帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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クルシェフスキー家の家令

 

 

 

クルシェフスキー家の家令

 

 

 

 

 

 

嶋田繁太郎。

彼はモニカ・クルシェフスキーと結婚し彼女がラウンズを引退するまでの間は嶋田家の当主を勤めていた。

しかし寄る年波もあり ラウンズ引退後はクルシェフスキー侯爵として家督を継ぐ妻に付き添いブリタニアに渡る都合 家督を親族に譲り日本を発った。

 

到着したクルシェフスキー領はとても広く国一つが所領のような広大さ。

 

この土地をこれから妻と共に治めることになるのかと考えると また政治家時代に逆戻りしたような気分だった。

 

「シゲタロウ どうですか我がクルシェフスキー領は 肌に合うでしょうか?」

 

モニカは心配だった。

長年一緒に暮らしてきて夫のことは誰よりも知っていたが 違う土地 違う風土や気候になじめるだろうかと。

日本はうらやましいほどすべてに恵まれていた。

長らく日本で過ごしてきたからわかる。

たまに帰るブリタニアにいるとなぜか日本が恋しくなると。

モニカにとって日本はすでに故郷と同じなのだ。

第二の故郷という単純な概念ではなく本当の故郷であるブリタニアはクルシェフシキー領と同じくらい日本に郷土愛を抱いていた。

それだけに日本生まれの生粋の日本人である嶋田がクルシェフスキー領に合うかどうか不安なのだ。

自分の故郷を愛する夫 嶋田繁太郎にも好きになってもらいたい 愛してもらいたい。

そんな気持ちがモニカにはあった。

 

だが嶋田は事も無げにいう。

モニカの心配や不安など無用の長物であるように。

 

「問題無いよ 所変わったくらいで心身が折れるようならば政治家なんか務まりはしないさ」

 

総理大臣とは激務だ。

軍人時代も激務だったが総理の頃の方が心労で倒れそうだったほど。

たかだか別の国に来たくらいでやっていけないことになることなどあるものか。

それに第一ブリタニアは別の国とはいえ日本と家族同然の国。

なんども来たことはあったし風習についても各地方毎にほぼ網羅している。

 

とくにクルシェフスキー領は日本からの移民も多く 日本の風習が改良されたような物も見受けられる地域。

慣れるもなにも 最初から心配事なんて露程もなかった。

嶋田は一目でクルシェフスキーの土地を気に入っていた。

風土風習人柄 すべてにおいて日本と 慣れ親しんだ東京と同じくらいに。

ここに骨をうずめることも もう決めている。

でなければ日本を出ることはなかっただろう。

愛するモニカと共に一生を送りこの地で眠る。

年齢を鑑みれば自分のほうが先に逝くことは如何ともしがたいところだが それでも彼女と共にこの地で眠るのだ。

そう決めてここまでやってきた。

 

51: クルシェフスキー家の家令 :2016/12/14(水) 19:09:03

 

 

 

愛するモニカと モニカ・クルシェフスキーと共に。

 

「俺は一生を君と共に生きるよ 辛い時も幸せな時も 君が好きだから 君を モニカだけを愛しているから」

 

「シゲタロウ 私もあなたを守り共に生きます この命果てるそのときまで」

 

しばし抱き合い 口づけを交わす嶋田とモニカ。

車の運転手は気が気ではなかった。

己の主人たちが抱き合ってキスしてるのだ。

そりゃ気も使うしできればこの場を退散したいところである。

だが残念なことに運転中の車でそれはできない。

気になるからミラー越しに見てしまう。

嶋田の唇とモニカの唇がしっかり重なり合っている場面を。

 

んう・・・・・

 

合間に聴こえるモニカの声はキスを受けてのつぶやき。

美しい主人の喘ぎにも似た声に運転手は緊張しっ放しだった。

その声 本来なら聴いていいのは嶋田卿ただ一人。

ナイトオブトゥエルブ モニカ・クルシェフスキーのハートを射止め 結婚した夫である彼だけが聴いてもいい許される声。

その声を聴いている罪の意識が運転手にはあった。

何分くらいだろう?

 

とにかく長い長いキスだった。

嶋田の頭や背中に回した手で彼の髪や背広を握りしめるモニカ。

 

モニカの頭に背に回す手で彼女の長い金髪やマントを撫でたり握りしめたりする嶋田。

 

見てきた中では疑いようもなく最愛の夫婦による愛の交換のとき。

 

神聖にして不可侵の夫婦だけの時間を運転手はちらちら見てしまう自分が悪いことをしているような気分になっていた。

 

やがて静かに離れた唇には熱いキスを意味する糸が伸びて嶋田とモニカの間をつないでいた。

 

「キス・・・・どうしてもしてしまいますね」

 

ほほの赤らむモニカがいうと。

 

「私こと嶋田繁太郎はモニカ・クルシェフスキーを愛しておりますものでどうしても口づけを交わしたくなるのです・・・・・・・で 満足かい?」

 

「うふふ 罪深いおひとですねあなたは 私の心をさらって離しません ナイトオブトゥエルブ モニカ・クルシェフスキーも 嶋田繁太郎の前でだけはひとりの女となってしまいますもの」

 

「はははっ 離すだって? それは無理だ 君に出会ったときにはもう離れられなくなってしまったからね」

 

「嘘ばっかりです 最初は私のことなんて年下の娘 孫娘 くらいにしかみてなかったくせに」

 

「いまは愛する女性だよ というわけで昔のことは勘弁してほしいな」

 

「ふ~んです」

 

甘い甘い夫婦の時間。

触れ合ったままに続く濃密な時間だった。

ただ車で移動しているそれだけだというのに。

二人は共に過ごす時間はどうしても甘くなってしまう。

新婚だから? 違う 嶋田繁太郎とモニカ・クルシェフスキーだからに決まってる。

 

52: クルシェフスキー家の家令 :2016/12/14(水) 19:13:16

 

 

「まあそのあたりはさておきとして 領地の風土が合う合わないの前にそれより俺はモニカがそのマントと騎士服のままなのが不思議な感じがするよ ラウンズを引退したというのにどうしてまだその騎士服とマントを脱がないのかな?」

 

モニカはいまもってラウンズ時代の騎士服とマントを公務用の制服としていた。

ブリタニアにはこの手の公務服を着用している貴族が多いのでさほど気にすることでも無かろうが それでも気になる物は気になる。

彼女はこれより騎士ではなく領主になるというのに。

ラウンズ時代と変わらない格好を自分の制服としているのだ。

 

まあさほどに難しい話でもない。

モニカはラウンズであリ騎士。

それも嶋田だけのと誓ったただ一人の。

 

「領主は領主でも騎士は騎士です 私はあくまでも騎士なのですから それに私にはシゲタロウの剣としての役目がありますので騎士である自分を辞めるわけにはまいりません」

 

シゲタロウの剣。

ずいぶん昔捧げてくれた彼女の剣はいまでも自分を守ってくれているようだった。

 

「・・・・・・・そう そうだったよ そうだったな すまないね・・・・モニカという個人は俺だけの剣であることを 俺が失念しちゃいけないことだった モニカ・クルシェフスキーは俺だけの剣だというのにごめん」

 

「もう しっかりしてくださいね我が主 私はあなたをお守りする剣 昔も今もこれからさきもずっと」

 

微笑むモニカ。

間もなくクルシェフスキー邸に到着だ。

 

やがてポートランドから少し離れた郊外まで来ると見えてきた宮殿。

欧風の大きな宮殿が彼女の生家クルシェフスキー邸らしかった。

 

車が到着。

 

第一歩を踏み出す嶋田。

 

「これからはここが新しい家というわけか」

 

門の中には騎士や使用人達が新領主と新領主の夫を出迎えるために整列していた。

 

「堂々と歩かないとな 政治家時代のように」

 

「参りましょうシゲタロウ」

 

「ああ行こうかモニカ」

 

二人は並んで門を潜り邸の真正面である大きな扉に向い歩いて行く。

嶋田は上下黒のスーツで決め モニカは白い騎士服にライトグリーンのマント 長い金色の髪には赤いリボンを巻き付けるといったラウンズ時代の出で立ちで。

 

堂々と歩むその様はまさしく主たるの姿。

領主 王 クルシェフスキーの主人として相応しい二人の晴れ晴れしい姿だった。

使用人や騎士達は彼等二人が通り過ぎる瞬間 深く腰を曲げ 或いはクルシェフスキー家の家紋が描かれた領旗を高く掲げ歓迎の意を示す。

 

今日から新領主夫妻による新体制が始まるのだ。

そして玄関である大扉の前まで来るとモニカの父と母が出迎えてくれた。

 

「お久し振りにございます父上 母上」

 

モニカが挨拶をしシマダが続く。

 

「お久し振りですクルシェフスキー侯爵閣下 クルシェフスキー侯爵夫人」

 

「嶋田卿も御壮健でなによりです 我が娘共々 宜しくお願いします」

 

目上の相手を立てる挨拶に嶋田は止めに入った。

 

「おやめくださいいまの私は娘婿の立場であり大日本帝国元宰相でも嶋田伯爵でもないのですから」

 

こうして滞りなく和やかに進んでいく嶋田のクルシェフスキー家入りとモニカのクルシェフスキー侯爵継承。

そして場が落ち着いた頃 嶋田は家令だという男性を紹介された。

 

「・・・・・え?」

 

顔にかけられた丸い眼鏡がとても印象的。

妖しい空気を醸し出しつつ モニカの父の紹介ではなんでも淑女を育てるのが生き甲斐だという どこかで見たことのあるような男性。

 

「初めまして旦那様 クルシェフスキー侯爵家家令 マーク・ツ・ジーンと申します」

 

嶋田は感じた。

胃が痛くなるような予感をなぜかこの瞬間に感じたのだった。

 

 

 

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
  • レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
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