帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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上手くかけているか自信はありませんが逆リクエスト作品です。

CP:玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア

 :レオンハルト・シュタイナー×マリーカ・ソレイシィ


玉城真一郎は一本抜けている
玉城真一郎は一本抜けている


 

 

 

 その日、レオンハルトは非番でグランベリー艦内を歩いていた。とくにどこへとなり寄る用事も無く散歩のような物。ハドロン砲の電子制御室に顔を出したり。

 

 日本製最新式のKMFシミュレーターを見たり。婚約者である辺境伯令嬢マリーカの部屋を訪ねるのに緊張したりと、充実した午前を過ごして。

 

 丁度午後になる頃にグランベリーからネッサローズへ渡る予定なのだ。

 

 KMFで渡る都合上、特に地上へ降りたり、橋渡しのような危険なことをする必要は無い。

 

 現在高度は4,000m。それほど高くない高度とは言え危ない高度だ。万一にも生身で渡ろうとすれば、風に吹き飛ばされて、お空の星となってしまう可能性とてあった。

 

 まあそのように抜けている騎士やオペレーター、乗組員は我がグリンダ騎士団にも、このグランベリーの乗組員にも居ないのだが。

 

 そこまで考えてレオンハルトは「あっ」と思った。若干初めての騎士団への仮入団で第8.5号機KMFヴィンセント・グリンダ・カスタム。エナジーウィング機を手足のように、身体で表現するように乗りこなした、憧れの人の事を。

 

 憧れというのはおかしいか。出逢ってまだそれ程時間も経っていない。羨望の眼差しで見ていたという方が正しい。エナジーウィング機はすでに量産体制が整って久しい。

 

 ヴィンセント・グリンダ・カスタムだけじゃない。普通のヴィンセント・カスタムもそう、なにより8.5号機なんてでたらめな機種を開発した日本にはもう10,000騎単位での量産計画が上がっているらしい。

 

 神聖ブリタニア帝国にとって兄弟のような国、家族その物の国、大日本帝国はでも、そのブリタニアの半歩前を歩き続けて先へ行くことも並び立つことも許さないのだ。

 

 第9世代機だってもう数百の単位で量産が始まっている。史上最強の騎士モニカ・クルシェフスキー専用機第9.5世代KMFフリーダム・フローレンスを開発したのも日本の倉崎重工先進技術開発室。KMFの進化を先導する日本が存在する限り、この恐竜的進化がとまることはないだろう。

 

 おかげで戦闘機、統合打撃戦闘機、浮遊航空艦、軌道衛星等と言った、空の守りにKMFが新たに加わったことは、デヴァイサーとして誇らしいし、KMF開発の会社を持つ貴族としても誇らしい。

 

 それでも日本に後半歩常に追いつけないのは悔しいけれど。そこはそれ、日本とブリタニアの役割分担だ。

 

 日本はその圧倒的なる技術力で。ブリタニアはその圧倒的なる生産力で。お互いを補い合えば良い。

 

 で、エナジーウィング機、話しは件のヴィンセント・グリンダ・カスタムを手足のように操れる人に戻る。

 

 グリンダ騎士団に抜けている人は居ない。上述通り。でも浮遊航空艦13艦、地上部隊33,000名のグリンダ騎士団の総団長、神聖ブリタニア帝国第八十八皇女マリーベル・メル・ブリタニア皇女殿下の嘱託副官なんて、意味不明な役職に就かされている、日本人のデヴァイサー。玉城真一郎さん。

 

 彼は抜けている。間違いなく抜けている。随一抜けている。たぶん単純な戦闘能力では、信じられないけれどKMF戦に限って、玉城さんは、我がグリンダ騎士団最高位の騎士、ナイトオブナイツ・筆頭騎士オルドリン・ジヴォンに匹敵する。

 

 模擬戦での被撃墜率はオズが256なのに対して、玉城さんは254。ほぼ互角だ。

 

 これは信じられないことだった。あり得ては成らないことだった。民間人の玉城さんが筆頭騎士と互角なのだ。実戦では違っていたけれど、生還率100%。彼と共に居た騎士も彼に救われ生還率100%。

 

 ここまで行くともう彼は神に守られているとしか言えない。彼曰く『昔から悪運だけはアホみてーに強かったからよお』悪運が強い、で済ませられない。

 

 こうなると引けなくなったオズが日本の開発した新型シミュレーターで、玉城さんと戦うんだけど、この悪運が強いときの玉城さんは無敵状態で、オズが全戦全敗して空っぽになっているときに、オズの対面で。

 

『キャーッ! 流石は私のシン兄さまですわ~ッ!!』

 

 

 

 

 玉城真一郎は一本抜けている

 

 

 

 

 なんてマリーベル殿下が玉城さんに抱き着くものだから、オズの膝蹴りが玉城さんに飛んで、調子に乗っている玉城さんは吹っ飛ばされるわけで。

 

 これをまたマリーベル皇女が介抱するものだから僕やソキア、トトさん、マリーカさんで宥めて止めること数知れず。

 

 ともあれ、玉城さんは凄い人である。マリーベル皇女自らが自身の副官として認め、いや見初められるだけのことはある。

 

 シュバルツァー将軍も『この男にならば姫様を任せる事が出来る』と、自分も挑んで負けた将軍も仰っていた。そんな玉城さんだけど、僕も凄い人だと思う玉城さんだけど。とにかく抜けている。

 

 遅刻の常習者、だったのはネッサローズに移る前。彼がネッサローズに拉致――連れて行かれてからは、遅刻しなくなったという。マリーベル殿下が何かしたのだろうか。

 

 読み書き勉強が圧倒的に遅い、というか出来ない。ソキアからは「アホのたまきん」と呼ばれる始末だ。ブリタニアの第二母国語である日本語は幼少期には誰でも喋れ、読み書きも出来るようになる。

 

 日本でもそう、日本の第二母国語であるブリタニア語は幼少期に習いマスターする、それを玉城さんは初等部三年生になるまで話せなかったという。

 

 酒を飲んでねげ……。昼間から飲酒状態で出勤。廊下で寝転がって寝ている。エロ本雑誌をこっそり読んでいるつもりでも艦内上空から丸見えでマリーベル皇女に見とがめられて折檻。年上の女性を観るとナンパ。後でマリーベル皇女に折檻されているという噂だ。

 

 マリーベル殿下はグリンダ騎士団最強の騎士でもある。僕ら主要騎士が全員で挑んでも負けてしまうほどの圧倒的な強さを誇っている。

 

 そんなマリーベル様からでさえ競技KMFリーグで賭け事をして全財産を喪った彼は、勝ってしまったのだ。一対一の勝負でである。

 

 ぺたんと座り込むマリーベル殿下に。

 

『ガキが調子くれってからこういうことになンだよ。ちったァ分かったかよ。マリーベル・メル・ブリタニア。おめえ自身の弱さが』

 

 物凄い暴言だったけど、誰も何も言えなかったんだ。マリーベル殿下に勝ったということは玉城さんがグリンダ騎士団最強という証を手に入れたわけだから。

 

 ソキアは

 

『たまきんすげェェェマリーベル様を単騎で墜とせる奴なんていねェんだぜいッッ?!』

 

 と驚き。

 

 トトさんは物静かにだけどその強さに目を剥いて、地上の誰かと連絡を取っていた。

 

 なんか「このままでは本当に殿下の婿に……ララ……どうするの」って肝心の所は聞き取れなかったけど、殿下と玉城さんのことについてらしい。地上の友達か何か?

 

 ティンクは。

 

『あり得ない事があり得てしまう。玉城卿は我々よりずっと高みにいると言うことか。自分自身精進せねばな』

 

 冷静に分析。

 

 マリーカさんは

 

『凄い……嚮導学校にも行っていないのにKGFシミュレーターに乗った殿下を、……た、玉城さん凄いッ、凄いですッ!』

 

 マリーカさんの言葉にちょっとムッとした僕は、だけど。

 

『凄いッ。凄いですよ玉城卿ッ。まさかマリーベル殿下を、エルファバのシミュレーション騎に乗ったマリーベル殿下を単騎で討ち取るだなんてッ。誰にも不可能な事ですッ!!』

 

 あの時は真面目に尊敬した。絶対に不可能な事をやらかしたのだから。

 

 シュバルツァー将軍なんて

 

『真一郎殿に儂の教えることは無い』

 

 なんて涙を流していた。

 

 いや、皇室に入るにしては行儀見習いと言いますか。普段の態度が最悪なんですけど。

 

『ままッ、まーまーまー、みなのしゅう、俺がちっとばかし本気出せばガキの一人くれェよゆーよゆー』

 

 マリーベル殿下をガキって言うところがまた凄い。そんな皇族侮辱罪的なことを言う人間は約37,000人居るグリンダ騎士団の中には一人だって居ない。

 

 それどころかブリタニア中探したって居ないだろうに彼は平然と口にするのだから。アホというのもまんざら嘘ではなさそうだ。

 

 で、オルドリンは。

 

『おらァァァァ!!』

 

 気合い一線、鋭い蹴りの一撃を玉城さんのお尻に直撃させていた。

 

『ぶッ、ぶべらァァァッッ!!』

 

 艦内の壁に吹き飛び激突した玉城さんは動かなくなった。

 

『私のマリーになんてことすんのよこのくそ玉城があああッッ!!』

 

 そういえばもうみんな玉城さんの名前の呼び名が日本名で慣れたな。無意識的にマリーベル殿下のご婚約者だからっていうのが働いていたのかも。

 

 

 ※

 

 

 そんな凄くも抜けている玉城さんの事で、御前から午後、ネッサローズへと渡ろうとしていたときに聞いてしまった。

 

「この間さー、ソレイシィ卿に土下座してたんよ土下座。俺には君しかいないッ、頼むッ君しかいないんだーッてたまきんが」

 

 な、何だってッ?! 玉城さんがマリーカさんに土下座ァッ?! し、しか、も、君しかいないィィィッ?!

 

「彼、そういう方ですよ。私は友人から伺って存じております。いの一番、ここで終わりだというタイミングで本性を現すそうです」

 

 ほ、本性?! 本性ってぐへへへマリーカ俺の物になれとかってなんとかってことかァッ!!!

 

 それならば許さないッ、許さないぞ玉城真一郎ッ、適わぬまでもマリーカさんをッッ――と、そこまで激高する寸前だったところ。

 

「でもさー、日本円で100万も借りて返せんのー?」

 

 え? そういうことじゃない? え? まてよ? 金? 僕の大切なマリーカさんにお金を借りた?

 

 お、落ち着けレオンハルト。お金を借りるくらい良くある事。それが大金であっても。でも、僕に一言の相談も無く?

 

「1万ブリタニアポンドくらいだったっけ? ソレイシィ卿に拝み倒して借りてたんだぜい!」

 

「それ、返ってきませんよ。地上の、日本の東京にいるお父様のところに姉妹が住んでるんですけど、1円も返ってきたことが無いとか……。それと今回の例の騒動で姉妹が大泣きしてしまって、父が猛烈にお怒りだとか。玉城さん、地上に戻ったらただでは済みませんよ。姉妹も立ち直ったのか殺すか折檻かとぶつぶつ呟いているそうで。あ、私の姉妹暗殺者なんです」

 

「にこッって笑って言ってるけど、トト、それ偉い情報だよ。誰かに知られでもしたら」

 

 えと、暗殺者?トトさんのご姉妹が? いや、ここはまあ聞かなかったことにしよう。

 

 それより玉城さんが問題だ。マリーカさんにお金を返さないつもりで借りたのか?! それがホントなら許せない!! 丁度ネッサローズに行く時間だ。問い詰めてみよう。

 

 

 ※

 

 

「返さないつもりでマリーカさんにお金を借りたんですってね玉城さん」

 

 僕はグランベリーからネッサローズに着艦していた。場所は甲板。目的は金を返さない男への取り立てだ。

 

「いや、返すって、今度の競技KMFで倍にするつもりだから」

 

「なあッ?! ま、マリーカさんのお金を賭博に使うおつもりですか!? 見損ないましたよ玉城さんッ! あなたはッ! あなたは凄いお人だとばかり思っていたのに!」

 

 マリーベル殿下を倒せる凄い人だと思っていたのに、こんなにもお金にだらしがないなんて。

 

「い、いやいや、俺本業ニートなんですけど。国会議員に成る予定の議員とも言う」

 

「誤魔化さないでくださいッ! 友達に地上とのやり取りをしている女性がいらっしゃって、その方が仰るには、その方の父と姉妹の方にお金を借りて返していないと先ほどお聞きしましたよ!!」

 

「いやいや、だーかーらーッ、その金を返すためにグリンダ騎士団に仮入団させられたわけ。俺頑張って日々返し取るのよ、給料全額さっ引かれて」

 

「え? そ、そうだったのですか」

 

 僕はてっきり地上の借金取りから逃げてきたとかばかり考えて。そ、そうじゃないのですね。

 

 う、うん。で、でも、マリーカさんから更に金を借りていたら意味が無い。

 

「ところでレオンハルトくん」

 

「は、はいッ」

 

「一端の男ってなあな、競馬もパチンコもやっちゃってなあ、煙草もビールもやっちゃってなあ、女はまあ君の場合不味いが女もやっちゃってだなあ。そうやって漢って奴になっていくんだぜ」

 

「え? え?」

 

「ちょうどここに札束があるんだなあ~っ」

 

 

 ※

 

 

「き、来ましたよ玉城さん大穴ですッ」

 

「俺も来たぜーッ!! 今日は乗りに乗ってるぜ!!」

 

 玉城真一郎の部屋。と書いた看板を下げた部屋の中。酒臭い匂いと、ネットラジオを聞きながら二人の男が身を寄せあって、競馬を楽しんでいた。

 

 二人とも泥酔状態である。

 

「世の中ネットで馬券買えるなんざ楽になったもんだぜ」

 

「玉城さん、次ッ、なんば――」

 

 と、その時だった。すーっと玉城の部屋の自動ドアが開いたのは。ロックをしていたはずなのにロックが解除されているのはマスターキーで開けられたから。

 

「……」

 

「……」

 

 固まる二人。なにせ二人の前には茶髪のショートカットの神の少女と、薄紅色の髪を腰下まで伸ばした、ピンクを基調としたドレス姿の美女が立っていたのだから。

 

 にっこりと、笑顔で。

 

「兄さま~、賭け事は禁止ですとあれほどに言い置いていたはずなのですが~」

 

 マリーベル・メル・ブリタニア。彼女は事実上の婚約者である愛おしい兄さまがこれ以上借金を増やすことを望まない。借金が増えればライバルであるクララ・ランフランクを利するだけなのだから。

 

 あるいはこれもクララの想定内の出来事なのかも知れませんわねと、優しい笑顔で愛する兄さまに迫る。

 

「ま、マリーしゃん、これラジオ聞いてただけ――」

 

 言い訳をしようとした玉城の右頬を、ひゅっと音を立てて振り抜かれる美脚。ヒールの先が頬を掠めて血が滲み出てきた。

 

「レオ~ン、どういうことなのでしょうか? 私が玉城さんにお貸ししたお金で玉城さんと一緒に賭博を為さっているとは“私のお金で”レオン、御説明を」

 

 マリーカ・ソレイシィ。婚約者たる辺境伯令嬢は目を離すことを許さずレオンを詰問する。

 

 

 この日、レオンハルトは一つ勉強した。玉城真一郎さんはやっぱり一本抜けている。以上彼についてわかったことがまた一つ増えた日だった。マリーカさん痛い。レオンの左頬にはモミジの後。

 

 しかし玉城に比べればましだろう。だって彼は今、こわ~い笑顔の皇女様から折檻を受けているのだから。隠していたエロ本までも見つけられて……。

 

 

 

 

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
  • レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
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