帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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嶋田さん×モニカ


満面の笑み

 

 

「本年度の国内総生産も二桁増の一京数百兆円ですか。安定しておりますね」

 

 丸眼鏡の奥の瞳が満面の笑みを受かベている。

 

 がくがくぶるぶる震えている枢木ゲンブは、自分は今日勝ったのだと心の中でガッツポーズをしていた。

 

「まあ、軍事費にも500兆以上回してもいいでしょう。これだけの収入があるのならば」

 

 すると倉崎翁が。

 

「うちの造船をフル稼働かね」

 

 と大笑い。

 

 伏見宮も嬉しそうだ。

 

「南天との張り合いで膨らんでばかりの軍事費も、これだけの異常な好景気ならば増やしても問題はなさそうだからな」

 

 阿部も笑顔でこれで内閣解散しても政友会の大勝は間違いないでしょうと報告書を読んでいた。

 

 

 みんなが笑顔。満面の笑顔。満面の笑顔なのだ。

 

 ふとこの会議室の扉の外。本来なら彼女も其処にさえも入れないが、本日は護衛が体調を崩していたために特別に外にてこの部屋を守っている。

 

 駐日武官としての仕事はリーライナ・ヴェルガモン卿に引き継ぐ形で。

 

 ナイトオブトゥエルブ、モニカ・クルシェフスキーは夢幻会の護衛に就いている騎士の事が気になった夢幻会元老の一人、大日本帝国影の支配者の一人嶋田繁太郎。

 

 

 

 満面の笑み

 

 

 

「少し失礼」

 

 嶋田繁太郎は自分の席を立つと、過去最高益を叩き出している数値に喜んでいる面々の間を縫い、一つの会議室の扉を開いた。

 

 扉の外。そこには、上下白、タイトなスカートな純白の騎士服に、表地が黄緑色で裏地が紫色の足首まで届くマント。黒いブーツを履き、隙無く立っていた女騎士の姿があった。

 

 腰下膝裏へと流れるくらいの美しく真っ直ぐな金色の髪に、蒼穹の、或いは深い海の蒼い瞳を持つ女性。

 

「モニカさんお疲れ様です」

 

 かっこいい騎士の体現者である彼女。優しい騎士の体現者、思い遣り深き女性。そんな彼女は静かな微笑を称えて嶋田を迎え入れた。

 

「まだ、会議中ではないのですか?」

 

 モニカは、彼女は凡そ感付いている。此処に居る人間は、本当の意味で日本を支配している者たちであることを。お飾りの枢木ゲンブや澤崎敦とは根本的に異なる存在達なのだと。

 

 そんな中に自分は呼ばれてかなり緊張していた。

 

 嶋田は、そんなモニカの傍に寄ると、家でしている様に、何も言わずに彼女の身体をそっと抱き締めた。

 

「あ、あの、し、まだ、さ……、」

 

 モニカは驚くももがかない。もがかずにその抱擁を受け入れる。

 

 抱き締められる身体。

 

 皺を刻むマント。

 

 金色の真っすぐな長い髪は幾度も幾度も繰り返し梳かれ、その手指の心地よさにモニカは蒼い瞳をふっと閉じる。

 

「モニカさん、今も微笑んでいたよね」

 

「え?」

 

 しゅ、しゅ、モニカの長い金色の髪を梳き撫でる音だけが響く。手櫛が無いから手指で救う。いつも行っている事だ。

 

 これはクルシェフスキー侯爵や、モニカの父であるシャルル・ジ・ブリタニアの前でさえ行った事がある。

 

 だから何です。私にこの子を預けているのは貴方方でしょうと。侯爵もシャルルも微笑ましく見つめているのが印象的だ。

 

 嶋田卿に、シゲタロウに託して良かったと二人はモニカの居ない場所で話していたのを覚えている。

 

 そんなモニカ・クルシェフスキー。彼女はいつも微笑む、たおやかで淑やかな静かな微笑を浮かべている。

 

 ただ、満面の笑みを中々浮かべない。

 

「一度ね、いや、また、かな? モニカさんの満面の笑みを見たいなと思ってね」

 

「それは……、難しい、注文ですね……私、微笑みはしますけれど」

 

 満面の笑みは中々浮かべられない。

 

 嶋田は周りを見渡す。見渡し、カメラの死角へとモニカを引っ張っていく。

 

 そして、唐突に振り返り、モニカを抱き寄せ。

 

「ちゅ──」

 

「んうっ?!」

 

 普段絶対にしない事をしていた。嶋田繁太郎という男らしくない事を。

 

 誰だろうこの人は? モニカも一瞬そう思ってしまう程に積極的。

 

 その理由は。

 

「ほら、モニカさん驚いた」

 

「そ、それは驚いてしまいます! い、いきなりの、その、く……口付け、なんて……」

 

 嶋田の顔は真っ赤。モニカの顔はなお真っ赤。二人ともこの様な行為は慣れていないのだ。

 

「あー、その、ね。百面相じゃないけれどさ。モニカさんもこうして唐突な何事かがあれば驚いたりする訳だよ。だからさ、その、満面の微笑を浮かべられる時だってあるはずなんだよ」

 

 嶋田はモニカの柔らかい微笑が好きだが、きっとクルシェフスキー侯爵や、実父であるシャルルさえ見たことがない満面の笑みを独占したいなと考えたのだ。

 

 夢幻会のメンバー皆が笑うこの嬉しい場所で。

 

 すると、モニカの口角の両端が持ち上がり、瞳がにっこりとした微笑みを形作っていく。

 

「いま、だけ……ですよ。繁太郎さん……」

 

 ニコニコ微笑む美しい騎士に見惚れた嶋田は、その騎士をそっと掻き抱くのであった。

 

 

 

 

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
  • レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
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