現閣僚は操り人形
「た、た、た、大変だ枢木ッ!!」
「どうしたのだ澤崎ッ。儂は我が心の母たるナナリー皇女殿下の姿絵を見つめることで手一杯なのだ」
枢木ゲンブ。
大日本帝国現宰相を務める厳めしい男は、その厳めしさとは違い、ナナリー皇女を心の母と仰いでいる。
ナナリー皇女殿下が知ればお義父様から、一気に気持ちの悪い人に落下するというのに、姿絵を隠し部屋に飾っているのだ。
無論、この隠し部屋のことは辻は把握済みで、姿絵についてはいずれ、スザクくんに譲渡しようと考えていた。ゲンブ? ゲンブ如き小僧が辻に意見できるわけも無し。
その隠し部屋に澤崎が勢い込んで入り込んできたのだ。
「澤崎ッ! 貴様でもこの部屋へ入ることは許さないとあれほど――」
――では、私が居れば許して頂けますかな枢木さん――
現役宰相をさん、或いはくん付けで呼ぶことが出来る。
それは皇室の方々を除けば、あの方々しか。
どす黒いオーラが秘密部屋の室内を満たす。
枢木は、枢木ゲンブはそのオーラの持ち主である、彼の御方に対して真っ先に跪いた。
この方にとっては、ゲンブや澤崎など操り人形でしかないからだ。
誰かは分かっている。御方々の気配はある程度読めるようになってきた。
最も怒らせてはならない嶋田閣下ではない。その次くらいに現閣僚と縁の深い人物。
――辻政信閣下だ。
「つ、つ、つ、辻閣下、こ、この様な場所にお越しになるとは、ど、ど、どういったごようけんでありましょうか?」
脂汗が止まらない。どもってしまって上手く喋れない。それは辻が怒っているからに他ならない。
「枢木さん、あなたの情報部は、諜報機関は何をしているのです?」
いつも通りの落ち着いた声。
だが、静かなる怒りに満ちている。
「我が帝国で起きてはならないことが起きました」
「お、起きては、ならないこと、で、御座いますか?」
「我が国の往来にて神聖ブリタニア帝国第八十八皇女、マリーベル・メル・ブリタニア殿下が下女と蔑まれ。続き、そちらの」
ゲンブの背後を見遣る辻。そちらにはナナリー皇女の絵姿。
「ナナリー・ヴィ・ブリタニア皇女殿下が同一犯と思われる男によって障害を負わされ、侮辱されました。両案件共にブリタニアでは死罪です。あなたの諜報組織や護衛部隊はなにをやっていたのかと問い質しているのです……」
「そ、ソレは……」
「ま、この様な問答を交していることが時間の無駄ですが。間もなくシャルル・ランペルージ、ランペルージグループ社長がアヴァロンに乗って参られます。ブリタニア西海岸諸侯盟主クルシェフスキー侯爵。あなたもよーく御存じの山本さんも。リーライナ・ヴェルガモン卿、アリス・ローゼンクロイツ伯爵夫人、シンク・ローゼンクロイツ伯爵令嬢、麻生良太郎外務大臣が……要件は、お分かりですね?」
そうそうたる面子である。ランペルージグループ、クルシェフスキー侯爵家、ヴェルガモン伯爵家、ローゼンクロイツ伯爵家。
いずれも日本経済と大きく結びついているところばかりで、麻生外務大臣以外は揉めてはならない相手ばかり。
揉めたら損益が出る。その損益を御方々は看過為されない。
実のところ麻生外務大臣は辻の子飼いだから、麻生大臣と揉めたら大変なことになるのだが。
枢木もシャルル・ランペルージ社長の正体を知っている。
辻の怒りに合わせて生きた心地がしなかった。
「は、は、犯人の確保に向けて、た、た、た、直ちに特高警察を動かします!!」
澤崎は一人何も言わずに立っていた。
心の中ではひたすら美しき妻の名を叫びながら。
(直美ッッ、助けてくれ直美ッッ、直美ッッ!)
「以前南天が大部隊を集結させておる状況に変わらずというなら、こちらも振り上げた拳を降ろす事は出来んな」
ある議員が言った。
南側諸国は続々と中東地域に軍を集結させている。
現地に入り込んだ諜報員からの情報なのだが、とにかく諜報活動に支障が出続けているといった状況が実態で、まともな活動が出来ていないという体たらく。
衛星で調べようにも、衛星からも何らかのジャミングが発生しているのか、軍集団が続々と集まっているところまでは見えるのだが、詳細を見ようとすると画像に砂嵐が入るのだ。
南天が二機宙に上げているラピュタが何かしているのだろうか?
「御方々はこの件について?」
「当然皇室の方々と御方々は御存じであらせられる。問題は情報の確度だ。これだけは御方々以外は与り知らぬ事」
御方々は独自の諜報機関や機密組織をお持ちだ。
その情報の確度は帝国議会で得られる確度を遙かに上回る。
同時にその高い確度を持つ情報を、瞬時に帝国陸・海・空・海兵隊・更には沿岸警備隊や宇宙軍にまで伝達する方法を確立している。
以前、貴族院、衆院を通して上げた軍事予算XXX兆という軍事予算。
これでは足らぬと南側諸国の動きを察知した御方々は、当初の三倍超といった桁外れの予算を御方々のお一人であらせられる辻閣下と杉山閣下御自らが提示されてこられた。
『これで最低ラインだ』と。
それほどに事態は逼迫しているというのだろうか?
たかが中東如きの話ではないのか?
オイルなどほとんど需要がない。
御方々は民主共和制原理主義勢力の、南側諸国の北半球への進出を恐れているのだろうか。
遅いです
議長はチラリと左翼の約50席の議席を見る。
いつ見ても連中は異様だ。まるで機械のような感情無き瞳。天使の如き爽やかな笑みを浮かべ、発言するときも厳かでもなければ、声を荒げるでもない。
滔滔と穏やかに、相手の心に語りかけるように喋るのだ。
日本民主共和党。
最大野党である日本公民党に次ぐ野党で有り、その目的は。
暴力によらない日本の民主共和制原理主義政権の樹立。
民主共和制原理主義。
その政体は古く、元を辿れば超古代文明時代にまで遡る。
そう、大日本帝国の前身、神聖ブリタニア帝国の前進の前進、南天の前進の前進の前進。
それらがこれに該当するが、民主共和制原理主義その物『原点に戻ろう』とする動きは、ここ、300年ほどの動きだ。
彼らの言う原点とは。
神という存在は紛うことなくこの地上に存在し、神に選ばれた神の代行者を頂点とする選ばれし民主主義の布教の先にこそ“絶対平和”は存在する。
といった、民主主義で有りながら民主主義とは大きく性質を異にした、原始的な民主主義の亜種に当たる宗教的側面の強い物。
E.U.ユーロピア共和国連合ことユーロユニバースの政治家の一部は、南側諸国を絶対的民主主義を確立するためならあらゆる手段が許されると妄信する、民主主義教の集団と呼んで恐れている。
何故なら、ユーロユニバースは既にアフリカの半分を南側諸国に取られ、白いカーテンの向こう側へと隠されてしまっているからだ。
それでも戦争とならないのはその国力の差ゆえ。
ユーロユニバースが三つあっても二つ名の超大国たる『数の南天』には勝てないのだ。
それほどの絶対的力の差が壁となって立ち塞がっている。
ユーロユニバースの動かせる戦力。烏合の衆を集めに集めて1000万行くか行かないかだろう。
だが南側諸国はその気になれば8000万の軍勢を動かせるほか、世界中に点在させている億を超える細胞を、非常時には動かせる。
土台ユーロピア如きが足掻いたところで勝てはしない。
そして議長の視線の先。真面目に議会に取り組み誰一人として欠伸一つしない、機械的に動く民主共和党の人間。
彼らもまた細胞である事は分かっている。
公然として民主共和制原理主義政党である事を掲げているのだから。
ただ、彼らは暴力革命はしない。日本の法に則って天使の微笑みの仮面を片手に持ちながら、機械的に勢力拡大を図っている。
しかし、そんな彼らもまるで思うように行かない現状に、昔から続く、500年前から始まった足利政権による政治改革で両手足を縛られ。
現代に至っては、御方々によって、完全なる最重要監視対象にされて何かが起きたときには、全党員とその支援者の一斉検挙と制圧に踏み切られる指定対象とされてしまっている。
両手両脚処か全身が雁字搦めにされているのだ。
(御方々の目の黒いうちは動けまい)
天使の仮面を片手に、機械的な無機質な瞳の中に確かな憎悪を感じながら、議長は議題の続きの話を再開させようとしたとき。
秘書官が青い顔をして飛んできた。秘書官は議長に何事かを耳打ち。
議長の顔面が蒼白になっていく。
“ぼそぼそ……神聖ブリタニア帝国皇女マリーベル・メル・ブリタニア殿下、ならびにナナリー・ヴィ・ブリタニア殿下が公然と辱めを受け、ナナリー殿下に至っては傷害を負わされた模様……ぼそぼそ”
“い、一体何故なぜそんな事になっておるのだッ!! ……ぼそぼそ”
“そ、それが、先日より我が国帝都東京に於いてブリタニア帝国リーライナ・ヴェルガモン伯爵令嬢、シンク・ローゼンクロイツ伯爵令嬢、カレン・シュッタットフェルト辺境伯令嬢、ナオト・シュタットフェルト辺境伯令息、レオンハルト・シュタイナーシュタイナーコンツェルン令息への侮辱事件が次々と起こっており……ぼそぼそ”
“ど、どこも我が日本と強い経済的な結びつきのある大貴族ばかりではないかッ! 何故議題に挙げなかった! マスコミは! 貴族院は 公安はどうした、こ、この様なことが御方々に知られたら儂の首が……ぼそぼそ”
その様な危険人物が、要注意対象者の話は。
“ま、まさかモニカ・クルシェフスキー卿をペンドラゴンの往来で侮辱したッ……ぼそぼそ”
“そう、です……入国管理局のチェック体制のミスです……ぼそぼそ”
“だ、だが、それにしても何故”
“よ、米内光政閣下の圧力があったとか……ぼそぼそ”
「い、いかんッ! 午後の議会は閉会とするッ!」
その直後だった。議場に一人の人物が入って来たのは。
誰もが知り、誰もが怖れ、誰もがおののく人物。
それは御方々のお一人、阿部信行元内相にして、現内相を操っている男と目されている御方であった。
衆院議長は慌てて阿倍の元に走って行くと、その場に跪く様にしてしゃがみ込む。
汗がだらだらと流れ、床にシミを作っていた。
仮にも衆院の議長にまで上り詰めている男が、前内相如きに何をと、事情も知らない野党や、若手議員などは不思議に思っていたが。
御方々の実態を知っている者は皆顔面蒼白、民主共和党の面々は阿部ただ一人を見つめていた。
「特に、用事はありません。既にあなたもお気づきのようですから。情報の伝達が遅れた人間の首を飛ばしてきたところです」
「あ、あ、阿部閣下ッ、私めは先ほど――」
「遅い」
阿部は一言言うと目をつむり。
「ロズベルトなる輩と米内男爵は以前より親交がありました。ロズベルトがペンドラゴンでクルシェフスキー卿を侮辱し、後、下位貴族のパーティに参加、その後ペンドラゴン国際空港より我が帝国へ向けて飛び立った。全て把握しております。現閣僚、議長、内務、外務、諜報担当者、全てが遅いです。……平和ボケ、しておりませんか?」
阿部は特にクルシェフスキーへの侮辱と、件の男爵の入国時に動けなかった公安当局者に対して怒りを覚えていた。
「まあ、私が言うべき事ではありませんがクルシェフスキーはブリタニアの四分の一を影響圏に置いている超巨大貴族です。そのクルシェフスキーと最も親しいのは我が日本、経済的影響力は計り知れない。この様なことで喪われることがあってはならない」
他の大貴族も全てそうですがと前置き。
「日本との繋がりが深い地域が彼の国には多いのです。ましてやこの度の失態。公安責任者と警備責任者の左遷は決定的でしょう」
そうして阿部は振り返り。
SPたちが開く扉から出て行きながら。
「帝国に無能は要りません」
一言告げて出て行くのであった。
「…………いそ、げ」
議長は汗だらだらの状態で。
「関係各所へ通達ッ。ただちに当該人物の身柄を拘束しろ! 貴族院、枢木総理にもッ、も、もう知らせている?! く、宮内省にも連絡をッッ!! ほ、報道はぎりぎりまで押さえろッ!!」
※
「脅かしすぎましたかね、コード、ギアス……南天……今回の件には南天が絡んでいます。侮辱事件その物は全くの別でしょうが、ロズベルトに南天の影が見えますしね、麻生外務大臣が辻さんに連絡を取っていたと仰いますし」
阿部はSPを従えながら赤絨毯の上を歩いて行った。
どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。
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嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
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嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
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山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
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南雲忠一×ドロテア・エルンスト
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玉城真一郎×クララ・ランフランク
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玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
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澤崎敦×井上直美
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レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
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原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
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ルルーシュ(休日)×ミレイ
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オデュッセウス×皇神楽耶
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ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
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枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
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コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
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高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
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鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-