時系列的にはユーロブリタニアの欧州解放前となります。
戦争云々以前に私の作品本編はまったく進んでいないのですが……(汗。
ヒロインはナイトオブフォー ドロテア・エルンスト卿。
ヴァルトシュタイン卿と並び称される豪傑な女性らしいですが……。
カップリングはやはり大きな年齢差のある物ですね。
提督たちの憂鬱のキャラとしてですが、嶋田繁太郎氏も山本五十六氏も、そしてこの作品の南雲忠一氏も皆戦前の軍人さんです。そしてみんなおじさまです。
蒼の混沌掲示板様への投稿分から多少の加筆修正が入っております。
不機嫌な淑女
不機嫌な淑女
神聖ブリタニア帝国皇帝の騎士ナイトオブラウンズ。その一人、ナイトオブフォーの称号を持つ褐色肌の女性ドロテア・エルンストは不機嫌だった。
何か悪いことがあった訳でも、誰かと揉めているわけでもない。
彼女が不機嫌な理由はこの場所に居ることその物。
(私はナイトオブラウンズなんだぞ?! その私が何故このような格好をしてこんなパーティーに出席しなければならないんだ!)
天上で輝きを放つシャンデリア。飾り付けられたテーブルには庶民が口にすることは滅多にないであろう豪勢な食事が所狭しと並べられている。
周りを見れば煌びやかなドレスを着飾った淑女や、タキシードや豪奢な飾り付けをされた衣服を身に纏う紳士達の姿。
自身を振り返れば所々に宝石をあしらった黒一色のドレス、普段は決して身に纏うことはないスカートの生地を、彼女は苛立たしげに握りしめていた。
そんな不機嫌な様子を隠そうともしない彼女は、所謂貴族の社交の場であるパーティー会場にて壁の花となっていた。
(まったく、父上も母上も勝手なことを……)
ドロテアとしてはこのようなパーティなど出席したくなかったのだが、生憎彼女自身も騎士である前に貴族である。
貴族社会の付き合いとして顔を出す必要があるし、実家の両親などはいつまでも男っ気が無い娘を心配し、出会いの場として積極的に参加させるように手を打っているのだ。
そして久々の休暇で実家に帰っていた彼女は抵抗虚しく強制参加させられた、という訳である。
「機嫌が悪いようだな」
声を掛けてきたのは淡い黄緑の髪をショートカットにして、左側の一部の髪を短く三つ編みにした女性。
ラウンズの同僚でナイトオブナインのノネット・エニアグラムだった。
後輩や友人、部下に同僚、果ては上司に至るまで。とにかく面倒見の良い姉御肌な女性として人気のある彼女もまた、普段見ることはない紫色のドレスで着飾っている。
「当たり前だ。私は騎士だぞ? それがこんなひらひらのドレスを着て舞踏会などに参加させられて良い気分でいられるか!」
騎士は戦いこそが本分。
自分は皇帝陛下の騎士となった時点で女であることは捨てている。
「結婚にも興味は無いし、出会いなど必要ない。ノネット。私はお前もそうだと思っていたのだがな」
「まあ、どちらかと言えばな。この着慣れないドレスはどうにも肩が凝るものだよ。だが、私は出会いがあってもいいとは思うぞ? 何も女としての自分を全て捨てる必要は無い。機会があれば、また自分を預けられる男と出逢えたなら、それは私やお前が一人の女に戻るべきときだと宣告された証……そうは思わないか?」
「……、ふん。私はお前やモニカとは違う」
「ハハハッ。そうかそうか、うんそれならそれでもいいさ。人それぞれだから私の意見を押し付けるつもりはないよ。ふう、それにしてもモニカか……」
ノネットが思い浮かべているのは同じくラウンズの同僚、正確には後輩のモニカ・クルシェフスキーのことだろう。
ラウンズの女性騎士としてはナイトオブシックス──アーニャ・アールストレイムを除けば最も若い年齢で、唯一の既婚者にして子持ち。
それも釣り上げたのは同盟国大日本帝国の元首相というとんでもない大物だから結婚の話を聞いたときは皆一様に驚いていた。
まあ日本に行ったアーニャがルルーシュ殿下の元でメイドの真似事をしていると知ったときは「ラウンズって一体……」という気にさせられたが。
「まさか年下のモニカに抜かれるとは思わなかった。それも子供まで生むとは、先の事というのは分からない物だね」
ノネットはそう言うが結婚に興味のない自分に取ってはどうでもいい。
モニカの結婚は同僚として喜ばしいし、子供が生まれたという写真をメールで送ってきたときも心から祝福したが、羨ましいと思ったことはなかった。
「一つ屋根の下で暮らす男と女がやることをやっていれば子供も出来る。喜ばしいことだが羨ましいとは思わないな。男に興味がない私としてはだが」
「身も蓋もない言い方だな」
そんな話をしている間にも周囲にいる男達はちらちらと二人を伺っている。
ドロテアにしてもノネットにしても美女というグループのど真ん中にいる存在だ。
声を掛けたい、お近づきになりたいと思うのは男として正しい反応だが、ノネットは兎も角、ドロテアが発する近寄りがたい空気に声を掛けられないのだ。
「ノネット、すまないが少し席を外すぞ」
「どうしたんだ?」
「さっきから周りの連中がお前を見ているようなのでな。私が居ては邪魔になる」
それだけ言って立ち去るドロテアを見て様子を伺っていた内の半数はガックリと肩を落として居たのだが、気にも留めない彼女は会場から出て行った。
因みに取り残されたノネットは一斉に声を掛けてきた男達に大忙しだったが。
***
「それにしても歩きにくいな」
丈の長いドレスは床にまで付いていて普通に歩くだけでも鬱陶しい事この上ない。
おまけに踵の高いヒールを履いているのでちょっとしたことで転げそうになってしまうのだ。
「だからイヤなんだ舞踏会とかパーティーとか!」
着慣れていたり履き慣れていたりする貴族の子女なら兎も角、自身が一年を通してこのような格好をするのは殆ど無い。
それでも貴族かと言われそうだが自分は騎士だ。戦う者なんだ。
ドレスで着飾って男と踊るような軟弱者と一緒にするな。
考えるほどに苛つきは増し、歩く速度も速くなる。
着慣れないドレスとヒールで早歩きをするのはとても危険なことだ。
普通に考えればわかることなのだが、苛立ちに支配された彼女にはそれがわからない。
だからだろう。気が付いたときには時既に遅く。
脚がもつれて前のめりにつんのめってしまったのは。
「うぁッ!」
咄嗟に体勢を整えようとするドロテアだったが、ひらひらのドレスと高いヒールに邪魔されて受け身を取れそうにない。
やはりこんなドレス着るんじゃなかった。
そう思いつつ倒れようとしていた彼女を。
「危ないッ!」
大きな身体が受け止めた。
***
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ、すまない助かった」
受け止めてくれたのはスーツ姿の東洋人男性。
少し垂れ目がちな目、大きめの鼻、笑っていれば話し掛けやすそうで、黙っていれば怖そう。そんな雰囲気の日本人男性。
日本人と断言できるのはブリタニアに滞在、または移住している東洋人で一番多いのが日本人だからだ。
それに長年の付き合いからブリタニア人の間では東洋人=日本人のイメージが定着してしまっている。
「あ、貴方は……」
ドロテアは自分を抱き留めてくれている日本人男性に見覚えがあった。
「ナグモ卿……か?」
南雲忠一。
ブリタニア帝都ペンドラゴンに滞在している日本の駐在武官。
以前就任の挨拶に訪れた彼とは皇宮で顔を合わせたことがある。
近々引退するとのことで日本に帰国するらしいが。
おそらくは彼も招待されていたのだろう。
「これは……誰かと思えばエルンスト卿でしたか」
「も、申し訳ない今離れ……痛っ!」
抱き留められたままだったドロテアがはっとして離れようとしたところ右足に痛みが走った。
「どうしました?」
「い、いやなんでもっ」
何でもないという彼女。
捻ったのか靴擦れなのかはわからないが足を怪我している様子なのは確かだ。
だがこの程度で迷惑は掛けられない。
そう思い構わないで欲しいと告げたところ。ぐっと身体が浮遊した。
「なっ、なにをっ!?」
膝の後ろと背中を支えられ、そのまま抱き上げられたのだ。
「失礼。淑女が足を痛めていて放っておくのは日本男児とは言えませんからな」
にこやかに笑う南雲。
「け、結構だっ! 一人で歩けるので離してもらいたいっっ!!」
「お断りします」
人としては勿論のこと、日本人として困っている人を助けずには居られない。
国の気風とでも言おうか、日本人はとかく親切なのだ。それも必ずと言って良いほど見返りを求めない。
その国民性がブリタニア人にはとても好かれていて、永住権と国籍を取得して日本に移住する者も多く、ブリタニア系日本人は今では珍しくないほど普通にいる。
クレア帝統治時代に築かれた日ブの友好と交流、そして相互移民は、太平洋戦争の断絶期間を完全に払拭し再会されてより活発の一途を辿っている事が、両国の信頼関係を物語る上で一つの指標と成っていた。
ドロテアもまたそんなお人好しの日本人が好きな一人だが、こういうのは正直お断りしたい。
今の彼女がどういった状態にあるのか?
南雲と密着状態。お姫様抱っこなどという恥ずかしいことをされている。
「き、貴公はッ、私がラウンズであるとッ──」
「此処に居る貴女は最強の騎士たるラウンズなどではなく、怪我をして動けないでいるただの女性には違い有りませんよ」
「──ッッ!??」
無論このようなことは初めてだ。
何やら変に胸が熱くなってきた彼女は必死になって訴えるも彼は耳を貸さずに離してくれない。
「とにかく座れる場所に行きましょう」
「い、いや、だから私はっ」
座れる場所で一番近いのはパーティー会場。
当然の如く南雲はドロテアを抱き上げたまま会場へと向かった。
***
「あ、あのっ、エニアグラム卿! 良ければこのあと一曲踊って」
「すまないが他を当たってくれ」
「そ、そんな……」
ひっきりなしに声を掛けてくる男達だったが、ノネットのお眼鏡にかなう者は居そうになかった。
親の威光を笠に着る者。爵位を持ち出す者。そんな軟弱な男ばかり。
彼女は強い男を求めている。別に力の強さなど求めてはいない。
たとえ非力で貧弱で見てくれが悪くとも、その心が誰にも負けない強い者ならばそれでいいのだ。
そういう相手とならば是非とも一曲お相手させて頂きたいが、どうやら今日は無理なようだと諦めていた。
(ん? あれは……ナグモ卿?)
ふと会場の入り口付近に目を向けると駐在武官の南雲忠一が腕に誰かを抱えて立っていた。
黒いドレスに、結い上げられた黒髪、褐色の肌を持つその誰かは、彼の腕に抱かれたまま萎縮したように小さくなっている。
それも遠目でわかるくらい真っ赤になっている様子だ。
(ドロテアじゃないか!)
ノネットはそれが誰だかわかると彼らの元へと向かう。
「ナグモ卿!」
「おお、これはエニアグラム卿。これはまたずいぶんとお美しい」
ドレス姿のノネットに思ったままの感想を述べる南雲だったが「お戯れを」と返されてしまった。
「それに先約のレディがもの凄い顔で睨んでいますので」
「先約?」
南雲は気付かないが腕に抱いている褐色肌の淑女が一瞬ノネットを睨んでいたのだ。
「んんッ。ところでドロテア、どうかしたのか?」
「す、少し足を捻っただけだ……それなのにナグモ卿が……」
「ほぉ~う? 足を痛めたお姫様か」
「な、なんだっ! なにが言いたいのだ貴様ッ!!」
「い~やなにも~」
南雲は二人の応酬をよくわからないと首を捻る。
「エニアグラム卿。お話はまた後ほどでお願いしたい。今はエルンスト卿を座らせてあげたいので」
「ああ、失礼。それでは奥のソファが空いておりますのでそちらへ」
彼女が指さす方に空いているソファがあった。
「卿は御一緒されないのですか?」
どうやら一緒に来ないらしいノネットに声を掛ける彼だったが、当の彼女は意味ありげに含み笑いをして「遠慮しておきましょう」と断った。
「ええ、どうやら私が居ては邪魔になるようですから」
「っっ~~!!」
先ほど自分が言ったことをそのまま返してきたノネットにドロテアの言葉が詰まった。
(こいつは何を考えている。別に自分とナグモ卿は何かあるわけではない。自分とナグモ卿? なぜ私はそんなことを考えているんだ!?)
おかしくなる思考に混乱してしまった彼女は、空いているソファに下ろされた後は終始南雲と一緒だった。
結局痛めた足のせいで踊ることは出来なかったが、その踊れなかったことを残念に思っている自分にまた混乱するという悪循環に陥ったドロテア。
しかし不思議なことに不機嫌だった彼女の気持ちは、いつも以上の穏やかさと初めて感じる暖かい物で満たされていた……その後。
***
神聖ブリタニア帝国皇帝の騎士ナイトオブラウンズ。その一人、ナイトオブフォーの称号を持つ褐色肌の女性ドロテア・エルンストは不機嫌だった。
腰まである艶やかな黒髪は下ろしたままバレッタで留めている。
宝石に彩られた煌びやかな漆黒のドレス。耳には普段付けないイヤリング。代えたばかりで新品のルージュ。
そんな気合いを入れて着飾った彼女が不機嫌な理由は。
「エルンスト卿! 私と一曲!」
「いえ是非私と!」
「貴様ら! 卿とはまず私が踊るのだ!!」
やたらと声を掛けてくる有象無象の男達だった。
(誰が踊る約束などしているか! 大体何故騎士の私がまた舞踏会に!)
そんな不機嫌オーラを出していた彼女の前にまた一人男がやってきた。
少し垂れ目がちな目に大きめの鼻、笑っていれば話し掛けやすそうで、黙っていれば怖そうな、そんな日本人男性。
彼は彼女の目をしっかり見つめた後、その場に跪いて手を差し出す。
「踊りは上手くありませんが……一曲、御一緒願いませんか?」
その差し出された手に重なるのは最強の騎士でも、貴族の娘でもない、ただ一人の淑女の手。
戦う者を感じさせるその手は、その瞬間から一人のレディの手となる。
“よろこんで”
会場中央で舞う褐色の貴婦人と初老の紳士。
そこにはもう、不機嫌な淑女はいなかった。
豪傑らしい彼女も、きっと恋をすればかわいい女性になると思うのですね。
どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。
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嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
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嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
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山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
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南雲忠一×ドロテア・エルンスト
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玉城真一郎×クララ・ランフランク
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玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
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澤崎敦×井上直美
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レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
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原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
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ルルーシュ(休日)×ミレイ
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オデュッセウス×皇神楽耶
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高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
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鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-