帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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こちらは異なる歴史と提督たちの憂鬱に登場します夢幻会転生系のオリジナル世界観および、所謂「僕の考えた最強の日本」系の短編となります。
コードギアスシリーズの正史として描かれた漫画【コードギアス漆黒の蓮夜】に登場致します、クレア・リ・ブリタニア皇帝の穏健的政策が原作以上に浸透した影響によって、ブリタニアは「他の総てを見下すだけの単なる侵略国家」ではなくなっております。
漫画【コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】の名称や設定を多分に取り入れさせて頂いておりますが、戦闘描写はありません。
短編ネタ作品であり憂鬱・ギアス正史・パラレル派生系ギアス作品・ガンダムSEED・その他の多重クロスオーバー系。
背景としてドイツ第三帝国のアドルフ・ヒトラーが頑張ってます。基本はオリジナル設定物。蒼の混沌掲示板様投稿時より若干の改訂と修正。



ナイトメア・オブ・ダイニッポン
ナイトメア・オブ・ダイニッポン


 

 

 

 

 ナイトメア・オブ・ダイニッポン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「前年に続きまたも2桁増し」

 

 怒りを通り越して諦めの境地に達していた辻政信は、己に予算の許可を貰おうと参上してきた官房長官澤崎淳を冷ややかに眺めていた。

 

 前年比2桁増。それは唯の2桁ではなく兆の桁数における2桁増という異常な値。

 

 緊縮財政路線において歴代1位と言われた財務大臣辻が本来ならば許可しよう筈のないその金額は、陸海空の防衛力整備に必要な国防予算であった。

 

「し、しかしながら大変申し上げにくき事であると同時に閣下のお怒りは重々承知の上で進言させて頂きますと、我が国を取り巻く環境からして致し方なき事かと──」

 

 顔を深く下げ、上目遣いで様子を伺い理由を述べる澤崎に対し、辻の口から深い溜息が漏れ出る。

 

「確かに」

 

 彼の意見が尤もな正論である以上、如何に辻と言えど『削減』の二文字を口にすることは出来ないのだから、やむを得ないという他はなかった。

 

 とどのつまり消極的な了承というわけだ。

 

「無駄はありませんね? 有り余るサクラダイトマネーに胡座を掻いての馬鹿な戦力増強計画が持ち上がったりしていることなどはよもや?」

 

「め、滅相も御座いません! 引き締めるべき処は引き締め、十二分な精査を行った上での予算計上ですので!」

 

「そうですか……。ならばもうこれ以上の苦言は差し控えさせて頂きましょうか。しかし、空軍戦力の増強と新世代への更新。海軍艦艇の現有数維持。ギアス伝導回路・マッスルフレーミングシステム搭載型の改良型第7世代KMFの導入と空中艦艇の新規建造。広がりすぎた国土と勢力圏の防衛には一定以上の軍事力が必要であるとはいえ、毎度のことながら気苦労が絶えません。対中華・E.U.だけではなく、対ブリタニア・オセアニアをも考えた時に必要となるのは無限とも表すべき我が国の戦略地下資源と、此を活かす為の技術力・戦力・人口。そして何よりも容易な侵攻を不可能とする広い国土であるとはいえ、唯獲ればいいという物ではないというのに……。大戦時の為政者の方々には後に掛かる諸々の負担も計算しての国土拡大と戦後政策を行って欲しかったものです」

 

「心中お察し致します……」

 

 時代と共に技術が進み行くほど、各種の兵器と武装の開発・維持費は高騰するもの。

 

 極々自然な話であり、止めることなど出来よう筈もないその流れより生じた戦力の一斉更新に掛かる費用は今や天井知らず。

 

 特に、世界に先駆けた物を生み出し続けなければならない日本の予算はユーロピアや中華の財務担当者が目にすれば真っ青になる事間違いなしの位置にある堂々たる世界第2位となっていた。

 

 強力な抑止力を得る為にと拡大の一途を辿ってきた大日本帝国軍の軍事費は、今や『E.U.ユーロピア国家社会主義共和国連合』『E.U.ユーロピア共和国連合』『中華連邦』といった、継承3国と呼称される超大国──日本・ブリタニア・オセアニア以外の列強に、中東の共産諸国や東アフリカ。

 

 更には日本の衛星国家群の軍事費を足しても尚足りないほどとなっており、世界最大の軍事大国ブリタニアの予算に匹敵する額へと達していた。

 

 普通なら国家財政を圧迫、経済危機を招きかねないその額は、幸いな事に文明を動かす血液といっても過言ではない超伝導物質サクラダイトが国内2地点より湯水の如く採掘される事から生み出され続ける莫大な黒字によって支えられている。

 

 その為、財政難とは無縁なのがせめてもの救いであった。

 

 しかし常識的に考えるのならば、世界の軍事費の25%を日本一国で埋めているのは異常としか言えず、30%のブリタニアと併せ日ブ経済圏だけで実に55%という理解しがたい数値は辻政信の繊細な神経を逆撫でしっぱなしであった。

 

(世界の四分の一。これだけを見ればあのアメリカよりも少ないのですが)

 

 世界全体の軍事費に占める割合25%。それは彼の知る此処とは違う世界の超大国【アメリカ合衆国】が、その世界に占めていた軍事費の割合における“一国で50%”に比べればまだましと、一見そう受け取ってしまえそうな程度の数値。

 

 ブリタニアでさえ世界に締める総軍事費の割合は30%と、彼の国と比較すれば大きく劣る物でしか無く、アメリカの底知れない力を再確認させられる程度の割合なのだが。

 

 一点……ただ一点だけ。唯一にして絶対的なる相違点がそこにはあった。

 

(その絶対的なる相違点が問題なのです)

 

 確かにアメリカ合衆国の軍事予算は世界の50%に達していたかも知れない。

 

 それに相応しい最先端の兵器を山のように保有する、自他共に認める世界の警察官であったのは疑う余地もないことであろう。

 

 但し、そこには彼の国の軍事費が2桁兆であるという前提があるのだ。

 

(桁が1つ違うんですよね)

 

 3桁兆。

 

 これが現在の日本とブリタニア、それぞれの軍事予算の額。

 

 数十兆ではなく『百数十兆~』といった、思わずインフレかと勘違いしてしまいそうな程の莫大な額であった。

 

 無論、これ程までに軍事費が膨れあがったのは論ずるまでもなくアメリカ級の列強がひしめき合い、アメリカと比較にならない超大国が日本以外に2つもあるという現実と彼の世界よりも遥かに進んだ文明・科学技術力がそうさせているに他ならず、過分に過ぎる力を持たなければ他国によって飲み込まれるとなれば嫌でも強くなるしかないという抜き差しならない事情がある。

 

 国家が強くなるには文化・経済力・食糧自給率・戦略資源・教育といった、ありとあらゆる方面に力を注ぐことが必要なのだが、その一つが言うに及ばずたる軍事力の整備なのだ。

 

(まあ、費用を捻出できる下地あってこそ可能な力業ではありますが)

 

 日本を取り巻く環境と、最大の資源採掘国であるが故の経済的余裕。

 

 そして創世文明とされし最古の世界統一文明『エデンバイタル』が分裂した3国の一角、超古代国家『高天原』より続く日本の系譜。

 

 かつて欧州・南北ブリタニアを統治していた『アヴァロン』。オセアニア地域・アフリカ・中東を支配していた『レムリア』。

 

 これらと並び、ユーラシアの大半と太平洋地域に支配権を確立させていた『高天原』。

 

 遥か先史時代に世界を分割統治していた現在では考えられない規模と科学技術力を持つ3国が引き起こした、今日で言うところの『崩壊戦争』『ラグナロク』と呼称される星が消滅するのではないかという程の全地球規模の大戦によって一度は全てを失いながらも、高天原を継承した日本の永き歴史の中で洗練されてきた高度な技術。

 

 等々、今日に至るまでの世界環境と歴史、地下資源と技術、総ての要素が複雑に絡み合い結実した現在の大日本帝国は、此処150年程の間に急成長と急拡大を果たしてしまったが為に、応分の負担を余儀なくされていたのである。

 

(神代の前身国家を系譜に持つ永い歴史が国家崩壊から現在に至るまでの技術を育て上げてきた。育て上げるに相応しい人材と資源等に恵まれていた。先を識る者の出現によって更に文明の成長は加速した。それはそれでいいんですよ。誰しも己が所属する国が強く大きくなっていくことに否やはありませんからね。しかし、古代の叡智を引き継ぐ民族・人種であるが故にやり過ぎたとも言えるでしょう。本来ならば手を出さなくても良い場所にまで手を広げて、過分なまでに負担を増やしてくれたのですから)

 

 それもこれも全ての原因は日中日欧戦争。

 

 そして第一次世界大戦で獲得した日本勢力圏の広さにある。

 

(サハ以東の極東シベリア全域と外満州・山東半島・舟山群島・済州島の本土併合に加え、満州・高麗などの衛星エリアが5……オセアニアとの第二次南太平洋戦争後に獲得した新規エリア大洋州も含めて6つ。最後の南太平洋戦争で得た大洋州は我が国の衛星国である東南アジア諸国と併せてオセアニアの封じ込めに必要でしたが、ある意味に於いては思惑を外された形となってしまいましたし。日中日欧で獲得した中華連邦──中華帝国領外満州と、E.U.ロシア自治州領アムール・ハバロフスク・マガダン・サハの極東シベリアはまだしも、第一次大戦で獲得したエリア5つについてはどうにかできないものだったのでしょうか)

 

 日中日欧戦争を経て割譲・本土化したユーラシア東部地域の獲得によって対中華・E.U.を見据えた大陸の封鎖は概ね完了していた。

 

 にも拘わらず、第一次世界大戦を戦った当時の国粋主義的な対外強硬派と反協商国に沸く国民への妥協点として東京講和条約によって獲得した地域のエリア化が計られた為、結果として日本の国土は1889年の日中戦争から1998年終結の第二次南太平洋戦争までのわずか100年余りの間に、陸地面積だけで800%以上の大拡大を果たしてしまったのだ。

 

 排他的経済水域までも含めてしまえば拡大されたその領域は優に2000%を超えるのでは無かろうか? 

 

(国内の対外強硬勢力の力が予想以上に大きかった故に、といった事情もありますが)

 

 1889年8月2日開戦、1891年7月25日終戦の日中戦争──下関講和会議では高天原派と呼ばれる日本の最右翼派閥。(超古代文明時代には3つの超大国の一角として世界に君臨していたとされる高天原人=日本民族を、アヴァロン人=ブリタニア人。レムリア人=オセアニア人と共に、世界最古の3大優等人種として捉える国内勢力の一派)

 

 そして常に強硬姿勢な彼等を抑えるべく世界の先を識る者達で構成された派閥=現夢幻会派が中心となって、外興安嶺南部獲得を目的とした外満州全域の割譲を迫る交渉を展開。

 

 幾度もの海戦を経て海上戦力が消滅した上、外満州・満州・北京までを日本陸軍によって占領されて為す術のない中華連邦政府に対し、同地割譲を前提とした講和条件を呑ませている。

 

 更に1902年2月8日開戦、翌1903年9月5日終戦の日欧戦争──樺太講和会議では、残る外興安嶺北部(スタノヴォイ山脈)獲得と、極東におけるユーロピア排除を念頭に極東シベリア全域を、ユーロピア共和国連合より割譲させていた。

 

 2つの戦争で明らかと成っているのは、両国に対する防波堤を大陸に構築し、極東に眠る膨大なサクラダイトを日本一国で独占するという戦略目標の達成を目指した戦後処理を終始日本主導で進められたということだ。

 

(環境が整っていたのは幸いでした)

 

 第一に干渉する国がない。

 

 歴史的な自国への支援国として認識されていた日本の行動に、第一次大戦時のような冷え込んだ関係ではなかった弱肉強食膨張主義のブリタニアが文句をつけようはずもない。

 

 アフリカ・中東にまで勢力を広げ国内開発に追われていた強欲な自称正義の国──原始民主制国家オセアニアは干渉する機会を伺いつつも動けず。

 

 両エデンバイタル継承国のみが日本に干渉できるだけの国力を持っているのは自明の理であったが、両国共に当時は日本に干渉するような位置になかった。

 

 第二に、日本と中・欧両国間には乗り越えられない壁──質で圧倒する軍事力に尽きない戦略資源という巨大な壁が立ちはだかっていた。

 

 ユーロピアと中華が「質など量で押し潰せる」と考えていた処、蓋を開けてみれば海上戦力を一方的に壊滅させられるといった技術格差を見せつけられ、日欧戦争では戦闘機や戦車という未だかつてない新たな兵器の実戦投入まで行ったのだから、

 

 魂を解析し、生命や自然の理、空間すらも操ったとされる超文明エデンバイタルと、その分裂国に連なる3大継承国の『文明の発展速度』。

 

 および、日本特有の『未来見』を前に、ぐうの音も出せない程の完敗を喫すれば、相手の条件を丸呑みせざるを得ないというものだ。

 

(ここまで良いようにやられたらそれは中華も欧州も国挙げての反日へと傾くでしょうね。例えそれが向こう側より仕掛けた戦争が原因の自業自得な結果であったとしても)

 

 結果的に得る物無く、ただ一方的に奪われる形と成った両国の対日政策はその後反日一辺倒な物となり、外満州・外興安嶺北部よりサクラダイトが採掘され始めたことを機に反日機運は国全体へと浸透していった。

 

 しかし、当時ここまで対日感情が悪化したのには彼の2国が抱える大きな内的要因も存在していたのだ。

 

 それはユーロピアを支配する国防四十人委員会や、中華連邦の代表国である中華帝国政府へ批判が向かないようにする為の国内対策の一環であったという一語に尽きよう。

 

 自分達の戦略の誤りによって領土を失うばかりか国を動かすに無くてはならない貴重な戦略資源を結果的に奪われてしまったのだから、日本を『悪』だとして国民を先導しなければ自らの立場が危うい。

 

 長らく続いた大宦官による宮廷支配と四十人委員会による無為無策。両連邦へ加盟していた国の政治腐敗。

 

 それら負の要素から目を逸らさせ、『反日教育』を推し進め、次代の宦官であったり行政官・政治家達を右傾化させていった先に起きたのが『第一次世界大戦』だった。

 

(その第一次世界大戦後の勢力圏急拡大が負担を大きくしている原因なので、図体が大きくなり過ぎるのも正に考え物です)

 

 陸地面積:1407万km2。総人口:9億8000万人。

 

 この世界の有り様を知識として識る辻には、まるでブリタニアの膨張主義をそっくりそのまま焼き直したかのようにもみえる急速な国土の拡大は、嶋田政権の閣僚として自らも携わった1995年~1998年の第二次南太平洋戦争における戦後処理まで続き、本土化した極東シベリアと外満州・山東半島・舟山群島・済州島以外に6つの衛星エリア=自治州を獲得するまでに至る。

 

 エリア壱のフィリピンから順に、中華連邦より割譲させた中華大陸東北部地域のエリア弐・満州。

 

 同じく中華連邦より割譲させた中華南部沿岸地域、広東・福建から成るエリア参・華南。

 

 旧高麗帝国の内、済州島を除いた高麗半島と島嶼部全域から成るエリア肆・高麗。

 

 E.U.ユーロピア共和国連合より割譲させた、ブリヤート・ザバイカリエ・イルクーツク・クラスノヤルスク・トゥヴァの、中央シベリア5地域から成るエリア伍・西比利亜。

 

 第二次南太平洋戦争後、南側諸国の盟主にしてエデンバイタル継承国が一つにして、第三の超大国オセアニアより解放した旧大洋州連合地域の内、大洋州の掲げていた永世中立の理念を引き継ぐとして独立を回復させたフィジー・ソロモン諸島・バヌアツからなるオーブ首長国連邦を除く、メラネシア・ポリネシアの南太平洋島嶼群地域──エリア陸・大洋州。

 

 これだけの領域の獲得・維持を可能としたのは、偏に日本の国力を背景とした力推し外交と、古代文明国家時代より培われてきた高い統治能力の賜物と言えよう。

 

(反乱を引き起こさせないためのエリア全域隅々までに渡る投資と開発。日本式の教育に思想改革と、我々の1つ前の世代が最も苦労された事でしょう)

 

 日本に留まるか独立するかの是非を問う民主的な住民投票の実施。

 

 4年に一度の統一地方選挙における住民の住民による住民の為のエリア州議会・州知事選挙といった、住民の意思・自主権・自治を第一に考えた体制作り。

 

 ここまで整えても尚、住民投票によって自ら日本への残留を希望しながら、遠く合衆国インドシナにまで逃亡を図った高麗帝国亡命政権──現在の大高麗民主国の先導に呼応し暴動を起こしたエリア肆。

 

 再度の住民投票を行うも、結局は中華連邦……より正確には中華帝国の属国には戻りたくない。オセアニアの属国にもなりたくない。されど独立してやっていく自信もないとして、再び日本残留を選ぶという恥も外聞もない地域の統治。

 

 その際エリア肆・高麗は矯正エリアへと格下げされている。

 

(現在の安定に繋げてきた先輩方の努力には頭の下がる思いです。同時に後世の我々に余計な仕事を増やしてくれた事を恨みますよ。幸い満州から極東シベリアに掛けてのサクラダイト鉱山がそっくりそのまま手に入った事で、唯でさえ金満財政の我が国は更なる潤いを見せておりますが、広がりすぎた国土に見合うだけの防衛力整備に掛かる費用が年を追うごとに増加していく様には気が滅入ります。6つのエリアの維持運営・福利厚生・州知事選挙、及び州議会選挙など諸費用も発生することですし、せめて衛星国として独立させるかの工夫を考えて頂きたかった物ですね。まあ、それでは納得が行かないほど1940年代・50年代の日本は中華と欧州に怒り心頭であり、強硬派の勢力が強大だったという話なのでしょうが)

 

「二度の世界大戦の1つ。列強2国を相手取ることになった第一次世界大戦」

 

 一度ならず二度までも仕掛けてきた両国に対し、三度は許さずとばかりに徹底して叩き潰すという方針で戦い抜いた大戦。

 

 日中日欧戦争以来、地政学的・歴史的対立を抑え、対日本で協力し、3国間の協商関係を構築していた欧・中・高──ユーロピア共和国連合・中華連邦・中華の属国高麗帝国と、大日本帝国の間で勃発した史上最大の大戦争。

 

 個別にオセアニアまでもが大洋州連合・東南アジア諸国との間で第一次南太平洋戦争を引き起こしたこの世界大戦は、得る物も大きかったが失う物もまた大きな物であった。

 

「なまじ世界を動かせるだけの豊富な戦略資源と高天原時代後の研鑽によって培ってきた高度な技術力を持ったが故の悲劇、ですか」

 

「まあそんなところでしょう」

 

(我が国の暗躍により歴史が変わってしまった等、まったく別の要素も含まれますけどね)

 

 辻は思わず出しかけた言葉をしかし口にはせずに飲み込む。

 

 皇歴1500年より始まったであろう『識る者たち』と、遙かな昔に存在していた3つの超古代文明国家の一角。

 

 その歴史有る継承国家として発達した文明を築き、早々に国内統一が図られていた大日本帝国の暗躍による歴史改変の事実は、眼前に居るただの一政治家が知るべきではない特別機密事項である。

 

 ギアス能力の存在までは知る立場の澤崎といえど、歴史を改変してきた等の一種の時間犯罪とも言うべき事項に触れられる人間ではないのだ。

 

 此に触れても良いのはあくまでも『識る者=夢幻会最高幹部』と『帝』のみ。

 

(まあ、こんな事実を知ったところで誰にもどうすることは出来ませんが、それぞれの古代文明継承国が持つ力は侮れませんからね。しかし一方でやり過ぎたが故の修正不可能な流れも生まれてしまっています)

 

 人体強化技術、不老不死のコード、特殊な力を操る生命の力ギアス。使い方次第では世界の在り方を根底から覆しかねない古代文明の遺跡。

 

 これらを操る術を持った継承国家には常に細心の注意を払わなければならないとして動向を探り続けてきた日本であったが、

 

 エデンバイタル文明継承3国の1つである神聖ブリタニア帝国が将来起こしうる日本侵攻を回避するための暗躍で、識っている本来の歴史の流れから乖離を始めたのは大きな誤算であった。

 

(欧州革命により父祖の地を追われることが決定的と成ってしまったブリタニアに恩を売るため、エディンバラへ派遣した人員を通じてのエリザベス三世とブリタニア公の新大陸脱出への手引き。新大陸でのジョージ・ワシントン反乱鎮圧に対する援助。遷都後に勃発した欧州貴族とブリタニアの内乱──北南戦争時に於けるブリタニア出兵と側面支援)

 

 

 

 第一の分岐点となり得た欧州革命時。

 

 第二の分岐点である北南戦争時。

 

 そしてブリタニアが最も変われる可能性の高かったクレア帝誕生時の徹底した支援。

 

 欧州革命では遠い東洋には自分達を支援する勢力が存在しているという印象を与え、ブリタニアの為政者達から孤立主義を払拭させる事を狙いとし。

 

 北南戦争では恩を仇で返す欧州貴族とは違い、逆に必要もないというのに自国への支援を買って出た日本への好印象を根付かせた。

 

 そして最後の仕上げに民族協和・協調主義といった、他を圧するのではなく他と共に歩むという考え方を持つクレアを徹底支援することで、弱肉強食一辺倒の思想を持つロレンツォ・イル・ソレイシィ率いる当時の純潔派の思想を大きく緩和・減衰させる事に成功。

 

 こうして未来を大きく左右するであろう三つの出来事全てに関わり上々の成果を上げたことで、彼の国内部に『親日派勢力』を生み出す事が出来た。

 

 これが日本に取り歴史上類を見ない程の大成功であったことを知っている者は、この未来という明日に再び日を昇らせる為の『御来光計画』を主導した皇家と、皇家の信を得て計画を立案・遂行してきた識る者たちのみ。

 

 故に当時から強硬姿勢で知られていた高天原派の反発を大いに招く結果となったが、それでも必要であったのだ。

 

 だが同時に副作用も大きく、国内に於いては夢幻会派と高天原派の対立を呼び。

 

 ブリタニアに於いては欧州貴族の権威失墜へと繋がってしまった。

 

(北南戦争に於いて日本がブリタニア側へと加わったことで史実以上の大勝利を収めたまでは良かったのですがね。しかしながら、これを機として欧州貴族の力が大きく削がれ、後のユーロブリタニア成立の芽を摘んでしまった……。まあ、これだけ無茶をすれば歴史に歪みが生じるのも当然です)

 

 第一次太平洋戦争の代りに第一次世界大戦が起こってしまったのは間違いなく日本の動きが蝶の羽ばたきのようになって影響を及ぼした結果なのだ。

 

 計算では弾けないこともある。特にブリタニアの脅威を識るが故に彼の国のみに掛かり切っていたことが大きな痛手と成って跳ね返ってきた。

 

 だが、『他の全てを見下すだけの傲慢な思想』にブリタニアが染まらない可能性や分岐点を追求するのならば、それが日本の将来に関わる話であるというのなら、やはり必要な介入であったのだろう。

 

(あの国が世界侵略を開始したその根本には間違いなく孤立主義と異常なまでのブリタニア優越思想がありましたからね。多少の無茶は覚悟の上……と言いたいのですが、しかしそれによってまったく別の悪い事態が引き起こされてしまったのですから、やはり歴史に手を加えようと画策するのは大きなリスクを伴う)

 

 欧州貴族の権威失墜がユーロピアを勢い付かせ、国土とサクラダイトの奪還および第二次東征計画遂行の為として、過去の軋轢を乗り越えた欧中同盟──正式名称『欧・中・高3国協商条約』なる軍事同盟の成立を許してしまった。

 

「悲劇……。確かに悲劇ですな。これだけの勢力拡大を図れたここ80年の流れは我が国にとっては喜劇であったと嘯く輩も居るようですが」

 

 澤崎が述べたように広がった領域に国力の限りの投資を行い開発した結果より強大になった現在の日本をもって“喜劇”と表現した歴史学者や政治家が居る。

 

 それは戦乱の世であった過去ではなく平和な今の世に於いても一定数存在しており政治討論番組などを賑わせていたが、これに辻は一抹の危険性と驕りを感じずには居られない。

 

「何が喜劇な物ですか。対外戦争で拡大を図るには命も金も犠牲が大きくなりすぎるのが今の世、その突端こそがあの時代の戦争だったというのに。これだけの大帝国へと成長するまでにどれだけの犠牲を出してきたことか……。大きな事だけを口にする無責任な輩とは一度その辺りをじっくり話し合ってみたいものですね」

 

 

 

 第一次世界大戦。

 

 

 

 世界の戦略資源、超伝導物質サクラダイトの価格や供給量を巡る貿易摩擦により冷え込んでいた当時の日ブ関係を前に、これを好機と捉えた協商国が海南、台湾、日本領外満州、日本領シベリア、そして本州へと、全方位攻勢に打って出たことから始まったこの戦争では、当初協商国側の目論見としてブリタニアを参戦させるという計画があった。

 

 神聖ブリタニア帝国はユーロピアにとって忌むべき帝政国家であるとはいえ、ブリタニア北南戦争の折りに過去の民主革命で自分達が追い出した欧州貴族が予想以上の失態を演じ纏まれなくなってくれたお陰で、敵の敵は味方理論が通用する様になり、協商側へのブリタニア帝国引き込み工作が上手く行くと思われていたのだ。

 

 当時のブリタニアは日本という国を敵、または敵になりつつあるのではないかと懐疑的な目で視るようになっていた。

 

 膨張する軍事力、先行する新技術の数々、大きくなっていく国力を背景に、日本内部では貿易摩擦以降の関係悪化に伴い高天原派以外にも対ブリタニア強硬派勢力が出現。

 

 呼応するようにブリタニア国内でも対日強硬派の勢力が生まれていたそんな時代。

 

 疑心暗鬼となった両国人の間には次第に鬱屈した感情が溜まり始め、静かな対立関係へ至る道筋が付けられてしまった。

 

 こうならないようにとブリタニア寄りの姿勢を打ち出していたにも拘わらず、サクラダイトという生命線にしてアキレス腱でもある戦略資源が対立の温床を作り出したことに、識る者達が組織した夢幻会の前身組織のメンバーは落胆。

 

 中には反ブリタニア路線へと転向する者もおり、対話路線とは別で並行して進められてきた別計画。敢えて人道を無視して皇国の勝利のみを追求する、彼等の知る物とは異なる作用を持つ原子力兵器の開発と、これを用いたブリタニア大陸消滅作戦『破号計画』に傾倒していった。

 

(異相原子力兵器=フレイヤ。研究は進められたが通常の原子力兵器開発とは概念が異なるために大戦中の完成には至らず)

 

 一方日本と敵対関係にあるユーロピアは、ブリタニア国内に受け入れたにも拘わらず北南戦争という形でブリタニアを裏切り恩を仇で返そうとした欧州貴族とも当然の事ながら敵対していた。

 

 信用の失墜していた欧州貴族と関係の悪化した日本。双方の敵である当時のユーロピアはブリタニアにとって味方ではないまでも敵ではない立ち位置にあったと言えよう。

 

 ならば協力できるのではないか? となるのが自然の流れだ。

 

 成長著しい日本は近い将来脅威となって立ち塞がる可能性がある。

 

 対ブ強硬論などは正にそれを暗示した物であるという意見が必然的に支持され始めるのに差ほどの時間を要することなく、英雄帝クレアの共存共栄主義が広く浸透していたブリタニア国内でいつしか芽生えた日本との関係を見直す動きが出始めたのである。

 

 そしてサクラダイト関連で世界に覇を唱える可能性を持つ日本を今の内に叩いておくべきだとする対日強硬論の台頭と、強硬派へと傾き始めたブリタニアの空気を読み取ったかのようにやがてユーロピアから使者が送られた。

 

『協商国と歩調を合わせて日本へ侵攻し、彼の国が独占しているサクラダイトを世界で分かち合うべきだ』

 

 対日参戦と協商国参加を打診されたブリタニアは日ブ間における過去の友好関係を敢えて無視する態度を取り、協商国側の話を持ち帰るという姿勢に転じる。

 

 だがしかし、それで意見が対日開戦で纏まるのかといえばそうではなかった。

 

『今こそ好機ぞッ! 如何な技術大国日本といえど、オセアニアを除く全ての列強と我が国から同時に攻められてはひとたまりもあるまいッ! 日本が長年独占し続けてきたサクラダイトを始めとする地下資源を手にし、パックスブリタニアーナの構築を目指すまたとないチャンスだッ!』

 

『馬鹿なッ!? 日本とは新大陸遷都以前より友好関係にあったのだぞ!? それを一時の対立のみにとらわれて殊更に脅威を煽り立てるだけに留まらぬばかりか剰え信用のならぬ簒奪者共の口車に乗り日本侵攻を企てようとは……貴様等それでも騎士かッ! 恥を知れッ!』

 

 強硬派は日本侵攻に打って出ろと叫び。

 

 融和派は日本との友好関係を再構築し協商国の誘いに乗るべきではないと応じる。

 

 不毛な争いが繰り広げられ、意見が纏まらぬまま唯時間だけが過ぎていく。

 

 同様に南の超大国オセアニアへも中華連邦大宦官の一人が自ら足を運び協議を重ねていた。

 

 そう、協商国はブリタニアのみではなくオセアニアも自勢力側として対日参戦させるべく動いていたのだ。

 

 これは保険である。万が一ブリタニアが参戦しなかった時のための。

 

 自分達だけでは日本との長期戦に勝てないことなど百も承知の協商国側は、どちらか一方の超大国を引き込もうと考え両国に対し打診する方針だった。

 

 引き込めれば対日戦争へ動き、無理ならば取りやめに。

 

 一見場当たり的ながらこの賭は成功したときの実入りが莫大な物となり、将来的な大発展が期待できる。

 

 確率は低くとも期待値は絶大な賭なのだ。

 

 必要なのは日本を除く二つの超大国の一方を引き込むこと。

 

 これだけで確率は99%の勝率へと大化けし、計測不能な期待値を総て掻っ攫うことが可能。

 

 となれば、恨み骨髄なうえ自国の内的問題を一気に解消する為にゲームを行うは必定であった。

 

 この世の中は弱肉強食で成り立つ。

 

 勝てばいい。例え相手が強かろうとも勝つ算段があるのならば貪り喰うだけだ。

 

 無論日ブ関係悪化の間隙を突いた卑怯な行いに天子は反対であった。

 

 卑怯なのは勿論のこと、眉唾物ながら数百万年の歴史があるとされる日本の恐ろしさは日中戦争で経験済み。

 

 もしも開戦し思惑が外れてしまえば……、その時は最早中華連邦が滅びを迎えてしまうとして。

 

 しかしながら時の天子には暴走する大宦官を抑える力が無かったのである。

 

 それもやはりかつての日中戦争の惨敗によって天子の権威が著しく失墜していた故に。

 

 この時にもし天子に力があれば、後の世に中華を襲う災厄を招くことには成らなかったであろう。

 

 だが時既に遅し。

 

 賽は投げられてしまったのだ。

 

『貴国が古き時代より対立して居られる東洋鬼を共に退治致しましょうぞ』

 

 古くは前身国家レムリアの時代より対立関係にあった大日本帝国。

 

 これを攻略し神根島遺跡と改造人間技術、そしてサクラダイトを手にするまたとない機会に誘いを受けたオセアニア議会の意見は二つに分れる。

 

 何せ相手は東アフリカや中東のような弱小国でも、ユーロピアや中華のような下等種族の国でもない。

 

 自国と同じ偉大なるエデンバイタル継承国にして自国よりも上位に位置する継承第2位の日本なのだから事は慎重を要するとして。

 

『此度の下等種族共よりの誘い、乗るべきではないでしょうか? 高天原人を屈服させその総てを手に入れ我らが物とすればアヴァロン人を打ち破るのも容易きこととなりましょう。ラグナロク以後の三竦み体制に終止符を打ち、絶対正義の秩序を世界にもたらす最良の機会であると思われるのですが』

 

 これを好機とする積極参戦派と。

 

『犯罪も悪もない秩序に満ちた世界実現の為に正しき民主主義と絶対正義の理念を広げることは必要だが、相手は資源と技術の国日本。勇み足で参戦せずとも推移を見守ってからでも遅くはないだろう。参戦した後もしもアヴァロン人より背後を突かれてしまったその時に貴公はなんとする? 高天原人との挟撃を受け我が合衆国の歴史にこそ終止符を打たれかねんぞ』

 

 下手を打てば継承2国を同時に相手取ることになると慎重な意見を持つ派閥。

 

 拮抗し合う意見に対し最終的に協商国との間に不可侵条約を結びつつ、されど協商国への参加は見送り戦局を見ながら独自に動くという結論を下したオセアニアは動きを見せないブリタニアを尻目に着々と北進の準備を整えていった。

 

『まずは東南アジア方面と大洋州全域に正義の旗を立てる。アヴァロン人が動かず高天原人が下等種族の相手で手一杯な今が狙い目だ。そのあとは戦況次第と行こうではないか』

 

 

 

 そんな中、オセアニアが独自参戦の方向に動いた事で機は熟したと見た協商3国が遂に日本攻略への狼煙を上げた。

 

 高麗半島、シベリア、中華大陸東北部、各地に集結した協商国軍その総数実に700万という大兵力が日本攻略へ向けて動き出したのだ。

 

 名目上の理由として協商側は『サクラダイトの一国独占阻止』を掲げていたが、政治腐敗進むユーロピア、大宦官や軍区行政官の暴政続く中華連邦(特に中華帝国)の日中日欧雪辱戦。及び世界の7割という膨大な地下資源と日本が持つ先進技術の獲得が狙いなのは明らか。

 

 無論、第一目標である極東シベリア・外満州といった日中日欧戦争で奪われた失地の回復と、本来ならば自国の物であった筈のシベリアサクラダイト鉱山奪還を最優先としていたのは言うまでもない。

 

 高麗はともかくとしてユーロピアと中華の力が合わさればそれなりに日本と対峙できる力と成り得るだろう。

 

 いがみ合う列強が力を合わせればそれだけで巨大な勢力と成る。

 

 日本、ブリタニア、オセアニアの3国が突出している故に見落としがちのこの事実を前に一方で関係悪化に伴ってブリタニアへの対応も必要となってしまった日本は正に四面楚歌という状況へ追い込まれていた。

 

『駄目だッ……、連中、死体の山を物ともせずに乗り越えて来やがる……ッ』

 

 協商国中華連邦の主力である中華帝国軍・インド軍と、これをバックアップするユーロピア軍の人海戦術はそれは恐ろしい物であった。

 

 10万の兵が死ねば20万の兵が現れ、20万の兵を殺せば40万の兵が現れる。

 

 陸続きのシベリアや外満州で繰り広げられていたのはそんな亡者の群れを相手にするような泥沼の戦い。

 

『一体どれだけの敵を屠ればッッ』

 

 装備は劣悪。戦車は貧弱。航空機などカトンボをはたき落とすかの如き容易さで撃墜破可能。

 

 客観的に観れば勝てるはずの戦いをしかし劣勢に追い込まれるその因は、分析不可能なほどの圧倒的なる数の力。

 

 世界で1,2を争う人口に裏打ちされた尽きる事なきユーロピア・中華の大兵力を前にそれでも尚戦争となれば日本が終始優位で居られると言われるのは、無論無限の地下資源と高度な技術力がもたらすその国力に他ならなかった。

 

 だが、それはあくまでも十全に発揮されていればの話でしかない。

 

 南と東にまで力のリソースを振り分けなければならない状況下においてはどう足掻いたところで半分の力も発揮できず、まともな対処等不可能であった。

 

 ならば対オセアニア対ブリタニアに振り向けている分をいま攻め寄せてくる協商国へと振り向ければ良いではないか。

 

 普通ならばそう考えるところだが、海の向こうの2つの国は、共に余所見をして対処できるような小さき存在ではなく、本来なら全力で対峙しなければならない相手であり協商国とは比較にならない程の大国だ。

 

 特にオセアニアなどは協商国へ力を振り向けた瞬間、北進を開始するであろうことは目に見えて分かる、かつてのブリタニア並かそれを上回る膨張主義の原始民主制国家。

 

『神に唯一認められた我が国は常に絶対正義の体現者である。絶対正義の我が国を遮る者は此即ち“悪”であり、悪を倒すためのあらゆる物理的制裁は我が国が持つ正統なる権利なのだ。正義遂行の為に邁進せよっ!』

 

 自国の行動の総てを“絶対正義”の名の下に正当化し、他国に攻め入っては傀儡政権を立て権益を奪う。

 

 彼の国は帝国主義=他を抑圧する侵略主義として忌み嫌うが、彼等ほど露骨な“侵略主義”の国もないだろう。

 

 それでも彼の国の政体が選挙を経て国民に信を問い、投票によって選出された大統領なり政治家が国家を動かしているという、一応の“民主国家”であるところに変わりなかった。

 

 そんな、常に自国のみが正義であると嘯く独善的正義教国家は日本にとってブリタニアと並ぶ最大の脅威であり油断ならない相手。

 

 現に協商国の日本侵攻に連動する形で大洋州連合と東南アジア諸国制圧に動き出している為、彼の国に対し備えている戦力を大陸側へ移動させるのは自らの首を絞めるという自殺行為でしかない。

 

 “どんなに振り絞っても30%”

 

 日本が今この時に協商国側へと向けられる力はこれが限界なのだ。

 

 海の向こうにはブリタニアとオセアニア。

 

 大陸側には協商国。

 

 自縄自縛の苦しい戦いは続き、パワーバランスが崩れていく。

 

 

 

 世界のパワーバランスが大きく崩れたことで煽りを受けたのは中立国家群だった。

 

 日本にも協商国にも、ブリタニア・オセアニア何処の勢力にも組みせず局外中立を表明して戦火を逃れようとしていた彼等は、しかしこの世界の有り様である弱肉強食の法則を見誤ったのだ。

 

 

 

 1938年4月。

 

 東南アジア諸国と大洋州連合はティモールと大洋州がオセアニアの侵攻により瞬く間に席巻され独立を奪われた。

 

 続く1939年初頭。

 

 ニューギニア、インドネシアが共に国土の南半分を失い滅亡の瀬戸際へと追いやられ、インドネシアが防波堤と成る形で唯一国土を侵されていなかったフィリピンは起死回生の策として日本への併合を求める。

 

 “これ以上オセアニアの北進を許せば台湾・海南が、日本その物が、北と南よりの挟撃を受ける形となってしまう”

 

 未だ対日参戦は正式表明して居らず、大洋州と東南アジアにのみ的を絞っていたオセアニアであったが、情勢変わらずの膠着状態が続けば間違いなく参戦してくると読む大本営は、1939年4月8日。フィリピンの提案を受け入れ日比併合条約を締結。

 

 即日施工された条約に伴い同国が衛星エリア化されたことで、オセアニアのこれ以上の東南アジア侵攻を辛うじて踏みとどまらせることに成功した。

 

 彼の国が踏みとどまった理由。

 

 それは相手が自国と同じエデンバイタル継承国日本であるからに他ならない。

 

 エデンバイタル継承国家は何れも強大な国だ。

 

 特に古代からの歴史を知り尽くしている者同士、継承国は互いの底力を嫌と言うほどに把握している。1対1の状況において手を出せば自らも深手を負うと。

 

 故にオセアニアは待ったを掛けたのだ。ブリタニアの動きと協商国の動きを見ながら機会を伺うという形で。

 

 ブリタニアが協商国側で参戦すれば迷い無く日本侵攻へと舵を切る。

 

 ブリタニアが動かずとも日本へ圧力を掛け続けるというこのままの四面楚歌な状況が続けば、やはりオセアニアは協商国側に立ち参戦する。

 

 だが今は様子見で動かない。

 

 彼の国の慎重さは、このとき日本にとっては吉として働いていた。

 

 もしも今、彼の国に動かれれば敗戦すら有り得る厳しい状況だったのだから。

 

 しかし大陸の情勢如何によっては再びインドネシア北部地域とニューギニア北部へ向け侵攻を開始するであろうことが確実な情勢であることに変わりはない。

 

 下手をすればオセアニアの更なる北進……日本領への侵攻も有り得る事態に、国内の対ブ強硬派は次第にその矛先を変え始めた。

 

『卑怯な不意打ちを行った欧州と中華を許すまじッ!』

 

 ブリタニアと揉めている状況においての不意打ちを行った協商国への怒りを露わにする彼等はどうにもならない局面に際し、侵略者を罵ることしか出来ない自分が腹立たしかった。

 

 所詮国際関係。

 

 国と国とのだまし合い。

 

 卑怯も不意打ちも何でもありの世界なのだと理解しつつも怒りを抑えることは出来なかった。

 

 また自分達がこの事態を招いた一因である事を恥じ、識る者達と共に挙国一致体制を築き上げることで漸く日本国内は1つに纏まることと相成ったが、状況はけして芳しい物ではなかった。

 

 圧倒的なる海軍力と空軍力の差で本土・海南・台湾・大陸側領土を守り通してはいるものの、反撃の手が打てないのだ。

 

 反撃に動こうと南と東への力のリソースを大陸へと向ければブリタニアはまだしもオセアニアが仕掛けてくる。

 

 彼の国と協商国、2つ同時の戦となれば如何に日本と言えども当然勝ち目はない。

 

 国を覆う暗雲の中、出来る事はただひたすら堪えることであった。

 

 だがこのとき、協商国側にも大きな誤算が生じていた。

 

 大陸から日本を追い出し失地回復とサクラダイト鉱山奪還を成し遂げてみせるとして満を持しての日本侵攻だったというのに、本土は疎か大陸から目と鼻の先に在る台湾・海南や大陸の日本領すら攻略できないばかりか、日中戦争よりこの方、漸く再建成ったばかりの南洋艦隊改め、中華帝国南海艦隊が南シナ海海戦において本土より派遣された日本海軍の猛撃に遭い、開戦間もない時期に壊滅。

 

 行きがけの駄賃だとばかりに広州海軍基地までが日本軍空母艦載機烈風改による空爆を受け、基地航空隊の戦闘機では追いつく事すらままならぬままに次々と撃墜されてしまうという醜態を晒していたのだ。

 

 更に1937年中には海口・湛江・三亜といった南海艦隊の全海軍基地が日本艦隊と海南・台湾航空隊によって殲滅され、上海に司令部を置く東海艦隊、青島の北海艦隊も同様の運命を迎えてしまう。

 

 中華帝国海軍は海への出口を失うという事態に陥り、海戦において大和型という巨大戦艦を前に手も足も出ず沈められていく新定遠と鎮遠の様子は、連邦全土に衝撃を与えていた。

 

『長門に対抗可能な大戦艦ではなかったのかッ!?』

 

 大宦官の肝煎りで建造された中華帝国海軍旗艦──定遠。

 

 日中戦争の折に沈められた北洋艦隊旗艦と同じ名を与えられた新型艦は、全長270m、基準排水量53000tという中華帝国史上最大の大型艦であった。

 

 それが容易く沈められてしまったのだから衝撃を受けるなというのが無理な注文となろう。

 

 しかしこのとき誰が予想できた? 

 

 基準排水量55000tの長門型が既に2線級へと追いやられていたとは。

 

 中華帝国、そして中華連邦全体にとっても首都である洛陽。

 

 その宮廷にて天子を差し置き采配を取っていた大宦官達は、自国の3大艦隊を壊滅させたという大日本帝国連合艦隊の中に、情報には無かった未知の巨大艦が確認されたと耳にして恐慌状態に陥る。

 

『幾ら砲弾を受けても沈まない巨大戦艦と巨大空母じゃとッッ?!』

 

『41cm主砲の直撃を受けて殆ど無傷とな?!』

 

 南シナ海に入っていた中華連邦インド軍区艦隊よりの最後の報。

 

 それは長門や金剛を遥かに上回る巨大戦艦と、同等のサイズは有ろうかという航空母艦含む大艦隊に、自国艦隊が攻撃を受け壊滅的な打撃を受けつつありという救援要請だった。

 

 定遠と同級の戦艦インドラの41cm3連装砲弾を幾ら直撃させてもダメージを与えられず、逆に撃ち放たれた巨弾と数百機の航空機による波状攻撃を受けインド軍区が誇る連邦インド洋艦隊が殲滅させられる悪夢を現実の物として体験していたインド軍司令官も同様であった。

 

『どうなってるんだ! アレは……アレは一体何なのだッ?!』

 

 インド軍区行政官の必ず勝てるという話が果たして真なのか? 

 

 協商国はこの戦争に勝てるのだろうか? 

 

 種々の疑問を抱く彼に答える者は居ない。

 

 戦争を始めた宦官もインド代表もユーロピア国防四十人委員会も。

 

 誰もが持ち得ない答えなのだから。

 

 そんな彼の問いは、51cm砲弾の直撃によって艦橋が破壊されるその時まで彼の心を支配していた。

 

 

 

『日本は……古代文明継承国とはこれ程のっ……!!』

 

 一方、北の海でも同様の光景が再現され、北極海を越えて遙々遠征してきたドイツ・ロシア・フランスのユーロピア連合艦隊に災厄がもたらされていた。

 

『なにが最古の人類だ。古き叡智ある民だ。ただの有色人種ではないか』

 

 反日教育によってそんな差別意識を持っていたユーロピア軍の兵士は自らでは生み出すことすら適わない巨大な黒い影を前に、古代人とは我々人類と根本的に異なる別の生命体なのではないかという意識を持ち始めていた。

 

 

 

 ***

 

 

 

「白人至上主義者が“白人とは古代人類と現世人類のミッシングリンクの人種でありエデンバイタル人に近い人種”なんて馬鹿なことを言い始めたのはあの戦争からではないですか?」

 

「確かにそういう事を主張されている人達も居るようですね。どうあっても自分達白人が選ばれた優等人種であるという考え方を変えられないのでしょう。古代国家を引き継ぐ継承国人も現世人類も、なんら変わることない同じ人類だというのに」

 

 徹底した反日教育の賜物か、民主ユーロピア(ユーロピア共和国連合=欧州ロシアから中央シベリアの一部+中央アフリカ・カメルーン以南の南アフリカ政権)の国家元首を務める国防四十人委員会委員長にして、民主ユーロピア初の女性大統領エディット・クレイソンなど日本人を「古代の黄色い原始人」と呼び忌み嫌う発言を繰り返しては物議を醸しているが、これについては日本内部においても継承国以外の人間を「下等人類」として差別する者も居るのでどっちもどっちと言えなくもない。

 

「妙な優越主義の拡大には注意を払わなければなりませんな」

 

「そういうことです。まあ、中華連邦人や欧州人からすれば数百万年とも言われるエデンバイタル継承国の歴史と、抜き出た国力や技術力がそれだけ異常に見えるのでしょうが。悪く言えばそれだけの時間を費やしてもこの程度の格差しか付けられていないほど停滞期が長く、進歩の遅い国と言えなくもないんですよね」

 

「そ、それは言い過ぎではないかと……。マッスルフレーミングシステムやギアス伝導回路等、古代技術と現代技術を融合させた物を組み込んだ戦闘機やKMFを開発している我が国が遅れているなどと……他国の反感を買いますよ? 特に同システムを組み込んだ最新鋭戦闘機ゼロ(零神)はブリタニアも未だ開発していない最新世代機。進歩が遅いと言われたら不眠不休で頑張った倉崎・スメラギの技術者が泣きますぞ」

 

「超文明分裂後の前身国家が一度滅びた後の文明停滞期の長さを考えればけして言い過ぎでもないと思いますが、まあとにかく当時の協商国側には大きなインパクトであったのでしょう」

 

 

 

 ***

 

 

 

『極東へ派遣した各国の連合艦隊が全滅……』

 

 沈んだ船を数えるのが困難なほど多くの艦が大和型戦艦と、大和型と同級の排水量はあろうかという巨大な航空母艦群の艦載機によって海の藻屑とされてしまったユーロピア、中華帝国、インド、高麗。

 

 それぞれの海軍戦力は1938年の時点で日本近海に展開できる余力と戦力を喪失。結果、継続的な攻勢を続けられたのは実質陸上での人海戦術を使えるシベリア戦線と外満州のみとなってしまったのだ。

 

 そのシベリアや外満州でも立ちはだかる日本機甲部隊を相手に攻めきることが出来ず、されど引くことはできない消耗戦を強いられていた。

 

 そして1938年も終わりに差し掛かる頃になると、大陸沿岸都市部の基地や政府施設への空爆に訪れる航空機にまで信じられない物が混ざり始める。

 

『プロペラの無い高速機動戦闘機!?』

 

 烈風改という、恐るべき速度と大口径機関砲を兼ね備えた戦闘機に一方的な敗北を喫していた協商国連合空軍は、世界最速と見られる速度を誇るプロペラ機烈風改がまるで子供のようにさえ思えてしまう凄まじい速度──時速1000km以上は出ているかとみられる未知の新型戦闘機の出現に、最早自分達が対処できる範囲を超えてしまった事を思い知らされていた。

 

『なんだアレは!? プロペラも無くどうやって飛行しているんだッ!?」

 

『くそっ、ダメだっ……! 速さも旋回性能も攻撃力も、総て次元が違いすぎる……ッ!』

 

 香港、上海、青島。

 

 大陸沿岸部で繰り広げられた空中戦は得体の知れない怪物と戦っているような絶望感を中華帝国のパイロット達に与えていた。

 

 無論、これを映像で見せられた洛陽の宦官達も共に前線で戦う彼等の恐怖と混乱と動揺の物を味わわされていた。

 

『お、己ッ、古代の東洋鬼共めッ……! よもやあの様な物までもを開発していようとはッ!』

 

『くううッ! まだかッ! まだ外満州に中華の旗を立てることはッ……海南や台湾を攻め落とすことは出来ぬのか……ッ!』

 

『ふ、不可能ですッ、あの様な航空機や戦艦、空母……ッ、東北部方面で見られた戦車も我が方の戦車砲をはじき返す装甲を……ッ! 何もかもが規格外であり反撃に出られないだけでもまだ幸いな状況で……ッ!』

 

 

 

 戦線は膠着していた。

 

 

 

 攻勢一辺倒で被害ばかり拡大するも成果が出ない協商国。

 

 防戦のみで反攻作戦を採ろうとしない日本。

 

 どちらも痛みを増すばかりで役など無い。

 

 しかしそれでも彼等協商国が停戦講和を考えることなく徹底抗戦を叫んでいた理由。

 

 それは、長期戦へと持ち込むことで勝てるという算段を立てていたが故だ。

 

 なるほど、確かに日本の技術力は恐るべき物だ。

 

 プロペラの無い超高速戦闘機。

 

 先進的な砲と分厚い装甲を備えた巨躯を誇る戦車。

 

 全長300m以上の戦艦と空母。

 

 全ての兵器が協商国側の数段先を歩んでいる。

 

 “技術の日本”“古代文明継承国第2位の日本”“世界第2位の超大国”その名に相応しい恐るべき力だ。

 

 だが。

 

 だがそんな日本も四方を敵。或いは警戒すべき相手に囲まれた今の日本では十全なる力が発揮できない。全勢力を一点に振り向けることができない。ブリタニア・オセアニアの圧力により大陸への逆侵攻を行う余裕が無いのだ。

 

 言うなればこれは日本1国で全列強を相手取って戦争をしているに等しい状況であった。

 

 ブリタニアは唯それだけで絶望をもたらす圧倒的存在。

 

 オセアニアは彼の国1国となら日本優位である物の、決して生易しい相手でもない純然たるエデンバイタル文明継承国第3位の国。

 

 そしてそのどちらか一方が対日参戦に動けば戦局は一気に変わる。

 

 協商3国とブリタニア。或いは協商3国とオセアニア。この条件が整った瞬間、協商国側の勝利は疑うべくもない現実の物と成るだろう。

 

 その為のブリタニア貴族達の買収と引き込み。

 

 その為のオセアニアへの誘い。

 

 国交断絶下の情報封鎖が災いした予想を超える日本の先進兵器群による猛攻を受け良いようにやられる協商国が、それでも尚引くことなく戦い続けられるのは正にこの事に尽きた。

 

 彼の国々が日本側に立って参戦するなど其れこそ有り得ない。日本を攻略すれば技術はともかく、世界最大のサクラダイト鉱山である富士を山分けできるのだ。世界経済を動かす程のサクラダイトには奪えるチャンスが有るなら奪うに行くだけの、それだけの価値があった。

 

 事実オセアニアは東南アジアの国々を次々と落とし、準備と機会が揃えば差し手としてゲームに加わろうと確約してきた。

 

 日ブ関係が険悪化している今こそが千載一遇のチャンスであると日本侵攻に踏み切ったこの賭は間違いなく勝てる。

 

『堪え忍び犠牲を強いていけばいずれ突破口は開かれん!! 我ら新代の人間を下等種扱いして蔑む憎き古代の東洋鬼に対し今こそ復讐を遂げるのだっ!!』

 

 国民と軍を鼓舞する中華連邦大宦官とインド軍区行政官、そしてユーロピア国防四十人委員会。

 

 ブリタニアとは緊張関係にあり、オセアニアも目前まで迫っている。

 

 ここで持久戦へと持ち込み日本の出血を強いていけば姑息で強欲なオセアニアは必ずや日本に飛び掛かるだろう。

 

 反日気運の高まるブリタニアも参戦間違い無しという一報が入ってきている。

 

 30%の力しか振り向けられて来ないのならば、数に任せた互角の戦いに持ち込める。

 

 1で5を倒せる技術力が日本にあるのなら、此方はその1を10で仕留めればよい。

 

 兵隊など幾らでも補充可能。質は劣れど大量生産が出来る戦車・戦闘機で日本を消耗させろ。

 

 さすれば勝利への一歩を歩み出せる。

 

 持久戦となって得をするのは質と物量の両面が揃っている国。

 

 皮肉にも日本こそがその国であるというのに、この時ばかりは逆風が吹き付けていた。

 

 

 

 1939年。

 

 中頃になっても大陸への反攻作戦を実行に移せない大日本帝国は、協商国の極東海軍戦力こそ粗方叩き潰し空軍戦力も性能差に物を言わせて片っ端から撃墜してきたが、日本1国に対してのみ攻勢に出ている協商国は幾らでも戦闘機を補充し前線へと送り込んでくる。

 

 なにせ戦場は極東アジアのみなのだから遥か遠方のユーロピア本国は無傷のまま工場をフル稼働させての損失の埋め合わせが可能であった。

 

 無論、海路も空路も陸路も、日本側は可能な限りの補給路・輸送路の寸断・破壊を行って来た。

 

 長距離爆撃機富岳・連山を用いて中華奥地やインドの兵器工場や、危険を承知でサハから飛び立ちウラル工業地帯にまで脚を伸ばして爆撃し協商国側の補充を少しでも減らしていたが、されど決定打と成らない。

 

 本格的な反転攻勢に転じるには後背に控える継承2国の圧力があまりにも大きすぎるのだ。

 

 大陸への大反抗へ転じた隙を背後から突かれたら? 

 

 大陸とオセアニアとブリタニアの3正面に戦線を構えることになってしまったら? 

 

 日本を覆う暗雲は自らの油断が招いた物。

 

 世界と歴史の趨勢を識る者達が心の奥で抱いていたブリタニアへの恐れ。

 

 それが却って身近にある脅威を見えなくしてしまうという皮肉な結果を生み出した。

 

 この世界で油断してはならない相手。恐れを抱き全力で対峙しなければならない相手。それは、この世界に存在する列強全てが当て嵌まるのだ。

 

 識る者達は超大国ブリタニアとエデンバイタル継承第3位国オセアニアの巨大さ故に、本来己が識る国家基準に当て嵌めればこの世界の他の列強全てが例外なく“超大国”であるという、心に留め置かなくてはならなかった事実を見過ごしてしまった。

 

 中華連邦も、ユーロピア共和国連合も、共にアメリカ級の国力を持つ“超大国”であるのだと自らに言い聞かせておかなければならなかった。

 

 しかし、日中日欧の両戦争で一方的とも言える多大な戦果を挙げてしまったが為に、エデンバイタル継承国というこの世界の本当の超大国であるが故に、自らの目が曇り、いつしか生じていた油断に足下をすくわれる事態へ追い込まれてしまったのだ。

 

『このままでは皇国はッ』

 

 時の識る者達の中心者であった者は自分達の油断が招いた事態を前にして国内に蔓延る対ブリタニア強硬論を抑えきれなかった失策を嘆いた。

 

 彼の国と協調が取れたままであったならば、友好関係であったままならば、オセアニアを抑えて貰い自らは協商国へと全国力を振り向けて撃退することが可能となっていた筈。

 

 少なくとも3正面に備えて戦力を配置し、全力を出せないという局面へ陥る事態だけは避けられていただろう。

 

 

 

 ***

 

 

 

「当時の国民も政府も日本の敗北を意識していたことでしょうな。迫り来る協商国の数を打ち破れるだけの圧倒的な技術力がありながら思うように動けない屈辱的状況。背後に控える継承2国の日本侵攻が現実の物と成れば帝国に待っているのは滅亡」

 

 第一次世界大戦を振り返っていた澤崎は暗黒の未来が訪れた可能性があった事を示唆する。

 

 そう、間違いなくあったのだ。オセアニアかブリタニア。或いはその両国共が対日参戦をしていれば。

 

「ですが、そうはなりませんでした」

 

 それは日本が最も恐れ、友好関係構築に精を出してはその動向を常に監視してきた国。

 

 友好を築きながらも、一方では打ち破る方策を考えてきた世界最大のジョーカー。

 

 神聖ブリタニア帝国が動かない方針を明言したからである。

 

 

 

 ***

 

 

 

 ユーロピアからの誘い。

 

 協商国の日本侵攻。

 

 そして伝えられる日本の苦戦。

 

『これに乗るべきではないのか?』

 

 いま協商国側と歩調を合わせて太平洋側から攻め入れば日本は確実に負ける。

 

 様子を伺うだけで居たオセアニアも機を見て日本侵攻に加わるかも知れない。

 

 “バスに乗り遅れるな”

 

 そんな積極的日本征伐論が叫ばれ始めていた中、しかし終ぞブリタニアが動くことはなかったのだ。

 

 ブリタニアが動かなかった理由。

 

 それは良くも悪くも絶対権力者であり、帝国の頂点に立つ皇帝の鶴の一声に、対日強硬派も、そうでない者達も、共に冷や水を浴びせられたが故であった。

 

『うぬ等は建国より今日まで日本より受けてきた返しきれぬ程の数々の恩を忘れたのか』

 

 国が割れそうな程に喧喧とした御前会議に於ける一括は、嘗てブリタニアが欧州を追われたときに行われた日本による脱出劇の援助や、新大陸が二つに引き裂かれた北南戦争の折に示された友情の話。

 

 新大陸遷都前、皇歴1700年代ブリテン島に居を構えていたブリタニア皇家と既に友好関係にあった日本は、大陸遷都後に起きた欧州貴族の反乱である北南戦争でブリタニア側を徹底支持し、多くの義勇兵を大陸へと派遣。皇室や軍の援助に乗り出していた。

 

 先を識る者達が未来への先行投資として行っていたテューダー王朝とブリタニア公への支援という、将来起こりうる日ブ戦争回避に向けた遠大なる計画の一環として変わらぬ友好の為にと遠きブリタニアの地にて散っていった日本の侍達の活躍は、今尚英雄譚として語り継がれている。

 

 それは長い時を掛けた日本の国益を見据えての計画。

 

 単なる友好の為ではなく計算ありきの支援であったが、援助を受け続けたブリタニアから観れば国益を無視して助けに来てくれたように写るものだったのだ。

 

『彼等は一体誰のために命を投げ出した? 他ならぬ我らの祖先の為であろう』

 

 日本の若者が、友好国とはいえ他国の皇族や貴族を護って命を落とした。

 

 日本の軍人が、ブリタニアの民を銃弾から庇った。

 

 皇族から平民まで、多くの民が日本人に命を救われたのだ。

 

 それを仇で返そうというのは北南戦争時の欧州貴族と同じではないかと叫び、皇帝は国内に蔓延る対日強硬論を諫める。

 

『今この時は関係が冷え込んでいようとも必ずや修復されるときが来る。日本との関係悪化は言うなれば痴話喧嘩のような物よ……。考えてもみよ。どれほど仲の良き夫婦であろうとも長く連れ添っている間に幾度となく仲違いを起こすであろう? しかしそれも一時のことに過ぎぬ。我らは長き友情に裏打ちされた信頼で硬く結ばれておるのだ。侍達の助けを受けながら欧州脱出を成功させたリカルド大帝の言葉を今一度思い起こせ。ただ一人信じてくれる者あらばその者を信じよ。その者を信じられる己を信じよ。人を信じられぬまやかしの己を見るな。欧州脱出、北南戦争、クレア陛下への多大なる援助、我々は恩を受けっぱなしなのだ。他国である我が国のために幾度となく己が血を流してくれた日本人をうぬ等は信用に値せぬと言うか? いつの日か世界に覇を唱える欲望に塗れた唾棄すべき存在であると貶めようというのか? 遙かな昔。ブリタニアと日本がエデンバイタルという国であった頃、我らは本当に一つの存在だったのだ。時の流れ、運命の悪戯によって高天原とアヴァロンに分裂してしまったが、分裂を引き起こしたレムリアとは違い我らは真なる家族であった筈だ。遡れば我らブリタニア人と彼等日本人には同じ血が流れておる同じ民族……創世国エデンバイタルの民。その血を分けた兄弟をうぬ等は信用できぬのか?』

 

 静かに語りかける皇帝に対し、誰もが自分の意見を述べることなく静まりかえった御前会議の席。

 

『かの国より受けし恩。示された友情と信頼の証し。それを返そうともせず、応えようともせず、ただ踏みにじるような恥知らずな真似……』

 

 

 

 

 

 ──余の目が黒い内は断じて許さぬと心得よ!! 

 

 

 

 

 

 無論、ブリタニア皇帝はただの親切心や義理のみで関係が冷え込んでいた日本を支持するような発言をしたわけではない。

 

『国内の膿を炙り出す』

 

 これを目的としていたのだ。

 

 新大陸遷都より130年が経過した当時、ブリタニア国内にも至る場所に膿が蓄積していた。

 

 平民を奴隷と見る者。

 

 恩を仇で返そうという者。

 

 欲望のみに生きる腐った輩。

 

 オセアニアと内通し国を売り渡そうとしていた売国奴。

 

 皇帝はこの大戦を利用してこれら奸賊の一掃を考え、対日参戦の気運が絶頂になる時を待っていたのだ。

 

 積極参戦派の顔触れには日本から強奪できるサクラダイト各種の利益によって肥え太ろうと考える輩が多く、オセアニアの内通者の動きも活発化する為実に分かりやすい。

 

 特に自身と接する機会の多い者などは“直接心を読む”ことで、日頃隠していた本音を知る事が出来、次々と選別することに成功した。

 

 腐敗し行くブリタニアの現状を快く思っていなかったノブレス・オブリージュの精神を地で行く彼は、これら炙り出しに成功した者達を皇族・貴族問わず容赦なく地位を剥奪し追放していった。

 

 中には粛清という形でこの世を去った者さえも居る。

 

 この一見すると暴挙として映る彼の豹変に、しかし誰もが意見をすることは出来ない。

 

 ブリタニアという国で皇帝という存在は正しく唯一神。

 

 いや神をも超える存在なのだから。

 

 

 

 ***

 

 

 

「いやいや流石はブリタニア皇帝。単純に非戦を叫ぶではなく散々焦らした挙げ句に国内浄化作戦に繋げようとは。とんだ狸ですよ」

 

「ですがそのお陰で反撃に出られなかった我が国にとってはいい迷惑です。彼の皇帝陛下が早々に対日非戦を明言していれば流れずに済んだ血もあったでしょうに……」

 

「まあそうですね。しかしその分の穴埋めは後々されていますし、貿易摩擦を機に日ブ関係が険悪化していたのも確かでしたから仕方が無いとも言えるでしょう」

 

 国と国の関係だ。完全なる仲良しこよしという訳にも行かないだろう。

 

 元は同じ国を出発点とする兄弟国であり、将来的には連合国家として一つに戻ろうと模索する動きも現在では出ているが、それはまだ先の話であったし当時に至ってはそんな機運など欠片もなかった。

 

「彼の皇帝が“心眼のワイヤード・ギアス”のユーザーであったことも関係しているでしょう。側近の中には皇帝がギアスユーザーであると識る者も居りましたし、その本心を隠す術を持っていた輩も当然居る筈ですから」

 

「本質を見極め心の声を聴くことを可能とする超能力。……辻閣下の側近となりこの種の超技術の存在を明かされるまでギアス能力なる超常の力がこの世に存在しているとは夢にも思いませんでした……」

 

「エデンバイタルの、超古代技術の一部は特一級の国家機密ですからね。少し前までの貴方はまだそれを知る立場にはなかった……ただそれだけです」

 

 

 

 ***

 

 

 

 かくして皇帝の激と始められた浄化のための粛清、絶対命令により、非戦派や融和派の立場が盤石な物と成るのにそう時間が掛かることはなく、対日戦を煽る強硬派は急速に力を失い瓦解していった。

 

 ブリタニアが対日非戦の姿勢を明確に打ち出したことから大戦の趨勢にも大きな変化が現れる。

 

 駐日ブリタニア大使ジョセフ・クラーク・グルーを通じブリタニアの方針を伝えられた日本は、サクラダイトを巡る諸問題の一時棚上げを提案。

 

 両国関係の正常化に向け努力することを確認し後顧の憂いを断ち切ると、動けぬ処へ不意打ちを行った協商側への反転攻勢を開始した。

 

 この大戦において終始中立を貫いたブリタニアであったが、何もしない事その物が日本にとって大きな援助となったのは言うまでもない。

 

 彼の国が動かず太平洋に目を光らせていたお陰で油断ならない南の大国によるこれ以上の北進が防がれ、日本はその世界第2位と謳われる国力と第1位の技術力の総てを協商3国へ振り向けるという反転攻勢に転じることが可能となったのだから。

 

 国力が十全に発揮できるようになった日本の協商国に対する怒りは凄まじく、多大なる犠牲と戦費を費やしながらも停戦講和を望むのではなく、降伏による講和を引き出すまで止まることはなかった。

 

 最終的にウラル山脈の東側まで攻め上った帝国欧州派遣軍は、ユーロピア・ロシア州エカテリンブルク占領にまで運び、欧州全域を射程圏に収めた。

 

 富岳・連山といった長距離爆撃機述べ47055機によるウラル工業地帯を始めとしたE.U.主要国軍事拠点への2年間に渡って行われた爆撃で、ロシア・ドイツ・フランス等々ユーロピア構成列強国の生産能力・戦争遂行能力を着実に削っていき、降伏・講和への道筋を開いていく。

 

 他方、中華戦線においては戦争に消極的だった加盟国──モンゴル・インドシナ諸国・中央アジア諸国・ペルシャなどへの攻撃は控え、中華帝国とインドにのみ的を絞っての攻勢に終始。

 

 一時首都洛陽を陥落させ、中華帝国の7割を占領下に置き、インドの主要軍事施設を壊滅状態に追い込んでいる。

 

 最後まで民と共にあろうとした時の天子は、我先にと首都脱出を図りインドへ逃亡した大宦官とは異なり、中華連邦天子として朱禁城にて日本軍を迎え入れるという堂々たる姿勢で臨み、大日本帝国中華派遣軍司令岡村寧次や、洛陽攻略に中っていた穰司・パットン中将の称賛を受けたという。

 

(大宦官の傀儡であった天子は己が力量不足によって招いた戦争とこの結果を粛々と受け入れ裁きを待ったが、終戦後この戦争の指導者は中華連邦においては大宦官とインド代表。ユーロピアにおいては国防四十人委員会に責があるとして戦争責任を追及されることはなく。徹底抗戦を叫びながらも敗色濃厚となるや天子を残して洛陽からの脱出を計った大宦官達は日本侵攻に消極的だったインド陸軍司令官スバス・チャンドラ・ボースのクーデターによりインド代表と共に拘束され、中華帝国へ送還されている)

 

 

 

 ***

 

 

 

「1937年2月27日より始まった戦争その物は実に7年半もの長期に及び多大なる犠牲を払うことになってしまいましたが、結果として無条件ではありませんが協商国を降伏へ追い込む事ができ、戦勝国と成った我が国は対外戦争において国始まって以来の大戦果を挙げた」

 

 終戦後。東京講和条約によって敗戦国と成った欧州より割譲した中央シベリアの大半を衛星エリアへ。

 

 中華より割譲させた山東半島、舟山群島もそれぞれ本土へ、満州・福建・広東を衛星エリアへ。

 

 そして高麗帝国は国家解体の後、済州島のみ本土へ、残りの半島全域を衛星エリアとしてそれぞれ日本へ併合。

 

 大戦中日比併合条約によって日本に併合されたフィリピンに対しては戦争が終結次第の再独立を約束していた。

 

 が、しかし。彼等は自らその約束をなかったことにしてしまう。

 

「終戦間際になっての正義教の参戦にはなんとも呆れさせられましたね」

 

「あそこはいつもですよ。隙を見せると動いては“絶対正義”の名の下に掻っ攫っていく。正義の味方というよりかは単なる悪辣な海賊です。ついこの間も継承国サミットの場に於いてナチスユーロピアと中華連邦を名指しで“悪の枢軸”と呼んでいたでしょう?」

 

 言うまでもなくオセアニアのことだ。

 

 彼の国の存在がフィリピン国民の独立心を奪い去ってしまったのである。

 

 

 

 ブリタニアの方針が明らかとなり日本の力が協商国へと振り向けられることが決定打と成った瞬間より自らも方針を変えた南の超大国オセアニア。

 

 彼の国は終戦間際になって中華連邦との不可侵条約と密約を一方的に破棄すると中華連邦構成国マレー半島へ雪崩れ込み、シンガポール、マレーシア領マレー半島、タイへと順に軍を進め制圧。瞬く間に自国勢力圏として組み込んでしまった。

 

 日本との長期間にわたる戦争で疲弊しきっていた中華やインドに此を跳ね返す力など残って居らず、終戦後の東京講和条約によって日本へ譲渡した地域に加え、中華連邦はこれらの地域までを失陥。

 

 マレー半島を奪われ北カリマンタンのみとなってしまったマレーシアはその後中華連邦を離脱。生き残りを図ってその他のインドシナ諸国と共に日本勢力圏への参画を表明している。

 

「高麗の動きも素早かったですね」

 

「素早いと言いますか、よくもまあ彼処まで恥知らずな事が出来る物です」

 

 これを受け中華に逃れていた高麗帝国政府は日本へ侵攻した手前日本に対して降伏すれば即決裁判にて死刑判決を受けかねないとし、中華・ユーロピアを見限りオセアニアへの逃亡と帰順という条約破り以上の恥さらしな行動に出た。

 

 何かに利用できるかも知れないと考え亡命を受け入れたオセアニアで。

 

『中華とE.U.に命令されて強制的に日本との戦争を戦わされた挙げ句に国土まで奪われた被害者』

 

 という主張を後々展開。

 

 高麗亡命政府──大高麗民主国を名乗り生き残りに成功した物の、世界の信用を無くしている。

 

(オセアニアは行動だけを見るとまるでソ連なのですが正義正義と叫んでいるところはアメリカですね。アメリカ以上に自己本位を発露させた絶対正義を唱える原始民主制国家ですが)

 

 “日本にとって敵対国である協商国を攻めた。言わば側面支援してやったのだから文句は言わせない”

 

 オセアニアの行動は此処とは違う世界でのソビエト連邦という国が見せた満州・樺太・千島侵攻と同じだ。

 

『世界に無用な混乱を引き起こした“悪の帝国中華連邦”への正義の懲罰である!』

 

 自ら中大不可侵条約を破り捨てながら“絶対正義”の一言で纏めてしまうという、このオセアニアの脅威を目の当たりにしたフィリピン内部にて、「日本より分離するのは危険だ」という声が大きくなるのも無理からぬこと。

 

 残るか独立かの国民投票が実施された結果、フィリピン国民は己が意思での日本残留を選択した訳である。

 

 そこには大戦中に目にしたジェット戦闘機疾風・橘花や、超大型の航空母艦大鳳、戦艦大和。

 

 超重爆撃機富岳に新世代主力戦車やミサイル兵器といった、数々の新兵器より受けた影響もあったのだろう。

 

 日本に留まれば大きく発展できるという打算は列強ひしめく世界で生き残りを模索する彼等なりの答えなのだ。

 

 なにせインドネシアはオセアニアの侵攻によって小スンダ列島とスマトラ・ジャワを奪われ大幅に国土が縮小。

 

 インドネシアに逃れて亡命政権を成立させていたティモールは国土その物を失陥してしまったのだから。

 

 止めに終戦間際のオセアニアが見せた中華連邦加盟国への電撃侵攻と、後の第二次世界大戦時の暗躍。

 

 第二次南太平洋戦争、続くインドシナ戦争に、フィリピン住民は自らの選択が間違いではなかったと語っていたとか。

 

「自業自得とは言え欧州も正義教に引っ掻き回されましたからね」

 

「中華連邦が宦官を処刑したのとは違い、欧州は国防四十人委員会が生き残ってしまった影響もありますから何とも言い難いですが、二度目の大戦の引き金と成ったのは擁護できません」

 

 ユーロピアでは主要加盟国の工業地帯や軍事関連施設、戦略目標の高い一部の都市が富岳の猛爆で大きな被害を受け、失地回復とサクラダイト権益確保の為として対日戦争に踏み切った国防四十人委員会の権威が大きく失墜。

 

 しかし当時は事なかれ主義と無関心主義が蔓延っていたうえ、敗戦のショックから何れの加盟国の国民も気力を失っていた為に彼等の命脈が保たれてしまったことが災いした。

 

 ある程度余力を残していたが故の悲劇か? 1970年初頭の欧州内戦から始まる第二次世界大戦の火種を作り出してしまい、第二次大戦でユーロピアを再統一したドイツ・イタリアを中心とする国家社会主義ユーロピア労働者党政権によって彼等が本土を追われるまでの間、欧州は貧困国への転落という暗黒の時代を迎えている。

 

「第二次大戦はそんな欧州国民にとって転機となりましたが、一方で正義の国はまたも勢力圏拡大に利用した」

 

「ヒトラー総統もお怒りだったでしょうね。苦労して第二次欧州革命を成し遂げたかと思えば中央アフリカ・カメルーン以南アフリカとロシアを四十人委員会に取られ、ジブチ・エチオピア・エリトリアを東アフリカに火事場泥棒されたのですから」

 

 欧州で戦争が勃発したとき。同時期欧州の混乱を突いた南側原始民主制圏の1国である合衆国東アフリカがジブチ、エチオピア、エリトリアへ軍を進め、「欧州の混乱が自国へ波及しないため」と銘打ち保障占領を行った後、自国寄りの傀儡政権を立てて独立させていた。

 

「中東もです」

 

 東アフリカは中東においても南側原始民主制国家のイエメンと共にオマーン侵攻を図り、欧州の混乱と中華の弱体化を好機として中東制覇へ動き出した共産イラクを宗主国オセアニアと共に支援。中東広域を共産化させてしまう。

 

『ヨルダン人民共和国』『シリア民主主義人民共和国』『サウジアラビア社会主義共和国連邦=サウジ・バーレーン・カタール・アラブ首長国連邦』を成立させて一大共産圏とし、南側勢力圏への引き込みに成功している。

 

 また、国防四十人委員会率いるユーロピア共和国連合の支援まで行い──。

 

『日本を相手に無謀な戦争を繰り返して国を荒廃させ分裂までさせた挙げ句、責任も取らずに自分達だけ逃げ出した害虫共を援助する国が正義を語ろうとは片腹痛いわッッ!』

 

 と、ユーロピア国家社会主義共和国連合初代総統アドルフ・ヒトラーの就任式の演説にて名指しで糾弾されている。

 

 欧州内戦から1980年代までの中東、アフリカ、欧州、ロシアで勃発した一連の戦争──第二次世界大戦。火種を残したまま各地で停戦となったこの戦争では、世界の国々から欧州正統政府として認められたユーロピア国家社会主義共和国連合と、国土の不法占拠を続ける政治勢力『ユーロピア共和国連合』の2つに欧州が分裂してしまった。

 

(尚、欧州が2つに分れてしまったことに怒りを隠せないナチスユーロピア総統アドルフ・ヒトラーが、悪しき国防四十人委員会を抹殺し旧E.U.圏の再統一を目指すという旨の演説を行っている)

 

「腐れた敗残者を今尚擁護している正義の味方アダムスはその名に恥じぬ冒険者ですな。私なら不良物件なんて態々手出ししませんよ」

 

 ロジャー・アダムス。現オセアニア大統領にして自称絶対正義の体現者。

 

 しかしその実、領土欲の塊で力の信奉者でしかない独裁者であった。

 

「古代人種以外を例外なく下等種族としているあのアダムスのことですから本音は四十人委員会などどうでもいいのでしょう。南アフリカ遺跡を確保している手前“飼ってやっている”とでも考えている筈です。古代技術の獲得には遺跡の解析が欠かせませんし。まああの国もこれまでに5つ手に入れましたので当分大人しくなると思いますけどね」

 

 第一次大戦はカリマンタン遺跡とビルマ遺跡獲得への布石。

 

 第二次大戦はサウジ遺跡の確保と南アフリカ遺跡の確保の為。

 

 第二次南太平洋戦争でカリマンタン遺跡の刈り取りを目指すも日本の介入で失敗。

 

 インドシナ戦争でビルマを占領状態に置きビルマ遺跡を確保。

 

 現在オセアニアはマダガスカル、ニュージーランド、サウジ、ビルマ、南アフリカの計5つの遺跡を確保していた。

 

「領土より勢力圏より遺跡ですか? ビルマを強奪された中華と独立を奪われたビルマが少しばかり哀れですな」

 

「エデンバイタルの遺跡にはそれだけの価値があるということです。もちろん勢力圏の拡大も考えて手を広げ続けたのでしょうが」

 

 遺跡にはその価値がある。

 

 周辺にサクラダイト鉱山があるだけでなく古代技術のサルベージに必要不可欠なのだ。

 

 ワイヤードギアス、ギアス伝導回路、マッスルフレーミングシステム。

 

 全て遺跡の解析によって手に入った技術ばかり。

 

(実の処、もっと厄介な使い方もできるので相当危険なんですよ遺跡は。まあ中心点となる大出力の遺跡を含めた最低8つの連結起動を必要としますが)

 

 発動されたら碌な事にはならない。

 

 もしも6つ目を確保しようと動くときは、今度こそ二度目と成る対オセアニア全面戦争を覚悟しなければならず、頭の痛い事この上ない事であった。

 

(フレイヤ実験を成功させ保有したあの国相手に二度目の全面戦争は正直願い下げなのですがね)

 

 皇歴2002年と2004年、インド洋に於いてそれぞれ三度のフレイヤ実験を行い第三のフレイヤ保有国となったオセアニアとの戦争は極力避けたい。

 

 無いとは思うも遺跡獲得阻止の戦争と成ったときに苦し紛れに使わないとは言い切れないのだから。

 

(まさかフレイヤの独自開発までやらかしてくれるとは想定外でした。流石はエデンバイタル文明継承国なだけあって高い技術力をお持ちですね)

 

 日本は1940年代後半。ブリタニアは1950年代にはフレイヤ実験を成功させフレイヤ保有国となっていたが、とにかく基礎理論からして異なるこの世界のフレイヤ含む原子力関連技術を開発するのは容易なことではなく、現在フレイヤを独力で獲得したのは継承3国と2014年3月にサハラ砂漠にてフレイヤ実験を行い成功させたナチスユーロピアの4国のみに留まっていた。

 

 ナチスユーロピアがフレイヤ開発を成功させ獲得し得たのは、基礎理論が異なるとは言え日本と同じく原子力関連技術に精通した人間が居たからである。そう、かつて“別の世界で”成功させた彼等ならば時を掛ければ或いはという話しだ。

 

(本当なら天才ニーナ・アインシュタインが出て来るまでフレイヤ開発は極めて難しいのですが、よくもここまで独力での開発を可能とする勢力があったものです)

 

 別の世界線においてはあのブリタニアですらフレイヤの生みの親である天才少女ニーナ・アインシュタインの出現まで基礎研究の域を出ていなかったのだ。

 

 通常の原子力関連の知識を用いた技術ではどうなっているのか不明なるも核分裂を起こさないのがその原因だが、そんな複雑怪奇な代物ながら日本含めて4つの国が独自開発を成し遂げてしまった。

 

 日ブの原子力技術先進国においては既にフレイヤ炉搭載の原子力空母量産にまで進んでいるのだから技術の進歩状況が異常であるとしかいえない。

 

(基礎技術力が高いナナナ的な過去の歴史も関係しているのでしょうが、しかしナチスユーロピアまで追い付いてきたのは意外でした。まあ伍長閣下のプライドもあったのでしょうね。エデンバイタル継承国家のみに大きな顔をさせておくことだけは我慢ならないという対抗心から何が何でもと)

 

 ナチスユーロピアの件は別として、基礎技術力が別格に高いこの世界。技術を教えれば中華連邦は疎かイラクや東アフリカ等の地域大国でも現時点で作れる可能性はある。

 

 無論フレイヤ技術の拡散など許すつもりはない日本は、関連技術の管理には蟻一匹通さぬ厳重な体制を敷いていた。

 

 これについては同兵器の恐ろしさを知っているブリタニアやナチスユーロピアも同様だ。

 

(オセアニアが馬鹿な気を起こさないことを願いますよ)

 

 リミッターを外したフレイヤは日本が持つ最新式の弾頭で半径300km直系600kmの空間を球状に消滅させるだけの絶大なエネルギーを持っている。

 

 こんなものを撃ち合えば勝ちも負けもなく国ごと陸地が消滅し、世界が滅びてしまうだけだ。

 

 もしも民主ユーロピアに核技術の供与などを行えばナチスユーロに対し行使しかねない。

 

 ナチスユーロなら“あのヒトラー達”が居る限りは不用意に使ったりしないだろうが国防四十人委員会だけは何とも言えないのだ。

 

(フレイヤの撃ち合いで人類滅亡とか、映画や小説の中だけにしてもらいたいものです)

 

 

 

 *

 

 

 

「話が脱線してしまいましたが、よくもまあここまで日本の領域を広げに広げてくれた物ですよ」

 

 北は中央シベリアから南は史実フランス領ポリネシアまで。

 

「最後に辻閣下も携わられた第二次南太平洋戦争でまた拡大でしたからね」

 

 そう第二次南太平洋戦争で獲得した史実フランス領ポリネシアまでだ。

 

 第二次南太平洋戦争。

 

 1995年3月8日~98年7月10日まで行われた日本とオセアニアの戦争。

 

 合衆国オセアニアの傀儡国家──ニューギニア民主共和国=南ニューギニアの北進と、インドネシア・カリマンタン島に眠る古代遺跡の奪取を目論むオセアニアの野心から始まった同戦争は、当初継承国オセアニア対小国インドネシア・パプアニューギニアという構図であった。

 

 列強3位にしてエデンバイタル継承3国が一角、超大国オセアニアの侵攻を防げる中小国は存在しない。

 

 列強と渡り合えるのは列強だけであったが、継承国オセアニアと1国で真正面から相対可能なのは列強上位2国にして同じ継承国1位と2位の、共に超大国の名を冠する国、大日本帝国及び神聖ブリタニア帝国のみ。

 

 そのオセアニアと相対可能な1国である当の日本が96年4月より参戦したことで、第二次南太平洋戦争は日本対オセアニアという継承国同士の大規模戦争へとその様相を変えていく。

 

「あれも計算が狂ったのです」

 

 嶋田内閣の下で行われた彼の戦争では、最終的に勝利を収めた日本が一時オセアニアの占領下に置かれ、併合宣言までされたカリマンタン島のインドネシア領とスラウェシ島および周辺の島嶼地域。

 

 パプアニューギニア(ニューギニア島北部)更には旧大洋州連合域の全域を解放。

 

 第一次大戦後に行われた初の対外戦争における大きな戦果に繋がったのだが、ここでも予定になかったエリアを1つ併合する形と成ってしまったのだ。

 

「大洋州の併合は当初の予定に無かった物なので」

 

 第一次大戦以後の領土のみとは言え主権を回復した北インドネシアとパプアニューギニアは再独立を果たし、個別で日本との間に安全保障条約を結び事は落ち着いたかに見えた。

 

 だが、旧大洋州連合の大半の地域が独立するのではなく日本に組み込まれることを望んだのである。

 

 かつては独立国であったり他国領であった地域。独立自主権1国2制度の体制下で発展を遂げ大国の脅威から護られていた日本の各衛星エリア。

 

 大洋州の大半の地域はその状況を鑑み、独立を維持してオセアニアの脅威と相対するよりはと、かつてのフィリピン国民と同様のことを考えたのだ。

 

 そして過去のエリア併合時に行われた慣例通り住民投票が実施された結果。フィジー、ソロモン諸島、バヌアツ、の3国を除く国々が『エリア陸・大洋州』という形で日本の独立地方、衛星エリアとして再出発を果たしていた。

 

「本当ならあの地域は大洋州連合として再独立させ、パプアニューギニア、北インドネシアと共に衛星国という形でオセアニアへの防波堤としたかったのですが」

 

「思惑を外されたと?」

 

「外れも外れです。旧大洋州の大半は日本領に。フィジー、ソロモン諸島、バヌアツの3国は永世中立国『オーブ首長国連邦』となり此方の影響から外れる選択を取られてしまったのですから」

 

 オーブという新興国として独立を果たした3国は大国とは距離を置く永世中立を是としていた旧大洋州の理念を引き継ぐと第二次大戦後に定期的に開催されるようになった『主要国首脳会議』の場で宣言し、独立回復の功労者である日本の面目を潰している。

 

(主要国サミットは大日本帝国・神聖ブリタニア帝国・合衆国オセアニア・中華連邦・ユーロピア国家社会主義共和国連合がG5として主導する形と成っている)

 

「此方寄りの緩衝国として最低限の役割さえ果たしてくれれば別に文句はありませんが、武器を作らず・持たず・持ち込ませずをやられてしまいましたのでもしもの時はあっという間に大洋州へオセアニアの出島を作られてしまいかねません。オーブ側は永世中立・平和主義を貫くことが戦火にさらされてきた者としての未来へのメッセージであると仰ってますがそんな弱小国の甘い戯れ言は私……ああいや、この世界の常識から言って通用しませんし日本としても迷惑ですから」

 

「……なにかと上手く行かないものですな」

 

「まあとにもかくにも国土拡大など求めていなかった我が国が、はからずも南北ブリタニア大陸を平定した同盟国の、二度に渡って行われた拡張戦争の時のような大拡張を成し遂げてしまいました。日中日欧戦争後から続くサクラダイトの取引停止と国交断絶による経済封鎖措置への返礼として、先進技術及び地下資源を武力によって日本から奪おうと画策した欧州の腐れ委員会と中華の強盗宦官、インドの俗物行政官。彼等の示した強欲が回り回ってこの結果をもたらしたとは本当に皮肉な物ですね」

 

 衆愚政治を極めた腐敗の温床四十人委員会と贅を尽くすことに命をかける強欲な大宦官。宦官と結託して中華連邦を意のままに操っていたインドの行政官。国民をないがしろに己の利潤のみを追求し国を私物化する彼等の実にらしい過ちであった。

 

 過去の戦争から何も学ばず豊かな日本からただ奪おうとして、逆に国を追われたり領土と資源を奪われ続けるという自業自得で皮肉な結果に成ろうとは、予期せぬ事態であったに違いない。

 

(高天原派が中華連邦人やユーロピア人を“下等な新世代人種”と見下すわけです)

 

 後に始まる南北冷戦の切っ掛けとなったのもまた両国人が原因である為に尚更侮蔑意識は強くなっていた。

 

(幾度かにわたるアフリカ紛争、第二次南太平洋戦争、インドシナ戦争、中大紛争、イラク・中華ペルシャ間の中東紛争)

 

 1980年代より始まった一連の南北冷戦における武力衝突は元を正せば欧中の失策で勢力圏を伸ばしたオセアニアの野心が絡んでいる。

 

(直接的な武力侵攻を受けた上に何度も巻き込まれる側としては腸が煮えくりかえる思いですよまったく)

 

 

 

 *

 

 

 

 おまけ

 

 

 

「ところで澤崎さん。こちらの戦争についてはどうなってます?」

 

 溜息を付きながらすっと差し出したのは一枚の写真。

 

 そこには仲良く歩く初老の男と金髪の女性と桃色髪の女性が映し出されていた。

 

「あ、はあ……そちら、ですか……」

 

 澤崎は汗を垂らしながら写真に写る三人の人物を目にし、こっちの戦争も日本にとって重大事であるのを忘れていたと反省した。

 

 なにせこの金色の騎士と桃姫の戦争。推移によっては日本経済や商取引への影響がかなり大きく放置できない。

 

 実際にこの戦争では桃姫側の背後に日本の皇家が付き、更にはブリタニア皇家の7割が付いており。

 

 一方の騎士側勢力として日本の財界やブリタニア西海岸を始めとする貴族の連合と日ブ両国の軍関係者が付いている。

 

 おまけにアナゴというハンドルネームを持つ人物が騎士側の最大支援者となっていて日ブ間の有力者勢が真っ二つに割れているのだ。

 

 取り扱いを間違えれば大火傷必死な日ブ間の懸念事項の一つであった。

 

「率直に申し上げますが、一つ屋根の下で生活を共にしていらっしゃいます西海岸の騎士の方がリードしているかと思われる報告が多々寄せられています」

 

「騎士が一歩リードですか」

 

 騎士がリードしているのはまあ予想が付いていた。

 

 寝起きを共にし昼間を除けば一緒に過ごす機会が多いのだから当たり前だ。

 

「しかしそうなると我が国とは歴史的に繋がりの深いブリタニア皇家が黙ってませんし、かといって騎士を蔑ろにしては西海岸と揉める原因にもなりますし」

 

「ですがそこは彼の国のアナゴ氏が上手く調整してくださるのでは?」

 

「アナゴ氏では無理なんですよ。あの人はただ桃姫を嫁にやりたくないだけの個人的な意見で突っ走るのであまり当てに出来ません」

 

 頼りがいのありそうなアナゴ氏だが生憎合理性も何もなく感情だけで動く為に双方の支持勢力から相手にされてない。

 

「感情的と言えば日に日に悪化してますよ騎士も桃姫も」

 

「伺っております、先日桃姫に対し不敬な言葉を発した騎士が……その、ソフトクリームを桃姫の顔に……」

 

「子供の喧嘩ですね」

 

 18の桃姫に20の騎士。

 

 分別の付く年齢ながらこと初老の紳士を巡る戦争においては子供みたいな事をしている。

 

 未確認ながら掴み合いをしたとか、酔った勢いで騎士が紳士を押し倒して致してしまったとか、ショックを受けた桃姫も紳士に対し実力行使に出て朝まで……といった過激な噂まで出ていた。

 

「閣下……それはその、事実なのでしょうか……?」

 

 本当ならば重大事であると気が気ではない澤崎に対し辻が言い放ったのは非情な宣告であった。

 

「事実です。なにせ紳士と騎士を前に話しを振ってみたら取り乱してましたので」

 

「な、なんと……」

 

 澤崎は絶句するがまあわかる。

 

 二人とも、桃姫まで含めた三人共に国家の要人である。

 

 軽率すぎるだろうと突っ込みたくなったのだ。

 

 それと共に、どこからそんな話が出たのか? 

 

 知ったら知ったで胸に秘めておく事柄であると考えなかったのかと憤慨する。

 

「そ、そんな噂はどこから」

 

 なので聞いてみたわけだが。

 

「根も葉もない噂ですよ」

 

 辻の答えは何でもない唯のデマであるとの話しであった。

 

 ならばどうして事実なのかとなるも。事実は事実であるから仕方が無いわけだ。

 

「ですがその根も葉もない噂をぶつけてみたんです。そうしたらまさかの反応があったので。さすがに事が事でしたのでお二人には詳しく事情を伺ったのですが本当に酒の席の間違いであったらしく、紳士の側ではなく酒に弱い騎士の側が日頃からの桃姫と紳士の仲良い姿に溜まっていたストレスが爆発して──まあそういうことです。桃姫の件も泣き付かれてどうして騎士だけがなんて喚かれてまあ、抵抗できなかったと。抵抗も何もお二人ともそれなりの身体能力もありますからどちらにせよ紳士では抗えなかったのかも知れませんね」

 

 

 

 *

 

 

 

「紳士閣下の場合、同じ晩婚の歳の差婚でも山本閣下や南雲閣下の様にスムーズに事が運びませんな。揉めたときの影響の大きさもあって余計に」

 

「山本さんや南雲さんは相手が一人だったというのもあるでしょう」

 

 2019年は結婚の年と言えた。

 

 それは夢幻会顧問山本五十六と神聖ブリタニア帝国伯ヴェルガモン家息女リーライナ・ヴェルガモンの結婚。

 

 在ブリタニア日本大使館付き駐在官である南雲忠一とブリタニア帝国皇帝直属騎士ナイトオブラウンズ第4席ドロテア・エルンストの結婚と、大物同士による結婚が続いている為だ。

 

「そういえば澤崎さん。貴方もそうでしたね」

 

「は?」

 

「いえ結婚ですよ。されたではありませんか出来ちゃったの入籍を」

 

「~~~~!!」

 

 澤崎淳は絶句する。

 

 どうしてだ。

 

 何故だ。

 

 なんでこの方は知っているんだ。

 

 その顔は語っていた。

 

「いやあめでたい。貴方の家庭の不和に私も無関係ではありませんでしたのでお見合い相手を探していたのですが肩の荷が下りました」

 

 澤崎は2014年のナチスユーロピアによるフレイヤ実験で世界に衝撃が走っていたのと同月に協議離婚を迎えていた。

 

 死にそうな顔でナチスのフレイヤ実験に対する国会答弁をしていたのは、フレイヤの脅威の拡散が原因ではなく自身の離婚が原因だったのだ。

 

「我々会合の丁っ……失礼、連絡員を貴方に一本化した為に仕事量が倍増し家庭を疎かにさせてしまいました。そのことに付いては返す返すも申し訳ありませんでした」

 

 席を立ち頭を下げる辻。彼は彼なりに澤崎の家庭を崩壊させてしまった事に対しての責任を感じていたのだ。

 

「お、お顔を上げてくださいっ、恐れ多くも夢幻会会合メンバーであらせられる辻閣下が私のような一閣僚如きにっ」

 

「いえいえ、貴方を任命したのは私ですし、それに──」

 

 

 

 “これからも頑張って貰うのですから頭を下げさせてください”

 

 

 

 やんごとなき夢幻会の指導層辻の突然の謝罪に慌てた澤崎であったが続く言葉にその本当の意味を知る。

 

 これからもよろしくという意味だったことを。

 

 

 

 *

 

 

 

 澤崎淳、彼は心の中で嘆く。

 

(ああ、前妻に続きお前とまで離婚する可能性が今この瞬間見えてしまった……直美)

 

 つい先日己が愛妻となったばかりの飲み友達。女にしては背が高く、活動的なラフなTシャツとジーンズを着こなした──澤崎直美(旧姓・井上)の顔を思い浮かべながら。

 

 会合の連絡員として本業の政治以外にも様々な仕事をこなしながら馬車馬の如く働いてきた彼は、それが故に家庭が崩壊し精神的にボロボロとなっていた頃。

 

 そのエリート思考で政敵を蹴落としてのし上がってきた事が災いして友達も少ない彼は、行き付けのBARでの飲み友達であった直美に癒しを求めて良く悩みを打ち明けていた。

 

 自分と住む世界が違う一般人。関わるのが酒の席だけということで素の自分で付き合える彼女とは良好な関係を築く事ができ、いつしか夜を共に過ごす仲へと進み行く。

 

 行きずりの関係ではあったが、互いの身の上を相談し合い、時に助け、時に助けられ。確かな信頼関係で結ばれていたのだ。

 

 もう恋に現を抜かす年ではなく、外的要因こそあれ自ら選んだ仕事によって一度離婚を経験していた為にあくまで酒の席から寂しい夜を共にする、そんな付かず離れずの関係に落ち着いていた。

 

 一方で彼女の方はどうだったかといえば『お偉い政治家先生の癖にいつも一生懸命な姿を観てるとなんか放っておけなくて慰めてあげたくなるのよ』『普段人前では堂々として物怖じしない強気一辺倒で悪党みたいな面構えしてる癖に私といる時や一人の時は小心者。自分よりも強い者の前でもやっぱり小心者。だけど文句言わずに働いて、リーダーとしての素質はないけど二番手で支える素質はピカイチ……嫌いじゃないわよ。そういうの』といった感じでけして悪くは思われていないようで。そんなこんなで続いた出逢って三年目となる記念にロマネで祝杯を挙げたその夜。

 

『子供が……できたの……』

 

 突然の告白であった。

 

 吐き気を催す体調不良を訴えて病院を受診した際に発覚したという。

 

『淳に迷惑は掛けられないから一人で生んで育てるわ』

 

 政治家という仕事はハード。真面目にやっていればこそ言えるその体現者たるあなたの邪魔にはなりたくないからと別れを告げられたのだ。

 

 それに余計な気を遣わせたくないからともう二度と連絡を取らないようにしようとも。

 

 だがしかし。

 

 彼女に対して澤崎は言った。

 

『責任を取らせてくれっ! 君が、君さえ良いというならば私が責任を取る為の機会を与えてくれっ!』

 

 行きずりとは言え肉体関係まで持ち、それでも今まで良好にやってきた仲。

 

 一時の快楽や慰め、癒しの為だけに彼女を求め、その上で子供が出来たから別れる等という恥知らずな事はできない。

 

 それに女一人に対する責任が取れなくて国民総ての代表者として国家の責任を担うべき政治家など勤まるものか。

 

 ましてや直美との仲はそんな薄情に切り捨て、また切り捨てられるような間柄ではない。だからこそ彼は責任を取りたかった。

 

『直美、君と君のお腹の子を、私に……俺に養わせてほしい。君さえ嫌でなければ、こんな離婚経験者の男失格者でもいいなら俺と……』

 

『淳……』

 

 そんな彼に、直美は静かに寄り添い頬を擦り寄せる。

 

 彼女の身体から漂う甘い香りはいつもと同じであったが、その時ばかりはその香りに妙な緊張感があった。

 

『淳……あなたって、さ……』

 

 

 

 

 

 

 

 最高に良い男よ──。

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

(直美、お前にまで三行半を突き付けられたら私はもう)

 

 出逢いから入籍までの事をさっと思い出していた澤崎は、ひょっとしたら将来的に有り得るかも知れない二度目の離婚に薄ら寒くなった。

 

 一度目でも「やっていけない」と捨てられたとき、「鬱だ死のう」をやり掛けたというのに、今度離婚となったらもう確実に廃人である。

 

「澤崎さんどうしました?」

 

「は!? ああ……あの、何でもありません……」

 

「そうですか? 随分お顔の色が優れないようですが?」

 

「ほ、本当に大丈夫です」

 

 大丈夫ではなかった。

 

 つい先程のこれからも宜しくな辻の一言でまた何百何千の毛根が死滅した筈だ。

 

「ふふふ、ご安心ください。以前の二の舞とならぬよう私も仕事量はきちんと調整させて頂きますので。もうすぐお生まれになるお子さんのこともありますし直美さんと離婚する様な事にはさせませんよ。それに彼女は貴方の今までの苦労を御存じなのでしょう? その上で一緒になられたのですから貴方が捨てられる事はない筈です」

 

「は、はあ、それならばいいので……。────―は?」

 

「なにか?」

 

「い、いえ……、なにも、御座いません……ッ」

 

 この時、彼は気付いた。知らないはずの事を知られている事実に。

 

(この人どうして直美との馴れ初めや誰にも伝えてない直美の名前とか知ってるんだっ?!)

 

 知らないはずの妻の名と妻と自分だけが知る馴れ初め。

 

 なぜかそれらを知っている辻政信という男に戦慄を覚えた澤崎淳。

 

 彼の受難はまだまだ続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 終。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この短編のみの物としての設定

 

 

 

 

 

※エデンバイタル継承3国

 

 遥か太古の超文明エデンバイタルが分裂した国、高天原、アヴァロン、レムリアの正統継承国家。

 

 科学技術力。文明発展速度。歴史の長さ等々その他の国家とは異なり古代文明が保持していた超技術の一部を復活させている。

 

 ブリタニアを20とした場合、日本が17、オセアニアが15とそれぞれ1対1で正面からぶつかることを避けたい国力比となっており近年になってギアス伝導回路、マッスルフレーミングシステムなどの継承国独自の技術を開発。

 

 その他、コード、ギアス、ワイヤードギアス、遺跡など数多くの超技術や新世代の通常技術を操り有史以降の国々を圧倒している。

 

 3国共に極端な思想の中には古代人種=優勢種・人類。

 

 新世代人種=劣等種・類人猿・擬人といった、自分達人間と自分達以外の人間に似た別の生物という差別的意識があり一部で問題化している。

 

 特にオセアニア人はその傾向が強く、古代人種以外をそれぞれ白色擬人・黒色擬人・黄色擬人、または猿と呼称して差別し『管理』が必要であると考えている。

 

 力比

 

 継承3国

 

 大日本帝国=17

 

 フレイヤ保有国。

 

 現有の主力KMFはサクラダイトを用いる合成繊維によって形成されたギアス伝導回路と、合成樹脂と電動シェルの芯を同繊維で覆ったマッスルフレーミングを搭載した第7世代機。

 

 および同世代通常型機+第5世代後期機。特殊機としてギアス伝導回路+マッスルフレーミングシステム搭載のエナジーウィング機である第9世代KMFがある。

 

 

 

 神聖ブリタニア帝国=20

 

 フレイヤ保有国。

 

 通常型とギアス伝導回路システム搭載型の第7世代ヴィンセント。

 

 ギアス伝導回路システム+エナジーウィング搭載第9世代KMFランスロット・アルビオンなど、その他の特殊機としてマークネモ等日本と並び数多くの最新型KMFを開発・保有。

 

 

 

 合衆国オセアニア=15

 

 フレイヤ保有国。

 

 日ブに遅れてはいる物のギアス伝導回路とマッスルフレーミングシステム機の開発に成功。配備を始めている。

 

 絶対正義を理念に掲げる原始民主制体制。南側諸国盟主。

 

(拙作の「帝都の休日」や「楽隠居と円卓の少女」シリーズのオセアニアとは全く別の国です)

 

 

 

 ユーロピア国家社会主義共和国連合(ナチスユーロピア)=7

 

 フレイヤ保有国。

 

 1980年代に国家社会主義ユーロピア労働者党、ユーロピアファシスト党の2政党を率いるアドルフ・ヒトラー、ベニート・アミルカレ・アンドレア・ムッソリーニが起こした国家社会主義革命によって成立した欧州圏の正統継承国。

 

 政権奪取当初から、国交が断絶し冷え込んでいた日本との関係改善を模索して外交官を派遣、関係改善と国交正常化を達成。旧E.U.圏の再統一を目指している。

 

 2014年3月にフレイヤ実験を実施、成功を収め第4のフレイヤ保有国と成る。

 

 KMFは2019年現在第7世代通常型を配備しているところだが、古代文明継承国ではないためギアス伝導回路・マッスルフレーミングシステムの開発に苦慮。

 

 

 

 中華連邦=5

 

 日中、第一次大戦とエデンバイタル文明継承国第2位の日本との二度にわたる戦争にて敗北を喫し、代表国中華帝国と主要国インドの国力が大きく減退。

 

 続くインドシナ戦争に於いてバングラデシュ・インド東部・ビルマ軍区・雲南省全域と広西壮族自治区の一部をオセアニアに占領されたまま停戦。

 

 エデンバイタル継承国と対峙する為には同じエデンバイタル継承国の力が必要であるとして、オセアニアと敵対する日本・ブリタニアとの協力関係構築に向け協議中。

 

 

 

 E.U.ユーロピア共和国連合=4

 

 国家社会主義革命によって欧州を追われた国防四十人委員会と民主勢力が中央アフリカ以南及びロシアを確保した国。

 

 オセアニアや東アフリカ等南側諸国の援助によって力を付けつつ、欧州奪還を狙っている。

 

 

 

※インドシナ戦争:2010年8月10日~2012年3月20日。停戦。

 

 南北冷戦における戦争の一つ。

 

 合衆国オセアニアと合衆国インドシナ及びインドネシア民主共和国(南インドネシア)3国軍による中華連邦侵攻と、その後の武力衝突。

 

 合衆国インドシナとビルマ間の国境争いに自国の目的であるビルマ遺跡と、更にはペルシャ遺跡の確保までをも目指したオセアニアが介入し、中華帝国軍、およびインド軍との本格的な武力衝突へと発展。

 

 中華帝国とインドは共に主要都市へ通常弾頭の弾道ミサイルを撃ち込まれた上に、第一次大戦時の経験から日ブ・オセアニアといった列強上位に位置する古代人国家との全面戦争を恐れ迅速な対応が取れず後手に回っている。

 

 基礎的な兵器の技術格差と、更にオセアニアの新型陸上兵器第5世代KMFの投入によってインドシナでの戦線が崩壊。

 

 2年半に及ぶ攻防の末にバングラデシュ・インド東部・ビルマ軍区・雲南省全域と広西壮族自治区の一部までを占領されたまま中華連邦側は停戦を余儀なくされている。

 

 オセアニアの目的が中華が抱えるビルマ遺跡とペルシャ遺跡にあることを感知していた日ブはこれ以上の同国の拡大を阻止する目的で批難声明を出し、大日本帝国連合艦隊やブリタニア太平洋艦隊を南シナ海・東南アジア方面へと展開。

 

 加えてユーロピア共和国連合と対立している『ユーロピア国家社会主義共和国連合』『シーランド王国』等の欧州諸国も継承2国とは個別に国防四十人委員会の後援国オセアニアを批難。

 

 国際的な包囲網を構築していったが、遺跡の存在するビルマとペルシャを手に入れるまでは引き下がるつもりのなかったオセアニア大統領府は徹底無視の姿勢を明確にし、「万が一にも中華と無関係の第三国が我が国と盟邦の領土紛争に対し武力介入の姿勢を示したときは『レムリア条約機構軍=南側諸国の安全保障条約』の全軍を持って総反撃に転ずると警告」

 

 第三次世界大戦への発展を示唆し他国、特に日ブに対してはフレイヤ弾頭搭載の弾道ミサイル使用を示唆し牽制する動きを見せた。

 

 これに対してミサイル防衛システム等の防御機構を充実させている両国はあくまでも戦線の拡大に対し引かず、万が一の時は『太平洋条約機構』による全面介入を含めた『あらゆる手段の行使も有り得る』とこちらもフレイヤ使用に対する含みを持たせたことで最終的には停戦させることに成功。

 

 オセアニアの第二目標であったペルシャ遺跡獲得の為にイラクへ集結させていたレムリア条約機構軍によるペルシャ侵攻作戦を中止に追い込んでいる。

 

 

 

 

 

 交戦国

 

 中華連邦

 

 合衆国オセアニア

 

 合衆国インドシナ(タイ・マレー半島・シンガポールの連合国家)

 

 インドネシア民主共和国

 

 中華連邦寄り中立国

 

 大日本帝国

 

 神聖ブリタニア帝国

 

 ユーロピア国家社会主義共和国連合

 

 シーランド王国

 

 インドネシア共和国

 

 パプアニューギニア独立国

 

 マレーシア(北カリマンタン)

 

 ブルネイ王国

 

 ベトナム帝国

 

 カンボジア王国

 

 ラオス共和国

 

 クウェート王国

 

 

 

 オセアニア側中立国

 

 ユーロピア共和国連合(中央アフリカ以南・ロシア、首都は南アフリカプレトリア)

 

 合衆国東アフリカ

 

 イエメン民主共和国

 

 民主主義オマーン共和国

 

 民主主義エチオピア共和国

 

 ジブチ民主国

 

 エリトリア民主共和国

 

 ティモール民国

 

 ニューギニア民主共和国

 

 大高麗民主国=高麗亡命政府

 

 イラク社会主義共和国

 

 ヨルダン人民共和国

 

 シリア民主主義人民共和国

 

 サウジアラビア社会主義共和国連邦(サウジ・バーレーン・カタール・アラブ首長国連邦)

 

 

 

 太平洋条約機構

 

 大日本帝国・神聖ブリタニア帝国を中核とした北側諸国による主に南側諸国を念頭に置いた集団安全保障機構。

 

 加盟国は日ブ両国とその友好国および影響国。

 

 大日本帝国

 

 神聖ブリタニア帝国

 

 シーランド王国

 

 インドネシア共和国(北インドネシア)

 

 パプアニューギニア独立国(北ニューギニア)

 

 マレーシア(北カリマンタン)

 

 ブルネイ王国

 

 ベトナム帝国

 

 カンボジア王国

 

 ラオス共和国

 

 クウェート王国

 

 

 

 レムリア条約機構

 

 太古の超文明エデンバイタル分裂国が一角にして旧世界を支配していた3大超大国の一つ『レムリア』の名を冠する南側諸国の集団安全保障機構。

 

 加盟国は中核である合衆国オセアニア・ユーロピア共和国連合を始めとする南側諸国および南側諸国と同盟関係にある共産圏。

 

 合衆国オセアニア

 

 E.U.ユーロピア共和国連合

 

 合衆国東アフリカ

 

 イエメン民主共和国

 

 民主主義オマーン共和国

 

 民主主義エチオピア共和国

 

 ジブチ民主国

 

 エリトリア民主共和国

 

 合衆国インドシナ

 

 インドネシア民主共和国

 

 ティモール民国

 

 ニューギニア民主共和国

 

 大高麗民主国=高麗亡命政府

 

 イラク社会主義共和国

 

 ヨルダン人民共和国

 

 シリア民主主義人民共和国

 

 サウジアラビア社会主義共和国連邦(サウジ・バーレーン・カタール・アラブ首長国連邦)

 

 




このネタは蒼の混沌様の憂鬱ギアススレで話されていたナナナ談義を見て、もしもナナナ並の技術力を持った超大国日本が存在していたら?をコンセプトに書いた話です。
その都合上とにかく『僕の考えた最強日本』となってしまいました。

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
  • レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
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