帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

54 / 379
こちらは拙作【円卓の少女】シリーズの小ネタの一つで、オリジナルの田舎者貴族が自分の地位を笠に着て威張り散らすお話しとなります。
原作のナンバーズ差別を肯定するブリタニア貴族みたいな人物の話です。
蒼の混沌掲示板様投稿分から加筆修正しております。



楽隠居?と円卓の少女外伝 ブリタニアの勘違いした田舎男爵シリーズ
勘違いした田舎者


 

 

 

 

 勘違いした田舎者

 

 

 

 

 

 神聖ブリタニア帝国。

 

 北はアラスカ・グリーンランド・アイルランドから、南は中米・カリブ・コロンビア、更にはサウスジョージア島やフォークランド諸島といった南ブリタニア大陸の外れに位置する離島。

 

 西はハワイ、ミッドウェーなどの太平洋諸地域を領土とし、凡そ2580万㎞2の陸地面積と、総人口13億人を数える世界最大の超大国である。

 

 ブリタニアの正史を記した『ブリタニア年代記』によれば、今から2019年前にローマ帝国のユリウス・カエサルが当時はヨーロッパにあったブリタニアへの侵攻を試みた際、頑強に抵抗した一ケルト部族の王が勝利した年を皇歴元年と定め、そのケルト部族の王、ブリタニア皇家始祖アルウィン一世が建国したとされている。

 

 絶対君主制・貴族制を敷く帝政国家であり、日本と同盟を結ぶまではほぼ一国主義的政策を採り続けてきた経緯を持つ、他の追随を許さない大帝国。

 

 自国領土より採れる豊かな鉱物資源と肥沃な大地よりもたらされる自然の恵み。皇族から平民に至るまでの高い教育水準、それらが合わさる事で実現した巨大な国力。

 

 いつしか“力のブリタニア”という二つ名で呼ばれるようになったこの国のある辺境に、ロズベルトという貴族が住んでいた。

 

 男爵の爵位を持つロズベルトは自分が選ばれた民だと思っていた。自分は武勲侯や騎士侯などの一代限りの貴族ではない本物の貴族であり、平民共とは違う選ばれし存在であると。

 

 

 

 ***

 

 

 

 俺の名はロズベルト。聞いて驚け、俺は男爵位を持つ正式な貴族だ。武勲侯とか騎士侯みたいな一代限りの下級貴族じゃあないぞ? 先祖代々世襲する、いわゆる上級貴族というやつだ。

 

 お前達平民から見れば雲の上のような存在だな。

 

 無論、自分の領地だって持っているぞ? 10㎞2にも及ぶ広大な領地に、1500人の領民が住んでいる。

 

 周辺地域には他にも男爵位を持つ貴族が住んでいたが、皆数十人~数百人規模の領民家臣しか持っていない弱小貴族ばかりだ。

 

 それに、同じ男爵でも俺は子爵相当の権限を持っている為、他の連中と比較すること自体が間違っているのだ。

 

 同盟国である日本の名家、米内家とも懇意にしている。当代当主の米内光政卿とは“ミツマサ”“フランク”と呼び合うほどの仲。

 

 まあ分かりやすい言葉で表すなら大貴族に相当する訳だ。

 

 本来ならばお前達平民が口を利いて良いような存在ではないが、寛大なる俺は例え卑しく下賤な平民と言えど、最低限度には口を利いてやるようにしている。

 

 そんな大貴族である俺はいま、帝都ペンドラゴンの大通りを歩いていた。

 

 今夜ペンドラゴンのあるホテルで男爵、子爵という大貴族ばかりが参加する舞踏会が開かれるのだ。

 

 無論、大貴族たる俺にも招待状が届き、参加する運びとなったのは言うまでもない。

 

 弱小貴族共や、武勲侯・騎士侯などの下級貴族には分からんだろうが、俺ほどの大貴族になれば色々と付き合いが多くて大変なのだよ。

 

 生まれが高貴すぎるというのも楽な物じゃない。

 

「きゃッ!」

 

「おっと」

 

 ちっ、お前と話をしてたら10歳くらいの平民少女とぶつかってしまったではないか。

 

「ちっ、泥臭い平民が」

 

 あ~臭くて適わん、平民臭というのか? とにかく貧乏人特有の臭いと気配がして汚らわしい事この上ない。

 

 俺の服にこの平民臭が付いてしまったらどうしてくれるのだ。

 

「何処を見て歩いているんだ?」

 

「は、い……っ、ご、ごめんなさっ」

 

 気分よく歩いているところを小汚い平民にぶつかられたら、腹が立つのも無理ないと思わないか? 

 

「謝って済むとでも思っているのか? 貴族たる俺が道を歩いているんだ。お前達平民は左右に分かれて道を空けるのが作法であり習わしという物だろう」

 

 なぜそんな当たり前の常識が分からないのだ。

 

「も、申し訳御座いませんっ、お許し下さいっ……!」

 

 苛ついた気分が声に出てしまったようで、此方の気分を察したのか、平民少女は怯えながら涙声で謝罪してくる。

 

「ふんっ」

 

 まあいい。俺は大貴族であり寛大な男。如何に相手が下賤な平民と言えど、ここまで反省の態度を取っている以上は許してやらんでもない。

 

 ただ、今後のためにも多少の教育はしておく必要がありそうだな。そう思って声を掛けようとしたら。

 

「なにをしているのですかっ!」

 

 通りを歩いていた女に怒鳴られた。

 

 

 

 ***

 

 

 

「こんな小さな女児を泣かせたりして……恥ずかしくないのですかっ」

 

 なんだこの無礼な女は? 

 

 怒鳴りつけてきたのは前髪を切り揃えた長い金髪の女で、髪の毛には赤いリボンをくるくる巻き付けている。

 

 実にセンスのない女だな。思わず日本の理髪店で見られる青・赤・白の螺旋模様が回転する看板を思い出してしまったではないか。

 

「民の上に立ち手本と成るべき貴族がこの様な往来にて声を張り上げ立場の弱き者を脅しつけるなどっ……恥を知りなさいっ!」

 

 丁寧な口調だが着ている服はドレスなどではなく白いワンピース。

 

 察するに下級貴族の娘といったところだろうか? 

 

「ふん、その平民の子供が貴族である俺にぶつかってきたのだ。つまりその子供が悪い」

 

「大の大人が子供を脅かしている事の方が余程罪深きことです。それに、先程よりこの子は謝っているではありませんか。反省し謝罪する者、それも小さな子供の無礼一つを、なぜ許して差し上げる事が出来ないのです?」

 

 ずいぶんな口を聞いてくれるじゃないか、ええ? 大貴族であるこの俺に対し下級貴族風情が。

 

「貴様……、よもやこの俺をフランク・ロズベルト男爵と知ってのその口の聞き方ではあるまいな?」

 

 知っている上でなら容赦はせんぞ。下級貴族風情の家を取りつぶすなど造作もないこと。

 

 明日には一家離散。いや、不敬罪で告発すればその首が飛ぶことになるのだからな。

 

 くいっ──。

 

「んっ?」

 

 無礼な下級貴族の小娘をどう処罰すべきかを考えていた俺の袖を従者に引っ張られた。

 

「だ、男爵様……っ! この場はどうか……っ!」

 

 顔色の悪い従者はどうも目上の者であるこの俺が矛を収めるべきだとの態度で迫ってくる。

 

「ふむ」

 

 確かにお前の言うように大貴族たる俺が、下級貴族や平民相手に少々大人気ないかも知れん。

 

(大貴族としての品位にも拘わるか……)

 

 わかった。此処はこの場はこの俺が引いてやることにしよう。

 

「まあいいだろう、貴様──」

 

「モニカ・クルシェフスキーです」

 

 モニカ・クルシェフスキー? 聞いた事無いな。どこの田舎者だ? 

 

 まあ下級貴族の名前など覚えている価値もないが。

 

「ではクルシェフスキー。貴様も口の聞き方には気を付けろよ? 寛大な俺だからこそ、この程度で許してやるのだからな」

 

 俺でなければ子供は元より、お前の首も飛んでいたぞ? 

 

 下級貴族が大貴族たるこの俺に対して、ここまで無礼な口の聞き方をしているのだからな。

 

「あなたもむやみに己が権力を振り回すのはお止めなさい。此処帝都ペンドラゴンは日本は勿論のこと、友好国や同盟国の人々が多数訪れる我が国が誇る世界有数の都なのです。その都の往来にて我が国の政(まつりごと)を担う貴族の品格を貶めるような行為は慎むべきでしょう。この場は不問に致しますが、今後同様の行いを目にした時には看過出来ませんよ?」

 

 こうして許してやろうというのにも拘わらず、まだ減らず口を叩いてくるのだから。

 

 騎士侯のような下級貴族というものは育ちが知れるというものだ。

 

「ふん、騎士侯風情が……」

 

 俺は平民の子供と下級貴族を一瞥してから歩き出した。

 

 育ちの悪い連中と関わっていては此方まで穢れが移ってしまいかねんからな。

 

 

 

 *

 

 

 

「男爵様……」

 

「なんだ貴様。まだ何事かの注文を付けようとでもいうのか?」

 

「い、いえ、そうではありません……」

 

 よく我慢なされました──従者は顔面を蒼白にさせてこの俺の判断を讃えてくる。

 

 ふん、俺はあんな下級貴族相手に本気になるような小物ではないからな。

 

「し、正直、生きた心地が……」

 

「ハハハっ。なんだ貴様。まさか貴様にまで俺の怒りが飛び火するとでも思っていたか?」

 

「……っ」

 

 大体お前は小心に過ぎる。あんな騎士侯風情との小競り合い程度でなにを萎縮しているのだ。

 

 平民とは言え俺の従者ならもっと堂々としていろ。

 

「それにしても……クルシェフスキーだったか?」

 

「は、はい……く、クルシェフスキー卿に御座います……っ」

 

 あの下級貴族。とても高位の貴族に対して取る口の聞き方とは思えんな。

 

「礼儀を知らん女だ。平民上がりなのだろうが」

 

「っっ──!?」

 

「どうした?」

 

「い、いいえ、……は、早く、早く立ち去りましょうっっ」

 

「言われんでも急ぐさ。パーティに遅れてしまってはロズベルト男爵家の沽券に関わる」

 

 

 

 下級貴族の小娘め。今度会うようなことがあれば、俺自ら貴族のいろはを教えてやらねばならんようだ。

 

 

 

「まったく、勘違いした田舎者はこれだから困る」

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 ロズベルト男爵家。

 

 カンザスの端の端にある10㎞2の領地と1500人の領民を持つ下級貴族。

 

 

 

 クルシェフスキー侯爵家。

 

 北ブリタニア大陸西海岸に位置し、約44万㎞2の領地と1200万人の領民を持つ域内総人口2000万人超。

 

 領地南部(オレゴン)領地北部(ワシントン) を治め。

 

 陸海空3軍10万名の騎士団を持つ。

 

 盟邦大日本帝国とも非常に縁の深い貴族領であり、歴代クルシェフスキー侯爵は帝国の要職に付いていることでも知られていたブリタニア有数の大諸侯。

 

 次期当主の名はモニカ・クルシェフスキー。

 

 現98代帝シャルルの12の剣の一振り、ナイトオブトゥエルブの称号を戴く騎士。

 

 事実を与り知らぬはただ一人の田舎者。

 

 後に愚者として扱われる事となる男は、脅え竦む従者を伴い意気揚々と歩き出す。

 

 帝都にて開かれる下級貴族のパーティ会場を目指して……。

 

 




世間を知らないという事の怖さですね。

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
  • レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。