身の御国を守ろうとして行ったのでしょう。

 

 そうして彼の身体を優しい黄緑色のマントで包み込み、繁太郎さんは、博之さんは一生懸命に生きてきた。あなたの正義に救われた方も必ず居ります。

 

 ありがとう。私に本当のあなたを教えてくださって。私は知りたかったずっと、愛するあなたの本当を。そして思った通り、愛するあなたは、博之さんは、私の愛したあなた通りの方でした。

 

 

 その言葉に嶋田繁太郎と神崎博之は救われた。心に抱え持ってきた物を受け止めてくれる女性に出逢えた幸せに歓喜した。

 

 

「モニカ様っ、騎士服にマント姿で台所にはお入りにならないでくださいっ!」

 

「大丈夫ですっ、髪は纏めておりますっ!」

 

 

 副官さんとモニカさんのやり取りが聞こえてきたけど。まあ些事だろうな些事。

 

 

 

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
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  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
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  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
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