愛・七夕 嶋田繁太郎とユーフェミア・リ・ブリタニア編
七月七日の七夕は、天の川を挟んで織姫と彦星が年に一度の逢瀬を重ねる日である。
七夕にまつわる昔話は、現代になっても色褪せることなく語り継がれていた。
しかしだ。
もしも織姫と彦星が年に一度という制約無くいつでも逢えるとしたら?
んう――シゲタ……ロ――っああ……
それはもう目を覆うほどの愛を交わし合う事疑いなし。
ユ、フィ――――……
好きであるからこそ、愛を交わさずにはいられない。かつては海軍軍人として海の男でもあった、老齢に差し掛かってもなお逞しい胸板や体付きを持つ者。
嶋田繁太郎に、優しくでいて、それでいながらも熱く愛される、長い濃色の桃色髪を波打たせつ、彼の名を口にした者ユーフェミア・リ・ブリタニア。
いつでも一緒だからこそ、いつでも愛を交わし合う。
仕事や、一人で何かをしている時を除けば仲良く寄り添う夫婦なだけに。
「織姫は待つに非ず。彦星は観るに非ず。常に共にいればこその求め合わずにはいられない愛の有り様ですか」
日本の唯一無二の同盟相手、神聖ブリタニア帝国の皇族、第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニアの下へと婿入りした嶋田を訪ねていた辻政信は、リ家の離宮の空へ大きく広がる煌めく夜空を眺めながら、手にしたカップを口にした。
「背中を押した者としては喜ばしい限りですが、これは早くもリ家に皇子か皇女がお生まれになりそうですね」
彼がここにいたのは何もデバガメをする為ではないのだ。リ家へ婿入りしたとはいえども嶋田は夢幻会に属したまま。何かの定例会合の決定や、会合の経過があれば、知らされる立場に在った。
秘匿回線での通信会談でも大丈夫だろう、と、考える事もできる。しかし、万が一は起こり得るとして話が漏れでないように誰かが直接赴くのだ。連絡員の誰かでも居居。無論、夢幻会直属の。
ただ、偶然にも辻がブリタニアに用事があったために訪ブしていたので、彼が自ら伝えに訪れた、という話であった。
幸いにもユーフェミアも嶋田の秘密や夢幻会の秘密を知る立場に在った。だから話はすんなりと通る。
そうして訪問した時間に、ユーフェミアの執務室へと案内されかけて、偶々室内より情交の気配が漏れ出ていたのを知っただけのこと。
辻を案内した侍女も己の主人達が執務室に鍵を掛けて、情交に及んでいるとは露程も思っていなかったようで顔を赤くして、辻の訪問を扉越しに告げたのである。
310: 名無しさん :2018/07/11(水) 21:39:21
10分後、嶋田とユーフェミアは揃って執務室の扉を開いて応接室へと姿を現した。
嶋田はきっちりスーツを着こなし、ユーフェミアは昔と変わらぬ公務服を着用している。
「お、お待たせ、しました、辻さん」
「ツ、ツジ卿、お久し振り、です」
嶋田のスーツの下に見えるワイシャツが汗ばみ、彼自身の息が荒く。
ユーフェミアの纏められた髪がしっとりと濡れていて、タイトなスカートの裾にしわが出来ていることについては目立った。
ついでに上げるのならば二人とも胸元が少し乱れている。
「お久し振りですね嶋田さん、ユーフェミア殿下」
辻は息も絶え絶えで、呼吸の一定しない二人を涼しげに見遣る。
隠せている、と考えていそうなところがこれまた哀しみと、そして、微笑ましさを誘った。
「世の男女の誰しもが羨み羨望の目を向けられそうなその仲の良さは相変わらずのようですね」
「うっ」
「ユーフェミア殿下もお早く親王様を授かるとよろしいですね」
「はうっ」
きっちりとバレテイタ、思い至るに声が良くなかったのかも知れない。
七夕の風習の雰囲気に流されて、流されるままで着衣のままに、ソファで、執務用の椅子で、愛を紡いでしまったのが良くなかったのかも。
元が上気して赤い顔の二人が、辻からの指摘を受けて更に顔を真っ赤っかにしていた。
「よろしいことじゃないんですか。織姫と彦星が夫婦としていつも一緒にいるのですから、偶にはこうして七夕愛に耽るのも」
辻がカップを一つ口にし、涼しげに語ると。
「それはそれでまた別種の風情を感じます」
真っ赤っかな二人は。
「つ、辻さん用事があって来たんでしょうがそういうお話しはちょっとっ!!」
「ご、御用向きは夢幻会での会合の事についてではないのでしょうかっ!? じ、重要なことですわっ、私たちの事などどうでもよい事だと思いますっ!!」
必死になって話を逸らそうとしていた。
311: 名無しさん :2018/07/11(水) 21:40:07
辻が帰った頃。
「ふう、一時はどうなるやらひやひやものだったが」
「何とかなりましたわね」
何ともなってない。
バレた段階でもう詰んでいた。
だが嶋田とユーフェミアの二人は、それ以上プライベートな話へと発展しなかった事を良しと考え、割り切ることにしたのだ。
そもそも初めて愛を交わした日、二人の背を押してくれたのは他ならぬ辻政信なのだ。
今更この手のお話しについて、少々の事を聞かれたり、話されたりしたくらいで、一々恥ずかしがっていては身が持たない。
「シゲタロウ、私は織姫なのでしょうか」
ユーフェミアが切り出す。
「ユフィがそうなら俺は彦星となるな、が、俺達は毎日一緒だから織姫と彦星よりも余程に幸せ者なんだと思うぞ」
「――ん」
嶋田はユーフェミアの腰を引き寄せる。
スーツと公務服、けしてその様な行為に至らせる姿ではない二人はそっとキスを交わした。
すれる唇。紡ぎ合う唇。
啄み、絡ませ、混ぜ合わせた唾をワインのように飲ませ。
お互いの背中に腕を回して強く引き寄せながら、背を擦り、体を擦り寄せては。
「ふっ、う――」
熱いベーゼを交わし続ける。
312: 名無しさん :2018/07/11(水) 21:40:44
嶋田の左手は彼女の体を抱き寄せたそのままに、右手だけが纏められた長い濃桃色の髪の中に差し入れられた。
束ねられたそれは、まるで川のようにも、滝のようにも見える、そういう何かを連想させた。
天の川。
ふと過ぎった思いに嶋田は僅か、重ねられていた唇を離す。
絡まる舌が滑り離れて、その間に川に掛かる橋のような糸を残した。
「もう、おしまいなのですか?」
少し不満そうなユーフェミアを、嶋田はいやと宥める。
「君のこの髪がふと夜空に輝く天の川を連想させてね。束ねているから天の川を流れ落ちる滝のようにも見える」
妻を宥めながら、その髪を静かに梳いていく嶋田は、この髪が天の川であるのならば、君はまさしく織姫だという。
「ふふ、毎日見て、触って、それはそれは珍しくもない天の川もあったものですわね。そして、私という織姫も珍しくないものとなってしまうわ」
ユーフェミアは自分の髪を天の川と、天の川に流れる滝であると見立てた彼の感想に、嶋田の背へと回していた腕に力を込めた。
珍しくもない天の川に珍しくもない織姫。となれば、この夫は珍しくもない彦星となる。
「貴方という彦星も珍しくないも彦星です。毎日この目に納めておりますもの、それを以て珍しいなどととても申し上げられません」
「なあに、珍しくなくたっていいじゃないか。むしろ珍しくない方がずっといい。この天の川に触れるのも、この織姫様に触れるのも、いつでも触れられる方が俺には大事な事なのだからね」
「私も、珍しくない彦星様の方が良いですわ。だって、いつもいつも……ん、こうして、触れられるのですもの」
七夕とは一年に一度。それなら自分達にはいらないものだ。
お互いに見つめ合い、口付けを繰り返しながら、頬を寄せ合う二人は思った。
七夕は七夕として楽しむも、自分達が触れられないのは一刻でもあってはならない事だと。
嶋田繁太郎と、ユーフェミア・リ・ブリタニアにとっては、大切な夫婦として互いがいつでも共にいる間柄。
それが基本としてあるのだから。
313: 名無しさん :2018/07/11(水) 21:41:35
終わり。
嶋田さんとユフィって愛し合ってるのが辻さんにバレることが様式美のように感じる。
だって二人が結ばれる最後のひと押しは辻さんのひと押しだったからな。
どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。
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嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
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