帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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玉城グリンダ騎士団入団


玉城真一郎がグリンダ騎士団に入団しますた(駄目男シリーズ)
馬鹿と薔薇と皇女と魔弾


 

 

 

 それは皇歴2020年某月。南天の超巨大テロ組織、世界中に100,000,000人の構成員が存在するという“白い翼”の躍動と、南天本体の北進の兆候が見られることから、一計を案じた神聖ブリタニア帝国第98代皇帝、シャルル・ジ・ブリタニアは。

 

 対テロ遊撃部隊であるグリンダ騎士団を現行の4艦6000人体制から、13艦30,000人体制へと大幅増員をすることに決めた。

 

 その規模は地上部隊と浮遊航空艦部隊。別途に用意したKMFヴィンセント・グリンダ部隊などと併せれば、総数にして36,000~37,000。実に3個師団に上る大部隊だった。

 

 しかし、南天勢が本格的に動き出した今、この規模でさえまだ足りない。充分に大グリンダ騎士団と呼び始めても良い頃のこの規模でさえ。

 

 100,000,000人のテロ組織、その傘下に無数の犯罪組織や、シンジケートを抱える白い翼に対しては微々たる物でしか無く、白い翼が動き出せば現在のグリンダ騎士団など。

 

 それに白い翼など問題ではない。もしも南天正規軍――南天条約機構軍とグリンダ騎士団がぶつかれば……グリンダは容赦の無い死兵の津波に呑み込まれてしまう。

 

 そう考え、悩みに悩み、更なるグリンダ騎士団の戦力拡大をシャルルが考えている頃。

 

 ※

 

「ダ~メ~っ!駄目ったら駄目~っっ!!」

 

 ゴシック調の黒い服を着た美少女が叫ぶ

 

「兄さまはわたくしが連れて参りますの~っっ!!」

 

 桃色を基調とした衣服の美女が叫ぶ。

 

 大日本帝国はV.V.邸で二人の少女。正確には美少女と美女が争っていた。一人の男を挟んで。

 

「や、ヤメロてめ~ら、まじでふくちぎれっちまう~っ」

 

 そして紫の服に身体にフィットしたGパンの威勢良く髪を逆立てた不良風の男が叫ぶ。

 

「そのときはわたくしがコーディネートして差し上げますわ。いつでも仰ってくださいマシな」

 

 にっこり笑顔なのは服を引っ張っている一人。薄紅色の腰下まで届く長い髪。どこまでも深いディープブルーを思わせる美しい瞳。胸は大きく、背はそれなりに高い。背中に羽を収納した桃色を基調としたロングスカートのドレス。神聖ブリタニア帝国第八十八皇女マリーベル・メル・ブリタニア・こと、マリーベル・ランペルージその人であった。

 

「いらないことしなくてもいいんだよ! お兄ちゃんの世話はこのクララが万事任されてるんだから!」

 

 こちらも勝手なことを言っている、桜色の綺麗な瞳に、同じ色の膝下にまで届く長い髪。胸は小ぶりながら年相応に女性らしい身体になりつつある少女。2019年度で17歳、2020年度で18歳。お前の成長はここまでと男に言われてムキーっと激高すること数知れず。その正体はギアス嚮団という秘密結社のナンバーワン暗殺者。クララ・ランフランク。もう一つの名をクララ・ジ・ブリタニア。ブリタニア帝国皇兄殿下の実の娘でもあるのだ。

 

「テメーらまず俺の意見を聞けェェェ俺は政治家になってだなあ」

 

「ああもうそれ聞き飽きたから」

 

「兄さま、不可能とは、夢想以上に適わない事なのですよ」

 

 否定に入る美少女と美女。クララは美少女、マリーベルは美女だ。町を歩いていれば必ず声を掛けられるくらいの美少女と美女。その先の選択肢次第で声を掛けた者の命運は変わってしまうほどの危険人物だが。

 

 二人は共に個人戦闘力が恐ろしく高い。クララは暗殺術に長け、更にギアスという超能力のような力をその綺麗な桜色の両目に宿している。この力自体も非常に危険で『目視した人間の名前を叫ぶことで対象の肉体の自由を奪い、意のままに操るもの』が、今では能力が向上し『目視した対象を意のままに操る力』へとパワーアップしている。

 

 マリーベルは軍の嚮導学校などのシミュレーターで最高点を出す実力者。本人も数多くの戦闘を経験しており、南ブリタニア大陸に巣くう民主共和制原理主義組織ペンタゴンの№2の首級はオルドリン・ジヴォンがあげたが、その他の中級幹部の多くを殺害したのはマリーベルである。

 

 そのマリーベルもギアスを持っている。その力は『相手の自我を奪い殺戮人形にする絶対服従のギアス』これを進化させ両目にギアスを顕現できるようになった今『自由に掛け解きを可能とし相手の自我を残したまま絶対服従のギアスを掛けることも可能』となっており彼女自身の成長の証でもある。

 

 そんな強く、聡明で頭も回る二人が言い争う中心点にいるのが、ニートの三流校卒のアホだとは神様でも思うまい。

 

 事の始まりは、お兄ちゃん・兄さまこと玉城真一郎の借金返済について。これをV.V.邸でいきなりマリーベルがぶち上げたこと。

 

 ナイトオブナイツことオルドリン・ジヴォンは、流石のマリーベルに対しても『マリー一言言わせてばっかじゃないの』と言われるほどの、ずさん且つアホらしく実現したらしたで頭痛くなることこの上ない計画だったのだ。

 

「伯父様。兄さまの借金は返せる見込みは?」

 

 すると畳の上にざあっと広がるほど長い、踵まで届く髪を持つ、見掛け10歳中身65歳の伯父さんは言った。

 

「僕の所で8.5号機のデヴァイサーやってもらってるからね。上手くいけば3年かな」

 

 あれだけやって3年かよテメー舐めてんなよ糞ジジーとぶーたれるアホは放っておく。

 

 そこでクララが手を上げる。

 

「お兄ちゃん、クララからも三桁台の借金してるよね」

 

 これを聞いたルルーシュが。

 

「な、ナナリー、人の良さにつけ込まれてかしてないだろうな」

 

 と、慌てるも。

 

「玉城さんの為になりませんので無心はされましたがかしてません」

 

 クララよりも更に年下のナナリーにまで無心していたのだ。もう人として終わっている。

 

「そういえば私の所にも来たな金の無心に」

 

 コーネリアがぼそっと呟くと。

 

「玉城貴様ァァァァァ!!」

 

 ギルフォードが剣を抜きかけたので、コーネリアが止めた。

 

「まあ、待てギルフォード。アホのすることに一々付き合っていてはこちらまでアホになる。コイツの受験のために私が一体何度勉強を教え何度落ちたか。私の教え方が悪かったのかと自問自答したが分かったのだコイツがアホすぎるのだと。次の受験頼られたら教えてやるが落ちてもそれは私の所為ではない」

 

 もうコーネリアは呆れている。コーネリア・ランペルージ、またの名を駐日ブリタニア大使コーネリア・リ・ブリタニア。彼女も弟妹たちの騒動に片足を突っ込んでいたが、静観の構えを取って居た。とにかくアホに関わると碌な事にならない。

 

 ギルフォードにも伝え「御意」と下がるギルフォードを見て息をついた。

 

 結局の所この騒動の発端は玉城の借金とそれを返す方法の論議なのだ。このまま伯父のところでバイトをしながらゆっくりと返していくか。マリーベルの騎士団に仮入団し多くの給金を貰い一気に返すか。

 

 これに猛反対しているのがクララなのだ。借金なんかクララのポケットマネーで全額返済してあげるよと。印鑑付きの口座番号の預金通帳をもう要らない季節になってきたコタツにバンッと押し付けたのが原因。

 

「一、十、百、千、万、十万、百万、一千万、一億、じじじじ十億、……クララ様、なんすかこれなんすかこれッッ!?」

 

 アホは興奮状態でクララを見て。

 

「クララの預金。だから前から言ってるじゃん。クララはシークレットエージェントだからそのくらいは稼いでるって」

 

 ここで、クララが本当に正体をバラした。

 

 ヒュッ

 

 シュキッ

 

 一瞬で姿を消すと、大好きなお兄ちゃんの首元に細いナイフを当てていたのだ。

 

「お兄ちゃんみたいな不良さんなら半日で1,000人は殺せるよ。裏技使ったらもっと行けるけれどね。このナイフもそれくらいじゃ刃こぼれしない丈夫なものだから」

 

 溢れ出す冷気、殺意、玉城が始めて感じ取るクララの本当の姿。彼女は玉城の後ろで更に両目に鳥を羽ばたかせている。

 

 それを――

 

 じィン

 

 同じくナイフの音。刃と刃が鍔迫り合いをした音だ。今度ナイフを取り出したるは桃色のロングドレスの女性マリーベル・ランペルージ。

 

「兄さまへの狼藉は許しません」

 

 クララは冷静に応じる。

 

「狼藉? あの通帳を見せた時点で本当の“私”を見せなきゃお兄ちゃんも信用しないでしょう」

 

 玉城は始めて聞いた気がするクララがクララと言わず私と自分の事を呼称したのを。これが本当のクララ、なのか?

 

 それに、そのクララのナイフを簡単に受け止めたマリーの剣、短剣っていうのか。アレで簡単にクララのナイフを押し止めた。俺の首元に当てられていたナイフを。

 

「ふーん……困ったなあ。これもう誤魔化しがきかないよ。真一郎、キミ日常を歩いていたいんだよね? だったら今日のことすっぱり忘れて僕らと完全に縁を切るか。とことんまで深淵を覗くかのどちらかしかないんだけど? どうする」

 

「はわわわ~ッ」

 

「あ、逃げた」

 

 玉城は逃げた。怖くて逃げたんじゃ無い。現実に追いつかなくなって、追いつけなくなって、一端頭を整理するために逃げたのだ。これでも全部投げ出して逃げるような無責任な男では断じてない。

 

 V.V.ファミリーとは一体何なのだろうか? クララの持っていたあの十億なんてデタラメな大金は何なのだろうか。クララから感じた身の毛もよだつ死んだと感じさせられたあの殺意は。そのクララの殺意を真正面から受け止めて平然としていたマリーベルは。

 

 考え考え考え抜いて、それでも出ない答えに現実が追いついてくるのでは無いかという恐怖に苛まれながらに逃げ続けていたために、前方を歩いた人への視認が遅れてしまいぶつかってしまったのだ。

 

 どんッ

 

 人にぶつかった。考え事をしていては気付かなかった。

 

「っとごめん、わりィ」

 

 別に恐怖に駆られて逃げたわけでは無いので普通の対応が出来た。が、相手が不味かった。

 

「なんだガキか。わりいなお嬢ちゃん」

 

 その対応も不味かった。

 

 その少女は持っていたステッキを瞬間にしてくるりと逆さに持ち替えると、玉城の脚を引っかけ。

 

「うぎゃッ」

 

 喉を突いたのだ。

 

「っててて、てめいきなりなにしやがッッッ……!!」

 

「それはこちらの台詞だわ。歩いていたところをいきなりぶつかってきて“わりィ”“ガキ”などと無礼な。これでも私は今年で27よ」

 

 薔薇が咲いたような真っ赤なドレス。欧米紳士が持つようなステッキを持つ、赤いヘッドドレスに細く黒いリボンで結い上げられた身の丈よりも長いだろう美しい金色に輝くロングツインテールが風に靡いている。

 

 こんな時じゃなかったら見とれていただろうビスクドールのように美しい女性は、透き通った蒼い瞳で不躾な男を見下ろすと年齢を告げた。

 

「と、年上ェェェ!! ちんまい年上なら他に知り合いにもいるがまさか2人も居るとは思わなかったぜ」

 

「下郎、名を名乗りなさい」

 

 命令である。強制では無く確かに命令である。何故なら玉城の喉を突いているステッキの力は寸分も緩められていない上に、女性の潤みを帯びた蒼い瞳は冷ややかにこちらへと向けられたままなのだから。

 

「た、玉城、玉城真一郎……」

 

 逆らってはいけない。第六感が告げている。この女もヤヴァイ類いの女だと。

 

「タマキ……貴方がシンイチロウ・タマキ?」

 

「え、あ、あ、ああ、ブリタニア風に直すのならな」

 

「……ふーん、とても相応しく見えないわ」

 

「な、なんの」

 

「皇女殿下のご婚約者としてよ」

 

 ハアっ?! どっから出できやがんのよ皇女殿下の婚約者って。つーか皇女殿下って誰よ? 神楽耶皇女殿下?俺一回もあったことねーし、神楽耶皇女殿下にはもブリタニアのオデュッセウス第一皇子殿下とご婚約が。

 

 アホはアホなりに勉強してきた知識がそれなりに役立った瞬間でもあった。アホでもやれば出来るのだ。ただそれを受験で生かせないだけなのだ。

 

 そんなことを考えていると――

 

「シンク様! こちらでしたか! あれほどお一人に成られては成りませんと申しつけておりましたのに」

 

 様ァァ?! やっぱこいつもどこかのお嬢様かよ。瞬間、黒服の一人がこちらを見棘馬手振り向いた威圧感が半端ない。そこらの不良やヤクザがチビって逃げ出しそうなほど。

 

 かく言う玉城も逃げ出したくて仕方が無かった。逃げても良いなら。でも俺の喉元に突きつけられたステッキが逃がしてくれないんだよ。

 

「む、貴様ローゼンクロイツ家第五女、シンク・ローゼンクロイツ伯爵ご令嬢に対し御無礼を働いてはいまいな」

 

 は、は、伯爵令嬢?! 貴族? ブリタニアの貴族しかもローゼンクロイツ伯爵家っつったら上から数えた方が早い上位伯爵家じゃねえかよッ! そのご令嬢が何でこんなとこに!?

 

 無駄知識。ある意味で有用知識を覚えている玉城。やはりこれを受験に活かせないのが彼の彼たるゆえんだろうか。通称アホの玉城は今でも健在なのである。

 

 一夜漬けで詰め込んだ社会や歴史の知識が、よもやこの様な場所で出て来ようとは誰も思うまい。彼は。

 

 ヴェルガモン家、シュタットフェルト家。ヴァインベルグ家、ソレイシィ家、クルシェフスキー家、アッシュフォード家、名だたるブリタニアの名家を知っている。社会勉強したからだ。

 

 それも当のローゼンクロイツ伯爵家縁の者とこんな街中で邂逅しようだなんてまさか思いもしない。社交界では薔薇乙女と呼ばれている第五女。ローゼンシスターズはそれぞれが優雅な薔薇に例えられることが多い。

 

 中でも赤いバラ、第五女は日本へ輿入れした令嬢で有名だ。輿入れと言っても籍はローゼンクロイツ家のままだが。嫁いだ先がまた凄い先の名外相、吉田茂の孫で、現外務大臣麻生良太郎のところなのだ。

 

 名家は名家と結ばれるというがやはり本当なのだろうと馬鹿なりの頭で解釈した。

 

「無礼は働かれていないわ。少し世間話をしていたところよ、そうでしょ?」

 

「ははは、はい、シンク様とは、お世間話を」

 

 モノホンの貴族となんか話したことねーから話し方わかんねーよ。どう話せば良いんだよ。

 

「……」

 

「……」

 

「何か話しなさい」

 

「な、何かと申しましてもですね。私に話題をお振られ戴きましても、なんともお答えにお難しいと思う仕上げますか」

 

「文法が滅茶苦茶だわ。もう無理をして丁寧な言葉遣いを使おうとしなくてもいいから普通に話しなさい普通に」

 

「じゃあ、普通に話すわ、つーかSPの人いきなり無礼なとか無礼討ちにして来たりしねえェ?」

 

「一度注意してあるから大丈夫よ。それよりあなたあんなに急いでどうしたの? 前から歩いてくる人間も見えないくらいに走り回って」

 

 そりゃあんたの背が小せえからという命知らずな事は言わない。相手は天下のローゼンクロイツ伯爵家の御令嬢なのだ。自分の首なんてポーンと跳ね飛ばせる相手なのだ。

 

「いやまあ掻い摘んで言うとだなあ」

 

 十億の預金通帳を出されてビビッて。豹変した幼馴染にナイフを首筋にあてられた。瞬間これまた豹変した幼馴染に短剣でそのナイフを止められた。

 

 それで現実を生きるか、非現実を生きるかさあどうするかと迫られて、逃げた。という事だった。

 

 通りのベンチに座っている二人、少し遠くにはアホみたいに高い900m1,000mのビルが建っているのが見える。シンクにはSPが赤い日傘をさしている。季節は春を過ぎようとしていたが丁度良い小春日和。ここまで聞いたシンクは一言。

 

「情けない男ね」

 

「んだとぉッ!」

 

「ようはあなたはあなたが怖くて逃げたのではない。得体のしれない周りが怖くて逃げたのでもない。物事についていけなくなって逃げた。違うかしら?」

 

 自分が怖いわけがない20と6年生きてきて自分が怖いと思ったことは無かった。じゃあクララが怖かったか? 確かに首筋にナイフを充てられたし、殺気とか呼ばれるのをバンバン飛ばされた。だが別に俺は幼馴染のあいつがいきなり自分の事を切りつけてくるとも思ってないし、あんなの悪戯の延長線とも言えた。じゃあ、それを懐から取り出した短剣で以て冷ややかな目線で止めたマリーが怖いかと言われれば、はっきりと言える怖くないと。

 

 マリーは俺を助けようとして咄嗟にああいう行動に出たのであって、あっちが素のマリーってんならそれはそれでいいんじゃないかなとも思う。

 

 結局のところ最終的にあいつらは何なんだ?いったい何様でどこの誰なんだ? おっさんは言った。

 

『キミ日常を歩いていたいんだよね? だったら今日のことすっぱり忘れて僕らと完全に縁を切るか。とことんまで深淵を覗くかのどちらかしかないんだけど? どうする』

 

 すっぱり忘れてってのは縁を切るってことだ。縁を切ってこの東京で一から出発して一から始めるってことだ……何もかもなかった事にして。

 

 おっさんに家賃滞納で物を差し押さえられたことも。おっさん家でゴロゴロしてたらルルーシュに蹴っ飛ばされたことも。

 

 ナナちゃんに作りすぎのクッキー余りものを頂いて美味しかったことも。ジェレミアをからかってみたら生真面目なあいつは本気でどぶ川に飛び込んだことも。

 

 そこのことで奥さんのヴィレッタに折檻を食らった事も。おっさんの居室でゴロゴロしてたらやっぱりおっさんに蹴飛ばされたことも。

 

 ネリーに勉強を教えられたことも、教えられたのに受験落ちまくって怒られまくった事も、おっさんに、クララに三桁の借金してギャンブル三昧でアウトだったことも。

 

 高校卒業してからホント、あいつらとは色々あったぜ、それを全部無しにする? ……ねえよ。みんなとの思い出を無しにして一からやり直すだぁ? そんなもんはなぁ、一なんて言わねえんだよ無しゼロだ。

 

 おれはみんなとの嫌な事もあったし、楽しい事もあったし、ツレえこともあったし、のんびりしたこともあった。そんな毎日が大好きなんだよ。

 

「なあ、貴族様」

 

「シンクで良いわ」

 

「シンク様……やっぱり俺、みんなのところへ帰るわ。そんで謝る。急に逃げ出して御免、訳わかんなくなって逃げた。だから俺はこれからもみんなと一緒にいてェって伝えに戻るぜ──」

 

「そう、でも、その必要はなさそうよ」

 

「は?そりゃどういう」

 

 

 きゃきゃきゃあああああ右右イイ──

 

 思いっきり右に切ってるぜい! オズのケツがデカいからァァァ──

 

 だ、誰のケツがデカいですってェェェ──

 

 ふ、二人共はしたないですわこのような公衆の面前──!!

 

 ソキアさんのスーパーテクにケチ付けるからさァァァァ──

 

 うわああああああッッッ、ソキアお姉ちゃん前見て前ッッッ

 

 のわわわわわわわわわわ───!!」

 

 

 

「良太郎」

 

「わーってるい」

 

 名前を呼ばれて気が付いた。俺の直ぐとおなりにくわえたばこのダンディなおっさんが立ってたことに。SPじゃない。それどころか当のSP自身が驚いてる。

 

 勉強してるときに読んだことがあるこれがあれかよ。気配遮断ってやつかよ。まじで使えるやついるんだな。

 

「簡単な遊びだ」

 

 服の内側をわずかに見せたかと思うと‟プシュッ”と空気が抜けた音がして、俺たちの目の前で二人乗りのマウンテンバイクはバラバラに空中分解するように解体されちまうと、乗ってた四人。

 

 運転手ソキア、その後ろにオルドリン、ちょうど真ん中にマリーベル、最後にちっこいのクララがそれぞれ空中で放り出されて。すげえなと思ったのが誰も誰かの助けを必要せずに空中で身を翻しその場に上手く着地した事。

 

 やっぱ思ったとおりこいつらただ者じゃねえわ。普通ありえねえだろ、ぶっ壊れて空中分解した自転車から落ちて、普通に着地するとか。

 

「ったく、ソキアがこっちからたまきんの匂いがするって言うから従ったら偉い目に合ったじゃ無い。さっきの何かチカッひかって光って自転車がばらけなくちゃ人混みに突っ込んでたわよ」

 

 やっぱり隣のおっさん何かし――げええええええ?!

 

「あ、あ、あ、あ、あんあん、た、麻生、良太――」

 

「散々俺のワイフと語らっててくれたみてェだな兄ちゃん。本来なら死刑もんだが、おめえェさん死刑にしちまうと俺があのブリタニアの嬢ちゃん共とやり合うことになっちまう。負けやしねえが二人相手はちと時間を食うからなァ」

 

「わ、ワイフって」

 

「赤いドレスの金髪ツインテールだよ」

 

「はあああああァァァ?! 麻生大臣の奥さんってあんなちっこかったのかよ」

 

「本人の前では絶対に言うなよ気にしてるから殺されっちまうぞ。身体は小柄だがあれでもそれなりに戦闘能力は高い。見かけで判断してたら痛い目みるぜ。と、俺っちも挨拶しとかねえとな」

 

 コツ、コツ、コツ、自転車が無くなったから返るときあーだーこーだと良いあっていた四人の元へと足音が近づいてくる。ヒールの足音。周りには黒い衣服で身を固めたSPの姿。

 

 マリーの回るにも見掛けるし、オズの周りにも見掛ける。時々うっとうしいとさえ感じる彼らの職務は、対象人物を守ること。

 

 気配そのままに現れたのは、身の丈よりも長い金色の艶やかな美しい髪を、頭の側頭部高くに細く黒いリボンで丁寧に結い上げられ地に着かない様にと毛先が少し浮いている。

 

 水晶のように透き通った蒼い瞳は心の奥までも見透かしてくるような不可思議な色と潤いを湛えている。そして赤、ヘッドドレスは赤、衣服も赤、スカートも赤で靴も赤、赤いドレスを纏った少女。薔薇の妖精のように美しかった。

 

 その赤い少女はドレスを摘まむとこちら側へと挨拶をしてきた。

 

「まず始めに非礼のほどをお許しください」

 

 丁寧に赤い少女が言うと。

 

「よい、差し許す」

 

 マリーベルが返す。

 

「神聖ブリタニア帝国第八十八皇女マリーベル・メル・ブリタニア殿下、マリーベル殿下の筆頭騎士オルドリン・ジヴォン様、ギアス嚮団筆頭暗殺者にしてブリタニア皇兄殿下ご息女クララ・ジ・ブリタニアさま。グリンダ騎士団騎士ソキア・シェルパ様。で、間違い御座いませんね?」

 

 マリーベル殿下、ジヴォン卿とはいつぞやの舞踏会以来ですね。と、赤い少女が言うと。

 

「シンク・ローゼンクロイツ卿ではありませんか!! お久しぶりです私はちっとも踊れませんでしたが」

 

 少し恥ずかしげにたははとオルドリンが話すと、シンクはそれを否定するでもなく。

 

「踊りというのも剣の道と同じです。一や二、十や二十、百と二百と修練を重ねていくことで上手くなっていくもの。今覚え始めて今上手く成られては私たちの立つ瀬が御座いません」

 

「た、確かに」

 

「マリーベル殿下もご立派に成られましたね。昨日私と同じくらいかと思えばもう追い抜かされて」

 

「シンク様はそのいつまでも変わらないお若く、小柄なお姿こそが、大輪の赤い薔薇という美しさを表わしてお出でだと思うのです」

 

「勿体ないお言葉を痛み入ります」

 

 そこへ、煙草をくゆらせながらあたまをガリガリ搔いて居心地悪そうに入って来た人物一人。凡そ華やかなるご婦人達の間に入ってくるべきではない無粋な男。片手には玉城の襟首をひっ噛んでいる。

 

「ああー、いいですかいご婦人方」

 

「良太郎なにも遠慮することは無いわ」

 

「俺が遠慮すんだよ。ああ、おりゃシンク見てえな貴族じゃねえ.貴族的作法についちゃ勘弁してくれ。麻生良太郎。大日本帝国枢木内閣外務大臣をやらせて貰ってる」

 

 

 えええええええええええええ?!

 

 

 知っている者知らない者。それぞれの叫び声がこだました。

 

 麻生良太郎。裏の世界では知らない者はいない世界最強を冠するスナイパー。有名処の伝説では1m内でのビリヤードを(弾丸討ち)をこなし、スコープ無しでの1㎞の超々射程ピンホールショットを簡単にこなし、跳弾を利用した敵兵団の全滅をもやってのけたことがあるという。本来の得物であるライフルでは戦闘機さえも撃墜している怪物だ。

 

 狙った敵は外さない、意思ある弾丸を放つという意味で魔弾の射手と付けられた二つ名は、子供の頃のあだ名だったりもして恥ずかしくもあった。

 

「魔弾の、射手……」

 

 マリーベルの額から頬に掛けて一筋の雫が落ちる。もしも敵であったのならばこの場の何人かの命は覚悟しなければならない。

 

 だが――

 

「おいおい姫さん騎士さん方、そう殺気立つない。言ったろーが。枢木内閣外務大臣ってよ。ついでに言わせて貰うとその肩書きもつかうつもりはねーよ。嫁の付き合いでのんびり散歩してただけ出しよ」

 

「麻生大臣のお嫁さんて……」

 

「そのちんまいのだ」

 

 

 ええええええええええええええ?!

 

 

「ありゃ、オズしらなかったのかにゃ~? 社交界じゃ有名だぜい?!」

 

「だ、だって、二人でいるのあんまり見たことないから」

 

「おらそういう華やかなところは苦手でね…………でだ、言うことあんじゃねーのか小僧」

 

 小僧こと玉城に振られた話題。いつかは来ると思っていたが遂に来たかと緊張が走る。

 

 すぅー、はぁー。

 

「マリー、マリーベル・メル・ブリタニア皇女殿下。か、数々の御無礼、平に謝る。申し訳なかった」

 

「そのような、こと」

 

 マリーは玉城兄さまの口よりその様な言葉を聞きたくなかった。いつも馬鹿にしていてくれても良い。でも明るいほと小馬鹿にする態度で接して欲しかった。

 

 まるで今の様な臣従関係のような……そんなのは何よりも、嫌だった。

 

「クララ、クララ・ジ・ブリタニア皇兄女殿下。これまで犯してきた数々の御無礼と非礼。お詫びしてもお詫びし尽くせねえ。本当になんて言ったら良いか……」

 

 何を言われているのか分からなかったクララ、さま? お兄ちゃんがクララ殿下ってそういったの? やだ やだよ そんなのやだよ。どうしてお兄ちゃん。クララそんな風に呼ばれたくない!

 

 いつものお兄ちゃんに戻ってよ!!!

 

「この馬鹿ッッッ!!!」

 

 良太郎が玉城を殴る。

 

「女に謝罪して女泣かせるとかお前は屑の世界チャンピョンか。ちげーだろお前が言いてえのはそれじゃねーだろ」

 

 

 キミ日常を歩いていたいんだよね? だったら今日のことすっぱり忘れて僕らと完全に縁を切るか。とことんまで深淵を覗くかのどちらかしかないんだけど? どうする

 

 

「マリー…………、クララ……、オルドリン、ソキア……、今更なんて虫のいい話だ、人に言われてなんて最悪だよな。けどよ、このいい加減な男が玉城真一郎なんだよ。こんないい加減男で良かったら、これまで通り、お前等の傍にいさせてほしい!!」

 

 ぽろぽろと大粒の涙が出てくる、いちのまにかマリーが俺を真正面から抱き締めて泣いている。ああ、いつもの俺ならエロいことの一つや二つ思い浮かべているはずなのに感情が死んでる見てえにエロいことを考えられない。

 

 クララが脇に抱き着いている。いつまでたってもちんまいなあとかの皮肉がまるで出て来ない。今は言えるクララを一人の女として視られる。普通にいい女だこんないい女を袖にしていたなんて屑だよただ、マリーとどっちがって言われると甲乙付けがたい。

 

 ここにネリーを加えるとネリーに軍配が上がってしまうう~ん困った。とりあえずはさ、これでいいんだよな。

 

 

 ※※※

 

 

「ま、なにはどうあれ、世は全て事も無し……。が、続けば良いんだけど、あんだけ獲物が居りゃな」

 

 燻らせている煙草の火を消すと、街を循環中のお掃除ロボットの近くに放る良太郎。

 

 放ると同時に見えない速度で一発発砲カメラで捉えられていない。

 

「また一人、迷子になってしまったのね。迷子になった子はもう二度と返ってこない」

 

「進んで迷子になりたいやつの気は知れんよ――全天に美しき世界の実現の為に。だそうだ」

 

「一体何人迷子になるのかしら」

 

「さあな」

 

 コツ、コツ、シンクは静かに歩み寄ると、小首をかしげ両腕を掲げ上げた。地面に付きそうな長い金色のツインテールが大きく揺れる。

 

「良太郎。抱っこ、してちょうだい」

 

 夫の名を呼びシンクは手を伸ばす。

 

 夫たる良太郎はそんなシンクを左胸へ持たれ掛けさせながら、左手に座らせるように彼女の定位置へと就かせてあげる。

 

「これでいいか?」

 

「ええ。さあ、早く参りましょう。本日の帝都探索はまだ半分も終わっていないわ」

 

「はいはい」

 

「はいは一回」

 

「へいへいへいへいへいえぱしぃッいでェ」

 

 シンクが長い髪を鞭代わりにして良太郎の頬をバシッと叩いたのだ。

 

「髪の毛を鞭代わりに使うなよいてーんだぞそれ」

 

「僕の癖にご主人様に口答えするからよ。僕は僕らしくご主人様のいう事を訊いていたり位の」

 

「分かりましたよお嬢様」

 

 そういいつつ春風の中二人は静かな靴付けを交わした。

 

 二人の仲の良さの証でもある。

 

 

 ※

 

 

「ええええええ――――ッッッお兄ちゃんをグリンダ騎士団に入団させるぅぅ!! ぱ、パパ本気で言ってるの!!」

 

「ああ、至って本気。まず空の上にいれば下手に賭博には手を出せない。ネットって言う手段があるけどどうとでも出来る。それにグリンダで本気で働いたら借金の完済も可能。いいことずくめじゃないか」

 

 冗談じゃない、グリンダにはあの女がいる。

 

「クララにとっても兄さまからの借金を完済する良い機会、だと思うのですが。如何でしょう」

 

「3年くらいの間だしその間にも日本とかに降りたりするんだろ?」

 

「ええ、もちろんですわ♪」

 

「でもってオルドリンはハイグレイルは扱えるけれども、俺様みてーにゃ8.5号機以上のエナジーウィング機は扱えねーと。いやーまいっちまうぜ。ナイトオブナイツよりも戦闘力が上の新人とかって」

 

 現在グリンダ騎士団にエナジーウィング機乗りこなせられるものは居ない。玉城が入って始めて乗りこなせる者が見つかるのである。

 

 レオンなどは目を輝かせて玉城に話を聞きに行っている。

 

「玉城さん! エナジーウィング機を操るコツみたいなのいるんですか!」

 

「まあ練習だな地道に練習あるのみよ」

 

「練習。してれな僕もいつか玉城さんのようにエナジーウィング機を」

 

 ソキアは少し離れた場所でティンクとお菓子を頬張りながら玉城を見ていた。

 

「ああいうキャラうちらの中にはいなかったからさー。案外基調だよねー。8.5世代機を手足のように乗りこなせるのも凄いけどさー。ところで玉城隊員!!」

 

「んだーにゃーにゃーのねーちゃん」

 

「誰がにゃーにゃーのねーちゃんかソキア先輩とよびんしゃい!」

 

「わーった、ソキアなにー」

 

「生意気な奴めー。まあいい、缶ジュース買ってこーい」

 

 二本分200円放り渡した。なんで俺がと言う玉城だが悲しいかな肉体労働者の一番下っ端は缶ジュースを買いに行かされる係なのだ。

 

 

 こうして決定した玉城真一郎のグリンダ騎士団の入団

 

 

 勝ち誇るマリーベルはクララと擦れ違いざまに耳にした。

 

「空の上でお兄ちゃんに何かしたら殺すから」

 

 マリーベルも一瞬素の表情に戻ると。

 

「受けて立ちますわ」

 

 

「たーまーきーッッ!!だーれがあんたなんかより弱いですって!!」

 

 騒動を訊いていたオルドリンが切れて玉城の尻を蹴り上げた。

 

 

「うぼあァァァ!!!」

 

 

 どこーんとへこんだスペースに見事クリーンヒットする玉城は謎の断末魔を残して気絶。

 

 勝誇ったオルドリンはそのままマリーベルとの模擬戦に直行させられるのであった。

 

 

 ※

 

 

 大空へと上がっていくネッサローズ以下3艦。ただし、ここにブリタニア皇帝が危惧に危惧を重ねた結果更にも9艦と地上部隊の増強、ネッサローズ、グランベリーのアヴァロン級化改造を受けグリンダ騎士団は

 

 

 ネッサローズ

 (アヴァロン級)

 グランベリー

 (アヴァロン級)

 

 その他最新型カールレオン級11艦

 

 地上部隊30,000名

 

 専用基地有り

 

 3個師団編成可能

 

 とまで大成長を遂げる。

 

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
  • レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
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