オズ内に於いてリーライナの言葉づかいが明かされた後に考えた物となります。
完全版を書く予定なのですが目処が立っていないためいつになるかは未定。
年齢差の恋愛が苦手な方は御注意くださいませ。
貴方へ見せる本当の自分
州や軍区の集合体である連邦制や連合制国家ではなく、単一における国家としては他に類を見ない世界最大の大帝国。
他国を超越せし圧倒的なる武力はたとえ全列強を敵に回したとしても戦い抜けることを可能とし、その気になれば世界征服をも実現してしまえるほどの質と量を備えている北ブリタニア大陸全土・中央ブリタニア・コロンビア・カリブ海・太平洋・大西洋と、一国が手にし維持するにはあまりにも広すぎる版図を持つ巨大な封建制国家。
外より響く様々な声や表現で示されるように、神聖ブリタニア帝国という中世そのままの体制色濃き大帝国は、上位の伯爵以上の貴族領が軒並み中小国級の力を持つ事でも知られていた。
領内には国法とは別に独自の法があり、複数の大都市が、都市を動かす人が、人の働く企業が、治安を預かる警察が、そして災害や、他国よりの侵攻に対する備えとしての各貴族の独自戦力。即ち軍隊が独立して存在している。
領内に住まう人間は海外や他領よりの出稼ぎ労働者やその親族を除けばブリタニア国民であると同時に各貴族領の領民でもあり、国税以外の税金として領主に対しての租税も納めなければならない。
日本で言うところの市県民税や住民税といった物に該当する租税は各貴族領ごとに独自の税率を課してはいるが、概ね誰でも支払える程度の範囲に収められている。
貧困層への租税については国税同様に免除申請を行い審査が通れば免除されるといった仕組みを採用しており、管轄する役所は各市町村に設けられた領の役場。
尊き血脈ながらも流浪の民となってしまった間借り人の末裔ユーロ・ブリタニア所属の欧州貴族は別として、古来よりブリタニアに忠義を尽くしてきた純血の貴族や、日本や欧州より渡り多大なる功績をもってブリタニアへと帰順した家系の中でも、これらの地方自治を行える地位を持つのは主立った名家として列挙される貴族ばかりなのだが、皆例外なく国家規模の領地と権力を保持しており、多いところでは1000万人以上の領民を抱えるという正に国の中に存在する独立国家群としての一面を持ち合わせていた。
抜きん出た諸侯の中には陸海空3軍すべてを備えた家もある為、当代の当主がそのまま国家元首のような位置付けとなってしまう事すらままあるのだ。
例を挙げるとするのならば、ユーロピアの自治州がアッシュフォードやクルシェフスキー家と=と考えても差し障りはないだろう。
異なる点はユーロピア自治州が“独立国家”であることに対して、ブリタニアの大諸侯は“皇帝の臣下”であるという処のみで、行政規模・経済力・領域としてはイーブンに近い。
そして、それら大諸侯の中には、【ヴェルガモン】という伯爵家の名もまた連ねられていた。
ヴェルガモン伯爵家。
かつてブリタニアが欧州に在った頃より続く名家の一つは、伯爵という階位ながらその家格は実質辺境伯級として扱われており、同盟国や日ブ勢力圏傘下に収まる国々は勿論のこと。
決して深い付き合いのある訳ではないユーロピアや、日本という超大国に引き離される形ながら次ぐアジア第二位の大国中華連邦の政務関係者でさえその名を知っている。いや知っておかなければならない名の一つ。
世界経済を牛耳る大日本帝国の帝と皇室、更にその日本へ黄金期をもたらした前政権主要閣僚。
武によって世界と対峙するブリタニア帝国の皇帝と皇室。その帝国を支える大諸侯。
外交に携わる仕事へと就く者に取り既知である事こそが普通である日ブ政界の重鎮達の中にその名を置く名家の一つは、当然国その物の領地を治める位置に立つ以上一族の教育も他家同様に厳しく、次代後継者の第一候補に対しては徹底した帝王学教育を施し、どこへ出しても恥ずかしくない紳士淑女に育て上げることが時の当主が担う役割の一つでもあった。
当代のヴェルガモン伯爵も次代を担う後継者──ヴェルガモン伯爵家が長女、リーライナへの教育を徹底していたのも当然と言えよう。
立ち居振る舞い・言葉遣い・貴族としての在り方・領地経営のノウハウ。
他家との社交界における付き合い・自領が経営する企業体と他国の、特に同盟国日本が誇るスメラギ・倉崎等の巨大総合企業体との折衝・取引と、ヴェルガモン家当主として将来関わっていく事となるであろうあらゆる方面で渡り合うために必要とされる能力を徹底的に叩き込まれていた。
先に挙げた通り大諸侯の家は一国家として数えても良い規模を持つ。即ちヴェルガモン家の家督を父より譲り受ける事となるリーライナは広義の意味では“国家元首”なのだ。
それも民主主義国家のように選挙で新たに選び直せる物でもなく、親類縁者に代行者無き場合、リーライナの去就一つでヴェルガモン伯爵領770万人の人生に影響を及ぼす事になる。
いや、外部よりの労働者やその親族をも含めるのならばやはり域内の人口は更に多くなり、領主にはそれらの人々の生活に対する責任を負う義務があった。
五大湖周辺に進出する日本企業は、もちろんシカゴより北のミシガン湖に面するヴェルガモン伯爵領(史実ウィスコンシン)領都ミルウォーキーにも多数進出しているため、領主の失政によってヴェルガモン領が衰退するような事があれば、五大湖全域の経済にも波及し日本へのマイナス面での影響も決して少なくはなく、他国の、それも一貴族領の領地経済とはいえ他人事ではなかった。
軍事の面に於いても伯爵家にも拘わらず陸上騎士団4個師団約5万人、天空騎士団8千人、その他予備役と、7万名近い常備兵を持つ諸侯軍であるヴェルガモン騎士団──つまりはヴェルガモン家の軍隊は、アッシュフォード家やクルシェフスキー家、シュタットフェルト家と並んで日本軍との演習や交流を頻繁に行っている間柄。
環太平洋連合を着々と形成しつつある日ブ経済圏になくてはならない、そして衰退するような事があってはならない領邦の一つであった。
過ちを犯さぬ貴族として、優秀なる経営者として、そして自らが選んだ道……帝国への忠誠心厚き、臣民を護りし軍人・騎士として、次期領主たるリーライナは弛まぬ努力を積み重ねてきた。
論ずるまでもなくそこには完璧なる淑女としての一面も添える形で。
完璧なる淑女……、紛う事なき淑女。
いま己の眼前にてナイフとフォークを使い、皿に載せられた分厚いステーキ肉を音を立てることなく切り分けているこの女性は、疑う余地すら見出せられないほどに完成された淑女だった。
「イソロクさま、如何なさいまして?」
ぽかんとしていたのが悪かったのか、視線に気付いた眼前の淑女が話し掛けてくる。
「あ……ああ、うむっ……。いや、……ん゛ん゛っ……如何したとは?」
急に話し掛けられたので取り乱してしまったのは、今時珍しい一厘刈りの丸坊主に、着慣れぬタキシードで整えた初老の男。大日本帝国元海軍大臣山本五十六だが、相対する彼女は気にも留めていない様子だ。
この彼の様子に、普段ならばからかう口調で後を続けそうな物を、一貫して淑女然とした態度を崩すことのないリーライナの様子は、彼が知る常の彼女からしてまるで別人の物である。
そんな彼女の様子に当年とって齢60となる老成された男は、今日会ったばかりの女性とお見合いをしているようにさえ思え、面映ゆい気分と、そこはかとないぎこちなさを感じずには居られなかった。
ぎこちなさ、一種の居心地の悪さを彼が感じていることは当然彼女も気付いている筈なのに、やはりその言葉遣いと態度は変わらず。
自身へと向けられていた此方の視線のみを指摘する以外は、何事もなく淡々と話を進めるだけに留まっていた。
「いえ、先程よりなにやら私の事をジッと見つめておいででしたので、気になってしまいましたの」
店の雰囲気に合う仄暗い橙色の室内灯に照らされ輝く長い金色の髪。
エメラルドの装飾を施されたバレッタにてアップに纏められている、普段は背に流しているだけのその金の髪を、彼女は微かに揺らす。バレッタのエメラルドがまるで石ころのように思えてしまう程に美しい翠玉の瞳に、喜怒哀楽の喜の感情を浮かべながら。
「失礼した……。おま……、いや君が」
『おまえ』と言い掛けたところで口をつぐみ、言葉を選び直した彼──山本五十六は、この場の雰囲気に合わせようと使い慣れない台詞を解き放つ。
「あまりにも美しいのでつい……見惚れてしまった」
口元にナプキンを添え、そっと拭う淑女は、あまり聞く事のない彼の賛辞を冗談だと受け取ったのかコロコロ笑った。
「まあっ、お上手ですこと」
大口を開いての下品な笑い方ではなく、常時の明るい笑顔でもない淑女としてのそれは、山本には本当に耳慣れない笑い声であった。
(誰だこれは……)
整った美貌も、翠玉の瞳も、流れような明るい金の長髪も、すべてが自分の見聞き知るリーライナ・ヴェルガモンに相違なし。真剣な一夜を共にする程の仲である彼女を見間違えたりするほど耄碌してはいない。
しかしながら。
(……別人だな)
人間誰しも相対する人物によって己の言葉遣いや態度を変えることがごく普通であったが、山本に対する彼女の対応としてこれはほぼあり得ない事と言い切ってもよいだろう。
出会い方が出会い方だ。取り繕う間もなくその場での応対と接し方が二人にとっての自然となった以上、今が常とは異とする状態にある、そう断言すべきで、彼の考えに間違いはない。
どうしてこうなった?
曲者揃いの夢幻会の中において最も平穏を望む苦労人、親友の嶋田繁太郎が考えそうな台詞が心中より沸き上がる。
2月14日はセントバレンタインデー。
理由は定かでない物の、何故か日本では女性の側より自らが好意を寄せる男性へと想いを込めたチョコレートを送るものとして、世間が甘味菓子一色に染まってしまうよくわからない日。
根っからの古き良き昭和の軍人で、骨の髄まで海の漢の世界に生きてきた彼には、妻がいた前世ですら経験することのなかったイベントに、新たに生まれ来たこの世界にて初めて触れる切っ掛けを作られたのは、丁度一週間前の夜の事だった。
『来週14日は空いてる?』
使い慣れた携帯に入る1件のメールには、山本と彼女、そして彼女と仲の良い後輩と、後輩の連れ合いの4人で食事へ行けないかというお誘いが書かれていた。
彼女リーライナ・ヴェルガモンの後輩とは、士官学校からブリタニア第二皇女コーネリアの従卒を経て共にナイトオブテン親衛隊時代を過ごし、なにかと縁深く一緒に歩んできた仲の良い少女らしい。
リーライナが駐日大使館付きの騎士となる以前。ブリタニア本国勤務時代には、先輩として恋愛事から、重すぎる将来の職責に付いての悩み事等、よく相談に乗り、また自身も悩みを打ち明けるといった、軍内部で一段高い信頼関係を築いていた間柄なのだという。
その付き合いの深い後輩の少女が、休暇を利用し、日本でブリタニア皇家が1家、ヴィ家の皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア皇子と、同じくヴィ家のナナリー・ヴィ・ブリタニア皇女護衛の任に就いている兄上の元へ会いに行くために来日するとの事だった。
そしてもう一人、少女の連れ合いという人物は、少女の婚約者であり、少女と共に少女の兄上へ挨拶に伺う為にと日取りを合わせて休暇を取り共に来日するとのこと。
彼等は数日の間日本に滞在する予定なので、丁度いい機会じゃないだろうかと彼女は述べる。
簡潔に言えば『山本の事を紹介させてほしい』とのメール内容だった。
これに対し山本の方はどうかと云うと、会うのは一向に構わなかった。
リーライナと交際しているからには何れかの段階で彼女の交友関係に自分という新たな因子が加わることを意味する。
齢60に達しよう自分と、リーライナと同年代であろう彼女の友人達の間に有る大きな世代間ギャップ。
会った事もない相手に対してそう断言できるのは、今や深く愛し合う関係と成ったリーライナとの間にも当然のように有るからだ。離れすぎた年齢を起因とする埋められない世代間の相違が。
『いっくんの考え方は古い』
二人で話している時に「昔はこうだった云々」を口にすると時々返ってくる彼女の反論は、今と昔の世代差が如実に表れた物であると言えよう。
昔は~を、口にしている時点で今の世の流行や言論、ファッション等に一部引っ掛かりを覚えるところがある証明みたいな物で、自身もまた彼女の事を言えないのであるが、考え方を変えようにも今と昔では違いが有り過ぎるのだ。
例えば露出度の高いブリタニア女性騎士のKMF飛行服(パイロットスーツ)を巡って、ちょっとした意見交換をしたときのこと。
効率や運動性までをしっかり考え、計算に入れた上で、これが最も良い形であるとしてプロの手でデザインされた物だが、初めてリーライナの飛行服姿を見たときは『はしたないにも程がある』と、ついつい正直な感想を口にしてしまいそうになった山本には(恥ずかしくないのだろうか)という思いがあった。
膝上から腰までと、胸部から腹部にかけて素肌が露出している彼女の飛行服はもう完全にレオタードその物。
恋人としての身内贔屓を抜きにして見ても美人だと言えるリーライナがそんな服を着ては、同僚の男性諸氏から“そういった目で”見られる事とてあるだろう。
つまり、ただでさえ露出過多なブリタニア軍女性騎士の飛行服の中でも輪をかけて恥ずかしいデザインに感じた訳であったが、当の本人は『これは普通だ』というから分からないものである。
要するにもう世代の違いによる常識や考え方の相違としか言えなかった。
親友の嶋田曰く『山本は頭が硬い』。
本当にそうなのかも知れない。
前世でも激動だった昭和。この世界に生まれ変わってからは昭和から今の平成の時を生きているわけだが、やはり心の何処かで自分という人間は“昭和”の常識を考え方の基礎としているのだろう。
リーライナという今の時代の若者と付き合っていく上で、多少自分も柔らかさというものを身に付けた方が良いのかも知れない。
その意味では彼女の友人知人。つまりは彼女と同年代の少年少女との食事は其れその物が良い機会であると考えられた。
ただ、事はそう単純な話でもないようで、友人の紹介と云うよりも家同士の交流といった意味合いを含んでいる様にも感じられる部分があったのだ。
“マリーカ・ソレイシィ”という、リーライナの後輩の名を目にしたからこそ余計に。
ソレイシィ。
言わずと知れたソレイシィ辺境伯家を示す名であり、彼の辺境伯家息女こそが件のマリーカ嬢の身分であった。
ソレイシィ家と言えば、彼の英雄帝クレア御世の時代に、同皇帝と皇位継承争いを繰り広げていたとされるリシャール皇子を擁し、皇子の影へと控える形で一時ブリタニアの全権を掌握しかけた事もある大貴族──ロレンツォ・イル・ソレイシィ直系の一族。
何があったのか経緯は不明ながらもクレア帝誕生時の折りには、それまで敵対関係にあったはずの同皇帝を立てるという変節振りを見せている。
その後は彼の皇帝の支援貴族に収まる形で、臨機応変な対応を以て国内に影響力を保ち続けた事で、最盛期の権勢と比すれば遠く及ばずながら現在でも一定以上の大きな力を持つ大諸侯の1家だ。
もう一人、マリーカの婚約者という人物の姓も彼は耳にしたことがある。
レオンハルト・シュタイナー。
ナイトオブラウンズ第三席として名高いジノ・ヴァインベルグの生家、ヴァインベルグ侯爵家を支える技術系貴族シュタイナー家に連なる人物であろう。
名家は名家同士と深い繋がりを持ち行くのは世の常。名家ヴェルガモン家の息女と付き合う以上は大諸侯ソレイシィや、大諸侯と繋がりの深い貴族と個人間で接触する。つまりこういう事もあるということだ。
かく言う山本自身も帝国海軍から政界、夢幻会としての己が立場を持つ者ゆえに、“リーライナ・ヴェルガモン”と関係を持てば彼女が持つ横の繋がりとも否応なしに関係を築いていかねばならなくなる事をよく理解していた。
これは言うなればリーライナもまた山本の知人たる日本政界の重鎮と顔を合わせる機会があろうという事実でもあったが、この歳になって彼女のような若い少女と恋に落ちてしまったという事を知人達に知られて冷やかされるのを懸念した彼が黙して語らずな姿勢を貫いている為、会うこともないというだけである。
尤も、彼女のヴェルガモンという立場から、父である伯爵に連れられる形で日ブ政財界と両国の皇族、華族、貴族の夜会に訪れていた幼少期の彼女には会った事のある前嶋田政権の元閣僚も居るには居たが、それとこれとはまた別の話。
山本も武門の家系であるソレイシィ辺境伯とは挨拶程度に言葉を交わしたことがある。
(まさかそのソレイシィ辺境伯の息女とこんな形で会うことになるとは、あの頃の自分には想像もできない未来だ)
その辺りの事情はともかくとして、ブリタニアの次代を、広くは日ブ関係におけるブリタニア側の次代の担い手の一員となる彼女の知人への紹介という話となる。
正しくは山本をマリーカとレオンハルトへ、マリーカとレオンハルトを山本へ、といった、相互に紹介し合う形だが、2月14日に此と言った予定もなく、彼女の友人達と共に会食することに抵抗もないとし、山本は二つ返事で了承したのだ。
2月14日といえばバレンなんとかいう日だったなと、名前すらまともに覚えていないイベント日の事を思い出したが、今まで興味を抱いた事もないイベントよりも、優先すべきはその食事会だろう。
と考え、当日となり、いざ待ち合わせていたホテルへ来てみれば、誘ってきた当のリーライナ自身から単なるバレンタインのお食事会だと断言されたうえ、何故か終始このような淑女然とした丁寧な物腰で接されてしまい、妙な心地悪さに苛まれていたのであった。
ついでに彼女が彼のことを周知してなかったお陰で紹介された二人に余計な気まで遣わせるといった場面もあり、どっと気疲れが増していた。
*
「お目にかかれて光栄ですッ! ヤマモト将軍閣下ッ!」
無風だというのに風を受けているかの如く流れる長めの前髪が似合う髪の色はコルク。
吊り上がり気味な黄土色の瞳を持つ目と、良く鍛えられている事が一目で分かる引き締まった細身の身体。
出来る男、といった第一印象に、しかし実はそうでもないように受け取れてしまうのは緊張と焦りを表出させた声音が原因であろう。
「ヴァインベルグ侯爵家臣下シュタイナー家が嫡男ッ、レオンハルト・シュタイナーと申しますッ!」
騎士……軍人らしい直立不動の態勢で開口一番に敬礼をしてきた少年に、山本の頭が痛くなってきた。
「初めましてシュタイナー卿。山本五十六だ。私も会えて嬉しいよ。……ただな、申し訳ないがその将軍や閣下といった敬称はご遠慮願いたい。既に軍も政界も引退した隠居に対する敬称としては些か大袈裟にすぎる」
夢幻会最高意思決定機関『会合』顧問という、帝を除けば世界第二位の超大国大日本帝国の頂点に立つ者の一人である身の彼は実のところ永遠に閣下と呼ばれる立場だったりする訳だが、あいにく彼自身にはその自覚は無い。
無論、彼の少年には山本が就く今の役職を知る術など有りはしない。彼はあくまでも過去の山本を知る上での『閣下』という意味で敬称を使っただけ。
それは彼の過去の積み重ねが、他者よりそういった敬称を用い尊崇の念を抱かれる今日の土台を築き上げて来たのだが、彼としては個人差はあれど会う要人が皆『閣下』『長官』『将軍』と、過去に頂いた敬称を用いて呼称してくるので困るのだ。
「それにリーラ……んん゛っ、失礼。リーライナ嬢の知人として紹介されるこの身に、閣下というのは合わないだろう? 歳こそ君より40以上上だがリーライナ嬢の友人として此処に居るのだから、それらしい接し方で頼むよ」
「し、しかしあのッ、ニューギニア戦争の英雄……、世界最強の提督として誉れ高いヤマモト閣下に対し、私のような若輩者が気安く接するなど……」
「昔の話だ」
軍人と顔を合わせると誰もが同じ反応をするが、英雄といった崇拝的に語られるのはあまり好ましいとは思わない。
皇国のために戦い抜いた結果を誇る以前に、軍人として当然の事を行ったのだ。
ましてや格下相手の戦果に過ぎず、それも現場の将兵皆が力を合わせて築き上げたものであって自分個人が過剰に語られるほどの事はしていないと、彼自身は常々思っていたが世界はそう視ていないようだった。
「せッ、せッ、せん……ぱい……っ、えっ、ええええ、英雄イソロク・ヤマモト……っ」
もう一人、リーライナよりも幾つか年下と思われるまだあどけなさを残した面影の少女はというと、山本を目にして固まっている。
肩よりも少し上までの短い栗色の髪、瞳の色は少し色素が薄めの翠玉色で、背丈も低め。
成熟した大人の女性らしい身体つきのリーライナに対して、まだ未成熟でスレンダーな肢体の美少女。
リーライナの後輩、マリーカ・ソレイシィ辺境伯令嬢だ。
「あら~? マリーカさんは私の恋慕う方がヤマモト卿である事を御存じ有りませんでしたか?」
「ぞっ、ぞぞぞっ、存じてませんっ! い、いいいっ、いまの今まで一度たりとて先輩よりお聞かせ頂いたことはございませんっ!!」
例え相手が皇族であっても事前に伺ってさえいれば一切動じることなきマリーカであろうと、いきなり恋人だと紹介された相手が日本海軍を率いてあの日ブに追随せんとする強大国オセアニアと対峙し、僅かな犠牲で空前の大勝利を収めた英雄だと知れば取り乱しもする。
「そうでしたか? うふふ、ごめんなさい。ど忘れしておりましたわ」
悪戯が成功した時の黒い微笑みとでもいうのか、あの手の笑顔を張り付かせたリーライナが彼へと歩み寄り、そっと身体を寄せた。
「それではあらためて御紹介させて頂きます。マリーカさん、レオンハルトさん。この方こそわたくしが生涯を共にし、生まれ変わってもまた愛し合うと誓った我が夫。お二人とも既知の事かと存じますが、元大日本帝国海軍大将・連合艦隊司令長官、そして日本政界に於いて海軍大臣等を歴任されて来られましたイソロク・ヤマモト卿ですわ」
「なっ──!?」
リーライナにとっての山本は今はまだ夫ではなく恋人。
百歩譲って婚約者。それも二人の間でだけ通じる非公認のものだが、リーライナは有無を言わさず彼を夫と呼ぶ。
山本は今夜見せる彼女の強引さに言葉を詰まらせながら、彼女が何を考えているのかを計りかねていた。
どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。
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嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
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嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
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山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
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南雲忠一×ドロテア・エルンスト
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玉城真一郎×クララ・ランフランク
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玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
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澤崎敦×井上直美
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レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
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原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
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ルルーシュ(休日)×ミレイ
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オデュッセウス×皇神楽耶
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ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
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枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
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コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
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高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
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鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-