帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

370 / 379
七夕遅れ

 

 

七夕遅れ

 

 

 

 

 

その日、嶋田繁太郎は朝、仕事に出かける同居人の背中へ声をかけた

 

「モニカさん、今夜は一緒に過ごそう」

 

振り替えるモニカ・クルシェフスキーの長い金の髪が翻り、揺れた

 

「・・・は、はいっ! 我が君っ!」

 

上擦った声音は、いってらっしゃいと告げるいつもとは異なる嶋田の送り声に無意識に反応してしまったが故に

今日は七月七日の七夕

きっと何かの意味があると思ったが為のものであった

 

 

嶋田は、我が君と呼ばれて面食らう

モニカは普段そうした形式を嶋田には使わないからだ

使わない言葉を使う

見せない姿を見せる

彼女がそうするときは某かの特別な意識化に置かれている時であると彼は経験から察していた

 

気付かれている

 

僅かな違いにまごうことなく気付かれていると彼は悟った

嶋田は確かにいつもと違う言葉を意識して投げ掛けていた

今日は七月七日の七夕であるから

 

年甲斐もなく彦星である自身が、織姫であるモニカと会瀬を重ねる日、などと勝手に考えてしまったのだ

 

そうして互いの意図が察し合った二人はその場で別れた

 

彦星と織姫のように、会えない365日へと突入するかのごとく

 

 

 

 

 

 

「すみません嶋田さん山本さん、今日の会合ですが最後までご同席願えますか?」

 

「え?」

「なに?」

 

夢と幻と会うと書いて夢幻会

その会合の最中、嶋田、そして彼の友人である山本の二人はどうしても最後まで残るようにと辻から告げられた

 

突然にだ

 

「いえ、お二人に対しての重要議題がありまして、お残りいただかなくてはならないのです」

 

そんな話は聞いていない

嶋田は抗議の声を上げようとした

それを制止したのさ場の最高権力者であった

 

「すまんな嶋田くん。そして山本くん。第一次嶋田政権時代のことで少しな。残ってはくれないか?」

 

伏見宮博恭王。大日本帝国を影から支える最高権力者から頭を下げられては、さしもの嶋田も山本も、声を上げられなかった

 

 

 

 

 

 

クルシェフスキー卿、今夜は悪いが残業となります

 

「え?」

 

駐日ブリタニア大使館の自身の執務室で、ブリタニア帝国最強の騎士、円卓の騎士ナイトオブラウンズの末席にいるナイトオブトゥエルブ、モニカ・クルシェフスキーは、自身の副官より告げられた残酷な一言に己が眼を点にしていた

 

「先日よりのオセアニアの不穏な動きに対しクルシェフスキー卿よりの見解を畏れ多くもV.V.殿下よりお聞きしたいとV.V.殿下御自ら大使館へ足をお運びになられておりまして」

 

V.V.、モニカが仕える主たるシャルル・ジ・ブリタニアの実兄にして、神聖ブリタニア帝国影の権力者

彼女はその名と、その内容に碧い瞳を揺らめかせながらも、そんな話は聞いていないと内心で叫びつつ、副官へ「イエスユアハイネス」と答えた

 

263: 名無しさん :2018/07/08(日) 23:51:19

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遅くなってしまった

 

嶋田は焦る

 

焦りながら汗を流して走る

齢60の身には短距離といえども全力疾走は堪えると分かりながらも走っていた

いつも彼女と過ごす、平和な自宅の居間へと

 

 

 

遅くなってしまった

 

走る、彼女は走る、騎士の最高峰に立つラウンズたる己が身には対した距離ではないと分かりながらも焦りによる汗を流しながら

 

モニカは、平和な日常だけがある嶋田邸の中でも最も暖かな場所である、彼の居間へと

 

 

 

「モニカさん!」

 

壮年の男は汗を飛ばして叫んだ

 

「嶋田さん!」

 

若き大騎士は金の髪を振り乱し叫んだ

 

時は同時

 

間を図ったかのように一秒のタイムラグもなく、二つの扉が開かれた

 

嶋田、いや、彦星の瞳には黄緑のマントを羽織、長い金砂の髪を靡かせた碧い瞳の織姫の姿が映り

 

モニカ、いや、織姫の瞳には白交じりの髪を撫で付けた、グレーのスーツ姿の男が映る

 

 

 

 

時は午後11:59分

 

 

静かに自然に抱き締め合った二人は、1分という七月七日に間に合ったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

「予想されてましたか?」

 

丸い眼鏡を人差し指であげながら、男は二人に話しかけた

 

「まさか」

 

「流石にないな」

 

短い少年のような声音と、同じく短い渋味のある声が否定の意を示した

 

「クルシェフスキー卿と嶋田くんが11:59分ちょうどに落ち合うなど」

 

「計算の埒外さ」

 

問われた二人はさも愉快そうに微笑んだ

 

「く、確かに。山本さん側まで同じくのタイミングともなると、これはかなりの低確率となるでしょうしねぇ」

 

丸い眼鏡の男も、少年のような男も、壮年の男も、三人とも楽しげに笑った

 

 

夜空に広がる天の川を見上げながら

 

 

 

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
  • レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。