『3番熱い!3番!来るこれは確実だーーっ!!』
「よっしゃーーイケイケ抜けー…………やったーっっ!! 200,000万馬券っっっ!! いよっしょああああああああっっ!!」
額にはバンダナを巻き、威勢良く茶の髪を逆立てた男は誰もいない自動運行モードのネッサローズのブリッジで、ガッツポーズの勝利宣言をしていた。
ネットで買った馬券が大当たりしたのだ。ここなら、夜の此処なら多少騒いでも大丈夫そうと考えての大声だったのだが、大声以前にある仕掛けを施されていた男は、何処に居ようが、とある人物には丸見えだったのだ。
「はいっ、没収」
「うげェ、ままままマリーしゃん」
「毎度毎度同じ事を為さいますわね。本当に懲りない方。兄さまの脳みそには2Bitの容量すらも無いのではありませんか?」
髪を逆立て紫のシャツ、ジーパンの代わりに短パンを穿いている男、玉城真一郎は。マントの羽を広げた聖女のようにも見える、薄紅色の腰下まで伸ばされた長い髪と、桃色のロングスカートを纏った女性。神聖ブリタニア帝国第八十八皇女マリーベル・メル・ブリタニア皇女に、端末を取り上げられた。
「どうして俺がここにいるって分かったよ」
目の覚めるような美女を前に、面白くなさそーな顔をしてごちる玉城に、マリーベルは。
「兄さまの為さる事などお見通しですもの。ですので発信器をポケットに入れておきました」
「は?え、まじ?げえっ?! まじで入ってんじゃねーか!!」
玉城のポケットには四ミリ四方の薄いカード式の発信器が一枚入っていたのだ。マリーベルの言うその通りに。
この様な物を忍ばせるあたり、マリーベルもなかなかの策士である。
「マリー、お前なあ。プライバシーって言葉知らねーの」
プライバシーだ。玉城真一郎にも当然あるプライバシーを。
「知りません」
ガン。
ひっくり返る玉城。まさか真正面から否定してくるとはなんつー女だ。
「少なくともわたくしと兄さまの間にプライベートは存在しないものとわたくしは考えます。この心。この気持ち。この身体。全て兄さまのものだと考えますわ。当然ながら、兄さまの身も心もお気持ちもわたくしだけの、このマリーベル・メル・ブリタニアだけのもの」
誇らしげに宣言するマリーベル。私の全ては貴方の物。でも当然貴方の全ては私の物。愛の告白だ。こんな処誰かに聞かれたら大騒ぎになる。神聖ブリタニア帝国第八十八皇女マリーベル・メル・ブリタニアがただ一人の、三流校卒のアホに懸想をしているなど彼女の弱点以外の何物でも無い。だが彼女は常々言うのだ口にするのだ、玉城真一郎を愛していると。
「お前ね。冗談でもんなこと誰かのいるところで言うなよ? 絶対に変な誤解を受けてさらし者にされるから」
「うふふふ、どうせならばさらし者になりましょう。いっそ兄さまがわたくしを抱いたと言う噂を流すのもありかもしれませんわね」
そうすれば既成事実も出来て、晴れて兄さまはわたくしに婿入りをと平気で宣う皇女様。
「ねーよッ、ねーッ、ねーッ!」
玉城はマリーベルの口を塞ぎ、彼女を脇に抱えると、見られたら困るからと言う理由で、自分の部屋へとダッシュ。態となのか、マリーベルは大きめの声で話をしていたので質が悪い。
まるで巡回中の衛士にでも聞こえるかのように大声で。コイツは狙ってやっているのだろうか。コイツは自分が宝石なのだと気付いていやがらねーのか?コイツは俺が道端の石ころだと気付いていやがらねーのかよ。
「まあっ、兄さまったら、わたくしをお部屋へ連れ込んで。ああわたくしはこれから抱かれるのですわね……初めて、なので……どうか、優しく……して、ください、まし」
どうせするつもりもない挑発だと分かっていても、こんな美女からの挑発だ。アホの俺でも理性くらい揺らいだりする。もしもだってあり得る。だから止めてくれ。
「アホ、馬鹿、だからそういうことを言うんじゃねーの、お前ただでさえ美人なのにそういうこといわれたら――」
「え!え!なんと仰いましたの?! もう一度、今一度お聞かせくださいましっ?!」
ついつい出てしまった本音。そうだマリーベル・メル・ブリタニア皇女は美しい。掛け値無しに美女だ。こいつと匹敵する俺を好いてる美“少女”はあいつだけ。この二人をブスだという奴がいたらそいつは目がおかしいか頭がイカレてる。断言しても良い。コイツらは絶世のを頭に付けても申し分ないくらいの、美女美少女だ。惜しむらくは好く相手を完全に間違えているところか。コイツらなら貴族・皇子そんなんを好きになり結婚すべきだ。三流校卒の夢崩れのアホのニートに熱上げてんじゃねーよ。
「…………美人だよ。ああもうマリーベル・メル・ブリタニア皇女はぁ美人だよッ!! これでいいんだろ!」
だが、本音は本音だ。本音を言われろ嘘を突くなと言われたらコイツは、掛け値無しの美人だよとしか言えない。これだけの美人は人生で三度あった、俺が恋して恋い破れたネリー、コーネリア・リ・ブリタニアと、俺に引っ付いて回ってくる糞チビ、桜色で俺の事は絶対に裏切らない女の子、クララ・ランフランクこと最強の暗殺者クララ・ジ・ブリタニア。そしてコイツが子供の頃に「一緒に夢を叶えましょう」と誓い合った、誓いを交わした神聖ブリタニア帝国第八十八皇女マリーベル・メル・ブリタニア皇女。この三人だ。
一人は、本命は脈無しなのに、本命じゃねー二人が好きと言って離れねー。俺みたいなクズヤローを好きなんて言って離れねーんだ。
「…………本当に、本音ですの」
月夜のネッサローズ
「んあ……?」
「答えなさい玉城真一郎!今の言葉、一遍の嘘偽りも無く本音ですのね? あなたはマリーベル・メル・ブリタニアを美人だと、本心からのお言葉として見て下さっているのですわね?」
コイツは何を焦っているのか。何処を見ればコイツのことをブスだなんて言う奴がいるか。同じベンチでやかましく泣いてただけの糞ガキが、よくもまあここまで立派に育ちやがったもんだよ。
一種の感慨深ささえ覚える。俺はコイツと家族でも何でもねえ。再会したときゃそりゃ偉い目に合っちまった。死ぬ瀬戸際まで行ってコイツもアイツも壊れかけた。
ほんの何か一つの歯車が狂っていたら、今の平和な俺たちは無かったんだろうな。コイツもアイツも無謀な復讐に臨んで死んで、多くの人間が悲しんで北南世界大戦ってか。
コイツら分かってんのかよ。自分たちが北側諸国の重要人物だってこと。ちょっと考えりゃアホの俺でも分かるぜ、それが、俺なんかに、俺みたいな屑にかかりきりになっちまって、北南大戦まで起こしかけやがって、馬鹿じゃねーの?
いや、俺なんか其処までの大物じゃ無い。俺が死んだところでコイツとアイツが泣いてくれるくらいさ。でもな。俺みたいな奴でも泣いてくれる奴くらいいるんだよな。なんでかわかんねーけどさ。俺のために泣く美女と美少女がいるんだよな。
男冥利に尽きるっつか、勿体ないわ。
マリーベル・メル・ブリタニアも、クララ・ランフランクも、俺みたいな糞男の傍にいようとすんじゃなくって、社交界ですげーの捕まえるのが普通なんだろ。
こいつらは自分を無駄遣いしてる。自分の価値が分かってねー。お前等が見てるのは、注目してるのは道端の石ころなんだぜ? そんなもんを必死になって奪い合ってる。なんつー滑稽な姿だよ
なーマリーベル・メル・ブリタニア。シャルル皇帝の手伝いを、対テロ部隊の創設を試みて夢を叶えたその先で見つけた石ころに、お前は何を望んでるんだよ。
クララ・ランフランク、シークレットエージェントとして暗殺者を極めた皇兄女殿下。お前も同じだよ。石ころ相手に殺すだのなんだの、何必死になっちゃってんの。
お前等みたいな金と石ころじゃ土台価値が違うんだよ。石ころはどんなに磨いたって石ころなんだよ。
「…………本音だよ、お前は美人でキレーだよマリーベル・メル・ブリタニア。俺なんかを好いてる奴でおまえレベルのやつはアイツだけだ。大体お前等頭おかしいんだよ金塊が揃って石ころ好きになって、追っかけまわしてる。言っとくがな。石ころはどこまでいっても石ころだぜ金塊には金にはなれない、お前等は必死になってそんな糞の価値もねー石ころを――」
パンッ
ベッドの上俺がマリーベルにのし掛かられる体制。乾いた音が一つ響き渡る。
左頬が痛かった。この激痛はあの時以来かも知れねえ。あの再会の時の銃撃と。
「見くびらないで下さいませ。誰が石を好きにならない金がお有りと申したのです、あなたは確かに金には成れないでしょう。でも、その石と添い遂げたいと願う金が此処に確かにあるのです」
ああ、じんじんする。なんだこりゃ。痛みが浸透してきてるみたいだ。いてーや。
「いいえ、ここだけではありません。悔しいですがあなたという石ころを愛している方は地上にもいらっしゃいます。その方もまた金です。あなたは二つの金に愛される特別な石ころなのです」
痛え、痛えわ。軽くぶたれただけなのに。心の痛み、ほんの数年前味わったばかりなのに。また俺は忘れてたのか。忘れて、コイツに味わわせてたのか。
アイツだったら泣いてんのかな。とんでもねーツエーくせに、心の奥底はもろいアイツなら。
マリーが俺に覆い被さる急な展開に予測不可能。なにをしたいんだろうかこの金は。凄い真顔。真剣な顔。ああ、美人だわほんとに。
「地上の金は悔しいことにあなたと先に口付けを交わしたそうですね」
地上の金、クララ・ランフランクとのディープな口付け。交したな。こんな俺なんかにキスしたら唇が汚れるってのに。アイツは俺なんかの唇を。
は? 顔を寄せてくるマリーベル。肩口から薄紅色の長い髪が流れ落ちて、俺の顔や頬を滑り落ちて、肌に張り付く。オイ、お前何しようってんだ!
羽のマントがふわりと広がって、俺とマリーベルを包み込む。もう離さないとでも言うかのように。離れないとでも伝えてくるかの様に。
クララの時もそうだったけどさ、女の髪ってすげー良い匂いがするんだよ。肌触りも最高でずっとこうしていたいって。マリーベルの長い髪の毛に指を入れて梳き通した瞬間だった。触り心地のいい髪の毛だなって──
て、思って――
「んうう」
あ、もう、遅かったこの馬鹿な金も石ころに引っ付きやがった。
ああ、馬鹿だ、本当にバカヤローだ。なんの価値も無い。無価値の石ころにこの金はくっついってきやがったよ。アイツと同じように。いや、アイツ以上に。
「んっ……んッ――」
俺は何もしてない。ただ唇を重ねられているだけ。してるのはせいぜいマリーベルの長い髪を何度も何度も梳き通して、髪の毛の手触りを楽しんでいるだけ。
ただし、マリーベルはそんなんじゃすまない。マリーベルの方は俺の唇を押し割って舌を口内に侵入させてくんの。逆レイプみたいなの。これなんてーの? 逆キッス? 馬鹿だわコイツも。無価値の物になんでどうしてそんなに積極的になるんだよ。
ああ、でもこの馬鹿のキスは気持ちいい、ぶよぶよとしていて、滑らかで、濡れた舌の感触が、俺の口の中を這い回るのが分かる。歯茎を優しく丁寧になぞり、口内の粘膜をなぞりながら、舌の裏をつつーっとなぞっていく。
エクスタシーっていうのか。身体が勝手に反応してマリーベルを押し倒そうとするも、強力な格闘技術を持つマリーベルには適わず、ひっくり返り掛けた体制を再び元に戻された。
舌が少し離れた瞬間耳元で。
「おいたはダメよ?」
そう言われてまた口付けられた。
今度は手を拘束されて片手で腰を引き寄せられての、脚を絡ませ合いながらの、口付け。これもう口付けを通り越してるんじゃねーの。
丁度続き、俺がマリーベルに覆い被さろうとした瞬間からの。終わりは近い。
裏筋を舌全体で舐め上げていき、頂点まで辿り着くと、予想したとおり、舌を巻き付かされた。
限りなく優しく全体を揉み込むようにして、ちゅるちゅると音まで出るほどの激しさで。
官能だけが刺激されて、このままもう、マリーベルを抱きたくなってしまう。この勘違いした馬鹿な金に、石ころの硬さを教えてやりたいって。
俺はどうしても身体を反転させたくてもがくも、マリーベルはそうさせてはくれず、ベッドの上でびくんびくんと痙攣する俺をマリーベルが余裕を持って押し倒している構図が出来上がっていた。
影で見ると、達する俺をマリーベルが受け止めても見えるだろうこの構図。アイツや筆頭騎士に見られたら殺されちまう。
「ちゅる――……ああ、兄さま。わたくしと兄さまはいま一つになったのですね」
マリーベルが俺を抱き締める。大きなお胸が俺のなんの取り柄も無い胸部に当たって潰れて、まりまりぷにょぷにょ、気持ち良すぎ。当然彼処にも血液が行くわけで。
「兄さまと、このまま伽へと参りたいですわ。伽へと参り、夜を超え、このネッサローズの兄さまの部屋で朝を迎えるの」
と、伽って、え、え、えっち、だろ?
俺もどーでもいいわってえっちしようとしたけどよー、流石にそれは不味いだろどう考えても。
お姫様と平民なんだぜ。
「それはまずい、その、そういうので始めたんじゃねえだろ」
「うふふふ流石はわたくしの兄さま。今もし致そうなどという行為を見せましたら首の骨を折っていたところですわ」
し、シャレにならん。コイツ怖すぎる。
「じ、じゃあ、あらためまして、してェっ!て言ったらどうする?」
ちょっと時間を空けての再度の試みって奴は。投げやりな質問にコイツは。
「兄さまが、その、本気でわたくしをお抱きになりたいと申されるのならば……金は、石ころと一つになろうかと」
「不味いだろ、お前皇女で俺平民なんだぜ国は違えども」
「平民と契りを交し婚姻に至った皇族も居りますわ」
「誰だよそれ、言えるのかよ」
「わたくしのお父様です。平民からの奥方を数人娶っております」
「よりによって現皇帝かよ」
態勢変わらず、マリーベルの髪が俺の顔に掛かっているが、彼女の表情は見えず。
俺の腰は相変わらずマリーベルに抱かれている。腕を掴む手の力は緩んでいる。
本当にOKなんだろうが、俺は抱き締めた、抱き締め合う形で留めた。
そのまま頬を擦り寄せ合って。俺はマリーベルの髪を優しく優し撫でてみてさ。指の間を髪の毛が透き通っていくのよ。しっかり手入れされてるんだな。本当に言い触り心地なんだぜ。
「なあ、もう寝ようぜ。あと端末返せな」
「はい、寝ましょう。端末は返しませんが」
石ころを好きになる奇特な金もある。それも二つも。マリーベル。クララ。二人とも俺の大切な――
月が出ていた。
ネッサローズを照らす月が。
その金色の光は。
石ころに恋をする宝石のように輝いていた。
どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。
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嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
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