帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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ちょっとした人物紹介。


シャルル=シャルル・ジ・ブリタニア=コードギアス、モニカの実父(公式)

ジャン=ジャン・クロード・クルシェフスキー=コードギアスのオリキャラ、モニカの養父、シャルルの親友にして西海岸諸侯盟主。

アリス・ローゼンクロイツ=モデル、ローゼンメイデンのアリスの名前。シャルルの親友の一人。

麻生良太郎=モデル、ムダヅモ無き改革の麻生タロー。シンクの旦那さん。

シンク・ローゼンクロイツ=モデル、ローゼンメイデン第五ドール真紅。良太郎の妻。

リーライナ・ヴェルガモン=コードギアス、グラウサムヴァルキリエ隊の女性。山本五十六の妻。

山本五十六=史実大日本帝国の軍人で「提督たちの憂鬱」の登場人物。一度目の転生者=リーライナ・ヴェルガモンの夫。


勘違いした田舎者 討ち入り

 

 

 

 カンザス ローンリッジ近郊 ロズベルト男爵領

 

 

 

「討ち入りだあァッッ!」

 

「敵はたったの六名ッ。見える範囲でだがッ。一人たりとも逃がすな皆殺しにしろッ!」

 

「家宰様ッ、敵の中には美女が一人、美少女が二人ほど居るようですがこちらについては如何為さいます?」

 

「どれほどだ?」

 

「超上玉でさァ。そんじょそこらじゃお目にかかれないほどの」

 

「ほう。そりゃあいい。丁度奴隷共にも飽きてきたところだ。その女どもを捕まえて、順々に回していくかあ」

 

「さっすが家宰様、お心が広う御座いますな。このハンス。感服つかまつりました」

 

 二階建てのこじんまりとした邸の中では、70名ほどの無頼漢としか思えない騎士達が騒いでいた。

 

 この周囲を山に囲まれた天然の要塞とでも言うべきロズベルト男爵家のお屋敷に、今、たった六人ほどの愚かな人間が討ち入って来たという。

 

 こちらの戦力は未だ戻らぬ集金人の徴税官たち三名を抜いても87名。負けようとしても負けられない戦力差がある。

 

 だが、表に居る歩哨も騎士の様子もどうもおかしい。居ないというか声が聞こえないのだ。本来討ち入りなら騒ぎ声があってしかるべき。

 

 だというのにまるで何も声がしない。

 

 不気味なその様子に、家宰の頬には一筋の汗が流れ落ちていた。

 

 

 

 勘違いした田舎者 討ち入り

 

 

 

「よお、クルシェフスキー侯爵よお、中の連中もう気付いてんじゃねえのかい?」

 

「たぶんね。シャルルが正面突破しようだなんて言い出すから」

 

「こんな山間の要塞のような場所だ。正面突破しか道はあるまい。それと、先ほどのは計算違い。一人頭、14人とまあ+といったところだが。いけるか」

 

 シャルルが喋る間に、また六人ほどの荒くれ騎士が、邸の中から飛び出してきた。

 

 表地が青、裏地が白いマントに青い騎士服、全身を青で纏ったクルシェフスキーは、自らの長剣でそのうちの一人の首を一瞬で跳ね飛ばし、蒼空の空に赤い鮮血を舞わせた。

 

「お約束って奴だねえ」

 

 彼が呟く間にも5人の騎士達が迫り来る。黒一色の喪服のような衣服に身を包む大柄の男、シャルル・ランペルージの大剣が宙を凪、二人の首が一度に跳ね飛ばされた。当然にして舞う鮮血の下を一発の弾丸が通り抜け、剣を振り上げていた別の騎士の脳天を撃ち抜く。

 

「最初は全員捕縛を考えていたが、これはどうも指揮官の捕縛だけで済みそうだ」

 

 今し方二人を殺したシャルルが言うと、良太郎が。

 

「シャルルさんよ、あんたその方が簡単だからその方針に切り替えたんじゃねえのかい?」

 

「ふむ、まあそうとも――」

 

 シャルルが身体を反らすと、シャルルが立って居た場所を、フルーレの煌めきが通り過ぎ。更に迫り来ていた騎士の一人の心臓が抉り出された。

 

「残念。今のでシャルルを殺っていれば私が皇帝の座を奪えたのに」

 

 金色に輝く身の丈ほどの長いツインテールを大きく揺らせながら、赤いドレスと赤いヘッドドレスに身を包む少女、否、還暦を超えた女性。言葉を紡ぐのは『鮮血の薔薇』の異名を持つ、アリス・ローゼンクロイツ伯爵夫人。

 

「ふははっ、アリスよ、そんな事をすれば書類に埋もれて溺死することになるぞ?」

 

 シャルルが普段扱っている書類の量は半端ではない。執務机の上に山となって積もっているのだ。

 

「ひゃっはーッッ、死ねえーッ!!」

 

 丁度六人が固まっている背後の草むらから騎士が二人斬り掛かってきた。これに応じたのは、アリスと同じ赤いドレスと、赤いヘッドドレス、身の丈ほどの長い輝く金色のツインテール。アリスとの唯一の違いはその瞳の色。アリスが緑色なのに対して彼女は深い青色。赤薔薇の二つ名を社交界にて持つ、シンク・ローゼンクロイツ。彼女はその手に持つステッキを正確に喉を狙い突き潰す。

 

「言葉を紡ぐ前に手を動かしなさいな」

 

 シンクはそれだけ言うと死体から離れ後方に飛びすさり、もう一人いた騎士を、こちらの騎士に任せた。

 

 軍の嚮導学校をトップの成績で卒業し、ロイヤルガードに所属していた経歴さえ持つ、腰下へと流れる明るい長い髪に、エメラルドの瞳を持つ美しい騎士。ヴェルガモン伯爵家次期当主リーライナ・ヴェルガモンに。

 

「任されましたわ。このような弱敵に我が剣を振るうにふさわしいとは思えませんけれど」

 

 ちょっとした不満と共に、背後から襲い来たもう一人を袈裟斬りにするリーライナ。一撃である。

 

 邸の扉から飛び出してきた騎士のうち、残り二人は良太郎のデザートイーグルの弾丸で頭を破壊され血だまりとなって肉片を飛び散らかし、最後の一人はアリスのフルーレでその首を跳ね飛ばされた。アリスは器用に生首を突き刺し良太郎に。

 

「要りますかリョウタロウさん?」

 

 と進めていたりする。

 

「要らねえよ。サイコパスかよ……」

 

 葉巻に火を着けた良太郎は襲撃してきた連中が、十秒かからず全滅したのを見て『こりゃ直ぐ終わるな』と呟いた。

 

「最初に10人片付け、いま8人片付けたから残り69人か。直ぐ終わるねえ」

 

 クルシェフスキーが倒した人数を数えている。だが、ここから先は邸の中、相手のテリトリー。今までのように行くかと考えたが、考えるのも無駄と思考を打ち切った。

 

「シャルルこれは予想以上に簡単な戦となりそうだが、久々の私たちの戦だ。心躍らないか?」

 

「確かにな。書類仕事に飽き飽きしていたところなのだ。たまには身体を動かし、世直しをすべき場所を裁くのもいい。もっとも、この様な場所や悲劇を作ったのは儂の不徳の致すところだが」

 

「仕方ないさ。皇帝とて神様じゃない。全てを見通すことなんて出来やしないよ」

 

「神、か……」

 

 我が手は何処までも届くぞ?

 

「シャルル?」

 

「いや、何でも無い。行くぞ。ロズベルト邸へ」

 

 

 走り出す六人は扉を破壊し、中へと押し入る。丁度中央の広いホールとなっている場所。三十人ほどの騎士達が待機していた。

 

 二階の階段上の廊下より下の階を見下ろしているアイパッチの男が居る。銀髪にオールバックで他のものとは違う衣服に身を固めていた。

 

 執事服、あれが今のロズベルト家の家宰。つまり、この場にいる連中のナンバーワンだ。

 

「たった六人でロズベルト男爵様のお屋敷に討ち入りするとは褒めてやろう。だが外の連中を殺ったところでまで騎士達は大勢残っている。さあどうする?」

 

 勝ち誇り不適な笑顔を、醜悪な笑顔を浮かべる家宰を前に、どうせこちらの名も身分も知らないだろうから、告げても無駄と感じたアリスは。

 

「どうするぅ~? って、決まっているでしょう? あなたとロズベルト家の元々の家臣以外皆殺しよ」

 

「それができるかな? たった六人に――」

 

 家宰が不貞不貞しく言った瞬間。

 

 

 ガガガガガガガンッッ!!

 

 

 耳をつんざく大きな銃声と共に。ホールにいた騎士全員が眉間とこめかみに穴を空けて崩れ落ちた、やったのは『魔弾の射手』麻生良太郎だ。

 

「お前さん達がくっちゃべってる間に残り39人になっちまったぜ? どうするぅ~?」

 

 家宰とアリスの真似をやって葉巻の煙を吐き出す良太郎。一仕事の後の煙草は上手い。

 

「アソウ大臣。まだ終わってはおらんぞ?」

 

「そうだったなぁ、シャルルの大将。あと俺のこたぁ、良太郎でいい。同じ戦場で戦う仲間に大臣も糞もねェだろ」

 

「ふッ、ではリョウタロウと。これでまた一人友人が増えた。嬉しい限りだ」

 

「光栄だぜシャルルさんよ」

 

 話ている間に家宰は逃げていく。邸の二階の左奥の方へと。

 

「では、ここからは各々二組ずつで行動、と、言いたいところだが、リョウタロウは強すぎる。一人で行けるか?」

 

「俺ァ元より一人で仕事をやってる。くそったれのユーロピアを相手にするときも。イカレ南天の相手をするときもずっと一人だ。帰るべき場所をシンクが用意してくれてるから自由にやれてるのさ」

 

「り、リョウタロウ……」

 

 シンクとリョウタロウの惚気に、そういう場合じゃないだろうと全員が突っ込む。

 

「では、儂とリョウタロウが二階を。ジャンとヴェルガモン卿は一階左。アリスとシンク嬢は一階右をそれぞれ探索。敵騎士は全て斬り捨てて構わんが、先代に仕えていただろう者達は生かしておけ。では行くぞッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 シンク・アリス組

 

 

「こうして共に戦うのは初めてねシンク」

 

「はいお母様」

 

 瞳の色が違っていなければ見分けの付かない二人は、アリスがフルーレを。シンクがステッキを振るいながら唯々敵騎士を打ち倒している。

 

「ぶぺェ」

 

「うばァ」

 

 一撃で打ち倒し戦闘時間は秒も掛からない。

 

 金色の四本の輝く長い長いテールが靡き、軌跡を残していく。その下に鮮血に塗れた死体だけを残して。

 

『鮮血の薔薇』の片割れとも言われるが、本当の『鮮血の薔薇』とはアリスを差す。血のように赤く、血のように美しき、鮮血に染まった薔薇。

 

 大貴族連合が、神聖ブリタニア帝国各地で旗揚げをしていく中、その背後に南天の影を見出した彼女は夫と共に、出来る範囲での討伐へと乗り出したのだ。

 

 その実力は一騎当千。ナイトオブラウンズでさえ霞むと言わしめ、その名の通りアイオワ周辺の、大中小限らず、大貴族連合に所属し。

 

 南天へと降った貴族を千人は討ち果たしたという伝説を作り上げた、その当事者こそがアリス・ローゼンクロイツなのである。

 

 ブリタニア帝国近年最大の事件。血の紋章事件。日本で言うところのブリタニア五.六事変、ブリタニア五月クーデターにも皇帝派として参戦しており、その一騎当千の活躍振りには、味方は大いに闘志を奮い立たせられたとか。一説には最強のラウンズと謳われた、皇妃マリアンヌとさえ互角の実力を持つのだという。

 

 この為、シャルルは彼女と友人と言うことも有り、気が置ける存在にして、他を圧する強力な戦闘力の持ち主と言うことからラウンズに招聘したというが、自分には自分の領地を守る義務があるとして辞退されている。

 

 今でもシャルルの茶飲み友達で有り、飲み友達でもある為、親友ジャンと良く飲み歩いているらしい。

 

 彼女は我が子たちや、子の貴族達を前に薫陶を残している。ノブレス・オブリージュ。尊きものはそうであるが故に弱者を大切にしなければならない。もし尊きものがその役割と精神を腐らせたとき。赤い薔薇は死を告げに向かう、と。

 

「これはこれはお美しきご婦人お名前を――」

 

 ビュビュ、ビュッ

 

 如何にも強そうな屈強な男は、言葉を言い終える前にアリスのフルーレで全身を斬り裂かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 クルシェフスキー・リーライナ組

 

 

「ヴェルガモン卿と顔合わせをするのはこれで幾度目となるかな」

 

「恐れながら五度ほどかと。クルシェフスキー卿は舞踏会にも余りお出でにならず、薫陶を受ける機会も少ないものでして」

 

 ジャン・クロード・クルシェフスキー。

 

 その名は北側諸国の者ならば誰でも知っているが、直接顔を合わせた人間はほとんどいない謎の人でもある。

 

 本人が書類仕事に忙しく、視察は分からぬように向かう為、名前だけが広まってしまっているのだ。

 

 その正体は、子に厳しい親であり、西海岸諸侯を束ねる神聖ブリタニア帝国の重鎮中の重鎮。

 

 階級こそ侯爵だが実質的には公爵のそれであり、もしも次期陞爵があれば侯爵からの二階級特進、大公爵へとなる事が確実視されていると噂されている大人物である。

 

 一声声を掛ければブリティッシュコロンビア・アルバータ・アイダホ・ワイオミング・ユタ・ネヴァダ・カリフォルニア・アリゾナ等、西海岸諸侯が次々と動き出すと言われるほど大中小問わず子の貴族が多く。その歴史は1,000年を超えると言われる大貴族。ブリタニア人の故郷ブリテン島時代からの古参貴族家なのだ。

 

 駐日ブリタニア総領事を務める彼の大貴族、ルーベン・K・アッシュフォード公爵や、南方に影響力を持つカラレス公爵と、同格家と見られており、影響範囲では彼の二家を超えているとも密やかに囁かれている。動かせる影響範囲がそれ程に巨大だからだ。

 

 そして神聖ブリタニア帝国とは切っても切れないほどの仲を持ち、家族的同盟国とも例えられる大日本帝国との玄関口にも当たるため、日本との付き合いも非常に深い。

 

 80余年前の太平洋戦争を止めたのはこのクルシェフスキー侯爵家と、日本の嶋田伯爵家の協議によってというのは、公式文書に残っており、太平洋戦争停戦の功労者でもあるのだ。

 

 彼のクルシェフスキー侯爵家と嶋田伯爵家が動かなければ、神聖ブリタニア帝国・大日本帝国、共に亡国と成り果て、悪辣なる南天の旗の下に置かれていたことだろう。

 

 そんなクルシェフスキー侯爵家当代当主、ジャン・クロード・クルシェフスキーはシャルル皇帝の個人的な友人としても有名で、互いをシャルル、ジャン、と呼び合っている。

 

 血の紋章事件にも駆けつけ『友の危機を救うのはその親友だと昔から決まっているのさ』といった、臭い台詞を残している。

 

 ザシュッ!

 

「ギャアアアッ!!」

 

 ブシャアアッ!

 

 跳ね飛ぶ首、血しぶき舞い散る中。青い騎士服に一点の曇りも残すことなく、下階の敵を葬っていくクルシェフスキーはため息を吐く。

 

「もう少し歯ごたえがあると思ったんだが、弱すぎるな」

 

「お、恐れながら、クルシェフスキー侯爵閣下が強すぎるだけでは。敵は確かに弱いですけれど」

 

(お噂では聞いておりましたけれど、陛下のご友人方がラウンズ級というのは本当のことだったのですわね……隠れた達人、凄いですわ)

 

「誰が弱いだってェェ?」

 

 考えていると、奥の部屋から身長2mはありそうな巨漢が出てきたけれど。

 

「君たちが弱いんだよ」

 

 瞬間袈裟斬りにされて身体が両断されていた。

 

 

 

 

 

 良太郎

 

 

 欠伸が出るとはこのことだろう。誰もが剣。銃を持っていない。早撃ち勝負も一対一の決闘擬きも出来やしなかった。

 

 気配を読んでクズヤローだなと判明したらドアに弾を撃ち込んで始末するだけ。そして昔からの家臣らしき者がいたら。

 

「もうちょっと待ってな。いま、自称正義の味方マン共がこの邸の制圧に掛かってる。ただし、おたくらには碌な沙汰が待ってねーぞ。わかってるよな?」

 

 言い聞かせながら二階右側の廊下の部屋を、一つ一つ調べていた。実に暇で退屈な作業だった。

 

「俺とシンクだけで充分なのに、馬鹿みてェに戦力引き連れて来やがって皇帝陛下よォ」

 

 嚮導学校首席。

 

 鮮血の薔薇。

 

 西海岸諸侯盟主。

 

 皇帝。

 

 魔弾の射手。

 

 赤薔薇。

 

 何れ劣らぬ戦いの達人ばかり。一番弱いシンクだけでも、農民上がりの騎士擬き87人なんぞ全滅させるのに、それほど時間も掛からない。

 

「テロ組織の本部でもぶっ潰すつもりかよ」

 

 

 

 

 

 シャルル

 

 

 久々の戦場に立つ高揚感はあるが。同時に実に気分が悪い。

 

 我が娘モニカを侮辱されたというのもある。

 

 親友達の令嬢を、上位貴族の令嬢たちを馬鹿にされたのもある。

 

 だが、法と皇帝と貴族が支配するこのブリタニアで、平然と法を犯し、奴隷売買をしていたこと。

 

 これが最も気分の悪い原因だろう。

 

 許しがたき事よ。

 

 どれだけ死んだ?

 

 どれだけの無実の者が殺された?

 

 優しいあの子がこの事実を知れば、己が罪に苛まれ、苦しみ続けるだろう。

 

 もしも、自分自身への不敬行為を行われた時に、その優しさで見逃すのではなく、厳正に処分していれば、ここまでの犠牲者を出すことは無かったのではないかと。

 

 隠すべきか。情報公開すべきか、隠蔽してしまうべきか悩む。

 

 正義感の強すぎるあの子ならば、隠蔽しようが自ら調べ真実へとたどり着くかも知れぬ。

 

 儂はどうするべきなのか?

 

 ジャンの意見も聞かねばならぬ。

 

 儂はあの子の実父だが、ジャンはあの子の養父。

 

 共に親であることに変わりはないのだから。

 

「死ねやァァ」

 

 また一人愚か者が斬りかかってきた。

 

「ふんッ」

 

 儂は手に持つ大剣を横凪に振るう。

 

「ああ、へ、へへッ、なんともなってねェじゃねえかよォ、びびくらかしやがってェ」

 

 実に手応えがない、あの血の紋章事件の時。仲間と共に、日本の仲間と、ブリタニアの仲間と、皆と共に戦ったあの高揚感がない。

 

 それにしてもこの男。大層な身体をしおって、己がもう死んでいることにも気づかんのか愚か者め。

 

 ずずッ

 

「あ、あれ、し、視界がずれて……、よ、横にずれていくーーーーーッッ!」

 

 ぶしゃっと飛び散る大量の鮮血。

 

 胴体から二つに分かたれた肉体。

 

 輪切りとは行かぬが、出荷前の豚のようだ。

 

「いや、豚に失礼か」

 

 邸から気配が消えた。ほぼだがな。ジャンのやつめ、久々の外出だからか暴れておるな。

 

 ジャンがいればヴェルガモン伯爵令嬢に活躍の場がないだろうな。

 

 アリスもシンク嬢も暴れておるようだ。

 

 親子で戦えるのがそんなに気持ちいいのか。

 

 儂もモニカやマリーベルと共にいつか戦場に立ちたいものよ。

 

 そういえば、マリーベルと言えば、今休暇でオルドリンと共に日本を訪れているのだったな。

 

 よき休暇となってくれれば良いのだが。

 

 それにしてもあの子の男の趣味だけはどうにかならなかったのか。

 

 よもや三流校卒のニート。兄さんの家に居たあの男と結婚するとか言い出したときは焦ったものよ。

 

 儂は結婚は自由にさせる方だから一々文句は言わんが、妻から、あの子の母フローラから色々と注文を付けられた。

 

 とくにギャンブル関係と借金関係で。

 

 まあ、あの男の在り方を見ていると分からんでもないが。

 

 儂相手にまで掛けポーカーを挑んできおったその根性は見上げたものだが。

 

 因みに儂が勝って彼奴から一万円取り上げて競艇に使ってやったわ。

 

 

 さて、遊びも終わりか。

 

 最後の扉を開く。気配は二つ。

 

 予想は付いておるわ。

 

 

 ギイィィィ……。

 

 

「は、ははッ、よく、ここまで、たどりッ、ついたなッ」

 

 アイパッチを着けた、銀髪をオールバックにした家宰。

 

 フランク・ロズベルトと共に、このロズベルト領を悪漢の巣窟にし、無法地帯と化させていた男。

 

「順番に部屋を空けていけば必然的に貴様の元にも辿り着こう。名は?……いや、言わなくとも良い。どのみち貴様は死罪だ。死罪処か大逆罪なのだがな」

 

「南天様の旗を見たのか?」

 

「見るもなにも、先行しておった仲間が堂々と掲げておるのを発見しておるわ。意味が分かっていような? 外患誘致および民主共和制原理主義の思想散布予備罪の大逆罪であると」

 

「は、ははははッ! 南天様は、盟主様は神だッ! 絶対神であらせられるッッ!! 死後は盟主様の元に集い一つとなって生きるのだッ! 永遠の命が得られるのだッ! 故に我々は死を恐れぬッ!」

 

「当主は南天について?」

 

「あの馬鹿に南天様の教えを理解できるはずがなかろうッ! 俺こそが南天様に選ばれた使徒なのだッ!」

 

 使徒ではない……駒だな。このような男を南天の神が自らの使徒とする筈がない。

 

 悪魔伯爵や遺憾ながら私級の存在でも無い限り、あの邪悪なる神は自らの使徒とはしないだろう、もしくは才能を持つ者以外は。

 

「使徒たる俺にはこの地を自由にする権利があるのだッ!!」

 

 銀髪を後ろになでつけた家宰は得意げに言う。この地と一帯の汚染の源についてはこの男だな。

 

「奴隷は何故必要とした。南天にあるは教化と浄化の二択のみ。それ以外ではユスフのように自らその傘下に入る者のみ庇護されるはずだが?」

 

 儂も無知ではない。北側諸国の不倶戴天の敵である、南天条約機構について、自ら調べておる。

 

 頂点に神を据え。

 

 その下にルーク、ジェネラル、ビショップ、プリーストといった大幹部が存在し。

 

 以下。

 

 熾天使。

 

 智天使。

 

 座天使。

 

 主天使。

 

 力天使。

 

 能天使。

 

 権天使。

 

 大天使。

 

  天使。

 

  信徒。

 

 といった絶対的階級制に分けられている。

 

 また信徒は同時に天使の階級を持つことでも知られているな。

 

 階級制という意味では我がブリタニアと似ているが。

 

 死兵と呼ばれる死をも恐れぬ兵隊を8000万持つことでも知られている。

 

 その名の通り死を恐れず向かってくる生きたアンデッド。

 

 奴らは占領地の住民を従える為に『浄化』という恐怖を与え、次第に占領地を『教化』し、己がものとする最悪の占領統治を行うゆえに、ジェノサイドなど平気で起こす恐ろしい精神性を持っている。

 

「簡単だ。そうやって奴隷共にも教え込むのさ。やってやってやりまくって、もう逃げたい、すがりたいとなったとき、何にすがる? 神にすがるだろう? そうして教化した者を散布するのさ。地域社会に広がるようにな」

 

「南天に汚染された地域は幾つの領だ?」

 

「中小150はあるカンザスの17の領に広がっている。これからもまだまだ広がるぞ。奴隷貿易は教えと快楽を広げる最も簡潔なる手段だからな。リフレインと一緒だ。簡単に広がってやめられなくなるのさ」

 

 ペラペラと良く喋る男だ、それもそうか。儂を始末すれば良いのだからな。その手に持つ黒く光るもの──拳銃で。

 

「銃は剣よりも強しって言葉は知ってるかァ? 如何にそんな大剣を持っていようがなあ、結局銃には勝てないんだよォォッ!!」

 

 

 パァンッ

 

 

 銃の発射音。

 

 そして。

 

 瞬間遅れて。

 

 

 キィンッ!

 

 

 金属が金属を弾く音が鳴る。

 

「はっ? な、なんだっ? 何をしたァァっっ!!」

 

「一々耳障りに叫ばずとも答えくらいは教えてやる。剣で弾丸を弾いた。弾道さえ読めば簡単な事よ。無論リョウタロウクラスの怪物には通じんが」

 

「は、はったりだッ、まぐれで一発弾いたくらいでッッ」

 

 

 パァン、キィン!

 

 パンパンパンパン。

 

 キンキンキン、カィンッ!

 

 

「そ、そんな馬鹿なッ」

 

「申したであろう。弾道さえ読めば簡単な事だと。儂を舐めるなよ小僧」

 

 そこまでした時だった。

 

「ち、近づくなッ!」

 

 一歩踏み出し掛けた儂の足が止まる。年の頃10~12くらいの栗色の肩下くらいまでの髪の少女が、男の背後から姿を現した。姿を現したというよりも、強引に引きずり出されたといった感じだ。

 

 その少女のこめかみに銃を宛てがい。

 

「それ以上、近づいて見ろ、はあッ、はあッ、コイツの頭をぶち抜くぞッ」

 

「浄化という言葉を使わん辺り、貴様はただこのロズベルト領の私物化を男爵と共に行う事が目的なだけのただの屑というわけだな。死兵でも無ければ信徒でも、ましてや使徒でもないただの半端者だ」

 

「だ、だまれ、それでも南天様は我らを見捨てぬッッ!!」

 

「ふん、大貴族連合の反乱の時には僅かな支援の後にあっさりと見捨てられておるではないか」

 

 南天の手は確かに世界中に届く。17億もの信徒がいるのだ。いつどこに隠れ潜んでいても分からぬが。だからといって全てが全て支援してくれるとも限らない。散々支援を頼み込んでおったユーロピアなどゴミ扱いだ。

 

「それに来るなら来るが良い。我が神聖ブリタニア帝国と盟邦大日本帝国を中核とした北側諸国は、南天などに屈せぬわッ! たとえ最後の一人となろうともなッ!!」

 

「うるさいッ、貴様は後ろを向けッ、でないと――」

 

 

 ――シャルル、後ろを向くな。そいつの弾はもう無い。

 

 

 言葉と共にやってきたのは、この階の反対側を制圧していたリョウタロウだった。

 

「むう」

 

「銃声は聴いてた。そいつァ、リボルバーだ。六発で終わりだよ。つまりアイツの手にある銃は今、空っぽってわけさ」

 

「でかしたリョウタロウ。貴族位でもやろうか?」

 

 嘘ではない。かつてシンク・ローゼンクロイツ伯爵令嬢を救出したことなど、リョウタロウはブリタニアに多大な貢献をしてきた。シンク嬢のことだけではない。血の紋章事件の時も、大貴族連合反乱事件の時も、首魁に近い人間を複数討ち取っている。

 

『辻のおじきの依頼だからな』

 

 そんな事を言っておったがその功績はやはり大きい。いつか報いねばならぬ。

 

 最低でも子爵位、なんなら下位の伯爵位くらい与えても良い。

 

「それよりも、今はこやつか」

 

 

 儂は近づいていく。最早何も無いチンピラに。

 

 

「わ、悪かったッ、俺が悪かったよッ、だから謝るから許してくれよッ、な、なんだったら地下倉庫に詰め込んでる奴隷どもを自由にしても良いぜッ」

 

 一歩、一歩、踏み込んでいき。

 

「ホントだよォ~、嘘じゃねえよォ~、奴隷全部やってもいいから見逃してくれよォ~」

 

 最後の一歩を踏み込んだ瞬間。

 

「死ねえッッ!!」

 

 左手に隠し持っていたナイフに儂は刺された。

 

 

 指と指の隙間にだがな。

 

「は、え?」

 

「そう来ると思っておったわ。貴様のような子悪党は最後の最後まで自らの勝利を妄信する。儂を殺して、ではリョウタロウはどう攻略する、ジャンは、ヴェルガモン嬢は、アリス、シンク嬢はどうやって攻略するのだ? 貴様はもう詰んでおるのだよ家宰」

 

 儂はそのまま握力に任せて、ナイフと共に、家宰の手を握りつぶしてやった。

 

「ギィィヤァァァァーーーーッッ!!!」

 

「さて、貴様等の悪事も終焉の時だ」

 

 儂が男にボディブローを噛まそうとした瞬間。

 

 家宰は少女をこちらへ放り投げると。

 

「糞ォォォ、こうなったら皇帝も貴族共もッ、どいつもこいつも皆殺しにしてやるああああッッ!!」

 

 隠し持っていたボタンの様な物を押すと、男の立っておった場所の床が開き。

 

 男はその下に飛び降りていった。

 

「シャルル、別にヤバくもねェが奴さん切り札を持ち出してきそうだぜ。早く邸から脱出だ」

 

「了解した」

 

 儂は少女を担ぐと邸を出た。

 

 

 ※

 

 

 シャルルと良太郎が外に出ると、クルシェフスキー侯爵、ヴェルガモン伯爵令嬢、ローゼンクロイツ伯爵夫人、ローゼンクロイツ伯爵令嬢が出てきていた。

 

 ボロボロになった奴隷達10人を連れて。

 

 本来のロズベルト家家臣の10人も救出した以上、邸にもう人が居ないことを確認すると。

 

 丁度地響きがしてきた。

 

 同時にギャリリリリ。という“ランドスピナー”の駆動音が聞こえ。邸の左壁を破壊する音。

 

 現れたのは。

 

 褐色に塗装された、体高4mほどの機体。

 

 KMF:グラスゴーだ。

 

 

『ひゃああはっはっはっはァッ! 生身の貴様等にこれをヤれる術はねえェッ! テメーら全員ここで死ぬんだよォッ!!』

 

 

 KMFの登場に臆することなく、クルシェフスキー侯爵が一歩前に出る。

 

「なにを持ち出すかと思えば第4世代の旧型のおもちゃじゃないか」

 

 良太郎も前に出る。

 

「そんなもん何騎も撃破してきてるぜェ。魔弾を舐めんな」

 

 

『はッ、強がりもそこまでだなァ、死ねェェェェ!!!』

 

 

 向けられる大型キャノン。撃つ方向が分かっていれば。

 

 

 ドゥンッッ!!

 

 

 バッと飛びすさる六人。避けるのは簡単。

 

 シンクとアリスは花びらのように軽やかに。

 

 良太郎とクルシェフスキーとリーライナは素早く飛びすさり。

 

 シャルルは力強く飛び上がり回避。

 

 

『馬鹿だろテメエ等!! 空中じゃコイツは避けられまいッッ!! 死ね、スラッシュハーケンッッ!!』

 

 

 良太郎は葉巻を咥えたままで、喋る。呆れた口調だ。

 

「一々技名口に出してりゃ対処してくれって――」

 

 

 ガガガガガガガガガーーーーン!!!!

 

 

「言ってるようなもんだぜ家宰さんよォ」

 

 荒野に鳴り響く銃声。その命中場所はスラッシュハーケンのワイヤーの一点部、一カ所への㎜以下。

 

 ベレッタとデザートイーグル。

 

 別々の銃によるミクロのレベルの正確無比な集中射撃に、スラッシュハーケンのワイヤーがちぎれ飛び、大木に深々と突き刺さって止まった。

 

 

『ば、バカなッッ!! 金属で出来ているんだぞッッ!!』

 

 

 同時に飛び上がるのは、着地していたクルシェフスキーとシャルル。

 

 クルシェフスキーはグラスゴーの胸部を、シャルルは頭部を、長剣と大剣で薄く薙いだ。

 

 

 キーン。

 

 

 静かな金属音と共に、グラスゴーの頭部は泣き別れと成り、ファクトスフィアはその意味を無くし、胴を薙がれたことで脱出装置にまでエラーが出た。

 

 この様なこと。余程の剣の達人でないと不可能な事だが。シャルルとクルシェフスキーはそれぞれがラウンズ級かラウンズを超える個人戦闘力の持ち主。この程度、容易きこと。

 

 だがまだ手は動くとばかりに空中にいたシャルルとクルシェフスキーを叩き潰そうとする家宰は、しかし。

 

「私たちを忘れてはいないかしら?」

 

 アリスが緑色の双眸を煌めかせ、蒼穹の空の下、金色に輝く長いツインテールを靡かせながら跳躍し。

 

「お母様ほどの腕はないけれど超旧式のKMF一騎に後れを取る私ではなくってよ」

 

 ほぼ同時にシンクが深く青い双眸に攻撃箇所を見据えて、母アリスと同じく身の丈ほどもある長いツインテールを靡かせて跳躍。

 

「嚮導学校首席の力を見せて差し上げますわ」

 

 最後に腰下へと流れる金色の明るい金髪を靡かせ、珍しくも騎士服に身を包んでいるリーライナが飛び込む。

 

 三人が跳躍する。狙いは両手、右脚、関節駆動部の弱所。どんなものにも弱所はある。皆は其処を突いたのだ。

 

 鋭いフルーレで、鉄より固いステッキで、普通の騎士が持つよりも精錬された剣で。

 

 右手がズドンと地面に、左手もズドンと地面に落ち、右脚はずれるようにして胴体ごと地面へと倒れ込んだ。

 

 

 事ここに至り最早抵抗手段を喪った家宰。

 

「ひ、ひいいいィ」

 

 シャルルに潰された左手を押さえて上部ハッチから出てきた家宰の喉に、シャルルとクルシェフスキーの剣が交叉し宛がわれる。

 

「もう、手品はおしまいか?」

 

 と、何度も家宰と相対したシャルルが言い。

 

「君にラストボスは役不足だったみたいだねェ」

 

 そう、相対するクルシェフスキーが吐き捨てた。

 

 すると家宰は。

 

「あ、あ、ああっ、ああっ、あっ、……す、全ては……、全てはッ、フランク・ロズベルト様の命令なのですッッ!! 私は命令に従っていただけなので御座いますゥゥゥッッ!!」

 

 この期に及んでまでフランクに罪をなすり付けて、己は逃れんとしてきたのだ。

 

 この言葉を聞いた瞬間、シャルルは憤怒の形相と成り。

 

「死兵にすら成り切れぬ南天の駒がァァァッ!! もう黙れィィィィ!!!」

 

 大剣を持っていない方の手で家宰を殴り飛ばし、その意識を刈り取るのであった。

 

 

 ※

 

 

「これで一息、か」

 

 一度その場を離れる事にした皆。

 

 クルシェフスキー侯爵が進言する。

 

「シャルル、あの邸は後でヤマモト卿に頼んでアヴァロンのハドロン砲で焼き払った方が良いのではないか? この幼子の思い出の場所でもあるだろうが、血の臭いが詰まりすぎている」

 

 本当の幼少期。ロズベルト長男夫妻と暮らした想い出の場所は今や、血と鉄錆の臭いが溢れる恐怖の館と化している。

 

「周囲に被害が出なければな。それよりもこの者達のケアをせねばならぬ」

 

 奴隷達の何人かは。「南天様。南天様」と繰り返している。

 

「街の住人も調べていかねばならぬ」

 

「そうだな。南天の芽は摘まないと。血の紋章、大貴族連合、これらに続いてまた血の雨が降るからな……」

 

 

 ※

 

 

 街の入り口まで戻ると、街人が集まり平伏していた。

 

 皇帝陛下ー。クルシェフスキー侯爵閣下ーっと。

 

「まいったな。こういうのが嫌で外に出るときは変装してるんだが」

 

 クルシェフスキー侯爵も外には出る。当たり前ながら人間缶詰状態では精神衛生が保てない。

 

 ポートランドの酒場でシャルルやマリアンヌ、ローゼンクロイツ伯爵、ローゼンクロイツ伯爵夫人アリスと落ち合い、よく飲んだりして気分転換を図っているのだ。

 

 クルシェフスキー侯爵の治める地。影響する全域を含めるならばロッキーと西海岸全域が、日本酒の製造が盛んだ。

 

 クルシェフスキー侯爵と日本の関係から自然とそうなっていったのだが、このダメな大人たち。

 

 シャルル。クルシェフスキー侯爵。マリアンヌ。ローゼンクロイツ伯爵。ローゼンクロイツ伯爵夫人アリスは。良く集まる居酒屋で朝まで飲んでは全員そろって寝ゲロ、店主に怒られているのだ。

 

 二日酔いのまま行うそれぞれの公務は地獄だとかなんとか。

 

 そんな大貴族クルシェフスキー侯爵だが、一般市民・平民・貴族・問わず、謎の人で通っている。

 

 その権威はアッシュフォード公爵・カラレス公爵と並び、発言力はヴェランス大公・ヒトラー大公と並び。ロッキーを含めたロッキー以西の全領域を影響圏に持つ西海岸諸侯の盟主。

 

 そんな大人物と相まみえれば平民が平伏するのは当たり前なのだ。

 

「こういうのはシャルルの役目だろうに」

 

「儂は慣れておる。これを機に秘密の侯爵様のベールを剥いでしまってはどうだ?」

 

 厳めしい顔に笑みを浮かべるシャルル。気の置ける親友への心からの笑みだ。

 

 そうして駄弁っている間にも奴隷達の幾人かは。

 

「南天様、南天様」

 

 呪文のように繰り返している。

 

 シャルルは自身の豪腕をその身に受け気を失っている家宰を見る。

 

「こやつ、カンザスの150の諸侯のうち17の諸侯が奴隷売買に。人身売買に手を染めておると言うておったな」

 

 アリスが割って入る。

 

「そこまで? 穢らわしい。現代で奴隷貿易だなんて信じられないわね」

 

 リーライナも。

 

「17で収まるでしょうか陛下」

 

 と進言。収まらぬだろうなとシャルルは考えていた。

 

「それにこの少女だ」

 

 シャルルの腕の中で眠る少女。余り外に出ていないのか血色が悪い。

 

「この領は蒼天双翼光環旗を掲げておる。自らを南天の支配下だと言っているようなものだ。無論領民には一切罪がない、が、領主一族は……」

 

 身の丈ほどもある金色の長いツインテールを揺らし、シャルルの傍に歩みでる、シンク。

 

「如何した?」

 

「はい、シャルル陛下。そのご注進を」

 

「差し許す。かまわん、この場で申せ」

 

「はい、それでは。……この先代の孫娘と見られる子ですが、不憫とは申しますが他国へ養女として出されては? 仮にこの子が幼さを理由として大逆罪から逃れたとしても、ブリタニアでは生きづらかろうと」

 

「ふむ。儂もこの幼子にまで罪を適用しようとは考えておらぬ。どうするかだ。大逆罪についてもまだ詮議が済んでおらぬからどうするか」

 

「しかしシャルル、法は皇帝であっても曲げてはならぬもの。ということはよくよく肝に銘じておくんだ。皇帝であっても国法は曲げてはならない」

 

 クルシェフスキー侯爵の言葉に苦虫をかみつぶしたような顔をしたシャルルは。

 

「そんなことはわかっておる」

 

 とだけ返す。

 

 

 やがて空に小さな点が一つ見えてきて、直ぐさま大きく姿を現した。アヴァロンである。

 

 アヴァロンは街外の広場に着陸して、下部ハッチを開くとKMFではなく、一台のトラックを吐き出した。

 

 アヴァロン指揮官の日本式の黒い軍服に身を包んだ山本五十六も降りてきてリーライナの隣に立つと、様子を見守る。

 

「リーラ、結局討ち入りはどうなったのだ? 怪我人は出とらんだろうな」

 

 いずれ劣らぬブリタニア大貴族と大日本帝国外務大臣、更にはブリタニア皇帝。

 

 全員が実力者ばかりだから心配はしていなかったが、万一もあると、愛する女性に問い正す山本。

 

「ありがとう。みんな大丈夫よ。それよりね、酷いのよ。性奴隷にされていた人たちがいて、邸は荒くれものに占拠されていてね」

 

 

 山本が話している間にアヴァロンから吐き出されたトラック、それを見た良太郎が。

 

「おいおい、シンクよお、あれ、俺たちが此処に来るときに乗ってきた」

 

「そうね。私のことを舐め回すように見てくれた運転手が運転していたトラックね」

 

 降りてきたトラックは動かず、ただ手錠を掛けられた男がシャルルの前に引っ立てられた。

 

 心なしかげっそり痩せて見える男は、シャルルを見るなり皇帝だと気が付きその場で跪いた瞬間。

 

 ドゴオッ!

 

 シャルルの太い腕で殴り上げられていた。

 

「ぐへえッッ」

 

 転がり回る男の胸ぐらを掴み上げ。

 

「何領だ? 貴様が奴隷を運んだのは」

 

 シンクが冷たい声で補足した。

 

「素直に喋った方が良くてよ。この御方が誰かはお分かりよね」

 

 

 男は喋った。素直に。30領ほどと。

 

 当初の話しより多いこの数に。シャルルはカンザス一帯の調査を決めるのだった。

 

 

 これで当面の話は決着が付いた、奴の帰るべき場所は潰し、奴隷の販売ルートも洗い出せそうになり、孫娘も助け出せた。……凶報が入ったのはその時だった。

 

「なん、だと。そうか、いやいい、わかった、ナナリーは無事なのだな? 擦り傷程度、か。わかった良く守ってくれたキューエル卿にヴィレッタ卿。のちに褒美を取らす。うむ、ナナリーの傍に着いていてやってくれ。ルルーシュは? ふはは、日本で無礼討ちはまずかろう、マリーベルとオルドリン、クララにも大事はないのだな? ほう、マリーベルは死罪を言い渡したか。そういう事ならば、ますますブリタニアには戻って来んな。こうなればこちらから日本政府とその上層部に連絡を取って対処を願うしかなかろう。正直この件はもう終わりとしたい。儂の可愛い娘が気に病み傷つきかねないのだ。ああ、誰かは言えぬ。すまん。ではな」

 

 ピッ!

 

 端末を切った瞬間シャルルは、アヴァロンの壁に自らの拳を力強く叩き付けた。

 

「フランク・ロズベルトォォォッッッ!!!」

 

「シャルル」

 

 クルシェフスキー侯爵が問い質すと。

 

「ナナリーがバスケットの最中に足首を捻挫したらしい。捻挫で車椅子で早退中だったところ、車に乗る前に走って逃げていたあの男にぶつかられて転倒して擦り傷を負ったそうだ。キューエル卿がナナリー殿下に不敬であるぞと言ったところ、『ナナリー殿下がこのような場所にいるはずがないッッ!! 貴様等こそロズベルト男爵家当主である自分に対して不敬であるぞッ!』と走り去ったそうだ。なんでもその少し前にマリーベルとオルドリンと、クララに下女と言い、よ、よ、よ、夜の、あ、あ、相手を」

 

「シャルルもう良い! 気を落ち着かせろ! 済まなかった言いづらいことを聞いてしまって……しかし、あのクズめ! 我が義娘モニカへの不敬から始まりどこまでやれば気が済むのだ!!」

 

 モニカ・リーライナ・シンク・カレン・ナオト・レオンハルトへの不敬。

 

 マリーベル・オルドリン・クララへの不敬。

 

 ナナリーへの不敬と傷害行為。

 

 そしてロズベルト領への調査と討ち入りで判明してきた南天との繋がりと汚染。

 

 ロズベルト家の奴隷貿易。カンザスの貴族30家が絡んでいる人身売買。

 

 シャルルは大逆罪の適用を視野に入れて、今後を進める方向で考えていた。

 

 

 

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
  • レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
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