帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

25 / 379
CP:嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー

甘くはないです。

苦いです。


あなたの秘密

 

 

 

 

 昼。昼食を早く終わらせた俺は駐日ブリタニア大使館に予定があって足を向けていた。

 

 この大使館、とにかく他国の大使館と比べて無駄に豪勢で広い。

 

 このあたり、ブリタニアの権威主義的なところが露骨に現れていると言えなくも無いが。他国は他国。うちはうちってって奴かな。

 

 ずらりと並ぶ豪勢な部屋達。

 

 その部屋の一つ一つの前を通っていくと、昼食時だからなのかメシの匂いがしてくる。

 

 本来なら彼らは貴族。外の一等地に建てられた貴族専門、金持ち専用のお店へと向かうべきだろう。

 

 いや、実際にそういう所で昼食を食べている者も居るし、日によってはそういう店で昼食を食べたりするだろう。

 

 ただ一人を除いて。

 

 ※

 

 そろそろ出来ましたね。

 

 

 立ち止まった部屋の中より聞こえる声。

 

 

 カップヌードルチリトマトソース味。一時は消えていたこのラーメンを食す機会を貰えたことを天に感謝し、本日も一日平等なる平和を目指して。

 

 

 君の平等なる平和とは変わったカップラーメンと交換に出来る物なのか。

 

 もちろんそれが冗談だと知ってはいても突っ込まずにはいられない。

 

 これ以上ナイトオブトゥエルブの失態を見るのも悪いと思った俺は、モニカさんに声を掛けた。

 

「失礼、こちら、ナイトオブトゥエルブ、モニカ・クルシェフスキー様のお部屋でしょうか?」

 

「はッ!?ひゃひゃ、ひゃい少しお待ち下さいね。」

 

 カップラーメンを見えないところへと片付け始めるモニカさん。無駄だって音も匂いも消せないんだから。俺、部屋の前にいたのだから。

 

「あー、モニカ・クルシェフスキー殿。遺憾ではありますが、わたくし全て見ていたのと。匂いの方も良く匂っておりましたよカップヌードルチリトマトソース味」

 

「はううううッ! し、嶋田さんに見られたのでしょうか」

 

「いや、俺、今日昼に大使館来るって行ってたよね君に会いに」

 

 そういうと。彼女はチリトマトの様に頬を赤くして俺を見た。

 

 黄緑のマントが風もないのに靡くのは彼女がぶんぶん手を振るっているから。タイトなスカートの白い騎士服。彼女がお仕事をしている時の姿。

 

 家でも時々見る姿で、騎士はいつでも強く有り平穏と平等なる正義の為にあらねばならないのですと呟いている。その心の在り方は素晴らしい。でも、少しくらい肩の力を抜いても良いと俺は思うよ。

 

 肩肘張った生き方は疲れるからね。

 

「はい、そうでした。新作の復活についつい忘れてしまっておりました。騎士として失格です…………」

 

「君ほど騎士らしい騎士もいないよ。少なくとも俺に取って騎士と言えば――」

 

 俺は歩いてモニカさんの執務机による。立とうとして失敗したのか彼女は尻餅をついていた。

 

「モニカ・クルシェフスキーキミ以外に居ない。なんてこと言ったら他の騎士さんに怒られちゃうね」

 

 俺はそんなモニカさんの頭を撫でて。頭から髪へと五指を入れて撫で梳いていく。ついでにマントの背中部位も撫でてあげて、すっかり慣れたなこういうの。二人で居る時のこういった行為。本当は良くないのだろう。お嫁に行く前の女性の身体を舐め回すように触るだなんて。

 

 それがたとえ、俺の所であったとしても。俺が入り婿として向江は居るとしても。俺はモニカさんの手を引いて立たせると。彼女を真正面に見据えて。

 

「し、しまださ――」

 

 ガバッと抱き締めた。彼女は最強の騎士だ。俺の腕の中から脱することなんて簡単なはず。でも彼女、モニカ・クルシェフスキーはそうしない。

 

 ただ、自分を抱き締める手にすりすりと頬擦りをするのだ。その頬擦りはやがて俺の頬にまで及び、俺たちは二人静かにこの部屋で頬擦りをする。

 

 お互いが大切だから。彼女の言う平等なる正義の中に存在する唯一の不平等たる俺に、彼女は愛撫という極上の返答を以て返してくれるのだ。

 

 家にいるときでも、外に居る時でも、任務の最中でも、この執務室でも、宮廷の舞踏会でも。何処に於いても彼女の、モニカ・クルシェフスキーの特別は、俺、嶋田繁太郎らしい。

 

 モニカさんの腕が俺の首に伸びる。これはそれの合図。あの行為の合図だ。書類が何枚か落ちたようだけれども、彼女は気にしない。

 

 眼前に迫るのは金髪の白人の顔。美麗で美しい女性の顔。今年二十歳を迎える女性の顔。金の眉は細く長く、金の前髪は眉が隠れるくらいで切り揃えられ。金の横髪は左右共に赤いリボンで縛り、くるくると髪の房に巻き付けている長い金の髪の房に。

 

 後ろ髪は腰よりも長くこちらも癖の無い真っ直ぐな金色に輝く髪の毛。両の瞳はスカイブルー? マリンブルー? 美しき蒼天の空の色、深き深海の蒼。その二つに例えられる美しさ。

 

 身体の線は恥ずかしながら胸はそこそこ大きく、腰はくびれ、無駄な肉の付いていない、騎士らしい鍛えられた身体をしている。この身体に抱き締められたこと。何度あったろう。

 

 艦所は俺の事をよく抱き締めてくる。そしていつも言うのだ「嶋田さん分が足らない」と。俺分ってなにと聞くと、嶋田さんのエネルギーですと帰される。

 

 嬉しくて、幸せだ。俺なんかから幸せのエネルギーを補充してくれるなんて・

 

 その時に感じる幸せは、他の全ての幸せと引き換えにしても良い物。だが、いつも思うんだ。あまねくひとに平等ある正義をと唱える彼女を前にしているから思うんだ。億の人間と動植物を殺し、血にまみれたこの手で、この美しい女性に触れてしまってもいいのかと、いつも悩む。

 

 彼女の知らない俺。神崎博之の犯した大罪。知られては成らない。知られたら軽蔑の眼差しと、恐怖の視線を受ける。

 

 ナイトオブテン、ルキアーノ・ブラッドリー氏はいつも言う。あなた方は一体どれだけ殺せば、一体どれだけの人間を闇に送れば、そこまでの匂いをさせることが出来るんですか?

 

 そんなルキアーノ氏の前で屈み目線を合わせた辻さんがただ一言「知りたいですか?」と質問しただけで、ルキアーノ氏は震え上がったとナイトオブワン、ヴァルトシュタイン卿は言っていた。そして貴方たちは一体何者なのだとも。

 

 俺たちは一体。その答えは簡単だよ。大量殺戮者だ、歴史と世界を超えてやって来た稀人だよ。

 

 雑念に支配されていた俺は、せまるモニカさんの唇を、敢えて拒絶した。

 

「嶋田、さ――」

 

 いまのオレにモニカさんの美しい唇を受け入れる資格は無いと思ったから。

 

 ただそれだけ。

 

「モニカさん、カップヌードル冷めちゃうよ」

 

「あ…………」

 

 俺は誤魔化し、モニカさんに書類を押し付けて、彼女の執務室から逃げるように立ち去った。

 

 マントの裏生地の紫の色が、やけに悲しげに見えた。

 

 

「モニカさん。モニカ・クルシェフスキー……俺のこの両手は、億の人間の血で汚れているんだ。そして状況が合致すればまた億の人間を殺すだろう。そんな、殺戮マシーンなんだよ。君の手に、触れては成らない人間なんだよ……」

 

 いつも触れているけど今日は触れられない。それを思い出してしまったから。だから、今日はダメなんだ。聖女の如き在り方を持つ君に、大魔王が触れては成らない。君の光が損なわれてしまうから。

 

 雨が降ってきた。丁度良い気分だ。このまま雨に濡れて返ろう。

 

 

 

 あなたの秘密

 

 

 

 本日正午。嶋田さんが駐日ブリタニア大使館を訪ねてこられました。

 

 お約束していた書類の受け渡しにです。すっかり忘れていた私は売れ行き不振なのか消えていた、でも今はレギュラー化したようなカップヌードルチリトマトソース味を昼食として食べようと用意していました。

 

 そこを声を掛けられてしまったのです。急いで隠しましたが見つかってはいないでしょうか?

 

 ですが無情にも。

 

「あー、モニカ・クルシェフスキー殿。遺憾ではありますが、わたくし全て見ていたのと。匂いの方も良く匂っておりましたよカップヌードルチリトマトソース味」

 

 見られていたのとしられていました。

 

「はううううッ! し、嶋田さんに見られたのでしょうか」

 

「いや、俺、今日昼に大使館来るって行ってたよね君に会いに」

 

 そういわれると、顔が充血して真っ赤になってしまいました。肌が白いので赤みが差すと良く分かってしまうのです。

 

 

 嶋田さんの視線は私のマント。騎士服。へと自然と巡り、私を品定めしているかのようです。ああ私は騎士失格なのでしょうか。

 

 しかしでも、嶋田さんは時には肩の力を抜いて仕事をした方が良いよと言うに留めました。騎士失格では無いのでしょうか。

 

「はい、そうでした。新作の復活についつい忘れてしまっておりました。騎士として失格です…………」

 

「君ほど騎士らしい騎士もいないよ。少なくとも俺に取って騎士と言えば――」

 

 モニカだという彼。私はドキンと心臓が鳴ってその場に崩れ落ちました。

 

 そんな私のところへと嶋田さんは歩いてきて執務机に寄りかかって参ります。立とうとして失敗した私は完全に尻餅をついておりました。

 

 そんな私の頭を嶋田さんは撫でてこられて。頭から髪へと五指を入れられ、私は髪を撫で梳かれました。髪を撫で梳かれることはこれが初めての事ではありません。もう、家でも、部屋でも、縁側でも、外でだとて、何処ででも髪を撫で梳かれます。マント越しに背中も撫でて下さって、私はこの瞬間が好きです。嶋田さんが私に触れて下さる一瞬一瞬が。

 

 私と嶋田さんは今年に入り、婚約をしました。何れ嶋田さんはクルシェフスキー家に入り婿という形で入ることとなります。急に嶋田さんは私を立たせ、私を真正面から見据えます。いつ見ても精悍なお顔。

 

「し、しまださ――」

 

 そのままガバッと抱き締められました。こ、このようなところで、困惑する私。如何に最強の騎士を名乗ってはいても私も一人の女です。こうして急なる行為に出られてしまえば。この腕から脱すること、出来なくもありませんが、私は呪縛が掛かったかのように身体が硬くなってしまっておりました。

 

 ただ、一つ、出来た事。それは、私を抱き締める彼への手への頬擦り。頬擦りだけは身体が動かずとも出来ました。私はその頬擦りを次第に彼の頬にまで及ばせ、彼もまた私が擦り付ける頬に合わせるように頬擦りを成されて、私たちは二人静かにこの部屋で頬擦りをする。

 

「ん、ん、っんん」

 

 お互いが大切だから。でも、ですが、彼は時折彼を見せてくれなくなります。彼の心がいつも見えるのに、彼の心が闇に閉ざされ見えなくなることがあるのです。私にはそれがとても不安。彼がいつの日か何処かへと消えてしまいそうで。彼はいつも極上の愛撫をくださいます。

 

 家にいるときでも、外に居る時でも、任務の最中でも、この執務室でも、宮廷の舞踏会でも。何処に於いても私の、モニカ・クルシェフスキーの特別は、嶋田繁太郎なのです。

 

 私は腕を伸ばします。彼の首へと。これはそれの合図。あの行為の合図なのです。彼もお分かりくださっているはず。書類が何枚か落ちたようだけれども、私はは気にしない。

 

 眼前に迫るのは平たい日本人特有の顔。でも生還で勇ましい海軍軍人だった彼の顔が其処にあります。今年還暦を一つ超えるのでしょうか。そんな男性の勇敢でたくましく見える様。太く黒い眉、髪は短く刈り上げられ。髭を蓄えているお姿が格好いい、今は普通のスーツながら、海軍の制服なら、沢山の勲章で彩られ、彼の戦歴のすごさを物語る何よりの証明となっております。

 

 短く刈り上げられた髪はくせっ毛の無い直毛、彼が私の髪を触る時、私も彼の髪を触ります。お互いに触っていないところなどないでしょう。両の瞳は深い深い黒? どこまでも深く闇の其処深淵へと続いているかのような。この瞳が私を不安にさせるのです。嶋田さんを連れ去ってしまう深淵なのでは無いかと。

 

 たくましい胸板に、腰は太く、骨格筋が鍛えられてきた証。無駄な肉の付いていない、鍛えられた身体をしている。この身体に抱き締められたこと。何度あったろう。

 

 その時に感じる幸せは、他の全ての幸せと引き換えにしても良い物。でも、いつもこの手が私を抱くとき彼は必ず躊躇する。まるで触れてはいけない物に触れようとしているかのように……。どうして……?

 

 私の知らない彼。私の知らない彼の闇。知られては成らないのかも知れない。知ってはいけないのかもしれない、知られたら私と彼の関係が終わってしまうほどの秘密、恐怖の視線を受ける。

 

 ナイトオブテン、ルキアーノ・ブラッドリーはいつも言う。あなた方は一体どれだけ殺せば、一体どれだけの人間を闇に送れば、そこまでの匂いをさせることが出来るんですか?

 

 そんなルキアーノの前で屈み目線を合わせた辻卿が、ただ一言「知りたいですか?」と聞いただけで、ルキアーノは震え上がったとナイトオブワン、ヴァルトシュタイン卿は語っていた。そして貴方たちは一体とも。

 

 彼らの秘密、彼の秘密。その答えは簡単だよ。君とは決して相容れない、逆位置の存在なんだよ。本当はね。

 

 その言葉を思いだしていた私。せまる私の唇を、彼は、拒絶した。

 

「嶋田、さ――」

 

 君とは決して相容れない、逆位置の存在なんだよ。本当はね。

 

「モニカさん、カップヌードル冷めちゃうよ」

 

「あ…………」

 

 その言葉が頭にこびりつき、心に纏わり付いて離れない。

 

 嶋田繁太郎――私の愛するお人――貴方は一体、何者なのですか?

 

 

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
  • レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。