無責任な適当男は悪い魔法使いに説教しました。
きょろきょろ。
辺りを見回す、この家の誰かが見ていないのかのチェックだ。
「誰もいねーよな」
この家はとにかくあちらこちらに人が居ることがあるから困る。
普段は子供みたいな老人が一人でいるだけなのだが、この家の老人の親戚達が居ると途端に人が増えて騒がしくなるのだ。
老人曰く警備員らしい。この家の関係者たちは特別な人間が多く、狙われやすい立場にあるという。
「大げさだろ、民間人狙うとか誘拐犯に狙われてるでもあるまいし」
この家の特殊事情を知らない男、玉城真一郎は愚痴をこぼしながら目的の場所に辿り着く。
「あった、あったああった。これだよな確か」
この家の主人である老人の居間のガラスケース。
鍵をかけ忘れたのか必要としないのか鍵は付いておらず、中身は直ぐに取り出せる。
「やっぱこれだ」
玉城が手にしたそれは小瓶。
小瓶には蓋がされており、入れ物の側面には『注意、試供品VV様用』と書かれたシールが貼り付けてあった。
「何だよあのジジイ。これは危ないから絶対に触るなとか言いやがってたくせして単なる試供品じゃねーかよ。あいつケチか。ケチ臭いジジイだな。金持ちになるとケチになるってーけどあのちっこいケチジジイめ」
何の変哲も無い試供品。無料の品である。
それを触るなと注意された物だからどんな物かと気になって見に来たのだ。
「へへ、試供品ってならいいよな?どんなもんか何個かもらいっと」
勝手に蓋を開けて勝手に口に放り込む。
飴の類いと聞いていたからどんな味かと気になっていたのだ。
「お、結構いけるじゃんか。あのジジイはケチ臭すぎなんだよ。こんなにあんのに全部自分の物にしようなんざいかんよなあ」
美味しい味がした。昔から飴はよく口にする方だがそれらと比べてもかなりいい。
ジジイは金持ちだ。そのジジイが手に入れた試供品なら結構高級な物かも知れない。
自分の様な貧乏庶民が口にできないような物かもしれないからラッキーと考え。
そう思って飴を舐めていると、少しずつ眠気が出てきた。
「あ、・・・なんだ、眠っ・・・・急に眠くなって」
気が付くと意識が飛んでいた。
※
悔しい・・・
苦しい・・・
嘘つきめ・・・
魔女め・・・
気が付いたとき。
彼は不思議な異空間にいた。
どこだ、ここ。
異空間には怨嗟の言葉が溢れている。
恨み、憎しみ、嘆き、悲しみ。
大きすぎ、多すぎる負の感情が、辺りを満たしているのだ。
鈍い、人からそう言われる彼にもその憎悪に触れて分かった。
これはヤバいものだ。悪意の塊だと。
ただ自分に向けられている物ではない。
この一点をもって大丈夫だろうと判断した。
実にお気楽な人間である。
う・・・ぐ・・・っ
その憎悪の中、誰かの苦しみの声が聞こえる。
喘ぎ苦しみ助けを求める声だった。
たす、けて・・・っ
助けて オル・・・っ
「あにやってんだ?」
苦しみの声に気付いた彼は、苦しみ喘いでいたその誰かに声を掛けていた。
「だ、だれ・・・・?」
苦しんでいた誰かの声が彼の声に気付き反応する。
声の様子からしてまだガキじゃなかろうか?
大人になる前くらいのガキ。
「てめえこそ誰だよ。なんでそんな怖がってんだ?」
「こわ、い・・・わた、くしが、怖がっている・・・」
「ああ、さっきからこの変な気配に怖がらされてんだろう。怖いんだろお前」
相手の姿は双方共に見えない。
憎しみと怨嗟の渦巻く空間で声だけが響いている。
「わたくしは、怖くなどありませんっっ、怖がってなどいないっっ」
張り上がる虚勢の声。
だが彼には何となく分かった。
知り合いの誰かによく似た雰囲気がその声の主から感じられたから。
「怖いんだろ。これが」
周りの怨嗟を手で振り払っていく彼。
彼の手に触れられた憎悪が散っていく。
振り払う闇の先に彼女の手はあった。
手だけがそこに浮かんでいた。
「ほら、来いよ」
「あっ・・・」
「出るぞこんな辛気臭エとこ」
手を引きずり出す彼。
しかしその手の持ち主は動かない。
「ダメ、です・・・わたくしは、いけません」
「なんでだ?」
変なことを言い出す手の持ち主。
怖い、怖い、助けて欲しい、そう願っているのにここから動けないと言うのだ。
「わた、くしは・・・セレモニーを・・・・ウィキッドセレモニーを始めなければならないのです・・・」
「うぃきっど、なんだって?」
内容を聞いた。
声の主は素直に答えてくれた。
どうして話してしまったのか。
声の主にも分からない。
ただ、彼の声がとても大切な存在のように、いつもこの身を守ってくれているように、そんな存在に思えてしまったから。
戦友でもない、親友でもない、自身が操ってきた者達でもない、この得体のしれない手の持ち主に全てを打ち明けていた。
世界の安定の為。
この身一身で恐怖を体現し、人々の恐怖の象徴となる為。
大切な人達を守るため。
人々から忌み嫌われることで消えていき、恐怖を無くしてしまうため。
「わたしは、魔法使い・・・オズの魔法使い・・・・・悪の魔女なのですから・・・」
そう、この身は悪の魔法使い。
この恐怖から逃げてはいけないのだ。
この怨嗟と憎悪を受け入れなければならないのだと。
そう言った彼女に。
「じゃあ、誰がお前を助けんだ?」
「たす、ける・・・わた、しを・・・」
「ああ、こんな暗いところで怖い怖いって泣いてるガキを大人が助けてやらんでどーすんだ。俺みたいないい加減な奴だって泣いてるガキの一人くらい助けてやれるんだぜ」
手に、その空間に浮かんだ手だけの存在の手に、つぶつぶの突起を持った飴玉が一つ置かれた。
「これ、は・・・?」
「金平糖。飴だよ」
手に置かれたそれ。
小さな飴玉。
「食ってみろよ」
言われるままその手は闇の中、その手の持ち主がいるだろう闇の中に手を入れていった。
かりっ、聞こえる咀嚼音。
「あ、まい・・・です」
「うめえだろ。昔々に知り合いのガキにくれてやったことがあんだよ。そしたらそいつ嬉しそうにしてたからな」
泣き止んだか?
闇の中から聞こえるぶっきらぼうな声に優しさを感じた。
闇の中にいる手の持ち主は、涙が薄れていくのを感じた。
「おい、しい・・・」
「はは、そりゃあよかった。とっておきの魔法の飴玉なんだよ。奇跡の男が持つ魔法を超えた力だ。こんな闇でも払いのける力があるんだぜ!!」
闇はまだ深く、辺りに立ち込め、二人の姿を手以外隠したままだった。
「ふ、ふふ・・・うそ、つき・・・」
言葉が漏れていた。
「嫌い・・・みんな嫌いだった」
告白のような声。奇跡の男とやらは黙って聞いている。
「いつも無神経な男」
誰かを指している。
「あの小賢しいところが嫌い」
また誰かを指した。
「ヘタレのくせに女の子を守るときだけ張り切って嫌い」
それもまた誰か。
「嫌いだった!親友ヅラして善人ぶって厚かましい!!!!」
一際強く誰かを指していた。
「お母様を殺したのはわたし?ユーリアを殺したのはわたし?みんなを殺したのはわたし?一切がわたしには関係ない!!わたしは全てを壊す!わたしに付きまとう世界の全てを壊し尽くすの!!!」
そして。
「わたしはあの子が大嫌いだもの!!だから呪いをかけたのあの子に呪いを掛けてやった!!!」
最後の慟哭のような告白。
それをただ聞かされていた奇跡の男は。
「だからなんだ」
そう言った。
何でもないという様子で。
「結局てめーはてめーが嫌いなだけで、ホントはみんなが好きなんじゃねーか」
「みんなが、好き?」
「ああ、お前、誰よりも自分を嫌ってるだろ?自分以上に自分が嫌い。じゃあその他に向ける感情は裏返しだ。お前はお前が嫌いでお前はみんなが好きなんだよ。でもってそんなてめー自身さえてめーはてめーで嫌ってる」
「わたしがわたしを嫌いなだけで、わた、しは、みんなを、好き?」
「ああそうだよ。誰よりもそいつらを愛してる。ただてめーがそれに気付いてねえだけだ。じゃあいい、そういうお前を嫌いなお前を誰が好きになる?答えは一つ。お前以外のみんなだ」
「・・・・」
「世界を壊すだあ?あーあー、聞こえよがしな大嘘だ。ホントは自分が壊れて憎しみ集めて全部終わりにしたいだけ。そんなこと誰が望んでるよ。てめー以外の誰も望んでねえ自分勝手な逃げ口上なんだよ」
逃げるプロの俺が言うぜ。
「結局てめーはてめーから逃げられねえ。てめーがどれだけみんなを嫌ってる振りをしようがてめーは気付いてないだけでみんなのことが好きなんだからな」
奇跡の男はもう一つ、コンペイトウと呼ばれる飴をくれた。
「それ食ってもう寝ろ・・・・うぃきっどなんたらをやる前に、もう一度てめーと向き合え。どんだけてめーがみんなを愛してるか気付かされるだろうよ。なんたって――」
眩しい、全てがどうでも良くなる笑顔が闇の中に見えた気がした。
「このオレ様の、奇跡の男の奇跡の前じゃあな、悪い魔法使いの魔法は子供だましの手品でしかねーんだから」
笑顔が闇に消えていく。
「見栄張って無理して背伸びをしているガキを見てるとイラつくんだよ。俺は大人だ、そんで奇跡の男だ。そんなオレ様がお前に奇跡をくれてやるぜ。ありがたいと思いやがれよ!」
怨嗟と憎悪の闇はその手の持ち主の周りからいつの間にか消えていた。
奇跡の男を自称する手の持ち主によって闇は余さず散らされていた。
「奇跡の、男・・・・」
一体、あの人は何処の誰なのだろう。
彼の消えていった空間を、覚悟を決めていたはずの少女は放心したかのように力を失って見つめる。
張りつめていた空気。纏わりついていた怨嗟と憎悪の闇はもうない。奇跡の男が消し去っていったから。
温かい・・・
とても大きな温かさがあった・・・・
誰も居なくなり、気配の消えた空間でその手の持ち主。
本当はみんなが大好きなのだと言われてしまい、奇跡を掛けられた一人の少女は手に残された一粒の飴玉を口に入れ。
「あま、い・・・」
その優しい味に触れながら一粒の涙を落として、その場に崩れ落ちるように眠ってしまうのだった。
※
「――いっ」
「んっ」
「――おいっ」
「んあ、なんだよ」
「なんだよじゃない馬鹿。またこんなところで寝ていい加減にしろ。僕の私室は君の寝所じゃないんだぞ」
目が覚めると、黒いマントに身を包んだ小さい子供みたいな実年齢ジジイが立っていて俺の背中を蹴っ飛ばしてきた。
「痛ェっ、なにすんだクソジジイ!!」
「こんなところに入り込んで勝手に寝ている空き巣みたいな奴にジジイ呼ばわりされる筋合いは無いね」
良く見知る身元引受人、一応俺の保護者であるジジイが立っていた。
自室に入り込まれたのがご立腹なのか頬を膨らませ怒っている。
「私室? 俺、居間にいたんだけど」
「知らないよ、今此処で寝てる君にそんなこと聞かされて僕にどうしろっていうのさ」
「いや、変な飴玉――」
「あ~~っ、君、夢見ドロップ食べたなぁぁっ」
「げっ?!」
ばれた。口を滑らせてしまった。
「あれは試供品だし特別品なんだぞ?!僕の友人達の機関が研究中の試作品で副次効果が分からないから誰にも食べさせないようにって僕個人用調整されて貰ってきた奴なのになんてことしてくれるんだっ!」
怒りだしたジジイの説教モード。
逃げられないと判断した俺はその場で座らされて延々文句を聞かされる羽目になっちまった。
しかしあの変な夢、なんだったんだ・・・・?
おしまい~、追加で解説的なの。
夢見ドロップ。休日本編にて登場したドロップで、夢幻会の辻政信が開発にかかわっているらしい。
食べた者に不思議な夢を見させる飴。
どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。
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嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
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嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
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山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
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南雲忠一×ドロテア・エルンスト
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玉城真一郎×クララ・ランフランク
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玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
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澤崎敦×井上直美
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レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
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原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
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ルルーシュ(休日)×ミレイ
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オデュッセウス×皇神楽耶
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ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
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枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
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コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
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高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
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鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-