帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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ゲバラとカストロのその後


じっとしていられない性分でね

 

 

 

 皇歴2022年6月16日

 

 中東に兵を集めていた南天条約機構軍は、イラク社会主義共和国のユスフ・サルマン・ユスフ書記長の無茶苦茶としか思えない要求。

 

 ペルシャの地は古来より我が神聖なるイラクの土地である。現占領者は土地を明け渡し素直にペルシャを譲るか服従すべし。

 

 この要求を受けペルシャの民は反発、中華連邦も見過ごせないとして国境に軍を集結させたが、ユスフ書記長の言葉を最後通牒として、雪崩のように、津波のように。

 

 南天条約機構軍は中華連邦へと侵攻してきた。その軍勢の総数は3千万。後詰めの2千万を含めるのならば5千万という史上最大の侵攻軍。

 

 海からも大規模な艦隊の侵攻があり、各地の防衛ラインは寸断され、友好国ジルクスタンはこの津波に呑み込まれた。

 

 敵は、ペルシャは愚か奥深くにまで食い込んで来、インド軍区の過半以上、中華中央の外縁にまで迫ってきた。

 

 既に、ペルシャは愚か、パキスタン、アフガニスタン、タジク、トルクメン、ウズベク、キルギス、ブータン、新疆も切り取られ。

 

 スリランカ、インド過半は制圧下に。中華帝国各都市には空爆が続き、首都である洛陽にまで南天の空爆は及んでいた。

 

 東からは高麗と清国が迫っており四面楚歌の状況。

 

 このまま放置しておけば、早晩中華連邦は合衆国中華、或いは中華原理主義人民共和国と名を変えることだろう。

 

 事ここに至り、中華連邦は大日本帝国へと過去の恥も外聞も投げ捨てて助けを求めた。

 

 どうか中華連邦の民をあの死兵達から救って欲しいと。土下座でも何でもした。

 

 助けて欲しい。我らではどうしようも無い、我らではどうあっても適わない南天の津波をはじき返して欲しいと。

 

 これを大日本帝国政府は笑顔で受諾した。過去のことに拘ることはくだらないこと。

 

 前を見て今を観る事。謝ることはその切っ掛け。許さぬでは無く許すことの出来る強さを我々は持っている。

 

 共に戦いましょう。平和のために、明日への希望のために手を取り合い許し合って。過去のことは過去のことだと割り切って。

 

 

 

 

 じっとしていられない性分でね

 

 

 

 

 そこからは早かった。

 

 大日本帝国は予備役を一気に招集。陸海空海兵隊四軍、1200万という大軍を以てして高麗と清国を三日で叩き潰すと、清国攻めをしていたAEUとシベリアで握手。

 

 返す刀で日ブ相互安全保障条約、厳密には北側諸国同盟条約に則り、神聖ブリタニア帝国軍1600万という大軍が合流し、インド戦線、中華戦線へと食いかかっていった。

 

 一進一退の攻防を繰り広げる中、この大戦に参戦していたブリタニア軍のエルネスト・ゲバラ伯爵は、南天軍がトルコ方面にまで侵攻をしていることを知る。

 

 自分たちが必死の思いでユーロユニバースの魔の手より解放したトルコが、再び戦火にさらされる。それだけは看過できないと。南天軍を押し込んでいく中で思い悩み苦しみながら。

 

『待っていてくれ。必ずや死兵の魔の手よりトルコの同胞を解放してみせる』

 

 そう胸に近い、怒濤の勢いで敵軍を粉砕していった。

 

 海上でもまた大きな戦闘が起きていた。

 

 南天軍の23個という途方も無い空母戦闘群に対し、日ブ連合は50個という未曾有の空母戦闘群を以って対峙。

 

 インド洋に展開したのは1千隻を超える大艦隊、過去を顧みてもあり得ない鋼鉄の艨艟たちのデスマーチが繰り広げられていた。

 

 1艦食えば2艦食われ、3艦食われれば4艦食う。至る所で繰り返される撃沈破はインド洋の一地域では無い、インド洋全体に渡り展開された。

 

 多くの死と破壊があった。だが南天軍は【全天に美しき世界の実現の為に】を合い言葉に、死兵となって食い下がり、首だけとなってもなお口で相手の喉を噛み砕くという恐ろしい光景を。地上で海で空で繰り広げた。

 

 南天兵は、南天は完全に思想信条が異なる民族。北側とはけして相容れない民族。この戦争を戦った者達は皆多かれ少なかれそれを実感した。

 

 それとは別に、戦争自体の推移は兵器と技術に勝る北側連合軍が徐々に押し返し始めていた。

 

 8.5世代機、9世代機のナイトメアの質の力により、統合打撃戦闘機の機動力とステルス性、第四世代~四.五世代戦車の砲撃力。

 

 海に展開する超高質な艨艟群の鉄壁の布陣。徐々に数を減らし押し返されていく南天軍は、如何に死兵と言えどもその気迫と巨大なる軍の圧力に気押され。

 

 各地で敗退が続いた。もちろん、押し合いとなり互角の戦いを強いられる戦線も大いにあった。

 

 元より二つ名の超大国同士の戦い。同格同士の戦いなのだ。犠牲も多く強いられた。南天軍が食い破ってきた戦線もそれなりの数が有った。

 

 補填のために派遣された増援が再び敵を押し返し、一進一退の攻防に大きく変化が現れだしたのはそう、終戦三ヶ月ほど前だった。

 

 ある戦線で大きな前進が見られた、神聖ブリタニア帝国エルネスト・ゲバラ伯爵の率いていた方面軍だ。

 

『皆いまは辛い。地獄の中に居るとはこのことだ。南天は天使の仮面を被っているがその本質は無機質な悪魔だ。奴らを倒そう! 奴らを押し返そう! そうして我々の家族とともにある日常の世界に帰還するのだ!!』

 

 日常の世界に帰還する。それは大きな歓喜となって戦場を包み込んだ。

 

『隠した相手に負けたら情けないぞッ!』

 

『俺たちは帰るんだ我々自身の日常へッ!』

 

『心なき天使共に負けるな心ある人間達よッ!!』

 

 この地上での戦意が伝わったのか?

 

 海での戦いは日ブ連合軍の50艦空母戦闘群の内、実に8個群を、潜水艦も併せれば100艦以上撃沈・大破させられたが、南天軍の戦闘群は13個群を殲滅、3個群を大破半身不随に追い込んだ。

 

 一番の大物で在る七天艦隊こそ取り逃がした物の、スリランカとインド軍区を解放。中華への空爆を防いだことは大きな勝利と言えよう。

 

 空はほぼ同世代だったが、一部日ブがその先進性を発揮しキルレシオ1対3の圧勝、南天軍に後れを取ることは無かった。

 

 そして地上の戦女神と呼ばれたのが大型ナイトメア。第9.5世代KMFフリーダム=フローレンスだった。

 

 劣勢の戦場に颯爽と現れ2丁のスーパーヴァリス・レイ、ハイパーヴァリスとでも呼ぶべき物を乱射。

 

 巨大な刃状粒子弾を雨あられのように降り注がせては、敵の第7世代ナイトメア、第9世代と見られるナイトメアを次々に撃墜。

 

 序でとばかり日常の戦車や装甲車も撃破していき、止めにシュタルクハドロンを大型高威力にしたような砲撃を全方位、正確に敵のみを狙って発車・撃破していった。

 

 その余りの強さと華麗なる戦い方、圧倒適制圧力に戦女神の名を付けられ、戦女神の現れた戦場からは敵が居なくなるとまで言わしめた。

 

 そんな戦女神と一騎打ちをした南天のナイトメアも居た。真っ黒、漆黒のナイトメア。いや戦い方からして果たして南天のナイトメアだったのかもすら分からない。

 

 9.5世代機のフリーダム=フローレンスと互角と言うことは、その機体も9.5世代機。南天が開発したとは思いにくいその機体との戦いは一進一退の攻防。

 

 同じMVSを使い、同じ速度を持ち、同じ装備を持つ漆黒の機体との戦闘は、戦いで生じた荒野で行われたが決着が付かずに、両者が引く形で幕を閉じ。

 

 ダメージはあまりなかったフリーダム=フローレンスはそのまま戦いを続行。1千機以上の敵KMF、1千機以上の敵航空機、2千両以上の敵戦車を撃破。

 

 インフィニットドライブという無限に稼働するドライブがあるためと、パイロットの不断の努力によって得られた戦果であった

 

 これは南天と対峙する日ブ両国軍を大いに勇気づけた。

 

 ゲバラの鼓舞と戦女神の戦いに勢いづいた日ブ連合軍は、インド全土を解放した後。

 

 パキスタン、ジルクスタン、アフガニスタン、新疆、キルギス、トルクメン、タジク、ウズベク、ペルシャと解放していき。

 

『あそこは私が先陣を切る』

 

 とAEUオスマントルコの地へと強襲攻撃を掛けた、エルネスト・ゲバラの部隊とその後に続いた日ブ連合軍により、最後の南天侵略地オスマントルコを奪還。

 

 中華連邦・AEU・南天の国境線を元の場所にまで押し返したのだ。この先は南天の領域、危険と判断した北側諸国はここを停戦ラインとした。

 

 また南側諸国も少なくない戦力を喪ったため、その停戦ラインで合意。ここに第一次世界大戦は終結を見た。

 

 

 ※

 

 

「おめでとう我が同志よ」

 

 帝都ペンドラゴンからの帰り。

 

 最新式のカールレオン級浮遊航空艦を2艦下賜されたエルネスト・ゲバラ辺境伯は、親友の出迎えに苦笑いで答えた。

 

「すまんな。駐機場をかりることになって」

 

「かまわんよ。それよりも私は同志の出世が我が事のように嬉しい。普通無いぞ? 男爵から辺境伯にまで上り詰めるとか」

 

 フィデル・カストロはとっておきのワインを振る舞いながら、親友の出世を喜んだ。

 

「これで君は私の上に立ったという事だ」

 

「よしてくれフィデル。君と私に上下関係は無い」

 

 笑顔でワイングラスをチンと鳴らす二人は、慣れた手つきで中身を飲み干していく。

 

「領地も下賜されたのだろう」

 

「まあ、ね。私は固辞したのだが、皇帝陛下が報償だと仰ってね」

 

「どこだ?」

 

「君の隣だ」

 

「イスパニョーラ島」

 

「おお、直ぐ隣では無いか。元の領地と合わせて近いな」

 

「私としてはジャマイカだけで充分だったのだがな。それともう一つ」

 

「まだあるのか?!」

 

「プエルトリコ島。本当は本土に領地を持たぬかとサシの席で勧められたが辞退した。私にはこの辺りの気風が合っているからな」

 

「欲の無い奴だ。しかしプエルトリコは少しばかり遠いが。国定史跡があったろう? 観光業にはかかさんぞ。よし、もう一本開けてくれ」

 

 家宰に告げるカストロ。とても上機嫌だ。

 

「悔しくないのか、上に行かれて」

 

「悔しい物か。どうせこのキューバでのんびりと暮らしている身だ。友が出世する。めでたいことじゃないか。そうだ。明日の演説は十二時間を挑戦してみよう」

 

「おいおいやめてくれ、病人が出る」

 

 ゲバラは一言。

 

「立場が立場だ。もう動けんことが辛いなあ」

 

 カストロが一言。

 

「もう充分動いただろう。案外皇帝陛下ももうお前を動かさない様にするために頸木を討たれたのかも知れないぞ」

 

 

 夜明けまで飲み明かした二人は、これからのカリブ海の発展について考えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フィデル・カストロ伯爵

 

 

 領地:キューバ・バハマ諸島

 

 面積:125,170㎢

 

 人口:23,421,032人

 

 

 

 エルネスト・ゲバラ辺境伯

 

 

 領地:ジャマイカ・イスパニョーラ島・プエルトリコ

 

 面積:101,261㎢

 

 人口:31,353,300人

 

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