帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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クルシェフスキー領 領都ポートランドのBARにて

 

 

 

 時は逆戻り。

 

 

 

 クルシェフスキー侯爵……ジャンめに飲みに誘われた儂は皇宮を抜け出し、空の人となっていた。

 

 警備を掻い潜る事には慣れておる。

 

 幼い頃10歳の頃より兄さんやシゲタロウと共に良く抜け出しておったからな。

 

 後で侍従長に見つかっては怒鳴りつけられて叱られたものだが、それも含め、少年時代の淡い想い出よ。

 

 KMFの無資格操縦もしたことがある。日本と共同の元に行われたKMFの開発だが、昔見ていたマジンガー、ゲッター等のロボットアニメを思い出して乗ってみたいと思い勝手に乗って。事故った。

 

 ランドスピナーの操作ミスをして、アリエスの離宮の壁に穴を開けてマリアンヌに怒られた。

 

 コルチェスターの高等部時代には無免許運転をして補導されたこともある。

 

 あの時は、警察に迎えに来た父に殴られた。

 

『お前が怪我をするのはお前の勝手だ。だが人をはねて怪我をさせていたり、ましてや死なせていたりしたとき。お前は償えるのかッ!!』

 

 と言って殴り飛ばされた。

 

 今では丸くなっておるが、若い頃の父上は、まあ、今でも若いと言えば若いか、だがあの頃の父上には太平洋戦争を戦った頃の面影がまだ残っておった。

 

 昔は気の弱かった。いつも兄さんの後ろに隠れていた気弱な少年だった。シゲタロウと知り合って、兄さんと三人で殴り合って、強くなったのだが、儂はそれでも父上の事が怖くて仕方が無かったのだな。

 

 思えば十代の糞ガキがやっていたこととは言え、コルチェスター時代は無茶をした。愚か者の集まりのE.U.の様な少年法は我がブリタニアにはない。勘違いをした糞ガキ共が悪さをしていると、法に裁かれる事となる。

 

 そういうのはやはり何処の国にも居るようで、我が国にも当然のようにしている物だ。貴族のどら息子、ほとんどが子爵以下の貴族家の三男以下が多いが、そういう連中が中心となって悪さをしていることがある為、平民には手出しが出来ない。

 

 事実、不幸な話しだが手向かいした平民の少年が無礼討ちにされる事も起きている。貴族はそれだけで強い。その強き者こそ正しき心で在らねばならぬのだ。罪には罰を。信賞必罰であるべきなのだ。

 

 ペンドラゴンの治安は100%とは言わんが間違いなく良い。なにせこの儂が直接統治をしているところ。儂の目が黒い内はくだらぬ事はさせぬが。目の届かないところでは悪さをする輩もいる。

 

 儂は貴族の少年が法を犯したときには重罰を与えるよう法を制定している。強き者が弱き者を虐げるのは儂の最も嫌いな事の一つだからだ。

 

 まあ、重要なことだが、儂も迷惑は掛けたが平民を虐げたことがない事は、自分で自分を“勘違いした愚か者”にならずに居て良かったなと褒めてやりたい処よ。

 

 高校時代に無茶をしたこともある儂だが、気弱な方な性格だったと思うのだがなあ、ああしかし一概にそうで在ったとも言えぬか。

 

 仲良くなった平民の友達に誘われて遊びに行った先で、ナンパなどしたりもした。

 

 友達に『シャルルいけよ』と言われてだが。

 

 恥ずかしかったが、その時に遊んだ女の子に儂の妻となった子も居るからな。

 

 思えばハイスクール生活やその後の大学のキャンパスライフで浮かれていたのだろう。

 

 普段は触れられない平民達との触れ合い。

 

 平民の中に多くの友人も出来、所謂気分がハイになっていた。

 

 広くはあっても窮屈な皇宮暮らしの中で手にした外の開かれた世界。僕は今自由なんだと本当に浮かれきっていた。

 

 兄さんも優等生は優等生だったなりに、色々やっていたとも聞くし。

 

 コルチェスターは基本的に貴族しか入れぬ学校では在ったが、父の代で平民にも門戸を開いた。

 

 まあ金持ちの平民が多い中、必死に学習をして、アルバイトをしながら学園生活を頑張っていた者も居た。儂の淡い青春時代よ。

 

 もう二度とは戻らぬ一度限りの時代に、沢山遊び、沢山学び、沢山の友人を作ってきた。若人には告げたい、刻は止まっては居らぬぞ? とな。

 

 

『御乗客の皆様。当機はまもなくクルシェフスキー領ポートランド国際空港に到着致します。危険ですのでシートベルトのお締めをお願い致します』

 

 

 やはり超音速旅客機は速いな。日本ではもっと速い機体もあるが、相も変わらず半歩先を行かれるこの悔しさと切なさよ。

 

 いつか肩を並べられるときは来るのだろうか?

 

 

 

 

 クルシェフスキー領 領都ポートランドのBARにて

 

 

 

 

 さて、いつものBAR兼居酒屋に着いたが。クルシェフスキー……ジャンめの奴は。

 

「こっちだ!」

 

 目聡く儂を見つけ、声を掛けてくるジャン。

 

 蒼穹の瞳の色に、輝く金髪と口ひげが映える美中年。青い騎士服と、奥の壁にあるハンガーには青いマントが掛けられている。

 

 騎士の正装で来たのか? 何を考えておる? 目立つではないか。

 

「うむ」

 

 カウンターの一番端。チョイスが上手い。目立たない場所が一番良いからな儂等の場合は。

 

 最もこのBARで知り合いになった常連客の中には、儂等の正体を知っておる者もいるのだが。

 

「陛……っと、良く来てくれたなシャルル」

 

 陛下と言いかけたぞ? 何処に目と耳があるやも知れぬ。

 

 我が国にも南天の息が掛かった者が多数紛れ込んで居る故気をつけてくれよ?

 

「娘を侮辱された気分が収まり止まぬのでな。一人でワインを飲んで居ったのだが瓶ごと割ってしまったぞ。勿体ないことをした」

 

「仕方が無いさ」

 

 

 ――娘を侮辱されたらな。

 

 

 そう、数ヶ月ほど前の事。儂とジャンの娘は侮辱された。ペンドラゴンの大通りで。人の行き交う公共の場で騎士侯風情がと罵られた。

 

 犯人は分かっている。フランク・ロズベルトというカンザスの田舎の田舎の端っこに領地を持つ、ロズベルト男爵家の当主だ。

 

 自分で名乗っていた。二度も。おかげでその存在に気づけた。

 

 儂もこの人多きブリタニアの全ての貴族家を把握しているわけではない。

 

 木っ端貴族まで含めれば数十万、騎士侯、武勲侯まで含めれば何千万と居るからな。全員の顔と家名とを覚えろ等、土台無理な話よ。

 

 だが、其奴は、続き大日本帝国の東京でリーライナ・ヴェルガモン伯爵家令嬢に罵声を浴びせた。

 

 シンク・ローゼンクロイツ伯爵家令嬢をそうとは知らずに遊興に誘いセクハラ行為に及ぼうとした。

 

 カレン・シュタットフェルト辺境伯家令嬢を、マリーカ・ソレイシィ辺境伯家令嬢を下女と呼び連れて行こうとし。

 

 ナオト・シュタットフェルト辺境伯家令息を、レオンハルト・シュタイナー、シュタイナーコンツェルン令息を下男と呼び罵った。

 

「糞みたいな話しをするんだ。飲まずにはやって居られん。マスター、取っておきを貰おう」

 

 儂が注文するとマスターはほくほく顔でやってくる。

 

 店で一番高い日本酒を開けて。

 

「Yes, Your Majesty……と、でも、仰ればよろしいのですかお客様?」

 

「よしてくれマスター。儂はここに来るときはランペルージで来ておるのだからな。他の客に聞こえでもしたら大事になる」

 

「はっはっはっ、冗談ですよシャルルさん。大体、うちの常連客には存じていらっしゃる方も多いですよお二人のこと」

 

「マスター、私は大丈夫だよ。謎の人で通っているからね。公の場では滅多にこんな格好をしないから」

 

「儂の方はランペルージグループの社長として知られてもいるから大変なのだよ」

 

 話し込んでいくと盛り上がってくる。

 

 どうせバレているのだから等と身も蓋もないことを言い出したりするマスターやジャン。

 

 時折常連客が小声で、シャルル陛下こんにちはと挨拶に来たりする。

 

 昼間から酒を飲むなと言ってやったら、御自分は如何なのですか公務は? と返される。

 

 ここの客は知り合いが多いから気楽だが、気楽な分突っ込みも多くて適わぬ。

 

「モニカは……娘は気に病んでは居らぬだろうか……」

 

 ぽつり、呟きが漏れた。

 

 あの子は優しい。この絶対的階級社会に於いて自信への暴言を許してしまえる優しい子だ。第11階位ナイトオブラウンズでありながら、第4階位の男爵を許してしまえるくらいには。

 

 いや、そんな事であの子の優しさを推し量ることは出来ない。あの子は常々申しておる。正義は全ての人に対し平等に降り注がれなければならない。騎士とは民を守る為に強く在らねばならない。

 

 差別が大嫌いで、階級による区別すら嫌っておる。件の木っ端男爵が教育しようとしていたという子供の身を庇い助ける、とても良い子だ。よい子のお手本のような。

 

「それだけに儂は思うのだよ。あの子はロズベルトの不敬行為が続いておる昨今、気に病んでは居ないかと。自分が最初に処しておけばこの様なこと、階級制度を無視した蛮行が続き行われる事は無かったのでは無いかと」

 

 ぐいぐいと酒が進むが酔えない。人間気分が真剣なときには中々に酔えないのだろうか?

 

「私もその点が心配なんだよ。まあ、シマダ卿が傍に居るから大丈夫と考えても居るんだけれどね」

 

「シゲタロウか」

 

「シマダ卿の為人は彼の御仁と幼なじみである君がよく知っているだろう」

 

「……知っている」

 

 彼奴ならばモニカを任せられると儂は日本赴任中でのあの子のことを頼んでいるのだからな。

 

 ただ、最近懸念を抱く噂が耳に入っているのがな、少々気がかりだ。

 

「モニカは、シゲタロウに好意を抱いておるのだろうか?」

 

「それは……。どうだろう……私も懸念に思っていたところだ。もちろん仮にそれが事実であってシマダ卿の方にも気があるのならば、私は託せる御仁だと考えているよ。君は?」

 

「……まあ、儂も相手がシゲタロウならば文句はない。嶋田伯爵家という家格、大日本帝国海軍軍人から帝国宰相にまで上り詰めた経歴。何よりもその人間性と心の在り方。モニカを託すとするならばこれほどに相応しき男はおらぬだろう」

 

 ただ、もし、もしもそうだった場合、一つにして重大なる懸念事が上がってきているのだ。

 

「懸念って、何かあるのか?」

 

「大有りだ……、予想外に過ぎることがな。……大日本帝国の我が国の駐日大使、誰かは存じておるだろう」

 

「コーネリア殿下だね。それが?」

 

「いや、問題はコーネリアでは無いのだ。自分から言い出して聞かなかった故に承諾したのだがユーフェミアが補佐官としてついておるだろう?」

 

「ああ、それも存じ上げているよ。ユーフェミア殿下が本来ならば存在しない補佐官なんてポストに就いていると。もちろん君の承諾の元だろうとは思っていたけれど」

 

「先日のことなのだがな。……そのユーフェミアが『お父様っ! わたくし結婚を前提としたお付き合いをしたいと考える御方を見つけましたっ!』と、ホットラインで知らせてきたのだ」

 

 とても元気に、嬉しそうに。

 

 この御方しかおりませんと。

 

「なんだめでたいじゃないか。ナナリー殿下も日本の現宰相――枢木ゲンブ宰相の御子息、枢木スザク君との婚約が決まったんだろう。ルルーシュ殿下もマリアンヌも託すべき人物として認めたとか。ユーフェミア殿下にもそういう相手が決まったのなら尚のこと良いことじゃないか。祝い酒といこうか?」

 

「いや、それがな……」

 

 相手が大問題であった。いまの噂がもし本当なのだとすればこれはとんでもないバッティングなのだ。

 

「シゲタロウなのだ」

 

「はっ、え?!」

 

 ジャンの顔が面白い。変顔になる。

 

 驚きもしよう。

 

「シゲタロウなのだよ、ユーフェミアが心に決めた相手というのが……」

 

「ち、ちょっと待て、それじゃモニカがもしシマダ卿に好意を抱いていた場合……、ユーフェミア殿下が」

 

「競合相手となる。……だから、悩んでおる。無論モニカの気持ちを問い質したことはない。お互いに公式には親子であると名乗りあった事は無いからプライベートなことを尋ねづらい」

 

 するとジャンがグラスを一気に煽り叫んだ。

 

「冗談じゃないっ! 私はモニカが泣く姿を見るくらいなら君に決闘を申し込むぞっ!」

 

 怒るジャン。分からないでもない。ジャンにとってはユーフェミアは他人だが、モニカはずっと育ててきた大切な娘だ。

 

 もしも儂がユーフェミアとシゲタロウを結婚させたいからモニカには諦めて貰いたいなどと言えば、ジャンに手袋を投げつけられる。

 

 戦争ではない。儂とジャン、一対一のタイマンだ。儂もジャンも実力的にはほぼ互角、儂の方が力では上、素早さではジャンが上、僅差で儂の方が強いが、結局のところ千日勝負となって決着など付かぬ。

 

「落ち着いてくれジャン。儂等が決闘などしても決着は付かぬわ。それに儂からしてみればモニカもユーフェミアも共に大切な娘なのだ。二人とも泣かせたくはない」

 

「はああ、なんてことだよ。大体ユーフェミア殿下はシマダ卿と何処で知り合い、なんでそんな話になってるんだ?」

 

「東京見物を自由にしたいとホテルから抜け出して、その先で無理矢理ナンパされていたところを偶然そこに居たシゲタロウが助けたそうだ。暴漢、というか、ナンパ野郎共を肉弾戦で蹴散らして、で、“大丈夫だったかなお嬢さん”で落ちた」

 

「どこの恋愛漫画だッ!! シマダ卿はユーフェミア殿下だと知らなかったのか?!」

 

「ユーフェミアは本国でハイスクールに通って居ったからな。一応表舞台からは退いているシゲタロウが知る機会が無い。考えてもみよ。儂の子は300人以上居るのだ。全員の顔と名前を覚えておるのはブリタニア人くらいだ。ブリタニア人でさえ覚えて居らぬ者とていよう。男爵以上の貴族階級の者は皆知っているが」

 

「自慢するなッ! 君は結婚しすぎで子を持ちすぎなんだッ!」

 

「また今度、次の嫁を娶ろうと考えている。惚れた女がいてな。一つ勘違いせぬよう申しておくが儂は全ての妻と子を例外なく愛しておる。皆大切な妻で有り、愛する子なのだ」

 

「いい加減にしろッッ!! 君がそうやって無秩序に結婚を繰り返すから他国の口さがない者が『ハーレム皇帝』などと言いふらしているんだぞッ!!」

 

「惚れたものは仕方が無かろう」

 

 惚れた女が二人居てはならぬか? 三人、十人、百と居てはならぬのか? 愛故に……仕方が無いのだ。

 

 どうしてその気持ちを止められようか。

 

「はあ、はあ、そんな話をしているんじゃない。私は西海岸諸侯の盟主として根回しするぞモニカを推すように」

 

「するとブリタニアの四分の一がモニカを推すことになるか」

 

「君はどうなんだ。君自身の意見は?」

 

 儂にとって、モニカも、ユーフェミアも、共に愛する子だ。どちらか一方へ肩入れすることは出来ぬ。

 

「どちら共で有り、どちらでもない。故に儂は答えをシゲタロウに託そうと思う。儂等の手でどうこうと言えるべき問題でも無い。気付いて居ろうがシゲタロウは」

 

「ああ、あの御仁はお優しい。モニカを託すにしろ、ユーフェミア殿下と結婚するにしろ、大切に愛して下さるだろう。だが、同時に恐ろしくもある。信じられないほどの血の臭いを時々感じる。気が狂いそうなほどの死臭も。日本を影から支配すると言われるほどの御仁だ。何らかの秘密を抱えていらっしゃるのだろう。もちろん、それとこれとは別な話で、モニカにもユーフェミア殿下にも間違いなく相応しい御仁だからね」

 

 あの死臭はどこで付いてきたものなのだろう? 力ある者や聡い者は一目見て気付いている。ビスマルクの奴が。

 

『シマダ卿と初めて相対したとき。私は死を覚悟致しました。陛下、かの御仁は一体何者なのでしょうか?』

 

 そう申しておった。ビスマルクほどの男にそう言わしめるほどの死臭。

 

 幼なじみの儂や兄さんは子供の頃は気付かなかったが、自らを鍛えた末に力を身に付けたが故に知ってしまった。

 

 何も言わずに付き合って居るがな。

 

 今となっては気にもならぬし、なにより幼なじみだから信頼しておるのだ。

 

 誰よりもその為人を儂は知っておる。

 

 モニカも、ユーフェミアも、彼奴と結ばれれば幸せになれるだろう。

 

「話を戻そう。先にも述べたとおり、儂の答えは出せぬということだ。二人共に愛する娘故にな」

 

 グラスの日本酒を煽る。大吟醸は美味いな。

 

「となるとシマダ卿次第、か。まあ、確かに言われてみればこちらが選ぶべき事でも無いからね。これは自由恋愛にして政略結婚となるな。シマダ卿がどちらを選ぼうともブリタニアと日本の絆はより強固なものとなるだろうからね」

 

「問題があるとするならば、シゲタロウが二人を女として視てくれているかだ。儂は下は二十歳前後の妻も持っているが、シゲタロウにとって二人はそういう意味での“女”として視てくれる相手であろうか?」

 

「なに、愛は年齢じゃない心だ。モニカもユーフェミア殿下も、そのお心は美しい輝きを放っている。彼女たちを魅力的に感じない男など居やしないさ。それに心が決め手となるのはそれは君自身が証明しているし、喫緊ではヤマモト卿が証明した。お二人の結婚式には動かずのクルシェフスキーの私も動き、参列させて戴いたからね」

 

 あの結婚式こそ政略結婚にして自由恋愛の極地だったろう。

 

 ゲストにはユーロ・ブリタニアの二巨頭であるハイランド大公、ヒトラー大公も参列。儂自身も参列し祝辞を述べた。現役皇帝の参列する結婚式など久しぶりのこと故に少々大事になってしまったが、儂と五十六は気にせず普通に駄弁っていたが良き結婚式であった。

 

 しかしシゲタロウと付き合いが長いのに何故未だに繁太郎の発音にならぬのか。普通になってると言われているが釈然とせん。五十六は五十六と呼べておるというのにおかしなことよ。

 

「結局はシゲタロウの答え待ち、であるか。そういえば、最近もう一つ頭の痛い話があったのであったわ」

 

 ハア、とため息を吐く儂に、どうしたのか伺うジャン。

 

「いや、これも娘の話なのだがな、マリーベルのことだ」

 

「マリーベル殿下がどうかされたのか?」

 

「どうもこうも、彼奴、三流校卒の政治家になるとか夢みたいな事をほざいておるギャンブル狂いのニートと結婚すると言い出したのよ。それで儂がきちんと見ていないから変な男に引っ掛かるとフローラに怒られてな。だが、本人が惚れ込んでしまって居ってはどうにも出来ぬ。それも出逢ったらしいのはまだあの子が子供の頃の事だぞ? SPや儂の目を盗んで、ホテルから抜け出した先の公園で出逢ったらしいのだが、そこまで儂は責任が持てん」

 

「君もそうだけど、君の親族って抜け出すの上手いな」

 

 ああ、まあ指摘されてみれば思い当たるところが沢山在る。

 

 儂や兄さん然り、ユーフェミア然り、マリーベル然り。

 

「皆、儂や兄さん、もっと前で言うならクレア女帝等に似たのかも知れぬ。抜け出す、逃げ出す癖が」

 

「案外リカルド・ヴァン・ブリタニア大帝もそうだったのかもね。困った一族だよ。しかしそれは聞き流せない話でもある。皇室にニートは不味いだろう。それもギャンブル狂いって。フローラ様もお許しになるはずがない」

 

「ああ、だから注文を付けられた。一つ、皇室の者としての教育を行う事。一つ、ブリタニア皇室に入るのならば日本の政治家になることは諦めさせること。一つ、ニート状態は許しません。一つ、賭博を止めさせること。だ」

 

「尤もなことじゃないか。その人、本当にニートなのかい?」

 

「厳密にはニートではない。兄さんの担当するランペルージグループ内の部門の一つでKMFのデヴァイサーのバイトもしておるから。信じられんが第8.5世代機までならば乗りこなせる腕を持っているらしい」

 

 兄さんに伺ったときにはびっくりした。

 

 まさか、よもやただのニートと思って居ったあの玉城めがヴィンセント・カスタムを乗りこなせる腕を持つとは。

 

 簡易型とは言え仮にもエナジーウィング機をあのニートは乗りこなして居るのだ。信じられるか?

 

「十分通用するエース級じゃないか?! それでニートとは勿体ない……才能をドブに捨てているような物だぞ?」

 

 全く言わんとするばかりだ。彼奴には才能がある。正直軍のKMFパイロット適性検査を受けてもかなり高い判定を叩き出すだろう。

 

「玉城真一郎というのだが儂も知らぬ間柄ではなくてな。兄さんの家に赴く際によく居間でゴロゴロして居る輩だ。一見ごろつきに見える風貌だがあれで芯が通っているところもある」

 

「へえ、皇兄殿下は何と?」

 

「自分が決める話じゃない。ただクララも惚れ込んでいるから泣かせるようなことをしたら許さない、と」

 

「クララ殿下まで惚れてるって……クララ殿下って暗殺者だろう……何をどうすればニートに惚れるんだ」

 

「幼い頃に悪漢から助けられたらしい。その時、クララはギアスを既に自由に操れるようになっておったから悪漢など一蹴できたのだが、そこを大怪我を負ってまで助けてくれた玉城めに惚れてしまったのだとか」

 

 あばら骨を折る大怪我だったと兄さんに聞いた。病院の治療費は兄さんが出したらしい。

 

「……かっこいいね、それ」

 

「だから申しておろう。芯は通っていると。女の前では格好を付けたい。大人は子供を守る者……らしい。どうだ?」

 

「うん、悪くはないな、本人に脈は?」

 

「ダメだ。好みのタイプはギネヴィアやコーネリアのような年上のお姉様だそうだ」

 

 駄目な男でニートな男だが女子供を守ろうとする精神、心の在り方は本物。

 

 KMFパイロットの素質だけで言えば兄さんの見立てでもエースを張れるレベルにあるとか。

 

 ただ、本人の希望は衆議院議員らしく、選挙のことしか頭にない癖に、普段は何もせず金さえ有ればパチンコ、競馬、競輪、競艇に使い有り金を無くしている。

 

 ナナリーと共にアッシュフォード学園日本校に留学しているルルーシュは、玉城が兄さんの家でごろ寝をしていると腹立たしくて蹴飛ばしているとのこと。

 

 KMFパイロットの素質は間違いなく本物と太鼓判を押されているだけに色々と無駄に時間を消費しておる奴よ。

 

「じゃあもう結論が出ているじゃないか。その、タマキくん、か? タマキくんはマリーベル殿下もクララ殿下も脈無しということで」

 

 脈はない。現時点ではまだな……。

 

「ジャン……マリーベルやクララがそれくらいで諦めるタイプだと思うか?」

 

「……あき、らめないな……」

 

 そうだ。マリーベルもクララも。相手の好みのタイプが違う。そんなくだらん障害程度で諦めるような子達ではない。

 

 マリーベルが諦めないことを知っているからこそ、フローラは条件を付けて来たのだ。

 

 つまりはフローラもマリーベル・メル・ブリタニアがこの人と決めた相手と添い遂げんとする人間だと認めているということ。

 

 フローラ自身が諦めさせることを諦めているということだ。

 

「恋愛とは、斯様に問題ばかり起こるものなのか?」

 

「その恋愛を一番多くしている君が言う台詞じゃないだろう……」

 

 その通りだな。シゲタロウの方は彼奴自身に答えを出して貰わぬと行かぬし、まだモニカの気持ちがはっきりとはしておらぬ噂ばかりが先立つのみ。

 

 ユーフェミアはもうシゲタロウと心に決めてしまって居る様子だが。

 

 

 

 玉城の奴めは最悪マリーベルに拉致されるか、クララに監禁されてしまうぞ?

 

 

「さて、本題を話そうか。ロズベルト男爵家の話に戻るが――」

 

 

 

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
  • レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
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