うとうとと、夢現。ぼんやりと浮かぶ景色の中、金縛りの様に身体を動かせない。幽霊が出る前触れかの様だ。
丸坊主のグレイの‟スーツ”を着た男。山本五十六は、その幻視の中で、同期の人間を数人視た。今頃皆転生し、どこかの世界に居るのだろう。
自身の様に記憶を持っているのか? それとも一からの出直しなのか? それは生憎と奴らに会っていないから分からない。
此方の同期である夢幻会のメンバーとはそれこそよく会っているが、皆癖の強い人間ばかりだがいい奴らだ。
そういえば、一人だけ、全く癖のない平凡なのが居るな。
嶋田繁太郎。二回目の転生者で、一回目の前の事については多くを語らない男。
一度宴席で酒が入ったときに、サラリーマンの月給ではこんな高級な酒なんてと愚痴をこぼしていたので、サラリーマンだったらしいことまでは分かっている。
仲間の詮索などしたくはなかったが、一人を除いて一番親しい男の過去とならば興味も湧いて、酔った勢いで聞いてみたが「あー、ダメ」と言って語らなくなってしまった。
別に後ろ暗いことがある訳じゃないけど、平凡な生き方をしていた何処にでも居る人間で、特に語ることは無いんだ。と言っていた。
嘘ではないのだろう、彼は嘘を吐くのが苦手だ。そのくせに好きな相手には無理をして嘘を吐く。今だってそうだ。クルシェフスキー卿に。
そこまで考えたときだった、この夢現な状態の視界に金色の長い繊維がさらりと流れてきたのは。
直ぐ隣からだった。その繊維の後に白い何かと、その中心にあるエメラルドグリーン、俺だけの翡翠の色がある。
ああこれは分かった。今生で出逢い、永遠の愛を誓い合った女性のものだ。名をそう、リーライナ。
リーライナ・ヴェルガモン。
「――くん」
リーライナ。俺が手に入れた宝石。夢現に見るお前もぼんやりとはしているが綺麗なものだ。こんな美しい宝石を手に入れることができるとは思わなかった。
「――っくん」
遠くから声が聞こえる。同期の者達の姿が、一つ、また一つと消えていく。変わって金色とエメラルドグリーンの色が濃くなっていく。
ああ、これは夢現が消え去るときの感覚だ。耳に変に残っていたもやもやとした、余り気分の良くない音も消えていく。やはりその代わりとして声が大きくなっていく。
「いっくん」
今度ははっきりと聞こえたが、これは果たして本物なのだろうか? レイスというのがスコットランドには居る。ブリタニアはイギリスを母体とした国。
案外このぼんやりした、俺の妻を模る者はレイスという幽霊の可能性も。
俺は幽霊を見たことはないが、転生がある以上は転生するまでの待機期間があってもおかしくはないだろう。その待機期間の状態が幽霊であるならば、レイスが居ても別におかしな事ではない。
仮にこれがレイスならば家宅侵入も甚だしい。掴んで投げて追い出してやろう。ここはヴェルガモンの邸、邸と言っても城か宮殿と言った広さなのだが、邸と呼ぶべきなのだろう。日本の常識で言う邸の概念を大きく覆してくれる。ブリタニア。大きさで言えばやはり規格外だ。
この巨大な国と比べれば、あのアメリカもまた小国に過ぎんな。
とにかくこの侵入者だ。妻の姿を模って本当に迷惑だぞ?
俺の美しき翡翠はこの世に二つ要らない。一人で良いのだ。
「いっく――んんんん~~~~っっ!!」
ガツンと頭をぶつけてやろうとしたら。唇が重なってしまった。
甘酸っぱいいつもの唇の味がする。俺の翡翠の味だ。
試しに舌を入れてみた。
「んふううううーーー!!!」
んん? 大きな声がより鮮明に聞こえてきて、目と目が合うその瞳のエメラルドグリーンも色彩をより鮮明にしてきて。
これはどういう――って。
「ぷはあッ!! り、リーラッ?!」
「ぷはッッ!! リーラ? ではありませんわいっくんッ!! ぼーっとしているから心配になって、顔を近づけたら急にそちらも顔を近づけてきて、口付けなさるのですものッ!!」
リーライナ・ヴェルガモン。この山本五十六の妻でヴェルガモン伯爵家の次期当主だった。
「いい加減にしてよね?! 普段から私のパイロットスーツ姿を破廉恥だ破廉恥だと詰っておいて、急に口付けしてくるのは破廉恥じゃないのッ?!」
「す、すまん、いや、何というかいま俺はぼーっとしておっただろう」
「ええ」
「夢現だったのだよ。現実の部屋の状況は見えているんだが身体が動かない。声も出せなければ視界もまともじゃない。その中に先に死んでいった同期の連中の姿を見たものでな」
そうだ。確かにアレは同期の連中の姿だった。
「それとわたくしへの口付けとどういった御関係が?」
どうでもいいが俺が転生者である事は伝えてある。リーライナにだけ。彼女は“転生者で何であれいっくんはいっくん。私の愛しい人”そう言って受け入れてくれた。夢幻会の仲間達にも了解は取ってある。心から愛する女に隠し事をしたくないのだと。皆には了承を貰ったがまた、リア充死ねという言葉の連発を食らってしまった。
それはさておいて、リーライナだ。少し唇を尖らせているのは意味が分かっている。
俺が普段リーライナの飛行服を破廉恥だと言っている所為だろう。
正直に言おう。ここは正直に言ってしまった方が話が早いし自分的にもすっきりしていい。
「まずその、だな。急な口付けは済まなかった。完全に俺が悪い」
「どうしてあの様なことをなさいましたの?」
リーライナは城内では基本的に丁寧語というか、お嬢様言葉を使う。そう教育されてきたから。普通の言葉遣いをしていると御両親はまあ大目に見ているらしいが、家宰やら、かつての教育係が煩いのだという。
まあ、彼女自身、どちらかと言えば、ですわますわな言葉遣いの方が地なので、余程のことが無い限り、嚮導学校内での平民ルームメイト達に教えて貰った、平民の言葉遣いはせんがな。
俺としては平民の、つまり普通の言葉遣いの彼女の方がいいからそっちで行って欲しいが、こればかりは家風な為に仕方が無い。
大体貴族の家の令嬢は言葉遣いが丁寧だ。リーライナの後輩のマリーカ・ソレイシィ卿などもですわますわではないが、ですますの言葉遣いをしているからな。
「いっくん!」
「あ、ああ、済まん。いや、口付けをするつもりではなかったのだ」
「では何を為さるおつもりでしたの?」
「頭突き」
はっきり言ったら両手で頬を引っ張られた。
ヴェルガモン伯爵家にて
「もっと酷いでは御座いませんのッ!! わたくしに何かお恨み事でもッ?!」
「ふぁいふぁい(ないない)ふぁいふぁふぁ頬ふぉひっふぁふふぁ(ないから頬を引っ張るな)」
頬から手を離してくれたが、少し痛かったぞ?
「痛いな」
「痛くされるようなことを仰いますからですわ」
「いや、だから話は最後まで聞け」
「ん」
「こう、輪郭がぼやーっとしておってだな、幽霊。こちらではレイスと言った方が良いだろう。それに見えたのだよ。それでまあ、人の家に勝手に上がり込んでくる見知らぬ幽霊を追っ払おうと、頭突きをしたらすり抜けるどころか」
顔の位置的に口付けをする格好となってしまった。
事故は事故だが普段から公序良俗やら破廉恥やらと、リーライナの飛行服姿について、ぐちぐちと言っているものだから、この行為が破廉恥じゃないのかとリーライナが切れたわけだ。
「うちは古城ではありませんわよ? きちんと普段より清掃もしっかりと致しておりますし、数百人と住んでおりますわ」
「無駄に広いからな」
家宰を筆頭に、侍従長、執事にメイド長。一般のメイドやら召使いが大勢働いている。
なんでもヴェルガモン家でもかつては召使いと軽々しく口を利いてはいけないなど、階級社会による厳格な決まり事もあったらしいが、クレア女帝の頃に大分と緩和されたのだとか。
「上位の伯爵家から上の貴族のお屋敷なんて皆お城か宮殿のような邸が普通なのですけれど」
「知っている。ブリタニアらしいスケールの大きさだ」
最盛期のアメリカの三倍もの広さを持つ国だ。土地も大いに余っているのだろうと思いヴェルガモン伯爵と語り合っていたことがあったが。
※
『おや、ヤマモト卿はブリタニアにはお詳しいとお伺いしておりましたが』
年下の親義父(おやじさん)を持つとは思わなかったから、戸惑っていたが、なに、話をしてみれば直ぐに打ち解けることが出来た。
そんな中で飛び出したのが例の話題。土地関係の話だ。
『我がブリタニアは御存じの通り人口が非常に多いでしょう? 平民がほとんどですが所領を持つ貴族などもそれなりにおりましてね。結構な土地が貴族の土地だったりするのですよ。それでも土地はいくらでもあるのですが持ち主の居ない土地は皇帝陛下の物でして、本当の意味で余っている土地はないのです』
功績を挙げた者を男爵以上の貴族として取り立て土地を与えたり、現在土地を持たない貴族が何らかの褒美として下賜されるという形で土地は消費されているという。国として余っている土地はない。つまりブリタニア最大の地主はシャルル陛下となる。
しかし、ヴェルガモン伯爵も誰から聞いたのだろうか? 俺がブリタニアに詳しいと。俺はアメリカにはそれなりに詳しかったが、ブリタニアについてはデカすぎる国と現代でも中世の在り方がそのまま生きている国ということ以外、そこまで詳しくはないのだが。
まあ、これについては知っていたが、まさかウィスコンシンが丸ごとヴェルガモン領で領民が800万人近いとか、考えられん規模だ。まだまだ増え続けているから近く一千万に到達するだろうとか。
なにせヴェルガモン伯爵家は五大湖経済圏の中心地。発展に発展を重ねている。日本との繋がりも深く姉妹都市の提携をしている都市も多い。それとアメリカのウィスコンシンより少し広い。
これは大貴族連合とのちょっとした内戦の際に周辺の貴族をヴェルガモン伯爵の軍勢が討ち取り、その貴族の土地をそのまま与えられたかららしい。
ヴェルガモン伯爵は此処だけの話と、言い置いた上で。
『私としては要らなかったのですよ。管理が大変でしょう』
『伯爵ほどの大貴族ならば中小貴族の土地だった場所の小さな領地など簡単に管理できるでしょう?』
『そうお思いでしょう? 風土や風習の違い等色々ありましてね』
なるほどと。関東と関西の違いのようなものかと思った。
『先に我が領に編入された土地の新しい管領などが我こそが先にヴェルガモン伯爵様のお目に適ったのだとか、馬鹿な争いを始めたりして、仲裁するのにうちの人間を派遣したりとくだらない争い事で書類整理が増える一方でしてね。頼むからしょーもない事は止めてくれとこちらが頼み込みたい気分ですよ』
『大変ですな』
『他人事だと思っておられませんかな? 私が引退した後我が領を次ぐ次期当主はリーライナなのですよ? つまり似たような苦労がリーライナにも回ってきて、リーライナを補佐する婿たる御貴殿にも同じようなことが回ってくるということなのですよ』
『私は東京に土地は持っておりますがこんな800万人近い領民を持つ領地を治めたことなど無いのですが……』
『え? すでに一千万には到達しておりますよ?』
『はあっ?! え、いや、リーライナからは770万と』
『それは結構前の情報ですね。現在は1千飛んで10万か20万でしたよ?』
しまった。リーライナの言葉を鵜呑みにしてしまっていた。彼女の情報も正しいのだろうが、それは何年も前の情報だったのか?!
俺も自分が住む土地のことはもっと調べておくべきだったな……。ネットで見れば一発なのに、いかんな。頭が古い。
『リーライナの代では1500万人を優に超えていましょう。後を頼みますよ婿殿』
※
「しかし馬鹿な小貴族もいたものだな。ヴェルガモン伯爵家は総兵力7万ほどの騎士団を持つ大貴族。周りもシュタットフェルト辺境伯、ソレイシィ辺境伯と大貴族ばかりだ。そんなところで反乱を起こして勝てるとでも思っていたのか」
「大貴族連合のことですの? ああもう貴族言葉止め。大貴族連合の背後には南天が居たのよ。だから勝てるとか考えてたんでしょうね。なにせ世界中に17億の信徒を持つ巨大勢力だもの。ブリタニア内にもあるわよ? それっぽいカルト組織。もちろん見つけ次第検非違使が逮捕して行っているけれど」
「リーライナ、前から感じていたのだが、何故かブリタニア語には日本語が混ざっているな」
「家族国家だもの。ブリタニア人ってみんな日本語が使えるんだから、言葉遣いも似てくるわよ」
「しかし言葉遣いがリーラのそれになっているが大丈夫か」
「家宰とかに聞かれていなければね。いっくんとお話していると、嚮導学校時代の友達を思い出すのよ。それで、ね?」
同期の桜、か。リーライナにもそういう時代があったんだな。軍人誰しもそうだが。
「しかし、驚いたのはヴェルガモン騎士団に水軍があった事だ」
そう、天空騎士団に、陸上騎士団の、つまり空軍と陸軍については伺っていたのだが、海軍ならぬ、水軍があったのだ。
「ああ、水軍ね」
「河川砲艦だけならわかるが、戦車揚陸艦や駆逐艦まであるとは予想外にもほどがある」
ほとんどは河川砲艦だが、信じられんことに駆逐艦やら、輸送艦まであって、本格的な海軍に近い。
こんなものがヴェルガモン領にあった事が予想外だった。特に説明もされていなかったし海軍も水軍もないものと思い込んでいたからな。
ヴェルガモン領のような内陸に水軍があるとは思わんだろう? 国境を接している国があるわけでも無し。
「あんなの元々作る予定なんて無かったのよ。無駄に軍事費が掛かるし維持費も。ただうちに対して喧嘩売ってきた馬鹿貴族共の領地が、寄りによって直ぐ北側のアッパー半島でね。スペリオル湖の北側の大貴族連合に所属していた貴族から湖越しに支援を得ていたの。それでお父様は急遽河川砲艦と駆逐艦まで急増して輸送船の撃沈を初めて輸送ラインの寸断を図ったのよ」
「無茶しておるなヴェルガモン伯爵も」
湖に駆逐艦。ヴェルガモン伯爵家という大貴族だから出来る離れ業だ。中小の貴族家がやれば維持費で死ぬぞ。
「輸送ラインを破壊してからアッパー半島みたいな田舎に態々進駐して、スペリオル湖の向こう側の中小貴族の討伐に輸送艦まで急増して戦車持ってってもう兵法も戦略も戦術もない力推し。河川砲艦と駆逐艦、輸送艦で艦隊編成してそれで一気にスペリオル湖の向こう側を制圧したのよ」
「当然その褒美は出るだろう」
「だからその田舎のアッパー半島を領地として下賜されたの。誰がいるかってのよ戦功功労者がお父様だけだったから、お父様しか居なかったのよね受け取る相手が。それとスペリオル湖を下賜されたわ。ホントはお父様が討伐なさった大貴族連合に所属していた貴族の領地を全部だったらしいんだけど。もう充分ですって陛下とサシの飲み会をして断ったのよ。そしたら陛下“また儂の管理地が増えてしまうな、くそったれの大貴族連合め!”ってお怒りになったんですって」
そういう経緯があって水軍があるのか。北側のスペリオル湖に1万の兵を割き、東側のミシガン湖に5千の兵を割いているようだが。
「維持費を考えたら馬鹿らしくて。なんで湖に駆逐艦や戦車揚陸艦がいるのよ」
分からなくもない。それもアッパー半島のような田舎の防衛のために。
「それからは全力で土地余りのアッパー半島に移住者を募集しているのよ。でもみんな領都のミルウォーキーとかマディソンとかの大都市圏に集中しちゃって」
関東一極集中と同じか。最近は他の都市にも人が移り住んでいるらしいが。まあ、日本も全土が発展し尽くしておるからなあ。
日本もブリタニアも皆、田舎には住みたがらんな。
「すまんがリーラ。地図上の面積にアッパー半島は?」
「あの地図帳昔のよ? 大貴族連合が反乱を起こす前のもの」
なに? ではまったく違う地図になるではないか。
「いかんだろうアッパー半島も入れんと」
「入れてるわよ最近の地図帳には。ちょっと持ってくるから待ってて」
そう言い残してリーライナは部屋を出て行った。
アッパー半島か、かなり大きな半島だったはずだが、詳細までは知らんな。
しかしそんな田舎を押し付けられるとは、ヴェルガモン伯爵も付いていないな。せっかく領地を下賜されても田舎ではなあ。山ばかりの土地とか貰っても、どうしようもないしな。
“お嬢様っ! 廊下を走るなどはしたないっ!”
“お、おほほほ、少し急ぎのご用でしたの。以後気をつけますわ”
メイド長か。あの方は礼儀作法に煩いからな、それが仕事だから仕方が無いが。
「いっくんただいま戻りましたわ」
「文法が少しおかしいぞ」
「メイド長に見つかっちゃったのよ。別に廊下を走っても良いじゃ無い」
「平民になっとるな」
「では貴族に戻りますわ」
「コロコロと変わるな。こちらまでおかしくなる」
俺の後ろに周り来て、肩越しに身を乗り出すリーライナの腰下まで届くきれいな長い髪が、俺の頬を擦りながら机へと流れ落ちた。
良い香りがする。この香りのおかげで眠気が吹き飛んだ。リーライナのこの明るい金色の長い髪があれば、リーライナが部屋に居れば、紅茶の香りも、お香も必要ないな。
俺の美しい妻リーライナ・ヴェルガモン、その翡翠の色の瞳が美しい。
「言葉遣いにつきましては万が一を考えましてこちらで。五十六様。こちらが最新の地図となります。一応すべて書き換えた分となっておりますわ……、あの、如何為さいましたの? わたくしの顔や瞳を見つめて……は、恥ずかしいんだけれど」
「いや、改めて俺の妻は美しいなと再確認していただけだ」
「う、うつくしっ! も、もう、……馬鹿な御方」
馬鹿で結構だ。自分の妻の美しさをまた一つ知れて気分が良い。
さて、本題の地図だが――。
広げられた地図にはヴェルガモン伯爵領全図と明記されている。確かにアッパー半島も入っているな。
ヴェルガモン伯爵領全図
領地:ウィスコンシン+アッパー半島+スペリオル湖
領地面積:約295,000km²
陸地面積:約212,610km²。
水域面積:約110,000km²
総人口:1020万人。
ヴェルガモン伯爵とは五大湖工業地帯に大きな影響力と発言力を持つ、大貴族。
大きな固有の騎士団を持ち最大勢力の陸上騎士団は約6万人
航空戦力として天空騎士団を約1万人
水上戦力として水上騎士団1万5千人
その他予備役を含めた総数は9万5千人
最大で8個騎士団の編成が可能なほどの常備兵を保有
第6世代戦闘機や第7世代KMFに、戦車・装甲車・河川砲艦・駆逐艦・戦車揚陸艦も多数運用
「……ちょっとまて、以前お前に聞いていた騎士団の数、予備役数含めた分よりこの説明では2万も増えておるではないか。それになんだこの領地の広さは……ああ、なるほど。スペリオル湖全体を合計した数値か」
「ええ、それとアッパー半島の警備の分も必要ですので騎士団の総数が増えましたの。水上騎士団は言わずもがなですわ。本当、こう言っては地元の人に悪いけれど、なんと申しましょうか、その」
「言いたいことは分かるが仮にも次期当主となる貴族だ。口にするな」
まあ、とりあえずはアッパー半島の開発だな。現状のままではヴェルガモン伯爵領にとってアッパー半島が完全に足手まといだ。
無論それでも圧倒的な速度でヴェルガモン領は発展して行っているわけだが、ミルウォーキー経済圏とマディソン経済圏が大きい。
とくにミルウォーキーはすごい。強化耐震ブロック構造の都市に高層ビル群が乱立している。あれはミニ東京だな。
「アッパー半島につきましては自然を壊しすぎてもよろしくないので、都市部の開発に専念していこうと考えておりますわ。まあ、これはわたくし個人の考えなのですけれど」
リーライナが後ろから腕を回して俺の首に抱き着いてきては、肩に顎を乗せてきた。
俺の丸坊主の頭や肌に、リーライナのさらさらの長い髪と、温かい肌が触れてきて、実に心地が良い。
「五十六様はどうお考えですの?」
こういうことは、以前なら破廉恥だとか思っておったろうな。今は耐性が付いたが。
それに愛する女と、リーライナとこうして触れ合うことも、お互いの愛を深め合う良き行為でもあると気が付いたのだ。
男と女の関係もまた学ぶべき事が多い。
「うむ、俺は……」
領地運営についてはしたことがない素人なのだが。
まあ、素人意見で良いというなら。
※
『そういえばヴェルガモン伯爵。御貴殿の元にロズベルト男爵の父親が来ておったそうですな。侍従長殿が憤慨しておりましたぞ』
『ああ、アルバート・ロズベルト卿の件ですか。ええ、来ておりましたよ』
『なんでも卿はリーラ……しつれい、リーライナへの不敬をお許しに成られたとか。何故かと思いましてね。丁度私は東京で彼女と待ち合わせをしておりましてね。事の次第を耳にしたとき怒りと呆れの両方がない交ぜになった感情に襲われまして』
『怒るに怒れなかった? でしょう?』
ヴェルガモン伯爵の瞳はエメラルドグリーン。その瞳は笑っていなかった。
『許すと思いますか? 我が娘をたかが田舎の物知らずな男爵風情に公道で侮辱されて』
明るい金色の髪。リーライナと同じ色の髪が、少し揺れた。
『ただ、陛下が何もせずという沙汰を下し、個人に任せると為された以上は、私が怒りをぶつけるというのも少し憚られましてね。ましてや侮辱行為に及んだ当人ではないのですから。ですので、私は許しました“私は”ね』
にこやかに笑う優男という風体。かなり出来るとは思うがどれ程強いのか分からない。まず間違いなく達人の域だ。隙が無い。彼曰くヤマモト卿と初めてまみえたとき、余りの巨大さに押しつぶされそうになりましたよ。との事だが。
俺から見れば彼も充分大きく見える。
だがまあ、なるほど。ヴェルガモン伯爵家は伯爵家の中でも最上位に位置する伯爵家。子に同じく伯爵という階級の子を持つほどに子は多い。彼が何かをせずともロズベルト男爵は終わりということだ。
多方面でもやらかしておるようだが、怒らせてはならん人物を怒らせてしまっているようだな。
『ところでヤマモト卿。うちのリーライナはどうですか? 貴殿の妻たるに相応しいでしょうか?』
値踏み、ではなく、婿として聞かれた。年下の義父より。この様なことがあるとは考えた事も無かったが、不可思議な感じだ。
正直な所を答える。
『あれほどのいい女を私は知りません。エメラルドグリーン、翡翠その物の瞳は深く麗しく、腰下へと流麗に流れる美しい金色の長い髪は明るく夜を照らす月のよう。透き通るような白い肌は水を弾き、正しく白磁の肌。失礼ですが柔らく大きな胸の温もりは安らぎを与えてくれ、私を深く温かな眠りに誘います。先に御子を作ってしまったことお詫びのしようもありませんが、あの様ないい女を抱かずに居られる方法などこの世に存在しないでしょう』
『外見が美しいからでしょうか? 父親であるからというわけでは在りませんが、あの子は間違いなく見目麗しい女です。引かれる男も多い事でしょう。それが証拠にヤマモト卿の様な強大なる存在をも引き寄せ、そして己が物として見せました。傾国の美女とまでは申しませんが、あなたを落として見せたことを考えるに強ち間違いでも無いでしょう。そんなあの子の外見だけにあなたは引かれたのでしょうか』
問答のような問い掛けに俺は一言だけ告げた。
『無礼千万であるヴェルガモンッ! この山本ッ、おなごを選ぶにその外見で選んだりなどせぬわッッッ!!』
一喝。ただ一言。何故怒ったか? 当たり前だろう。外見で選んだのかなどという設問そのものがリーライナ・ヴェルガモンへの侮辱である。
彼女への侮辱は、けして許さぬ。俺の女。我が愛しき妻への侮辱はこの山本、義父であろうとも許さぬぞ。
俺の怒声に静まりかえる室内。この場には彼の警護も複数居るが、誰も動かない。そして、彼は苦しそうな、それでいて真からの謝罪の言葉を口にした。
『御無礼を平にご容赦願いたい。ヤマモトイソロク閣下。そしてあなたほど我が娘に相応しき男を私は知らない。これまで多くの男が婚約者候補として我が娘に近づきましたがその全てが美貌に惹かれての欲望に塗れた男だったのです。娘もそれに気付いており全ての縁談をお断りして参りました。無論、中にはヴェルガモンの名に引かれて来たような権力欲に塗れた者もおりました。彼女自身の手で皆無礼討ちにされておりますがね』
薄く笑うヴェルガモン卿。その翡翠の瞳を真正面から見つめたまま放さない俺。
『そんなあの子が抱かれたという報告を私にくれたとき。私の心を満たしたのは歓喜の気持ちでした。ついに見つけたのか! あの子が認めた本当の男を! と。それがアドミラル・ヤマモトだと本人から告げられたときには悦びの余り最高のロマネを開けて、喇叭飲みなんて馬鹿な飲み方で一気飲みしましたよ』
そして翡翠の瞳を一度閉じると開き。
『娘を、リーライナのことを、これからもどうかよろしくお願い申し上げます。世界でただ一人、リーライナの婿となるべくしてなる漢。ヤマモト閣下』
空気が和らぐ。俺が和らがせる。俺に相応しき女と義父殿が認めてくれたから。これ以上怒る理由もない。その謝罪、この山本受け取ろう。そしてあなたの娘殿はこの山本五十六がもらい受けた。
『ぷはッ、はあ、は、聞きしに勝る気迫ですな。ヤマモト卿。衛士達の中にはどうやら立ったまま気絶している者も居るようです』
『申し訳ない。リーライナへの無礼は例え実父のあなたであっても許せないのですよ』
『あの子があなたを選んだ理由が分かりましたよ私にも』
『まあ、偉そうなことを言っていても私はリーライナの尻に敷かれているような状態なのですがね』
頭を搔きながら笑顔で話すと、ヴェルガモン伯爵も笑顔で。
『あの子は、騎士としての実力については、嚮導学校を首席で卒業するほど強いということは当然として、強かですからね。ヤマモト卿も重々お気を付けください。妊娠結婚なんて普通貴族ではあり得ません。が、あなたが相手なら変わってきます。五大湖諸侯の反応、なんだと思います? “アドミラル・ヤマモトをヴェルガモン卿に盗られた”ですよ? 笑いましたよ。本当に愉快でした。娘が自分で取ってきたというのに』
◇
「いっくん、いっくん」
「ん?! ああ、ど、どうした?」
「どうしたじゃありませんわ。また上の空になって。今日は本当にどうしたの?」
リーライナが隣、まあ正確には背後から抱き締めてきて、頭だけを俺の右肩に乗せている状態なのだが。
より身を乗り出して、俺の顔をのぞき込んでいた。
翡翠の双眸が俺の顔を捉えている。
俺も少し隣に身を乗り出して――。
「んッ――」
リーライナに口付けをした。
俺の妻は美しい、外見ではない、その磨き抜かれた宝石その物の心がだ。
ヴェルガモン伯爵の城へロズベルト男爵領討ち入りの為にアヴァロンがやってくるのはこの三十分後のことであった。
城内に居た子の貴族達は「私もリーライナお嬢様への不敬に対する制裁に参加させてくださいませ」と騒ぎましたが、ヤマモト卿とリーライナと私が行くと言い出したりしています。
公務の問題でヴェルガモン伯爵はやむなく城に残ることに。
どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。
-
嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
-
嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
-
山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
-
南雲忠一×ドロテア・エルンスト
-
玉城真一郎×クララ・ランフランク
-
玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
-
澤崎敦×井上直美
-
レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
-
原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
-
ルルーシュ(休日)×ミレイ
-
オデュッセウス×皇神楽耶
-
ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
-
枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
-
コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
-
高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
-
鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-