帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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日雇い作業員

 

 

日雇い作業員

 

 

 

 

 

 

その日、嶋田繁太郎は家でのんびりしていた

 

のんびりしている家は広さからして、一般的には屋敷と呼ばれるくらいの敷地面積を持つ家で、同居人や家政婦以外にも、多数の警備員や同居人の親衛隊の一部が常駐していた

 

当たり前のこと、門番もプロフェッショナルな警備員だったりする

 

これらは嘗て嶋田が日本の宰相だったからということも大いに関係していた

 

嶋田の家には庭もある

 

庭園と呼べる広い広いお庭だった

 

嶋田は余暇をのんびり過ごしながら、お庭を眺めていた

 

お庭には草むしりをしている人がいた

 

「いつもすまないねえ」

 

ぺこり

 

嶋田の声に草むしりをしていた人が頭を下げた

 

310: 名無しさん :2018/05/17(木) 18:52:01

 

 

モニカ・クルシェフスキーは昼前に書類仕事を終えていた

駐日ブリタニア大使館で駐在武官を務めている彼女には、彼女専用の仕事場、部屋がある

 

モニカはデスクから立つと、その自分のお部屋から外に出た

 

部屋の外は出鱈目に広い

 

超大国日本の帝都東京には、仮想敵といえどもユーロピア大使館や、日本との破綻寸前だった関係修復について焦っている中華連邦など、鎖国をしているオセアニアを除いた世界に名だたる大国の大使館が集中している

大国にはそれぞれに大きな大使館があったが、中でも日本の同盟国ブリタニアの大使館は、他国の大使館と比べると、一線を越えた広大な敷地面積と官邸を構える大大使館となっていた

 

だから廊下も出鱈目に広いわけだった

 

モニカはその広い廊下を歩きながら休憩をとる為に庭へ向かう

 

道すがら、廊下をこちらへ歩いてくる人がいた

 

掃除道具を持っている

 

モニカは足を止めてその人に声をかけた

 

「いつもご苦労様です」

 

ぺこり

 

モニカに挨拶をされた人は小さくお辞儀をすると、廊下の突き当たりへと消えていった

 

311: 名無しさん :2018/05/17(木) 18:52:36

 

ブリタニア大使館には大使館だけあってもちろん大使の執務室がある

 

駐日大使はなんとブリタニア帝国の第二皇女で、その大使の補佐をしているのは同国の第三皇女だった

 

大使館で駐在武官の任に就いているモニカ・クルシェフスキーは同帝国最強の騎士にして、最上位の貴族でもあるナイトオブラウンズという階級にあり、更には同国の皇族自らが大使館に勤めている

 

その一点だけでブリタニアという国と日本がどれだけ強い結び付きにあるかを示していた

 

コンコン

 

その日本においてのブリタニア帝国最上位者の二人はノックされた部屋扉へ声をかける

 

「入れ」

 

「お入りください」

 

その声に応対する形で人が入ってきた

 

「ああ、お前か」

 

第二皇女のコーネリア大使は入ってきた人に一瞥を寄越す

 

「いつも通り私やユーフェミア補佐官のことは気にせず作業をしてくれ」

 

ぺこり

 

入ってきた人は声をかけてきたコーネリア大使に頭を下げた

 

「いつもありがとうございます」

 

ぺこり

 

入ってきた人はユーフェミア補佐官にも頭を下げた

 

312: 名無しさん :2018/05/17(木) 18:53:11

 

 

夕刻

 

「んー、今日も一日何事も起こらなかったわね」

 

駐日ブリタニア大使館の警備責任者リーライナ・ヴェルガモンは、西の空へ沈み行く夕日に翡翠色の瞳を向けて呟いていた

 

その彼女の後ろへ一人の人が静かに歩み寄ってきた

気配に振り返るリーライナは、その人が誰かに気付いて力を抜いた

 

「あら、あなたでしたの」

 

リーライナの言葉遣いが良家の子女のごとき口調へとあらたまる

 

ぺこり

 

作業着を着たその人は彼女に頭を下げた

 

「今日も一日お疲れ様でした」

 

退館の挨拶に来たその人をリーライナは労った

 

そこへ

 

「あの、お待ちくださいな」

 

突然ユーフェミア補佐官がやってきた

 

「ユーフェミア様」

 

ビッとブリタニア式の敬礼をするリーライナと、ぺこりとユーフェミア補佐官に頭を下げるその人

 

「ヴェルガモン卿、申し訳有りませんが少しだけ席をお外しください」

 

「イエスユアハイネス」

 

少し離れたリーライナは聞き耳を立てる

 

『あの、クルシェフスキー卿に変わった様子はございませんでしたか?』

 

「?」

 

なんのことか分からないとふるふる首を降るその人に、ユーフェミア補佐官は、ホッとしたように胸にてを当てて「そうですか」とごちていた

 

そば耳を立てていたリーライナはまたかと思った

 

「ユーフェミア様とモニカ様の争いはシマダ卿がシャルル陛下のようにお二方とも娶るとかの結論を出さなければ終わらないのかも知れないわね・・・。ほんと、私はいっくんと一対一の恋でよかったわぁ」

 

313: 名無しさん :2018/05/17(木) 18:53:47

 

 

夕暮れ時、一目見た感触では柄の悪そうな印象を受ける男、東京にあるBARの店員玉城真一郎は、開店前の店内を掃除する人に声をかけた

 

「おい、おせーぞ。もうすぐ開店時間だっつーのにいつまでモップがけやってんだよ」

 

玉城は一人、カウンター席に腰掛けながら、掃除をしている人に急ぐようにと指示を出した

 

ぺこり

 

その人は謝るように頭を下げると、言い訳ひとつせずに手際よく仕事をこなしながら、なんとか開店前に作業を終わらせていた

 

「おう、まあ合格点だな」

 

どや顔で決める玉城にその人はぺこり

 

「平店員の分際で偉そうだねお兄ちゃん」

 

そこへ別の声がかかる

それは一人の少女のものであった

 

「うっせーよ、学生がこんなとこ来てんじゃねー」

 

店の奥の勝手口から入ってきた少女のことを玉城は注意する

しかし少女はそれを平然と受け流してみせた

 

「パパの言い付けでお兄ちゃんの勤務態度を見に来たんだけどさ、お兄ちゃんはいつから人を扱き使えるほど偉くなったのかなあ? クララお兄ちゃんの勤務態度を報告しなくちゃいけなくなるかも」

 

「うぐっ」

 

黙らされた玉城は、黙らせた少女クララに口答えができなかった

 

「い、いや、あれだよな。ちょっとじゃれてただけだよな? な?」

 

助けを求めるような玉城にその人はぺこりと頷いた

 

「お兄ちゃんを庇わなくってもいいんだよ?」

 

ふるふる

 

その人は庇ってないよと首を降った

 

「ふーん、まあそれならいいんだけどね。じゃ仕事前のチュー」

 

背伸びをして玉城にキスをしようとするクララ

 

「うおっ、やめろ馬鹿っ」

 

その人はぼーっと眺めながら、逃げようとした玉城の背中を後ろから押していた

 

ちゅ

 

「てめっ、なにするだーーっっ」

 

「うふふふ、お兄ちゃんの唇GETだね。ナイスアシストだったよ―――くん」

 

ぺこり

 

その人はクララに頭を下げて作業終了を伝えると店から出ていった

 

314: 名無しさん :2018/05/17(木) 18:54:28

 

 

ある日の早朝、日曜日

 

嶋田屋敷ほどではないにしろ、広いお庭で、その人は草むしりをしていた

そこはある元大物政治家で、嶋田繁太郎と同等の華族位を持つ者の邸宅であった

 

その人は、庭と面した縁側に姿を現したこのお屋敷の主で、件の大物政治家にして昔は帝国海軍の将帥だった山本五十六と出会した

そして、週に二日、清掃員の一人として呼ばれるブリタニア大使館で、顔見知りとなっていたリーライナ・ヴェルガモンとも出会した

 

「あっ、朝早くから御苦労」

 

焦る山本は浴衣着姿で少し汗ばんでいた

長距離マラソンをしたように顔が紅い

 

「お、お疲れ様です、こ、ここでもお仕事をなされていたのですね」

 

焦るリーライナは、何故かレオタードのような黒と紫紺のKMFパイロットスーツ姿で、こちらも金色の髪が汗に濡れてほつれている、顔も紅色で珠のような汗が幾筋か流れた痕跡があった

 

二人に共通しているのは、息を切らしている様子と汗ばんだ感じに、着衣まで濡れた様子。

 

「・・・」

 

日曜日、時間は早朝。その人が二人と出会したのは偶然だが、二人が交際していることは周知の事実として誰でも知っていた

 

あまりニュースを観ないその人も、それくらいのことは知っている

 

ぺこり

 

非常に丁寧なお辞儀をして、固まったままでいる山本邸の家主と同様に固まるブリタニア大使館の警備員を務める騎士を見つめたその人は、無言のままスタスタとその場を離れた

 

その人は思った

 

着衣でのこともあるだろうと

 

315: 名無しさん :2018/05/17(木) 18:55:00

 

 

同じ日の午後、その人は眼鏡をかけた壮年紳士が見ている中でせっせと草むしりをしていた

 

眼鏡の紳士は辻政信という

 

日本のお金事情に精通しており、財界とも深いパイプを持つ大物政治家だった

 

「急なお呼び出しですみません。この季節、少し雨が続くとこのようになってしまいますので」

 

辻は真新しい雑草の生えた庭を見回しながらその人に言った

 

「寡黙でお仕事熱心な貴方になら万事任せられますね。急な呼び出しでしたので、給金には色をつけさせていただきますよ」

 

316: 名無しさん :2018/05/17(木) 18:55:39

 

 

僕は倉崎の研究所、の敷地に呼ばれていた

 

真由とのデートだったのに、主任に呼び出されてどうしてもって頼み込まれてしまったからだ

 

そのお詫びとしてネズミーランドと、帝国スタジオジャパンの年間フリーパスをもらえたけど、見返りは大きくても真由との約束を破る形になったのは辛かった

 

「いや、ほんとに呼び立ててごめんね。テストパイロットの一人が体調不良で人員に穴が開いてしまってね。高度なKMF操縦技術を持つテストパイロットとなると、君くらいしか思い当たらなくて」

 

主任は申し訳ないと謝る

 

「いえ、僕しか代役が務まらないのでしたら仕方がありませんし・・・」

 

こう、平身低頭に謝罪されたら怒るに怒れない

 

「じゃあ、説明するよ。今日乗ってもらうのは第九世代機の量産タイプでね。強大な敵機を向こうにどこまで戦えるのかを検証したいんだ。知っての通り我が倉崎の開発したフリーダムや、ブリタニアのアルビオンはその高すぎる性能と開発費の為に量産が難しい。いや、量産できるだけの予算はあるんだけど乗り手の方がね。君や、クルシェフスキー卿、他には枢木総理大臣のご子息のスザクくんくらいしかいない。だから性能を落とした謂わばロータイプの、熟練者ならば誰でも操ることが可能な第九世代機を開発できないかと検討されて、プロトタイプだけど数機作り上げたんだ。『我が開発チームが』」

 

数機、フリーダムと似た機体に、まったく外観の異なる見たことのない機体

もう一機はウィンダムと似ている機体と、三種類あった

 

「それで僕が、ですか」

 

「そう君が必要だった。KMFの性能をフルに活かしきることのできる君がね。ただし、今回の対戦相手は以前君が戦ったクルシェフスキー卿と同じくらいに難しい相手だよ」

 

そう言って紹介された対戦相手はパイロットじゃなかった

間をおくことなく、研究所の飛行場がある方から飛んできた、とんでもなく大きな胴体だけでできたような赤銅色の機体と、同じくらいに大きな黄色のボールみたいな機体だった

 

「紹介しよう、というか知ってるだろうね。あの赤い機体の名はエルファバ。もう一機は知らないだろうが機体名はジークフリート。二機ともにナイトギガフォートレスと呼ばれる機体だ。パイロットは」

 

「わ、分かってます。エルファバのパイロットはブリタニアのマリーベル皇女殿下ですよね?」

 

あの大きな機体を乗り回しているブリタニアの姫は有名だから

 

「そうだよそのマリーベル皇女殿下だ。ちょうど日本に来訪されていてね、ナイトギガフォートレスの乗り手としては間違いなくプロフェッショナルであらせられる殿下に協力を取り付けたのさ。そして、もう一機のジークフリートの方のパイロットのかたには少し事情があって話せないんだがね」

 

そう言って、主任は僕をフリーダムと似通った機体に乗るように指示をした

 

ブリタニアのお姫様に協力を取り付けるなんて主任はすごい人だな

顔見知りじゃないとできないよね?

 

でもまさかブリタニアの皇女殿下と模擬戦をすることになるとは思ってもみなかった

あと、ジークフリートっていう機体には誰が乗っているんだろうか

 

尽きない疑問に皇女殿下を待たせるなんてできないと僕はフリーダムに似た機体に乗り込んだ

向こうは二機でこっちは三機

なんだけど、パイロットがいない

 

317: 名無しさん :2018/05/17(木) 18:56:50

 

どうしたんだろうと思ったら、もう乗り込んでいたみたいだった

 

ああ、本当に急なことだったんだな

待機状態で僕の到着を待っていたなんて

 

主任、皇女殿下に対して不敬なんじゃ・・・

 

無線から主任の声が聞こえる

 

『さてと、それじゃマリーベル皇女殿下。Vつ・・・と、ブイさん。お願いします』

 

主任に続いてエルファバのマリーベル殿下が軽く挨拶をなさって、僕、じゃなく、僕の隣にいる実証機の人に話しかけていた

 

『了解いたしました・・・ウフフフ、私お聞きいたしておりますの・・・。あなたがッ!クララとお兄様をキスさせたことをッ!』

 

急加速して突撃してくるエルファバ

すごい殺気だった

 

怖い、この感じは知ってる

真由が怒ってるときとそっくりなんだ

対して僕に向かってくる丸っこいジークフリートは、普通の速度と軌道で来た

 

『君のことは倉崎主任から聞いているよ。悪いね急な呼び出しになっちゃってさ』

 

ジークフリートの人の声はまるで子供みたいな声音で感情を感じさせないだった

けれども、僕を気遣ってくれるその台詞はどこかしら親戚のおじさんとか、そんな雰囲気で。

 

『いえ、これもお仕事ですから』

 

『そう言ってくれると助かるよ。ああそれとね、あっちはもう無視したらいいから』

 

あっちって、皇女殿下をあっちって言ってしまうなんて、この子供みたいな声をした人は何者なん―――

 

 

 

 

『覚悟なさいませヒロシさんッ!!』

 

 

 

 

ヒロシって誰ェェェェーーー!!?

 

 

 

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
  • レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
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