帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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349 :楽隠居?と円卓の少女 第4話:2013/01/10(木) 18:56:27

それでは投下

楽隠居?と円卓の少女 第4話

提督たちの憂鬱キャラがギアス世界に転生
ちょっとだけSEEDデスティニークロス
嶋田さんロマンス
嶋田さん独身設定
平和だが少しきな臭く
性格改変注意
甘めなので注意
人物、政党はフィクションです



楽隠居?と円卓の少女 第4話

 

 

 

 楽隠居? と円卓の少女 第4話

 

 

 

「これが……日本の新量産KMF」

 

 在日ブリタニア駐在武官ナイトオブトゥエルブ モニカ・クルシェフスキーは、眼前に立つ2機の白銀の人型兵器を見上げて呟いた。

 

 頭部より突き出た二本の突起物。筋肉がついているように盛り上がった肩。生物的な印象を受ける二股に分かれた踵。

 

 現在自身を含めたナイトオブラウンズの専用機となっている第七世代KMFを元にし開発中である、ヴィンセントを思わせるスマートな体躯。

 

 ブリタニア製KMFに似通っているようで全く違う設計思想だろうその機体。

 

「大日本帝国、倉崎重工開発タイプGAT-04ウィンダムです」

 

 そう自慢気に語るのは倉崎重工の開発主任である。

 

 どうだカッコイイだろうとでも言い出しそうな彼にモニカの同行者である大日本帝国の元総理、嶋田繁太郎は思いきり突っ込みを入れた。

 

「趣味に走っただろ!!」

 

 大きさ重量は実物に比べてかなりの小型だが、型番名前そして何よりその見た目からこれが純粋なオリジナルでないことは一目でわかった。

 

 そう、前々世の世界にあったアニメで登場したロボット兵器をそのまま小型化した物だったのである。

 

「嶋田さん、いつの世も遊び心を忘れてはダメなんですよ」

 

「あんたらはネタに走りすぎだ!」

 

 此処は普段実験機のテストで使用されている演習場。

 

 嶋田とモニカが今日ここに来ているのは、正月休みの時に辻から依頼された新型量産機との模擬戦を行う為。

 

 正確に言えば辻ではなく、倉崎側の開発主任からの依頼だったのだが。

 

 この開発主任というのが大のガン○ム好きで、趣味が高じてデザインがこうなったというわけである。

 

「ですが性能の方は保証します。デザインは趣味ですが中身は紛う事なき第七世代機ですから」

 

「第七世代!? 第七世代の量産型ですか!?」

 

 主任の説明に驚いたのはモニカだ。

 

 それもそのはず、ブリタニアではまだ開発中の第七世代量産機を日本は既に完成させていたのだから。

 

 ブリタニアの第七世代機はラウンズ専用機を除けば実験機のみであり、それほど数があるわけではない。

 

 それを日本が先駆けて実用化させた。

 

 これは日本の持つ技術力の高さを表している。

 

 この世界の超大国。世界第二位の大日本帝国と第一位の神聖ブリタニア帝国を表現する言葉に以下のようなものがある。

 

 “技術の日本に力のブリタニア”

 

 日本は常に世界を1歩リードする技術力を持ち、ブリタニアは他を圧倒する巨大な物量を持つ。

 

 これは二国以外の国が勝手に作り出した造語なのだが、それだけ二国が突出しているのだから正鵠に的を射ていると言えた。

 

 この二国の後を追う形で中華連邦・EUが続いている。

 

 尤も確固たる技術協力体制を敷く日本とブリタニアの間だから、日本が完成させたなら直ぐにその技術はブリタニア側にも伝わりヴィンセントの開発も加速される。

 

 そして新たな先進技術に必要な資源などはブリタニアが日本に提供。

 

 こうして互いを保管し合っているのだ。

 

「データなどは追ってそちらにも公開されますから、お国の量産機開発に役立ててください」

 

「国を代表して礼を言わせてください。ご協力感謝いたします」

 

「いえいえ、こちらも色々とご協力頂いてますからお互い様ですよ」

 

 互いの検討を湛える開発主任とモニカ。

 

 だがこの光景は嶋田に取って頭痛の種でもあった。

 

(くれぐれもネタ的な処だけは伝えるんじゃないぞ)

 

 なにせ説明書や資料に変なイラストが混じっていたのを現役時代に見ているのだ。

 

 そのうちブリタニア製痛い子中隊が出来たりしないか心配でならない。

 

 もしもそんなのが出来てしまうような事態になれば日本の恥だ。

 

 例えブリタニアがそれを受け入れたとしても嶋田としては認められない。というか認めたくなかった。

 

「さて、お話はここまでにして準備に入ってください」

 

「わかりました。嶋田さん、私着替えてきますね」

 

「ああ行っておいで、俺はここで待ってるよ」

 

 

 

 *

 

 

 

 それから十分ぐらいして戻ってきたモニカの格好を見て嶋田は目のやり場に困ってしまった。

 

 彼女が着ていたのは家で普段着ている服でも、腰までスリットの入ったタイトスカートの白い騎士服という仕事上の服装でもない。

 

「モ、モニカさん、その格好は……」

 

 白を基調としたパイロットスーツは胸の部分が黒で金色のブリタニアの紋章がデザインされていた。

 

 袖の部分は緑で胸から足の先まで金色のラインが入っており、全身にフィットした服はしっかりと身体の線が出ている。

 

 胸はまだ良い。そこそこ大きな膨らみがくっきりした形で浮かび上がってはいた物の、そういう服なんだなで片付く範囲だ。

 

 問題は下腹部から膝にかけての部分。露出部が多すぎて太股どころかお尻が少し見えてしまっている。

 

「どうしたんですか?」

 

 が、そんな服装にも拘わらずモニカは全くと言っていいほど気にしていないようだ。

 

「い、いやあ、なんでもないっ」

 

(この格好で恥ずかしくないのか……)

 

 感覚の違いという物だろうがこれは慣れるまでは大変だし目の毒だと、極力目線を上に向けて際どい部分を見ないようにする。

 

 すると目に止まるのは普段と違う部分。

 

「ん? その髪型……初めて見るね」

 

 いつもは下ろしているお尻の辺りまで伸びた真っ直ぐな金色の髪。

 

 だが今は頭の左右で二つ括りに、俗に言うツインテールにしていた。

 

 髪を纏めて出来た二つの髪の束。その毛先に向かって螺旋状に巻き付けているリボンの色は青。

 

 去年のクリスマスに嶋田扮するサンタクロースがプレゼントした物だ。

 

 モニカは他に白と赤の2色のリボンを持っていてその日の気分で使い分けていた。

 

 このうち白いリボンも彼がプレゼントした物である。

 

「KMFの操縦をするときは邪魔にならないよう、いつもこんな感じに纏めているんです」

 

「モニカさんは髪の毛長いからなあ」

 

 KMFは言ってみれば戦闘機のような物だ。

 

 これだけ長いと操縦の邪魔にもなるだろう。

 

「嶋田さんは長い髪……嫌いなんですか……?」

 

 その言葉を勘違いしたモニカは悲しそうな顔で嶋田を見つめた。

 

 騎士でありながらも女らしくあろうと思って伸ばした髪。

 

 騎士服がスカートなのもやはりそれを意識しての物。

 

 彼女は何気ない嶋田の言葉に女としての自分を否定されたような気がしたのだ。

 

 無論そんなつもりで言った訳ではない彼は慌てて彼女の側に駆け寄ると、リボンが巻き付く髪の束を優しく撫でながら言った。

 

「そ、そんなことはない、君の髪の毛、凄く綺麗だし…… 好きだよ……」

 

 すると一転モニカの頬が紅く染まる。

 

「嶋田さん……」

 

 目まぐるしく変わる彼女の表情だがこればかりは仕方がない。

 

 同じく自分でやっておいて気障ったらしいと思う嶋田も恥ずかしさに頬が上気している。

 

 照れくさそうに見つめ合う二人。

 

 嶋田はモニカの髪を撫で続け、モニカはそれを受け入れる。

 

 二人だけの時間が流れる……訳にはいかなかった。

 

 

 

 *

 

 

 

「ええ~っ、いい加減ラブるのは止めてください!」

 

 いきなり目の前でラブり始めた還暦越えの男とうら若い女性を注意する開発主任(独身)

 

 オッサンと美少女の甘い関係など見たくもない。というか羨ましい! 

 

 彼は辻からある程度二人の関係(一つ屋根の下で暮らす大家と下宿人)を聞いていたが、同居人以上恋人未満とは知らなかったようだ。

 

 そもそも60の男と19の少女がそんな関係になりつつあるとは誰が想像できるだろうか? 

 

「「ひゃあっっ!!」」

 

 注意された二人は素早く身体を離すが声までハモってるのを聞いた彼は(コイツらどついたろか?)と半ば本気で考えていた。

 

 しかし本当に殴る訳にもいかないので口頭注意で済ませたあと、気を取り直して説明を始める。

 

 

 

「まずモニカさんにはこのウィンダムに搭乗して模擬戦をやってもらいます」

 

「え? いいんですか新型機なのに私を乗せても」

 

「ええ構いませんよ。上から許可も下りていますし」

 

 辻から話があった時点でもう許可は下りていたのだ。

 

 その辺りの根回しは早い。

 

「わかりました。ところで……」

 

 模擬戦というのは対戦である。

 

 対戦は相手が居ないことには始まらない。

 

「お相手の方は?」

 

 そう考えたモニカが彼に聞いたところ。

 

「ああ、もう来ますよ」

 

 なんでも渋滞に巻き込まれて遅れたらしく、いま服を着替えに行っているとのことだった。

 

 

 

 *

 

 

 

「遅くなってしまい申し訳ありません!」

 

 待つこと数分、やってきた模擬戦相手はモニカと同年代か少し下に見える少年だった。

 

 幼さの残る顔立ちに柔らかそうな栗色の髪。

 

 一見すらっとした細身の身体に見えるも、騎士である彼女には意外に筋肉質であることがわかった。

 

 少なくとも完全な素人という訳ではない。

 

 何らかの格闘技、武術を学んでいると思われる。

 

「あれ? スザクくんじゃないか」

 

 そんな分析をしていた彼女を余所に嶋田が声を上げた。

 

 彼はこの少年を知っているのである。

 

 見掛け子供の友人宅でたまに顔を合わせるし、自分の後輩である現首相、枢木ゲンブの家でも会うことがある。

 

「お知り合いですか?」

 

「ああ、友達の息子さんなんだよ」

 

「こんにちは嶋田さん」

 

「こんにちはっていうか模擬戦相手って君なのか?」

 

「ええそうです」

 

 嶋田の質問に答えた少年スザクは、続いてモニカに向き直ると自己紹介をする。

 

「初めましてクルシェフスキー卿。枢木スザクといいます。今日は宜しくお願いします!」

 

 爽やかな挨拶をするスザク。

 

 温かい家庭で育ってきたことを伺わせる真っ直ぐな目をしていた。

 

 厳しい貴族の家で生まれ育ってきた彼女にはそれが少しばかり羨ましく感じる。

 

「こちらこそ宜しく。私のこと知ってるんですか?」

 

「勿論です。高名なナイトオブラウンズの方を知らない人なんて居ませんよ」

 

 ある種の憧れの人を見るような眼差しで見てくるスザクにモニカは少し照れてしまう。

 

 ラウンズという地位に就いている関係でそういう風に見られるのは多々あるのだが、やはり慣れる物ではない。

 

 しかし相手が名乗った以上自分も名乗らないとと切り替え彼女も同じように自己紹介した。

 

「改めまして。神聖ブリタニア帝国皇帝シャルル・ジ・ブリタニア陛下の剣、ナイトオブトゥエルブ モニカ・クルシェフスキーです」

 

 堂々とした騎士らしい名乗りだが、それに続いて小さく呟く。

 

 “それと……嶋田繁太郎の剣でもあります……”

 

 その呟きは誰にも聞こえることはなかったが、それでもいいと彼女は微笑んだ。

 

 宣言することが大事なのだ。

 

 彼に伝わらなくてもいい。

 

 自分が自覚していればいいのだ。

 

 モニカ・クルシェフスキーは嶋田繁太郎の騎士であると。

 

 

 

 *

 

 

 

 モニカとスザク。

 

 互いに顔を合わせて自己紹介を終えた二人はそれぞれ機体に乗り込む。

 

「これがウィンダム……」

 

 コックピットに乗り込みウィンダムを起動させた彼女がまず最初に驚いたのは、全天を見渡せるのではないかと思うほどの広範囲を映し出すモニター。

 

 側面モニターとか前面モニターという複数の画面ではなく、一つの画面で全て完結している。

 

 今まで騎乗したどのKMFにもこのような広い視界を確保できる物は無かった。

 

 視界が広がればそれだけ敵の攻撃に対処する選択が増える。

 

 それ一つ取っても戦術の幅が広がるのだ。

 

『聞こえますか?』

 

 無線から聞こえる開発主任の声。

 

「はい聞こえます」

 

『これからルール説明させて頂きます。双方の機体に装備されている武装は実戦の物とは違って弾は出ません。

 

 代わりに耐衝撃コートが施された模擬弾が発射され、相手にクリーンヒット、または一定以上のダメージ判定があったときにモニターに映し出されているゲージが減ります』

 

 モニカは説明された画面のゲージを見る。

 

 ライフポイントと書かれているそれはまるでテレビゲームのようにも見えた。

 

 現在の数値は100。

 

 要するに100のダメージを与えるか受ければ勝敗は決するということだ。

 

 武装は自身の愛機と同じようなMVSに似た高周波ブレード。

 

 そして実弾式ライフルヴァリス。ただブリタニア製のと違って連射速度が速いようだ。

 

 装備は正に第七世代機の純正品と言える物。

 

 それに機体設計からしてどうやらこれら以外にも別の装備があるように思える。

 

 おそらくは専用の武器が他にあるのだろう。模擬戦には必要ない物として外されているのかも知れないが。

 

『…………以上で説明を終わります。それでは始めてください』

 

 開始の合図が告げられる。

 

 と同時にモニカは自分から相手機に飛び込んでいった。

 

 先手必勝──。

 

 一見無謀な突撃に見えるがそこは天下のナイトオブラウンズ。

 

 機体の勢いを利用してブレードを抜き放ち素早い刺突を繰り出す。

 

 その動きはKMFというよりは人間の動きに近い。

 

 つまりモニカ・クルシェフスキーという戦闘のプロフェッショナルが生身で戦う動きそのままを再現しているのだ。

 

(凄い……私の愛機と同じ世代とは思えない)

 

 まるで自分の手足のように動くウィンダムに驚きと興奮を隠せない。

 

 尤も並のパイロットにここまでの動きが出来るかと言えばそれは無理な話だ。

 

 飽くまでも彼女だからこそ自分の身体のように動かせるのであって、普通の訓練を受けた者には不可能。

 

 それだけ規格外という訳である。

 

 一方攻撃を受けるスザクも紙一重で躱していた。

 

 素人や並のKMF乗りならば最初の一撃で撃墜判定を受けているところを、見事なまでに避けている。

 

 だが流石にノーダメージとはいかないようで少しずつライフが削られていた。

 

「くっ、なんて速さなんだっ!」

 

 彼から見ればモニカ機はとても同じKMFの動きとは思えなかった。

 

 まるで子供と大人。こうして直撃を避けられているだけでも奇跡だ。

 

 僅かな隙を見計らって打ち込むも悉く弾かれ、逆に連続した攻撃の嵐に晒される。

 

 元より自分は民間人。本職の人間には叶わない。

 

 だからといって諦める訳にはいかないのだ。

 

 親友の妹であるブリタニアの皇女、ナナリー・ヴィ・ブリタニアの騎士になるため自身で身体を鍛え、

 

 訳を話して協力して貰った藤堂鏡志朗に剣技を教わり、更には父の友人の辻正信の紹介で倉崎重工のテストパイロットをさせてもらえるようになった。

 

 努力に努力を重ねてここまで頑張ってきたがまだ足りない。

 

(これではナナリーの騎士になれない!)

 

 そう思った彼が強い人と戦いたいと言うと。

 

「強い人ですか……私から見ればスザク君は十二分に努力してます。その志と決意、そしてナナリーさんに対する一途な想い。どれ一つ取っても騎士になるには十分すぎる資格をお持ちです。

 

 それなのに、まだ強さを求めますか。そこまでの強さを求めてどうしようというのですか?」

 

「ただ、守る……ただ騎士になるだけじゃダメなんです……。世界中のどんな強い相手にも勝てるくらい、どんな強い敵にも負けないくらい強くならなきゃ、ナナリーの騎士になる資格はないッッ!!」

 

 彼の強い決意。ぶれない想いと眼差し。

 

 暫しの間言葉もなく見つめていた辻は深い溜息を付いて言った。

 

「はぁ、どこの熱血主人公君ですか貴方は………………いいでしょう。それだけの覚悟がお有りなら知り合いに一人居ますのでご紹介しましょう」

 

 “世界最強の一角に名を連ねる方をね”

 

 辻は紹介してくれた。

 

 神聖ブリタニア帝国最強の騎士の一人を。

 

 ナイトオブトゥエルブ モニカ・クルシェフスキー。

 

「つよ……すぎる……!!」

 

 防御から攻勢へと姿勢を変えることすら出来ない。

 

 圧倒的な実力差。そこには今までの努力では越えられない壁が存在していた。

 

(あと半分……)

 

 模擬戦が始まって五分。

 

 唯速いだけの突き込みと、一度離れてはまた加速して突っ込むという単調な攻撃を繰り返しているだけのモニカ。

 

 それだけでスザク機の体力ゲージは半分まで削られているのだ。

 

 逆の言い方をすれば、ラウンズの彼女を相手に軍属ですらないスザクが五分も持ち堪えている。

 

 これは間違いなく天性の才能。

 

(この子……すごい……)

 

 モニカは上からの言葉ではなく心からの賞賛を送る。

 

 時折来る一撃一撃の突き込みはブリタニアの剣術ではないが、ある一定の法則と形を持っている。

 

 おそらくは日本に伝わる剣術。

 

 本来なら日本刀という剣を用いた剣技であろうそれは、ほんの少しではあったが彼女のライフを削っていたのだ。

 

(完璧に避けたと思っていたのに……私に一撃どころか何撃も入れてくるなんて……!)

 

 感心している間にもまた一撃、機体をかすめた。

 

 間髪入れずにもう一撃繰り出されたそれを返す刀で弾く。

 

 弾いただけでは終わらない、そこから更に脚部を動かして強烈な蹴りをお見舞いしてスザク機を吹っ飛ばす。

 

 開いた間合いでどうするのか? それを試す為に。

 

 この真っ直ぐな少年なら今の状況でアレを使ったりしない。

 

 もし使えばそこまでの覚悟だったということだし、ここで止まることになる。

 

 そしてその予想は──。

 

「やはり真正面からきたわね」

 

 当たった。

 

 そう、彼女はこれを期待していたのだ。

 

 間合いが開けば飛び道具を使う絶好のチャンス。

 

 高周波ブレードだけではなく、ヴァリスという飛び道具があるのだからこれを活用しない手はない。

 

 だが彼は敢えてそれを使わなかった。

 

 剣のみの戦いで決着を付けようとしてくれた。

 

「ならばこちらも全力の一撃で答える!」

 

 瞬間、機体の出力を最大にして急加速するモニカ。

 

 そのスピードはスザクに捉えられる限界を超えていた。

 

 周りの景色がゆっくり流れ、まるで時間が遅くなったかのような錯覚さえ覚える視界。

 

 ウィンダムのモニターに捉えるのは前方のスザク。

 

 彼女が操るウィンダムはこの瞬間明らかに性能限界を突破していた。

 

「速いッッ!!」

 

 正面からぶつかる2機。

 

「これがナイトオブトゥエルブの……!」

 

 叫ぶスザク。

 

 そして──。

 

「モニカ・クルシェフスキー……ッ!」

 

 振り抜かれた剣撃は、その速度に対処することが出来なかったスザクの残り三分の一のライフを全て奪い取っていた……。

 

 

 

 *

 

 

 

「モニカさん貴女ねえ……」

 

 終了後、コックピットから出てきたモニカは開発主任の前で縮こまっていた。

 

 何故なら主任がお怒りだったから。

 

「模擬戦つってるでしょうがぁぁ!! 決闘やってどうすんですかぁぁ!!」

 

 ラウンズが剣の達人みたいな化け物的な強さを持ってる。

 

 ウィンダムの性能を目一杯引き出してくれた。

 

 そういうデータが取れたのは良かったのだが。

 

「ヴァリスは1発も撃たないわ終始剣の打ち込みをやってるわ剣道の試合じゃないんですよ!!」

 

「ご、ごめんなさい……でも騎士の試合というのは「アアッ!!?」ひッ!」

 

(こ、こいつ凄いな……モニカさんをびびらせてる。ブリタニア最強の騎士の一人だぞ……)

 

 嶋田はそんな主任の様子に感心していた。

 

 何事があっても動じないモニカを竦み上がらせているのだ。

 

 気迫だけはラウンズを越えているだろう。

 

「はああ、これなら最初からジェットストライカー付けて空戦やって貰った方が良かったか……」

 

「あ、あの、クルシェフスキー卿を責めないでください、僕も悪いんです……」

 

「当たり前のこと言わないでねスザク君? あんまり舐めたこと言ってるとタコ殴りにしちゃうからね?」

 

「は、はい……」

 

 途端、気さくな口調で物騒なことを言い出す主任。

 

 何だかこのままだと彼が切れてしまいそうだと考えた嶋田は話を切り替えようと口を開く。

 

「し、しかし、スザク君がKMFに乗れるとは知らなかったよ」

 

「あ、それは…………最近なんです。好きな女の子を守れるようになりたくて、辻さんに相談したんです」

 

(あ、あの人に恋愛相談??)

 

 辻と恋愛相談がどう考えても結びつかない彼は頭を悩ませながらも話を続けた。

 

「好きな女の子ってひょっとしてナナリーさん?」

 

 スザクの好きな相手については知っていた。

 

 ナナリー・ヴィ・ブリタニア。言わずと知れたブリタニアの皇女様だ。

 

「はい。僕はナナリーの剣になりたいんです。そのためにはKMFにも乗れなくちゃいけない。それで……」

 

「そうか……でも大変だよ? ブリタニアの皇女殿下の騎士になるのは」

 

 一国の、それも世界最大の国ブリタニアの皇女殿下の騎士になるというのは生半可なことではない。

 

 厳しい訓練をしなくてはならないし、自由な生活も出来なくなる。

 

 少なくとも自分はゴメンだ。自由でのんびり、静かで平和な日常を遅れなくなってしまうのだから。

 

 まあナナリー皇女がこのまま日本に永住するとなれば話は別だが。

 

「でも決めたんです!」

 

 そんな二人の話を聞いていたモニカは内心驚いていた。

 

 無論スザクがナナリー皇女の騎士候補だと聞いて。

 

 だが同時に納得する。あの気迫。自分を打ち負かそうと挑み掛かってくる闘争心の源はそこにあったのだと。

 

「頑張ってください枢木さん。簡単な道ではありませんが貴方ならきっとなれるでしょう。ナナリー殿下の騎士に」

 

 だからエールを送る。自分とて他人事ではない。

 

(大切な人を守りたいという意味では)

 

 ちらりと嶋田を見るモニカ。

 

 彼女の蒼い瞳に優しげで平凡な彼の姿が映し出される。

 

(私も同じですから)

 

「教えるのは苦手なのですが、私で良ければいつでもお相手しますよ」

 

「クルシェフスキー卿……ありがとうございます」

 

 想い人を守りたいという似た者同士な二人は、まるで誓いを立てているかのように固い握手を交わした。

 

 

 

「あの、丸く収まってるところ悪いんですけど、次は決闘なしでお願いしますよ?」

 

「「はい……」」

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「膝枕ですか」

 

「勘弁してください……」

 

 帰りの車中にて言葉を交わす嶋田と辻。

 

 用があって来れなかった彼は態々車を回してくれたのだ。

 

 いま車中に居るのは嶋田と辻、運転手、そしてモニカの四人。

 

 内モニカは疲れているからか車に乗ってすぐに眠ってしまった。

 

 隣に居る嶋田にもたれ掛かる形で寝ていた彼女は車の揺れでずるずる身体が倒れていき、現在彼の膝を枕代わりにして「すぅ すぅ」と小さな寝息を立てていた。

 

「しかし恐ろしいお嬢さんですね。寝ているというのにまるで隙を見いだせない」

 

 そう言ったのはこの車の運転手。

 

 ふとミラーを見た嶋田はその運転手がよく知った相手であることに気付いた。

 

「村中さん」

 

「お久しぶりです嶋田閣下」

 

 村中孝次。

 

 前世で夢幻会の掲げる政策によって助けられ、親夢幻会派の重鎮となった男。

 

 狂信的な夢幻会信奉者で『夢幻会による賢人政治こそが唯一絶対』と信じて疑わない故に些か暴走気味のところはあるものの、影から支え続けた実績を持つ信頼できる男だ。

 

 彼もまたこの世界へと転生した者の一人で、前世と同じく夢幻会に仕えていた。

 

「もう引退した身ですから閣下じゃありませんよ」

 

「いいえ、私にとって貴方はいつまでも閣下ですよ」

 

 まいったなと頭を掻く嶋田に村中はニヒルな笑みを浮かべた。

 

「それにしても彼女、本当に寝ているのですか?」

 

「ええ、ぐっすり寝てますよ」

 

 ほらと言いながら膝を枕にして寝ているモニカの柔らかいほっぺを指でぷにぷに突いてみる。

 

「にゅうう……」

 

 すると彼女は変な寝言を呟き子供がむずがるように顔をしかめた。

 

 だが反応したのはそれだけで一向に起きる気配はない。

 

「なるほど。しかし私が嶋田さんと同じ事をしようとすれば即座に切り捨てられそうですね」

 

「はは、まさかそんなこと」

 

「丁度良い。モニカさんにはこのまま寝ていてもらいましょう」

 

「どういうことですか?」

 

「言ったままですよ。あまり良くない話を態々聞かせる必要は無いということです」

 

 どうやら真面目な話があるようだ。

 

 それも悪いとは言わないまでも明るくはないニュース。

 

 口火を切ったのは村中だった。

 

「清が独自のKMFを開発していたようです」

 

 彼はそう言って一枚の写真を後部座席にいた嶋田に手渡した。

 

「これは……サザーランドですか?」

 

 写っていたのは細部こそ違うがブリタニアの第五世代機サザーランドにそっくりなKMF。

 

「正確にはサザーランドの劣化コピーでしょうね。ジェンシーとかいうらしいですが性能的には第四世代機の少し上といったところでしょう。試作段階でそんなに数は無いでしょうが」

 

「しかしなぜ清がこれを?」

 

「少し前、ブリタニアで清と繋がっていた汚職貴族が逮捕されたでしょう? その中に旧型機ということで監視の緩くなっていたKMFの設計図や工作機械などを清、正確には宦官派に売却していた者が居たようです」

 

 おまけにそれらの売国行為を行っていた貴族の幾人かは当局の動きを察知していたらしく、資産をEU経由で持ち出し国外に逃亡したとのことだった。

 

「なんともまあ」

 

「ブリタニアは『旧世代機を更に劣化させた物など奴らに似合いではないか』と清に関しては気にも留めていないようですが、

 

 これをやらかして逃亡した貴族に付いては身柄が確保され次第極刑でしょうね」

 

 あの親バカだが苛烈なシャルルが相手では、捕まり次第処刑されるだろうことをやっていたことには思わず大した度胸だと感心してしまった。

 

 人間お金の魔力に取り付かれるとここまで欲望に忠実になれるのか。

 

 これは確かにモニカが聞いたら悲しむだろうなと思った嶋田は膝で寝息を立てている彼女の髪を優しく撫でた。

 

「我が国にとっては今すぐ驚異になるような事はないでしょう。所詮は技術者の手抜きとなるだろう劣化品ですから。ですが、数が揃えば要らぬ冒険心を抱くやも」

 

「日本に喧嘩を売ると?」

 

「まさか。あの小心者の宦官達にそんな度胸はありませんよ。懸念されるのは高麗や脱落しそうになっているEU内部の劣等生辺りと組んで妙なこと、

 

 例えばこれを独自改良した物を開発して第三国経由で紛争地域に売りさばいたりとか、中華連邦を相手に無茶な要求を始めるのではないかと心配してるんです。

 

 まあ清が中華連邦相手に勝てるとは思いませんが、地理的関係で我が国も完全な無関係では居られませんからね」

 

「難民とかですか?」

 

「第一にはそれです。それ以外にも色々出てきますよ……こういう連中も居ますしね」

 

 車載テレビを付ける村中。

 

 丁度夕方のニュースの時間だった。

 

 

 

『総理! 国際協調、平和主義を広めるためにも我が国と、そしてブリタニアにも呼び掛けて清国との国交と友好条約を!!』

 

 画面の中では威勢良く吠える剣尚人 日本公民党代表の姿と、彼を睨み付ける大日本帝国首相枢木ゲンブの姿。

 

「枢木さんも大変だ。あの男の相手をしてると疲れるんですよね」

 

『口から男』剣尚人。

 

 嶋田自身も現役時代、野党の若手ホープと言われていた剣尚人に噛みつかれたことがあったので、枢木の思いはよくわかっていた。

 

「嶋田さんはあの剣さんがネット上でなんて呼ばれてるか知ってますか?」

 

 辻は少し笑いを堪えるように言った。

 

「『三下駄剣』ですよ。まあよく考えた物ですが……あれを駄剣と侮るのは少々危ない」

 

「危機を察知する感は我々も舌を巻くレベルですからね」

 

 剣尚人は何があっても自分にだけは辿り着けないようにしているのだ。

 

 明確な証拠を掴んでもその度に神業のように無関係な位置に立っている。

 

 全ての売国議員、汚職政治家を逮捕、または抹殺してもこの男だけは生き残るとまで言われている程だ。

 

「不思議な男です。私としては清や高麗より剣の方が危険で厄介な気がしますよ」

 

 嶋田と辻に割り込む村中。

 

 彼がそう言うのも無理はない。

 

 ここまで真っ黒でありながらも逃げ切り、果ては並み居る幹部を蹴落として公民党の党首にまで上り詰めた男なのだから。

 

 こんな輩が日本の憲政に関わっているなど危険極まりない。

 

 その上で清、高麗と繋がっているのだから始末に負えない。

 

「お前やるなって奴ですか。私は剣さんと友誼を結ぶなどゴメンですが」

 

 辻が言うとそれに続く嶋田と村中。

 

「右に同じ」

 

「左に同じです」

 

「すぅ すぅ」

 

 ただひとり、モニカだけは嶋田の膝枕で夢の中。

 

 そんなモニカを(かわいいなぁ)と思う嶋田はほっぺをぷにぷに突ついたり、髪を撫でてあげたりと忙しなく手を動かしている。

 

「ま、とにかく油断は禁物と言うことです」

 

 そう言って場を締めくくる辻。

 

 

 

 どうやら自宅前に着いたようだ。

 

「送って頂いてありがとうございました」

 

 嶋田はまだ起きそうにないモニカをお姫様抱っこする。

 

 白い騎士服を着た少女はまだ夢の中だ。

 

 遠ざかる車を見送った彼は──。

 

「さあモニカさん。我が家に帰ろうか」

 

 返事をしない騎士を抱いたまま自宅の扉を開いた。

 

 

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
  • レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
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