帝都の休日 短編連作群保管庫   作:休日

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勘違いした田舎者 ある華族の図り事――が壊れる?

 

 

 

 大日本帝国の貴族院。

 

 1800年代から続く由緒ある議会は。

 

 終身議員として皇族議員。

 

 公・侯・伯爵議員としての華族議員(元は伯爵は入っていなかったが戦功著しい者が伯爵に多く見られたため、某組織が案を出し、上帝陛下・御帝の勅命を受け改訂。華族伯爵以上と華族子爵以下に分けられた。

 

 子爵以下の議員から構成される。その一角である派閥の領袖を務めていた男爵議員、米内光政は、議会では夢幻会派閥に邪魔をされ、窓際へと追い遣られ、苦虫を噛み潰した様な表情をする事が多い。

 

 しかしながら、邸宅では割合リラックスをし、大嫌いな嶋田や辻、杉山、阿部、東條、山本といった、夢幻会派の重鎮達のことを思い浮かべるでも無くのんびりと過ごす。そんな昼下がり。

 

 それが破られたのは、リビングの薄い8Kテレビの画面上部に、緊急ニュース速報が流れたことが切っ掛けであった。

 

 マスコミというのは何処にでも居る。

 

 街角に、議会に、裁判所に、貴き身分の方々の処に。

 

 自身もまたその貴き身分、華族男爵で帝国議会貴族院の議員。世に力を振るうことの出来る国会議員であったが、その米内と付き合いのあるとあるブリタニアの田舎貴族の名前がデカデカとニュース速報に出ていたのだ。

 

 相手もまた腐ってもブリタニア帝国男爵。本国なら普段はある程度の権威を以て街中を闊歩できる身分。

 

 平民、武勲侯、騎士侯に対しては普段から居丈高な態度で接し、平民に至っては露骨な差別意識で接してきていた。

 

 これを米内は本人の口から何度も聴いていたし、なんだこの貴族という名の愚物はと見下しながら接していた。

 

 ただそれでもやはりブリタニアの貴族なのだ。商売上や、コミュニティの運用などに使えるには使えた。

 

 といって、本人はただの阿呆なので全く使えなかったが、下級貴族のお茶会などにお呼ばれする機会もあって、独自の伝手を各方面に形成できた。

 

 その中には汚職貴族の存在も……それなりに裏にも手を出したりはした。しかし、表沙汰にならないようにと苦心したのだ。

 

 それをあの阿呆は……。

 

 

 

 勘違いした田舎者 ある華族の図り事――が壊れる?

 

 

 

「だ、旦那様っっ!!」

 

 考えを巡らせていたとき、不意に執事が怒鳴り込んできた。平時ならば処罰物である。

 

「なんだ騒々しい」

 

「そ、それが、その……ブリタニア帝国のフランク・ロズベルト男爵閣下が参りまして御座いますっ、火急の用向きにて直ぐに旦那様とお会いしたいとかっ」

 

「……ち、使えん豚めっ!……まあいい、通せ」

 

「は、はいっ」

 

 米内の頭の中にはこうなる想定もあった。危ない方面にも手を出している以上はあらゆる選択肢を取り入れ、柔軟な考えでいなければならない。

 

 正直に言えばブリタニア帝国皇帝の12の剣の一振り。ナイトオブトゥエルブ、モニカ・クルシェフスキーをペンドラゴンの大通りで罵倒したという一件が耳に届いたときには、損切りをする事を考えていた。

 

 カンザスの腐った貴族共の中には米内が繋がっていた貴族家も有り、上記のことが起きた以上はロズベルト家への監査が入る可能性があったからだ。そこから汚職貴族との関係が漏れては堪った物では無い。

 

 

 潰れるのなら自分たちだけで勝手に潰れていろ。

 

 

 今回の一連の事件の経緯は、あの阿呆の日頃の行いからの延長線上に来ている。ロズベルト領がどんな感じなのかは与り知らなかったが、恐らくは碌でもないことになっていよう。

 

 ましてマリーベル皇女への不敬に、ナナリー皇女への不敬と傷害。これまでの数々の上位貴族への不敬。確実に死刑だ。

 

 さて、これを奴に渡して蹴り出すか。どうするか。

 

 米内はクルシェフスキー卿への不敬があった時より万が一に備えて取り寄せていた物が在る。

 

 それは、日本は帝都東京から、E.U.ユーロピア共和国連合パリまでの航空券。

 

 自分が使うのか?

 

 馬鹿を言ってはいけない。使うのは阿呆の豚だ

 

 奴がどうなろうと知った事では無いが、ここで関わりを絶って置かなければ後々の禍根となろう。

 

「最悪私にまで害が及ぶからな。全く以てあの阿呆は最後まで碌な事をせん」

 

 

 どんっ!!

 

 

 廊下の床を大きく蹴るように踏みしめる音。

 

「ヨナイ卿っ! ヨナイ卿っ!」

 

 どん、どんどんどんっ!!

 

 阿呆が来たようだ。

 

「よ、ヨナイ卿ッ、み、ミツマサッ、助けてくれッ!! お、俺は」

 

 名前を呼ぶな穢らわしい。心で思っても顔には出さない米内は大仰にロズベルト男爵を受け入れた。

 

「おお、フランクっ。久しいな」

 

 暫く前から帝都に滞在中にも関わらず軽いジョークを交す。これが最後の面会となればリップサービスの一つや二つ。

 

「どうしたのだのだねそんなに慌てて」

 

「そ、それが、お、俺っ、いま、お、恐れ多くもっ、マリーベル皇女殿下とナナリー皇女殿下に、ふ、ふ、不敬を働いてしまってっ」

 

 これまで不敬を働いてきたのが皇帝の剣ナイトオブラウンズ、上位貴族のヴェルガモン、シュタットフェルト、ソレイシィ、ローゼンクロイツ。

 

 その上で、日本としては不味いことにブリタニア西海岸の王にまで間接的不敬が及んでしまっている。

 

 クルシェフスキー侯爵家――大日本帝国とは彼の国がヨーロッパに存在していた時代、遡れば500年前からの付き合いとなる大貴族を今回の一件の被害者としてしまっている事。

 

 この一点を以てしてもこの阿呆には来て貰いたくなかったのだが。

 

「まあまずは落ち着きたまえよ。息を大きく吸って、吐いて」

 

「す~っ、はぁ~っ」

 

 しかしまあこの男。よくも英雄皇女相手に不敬を働けたなと思う。あの覇気に溢れる英雄皇女に。何かしら英雄皇女側に騒ぎになりたくない事情でもあったのだろうか?

 

 まあ、どうでもいい、と。考えを切った。この阿呆との付き合いも切るのだからどうでも良いことなのだ。

 

「さあ、落ち着いたかね?」

 

「あ、ああっ、はあ、はあ、ミツマサ、俺はっ、俺はどうしたら良いんだ?! や、奴らはっ、辺境伯だの伯爵だのと名乗って居ったのだぞっっ?! 存在しない貴族名を殊更に強調している奴らの何処が大貴族なのだ?!」

 

 ロズベルトがそこまで言うと呆れた様に米内は首を振る。

 

「常識さえも知らんのかね君は。まず我が帝国の階級を提示しよう」

 

 上帝陛下

 

 御帝=今上帝

 

 華族大公爵

 

 華族公爵

 

 華族侯爵

 

 華族伯爵

 

 華族子爵

 

 華族男爵

 

 士族

 

 平民

 

「上が最も尊く、下へ行くほど階級が下がる。華族は貴国で言う貴族だ。当然私は永代華族で爵位も嗣ぐことが出来る。で、何か気付かんかね? 子爵より上にある爵位に」

 

「ああっ!? 伯爵、侯爵」

 

「勉強不足の君に今伝授してやろう。ブリタニアの階級は全十三階級からなる」

 

 皇帝

 

 皇族

 

 ナイトオブラウンズ

 

 大公爵

 

 公爵

 

 侯爵

 

 辺境伯

 

 伯爵

 

 子爵

 

 男爵

 

 騎士侯

 

 武勲侯

 

 平民

 

 

「因みに知りうる限りでの南天の階級だが」

 

 創造主=盟主

 

 ジェネラル・ビショップ・プリースト・ルーク

 

 セラフィム

 

 ケルビム

 

 オファニム

 

 ドミニオン

 

 ヴァーチャーズ

 

 パワーズ

 

 プリンシパリティ―ズ

 

 アークエンジェル

 

 エンジェル

 

 信徒

 

 平民

 

「となっている。でだ、男爵は騎士侯以下と違い永代貴族だ。確かにな。だが、大諸侯というわけでは無い。大貴族というわけでは無い。今まで説明が面倒だったし自分で調べるだろうと思い放置して置いたらこれだ」

 

「で、では、大貴族とは?!」

 

「まだ分からんかね。伯爵から上だ。伯爵からが上位貴族・上級貴族と呼ばれる位階で、大貴族・大諸侯と呼ばれるのも伯爵から上だよ」

 

「し、しかし、家宰は男爵様は大貴族、大貴族だと。ち、父、あの老いぼれも子爵以上は教えてくれなかったぞ」

 

「家宰が間違っておるか騙されて居ったというわけだな。貴族としての教育については知らん。で、どうする。君は現役の第11階位ナイトオブラウンズに第8階位侯爵家の娘、第7階位辺境伯家の娘・息子、第6階位伯爵家の娘たちに不敬を働いた。もうニュースにもなっている。この屋敷を一歩出たら無礼討ちの対象となっているが」

 

 無礼討ち……死罪。い、嫌だっっ。嫌だっっ。

 

 脳内を駆け巡る死にたくないという気持ちのままに、彼は米内に問うていた。

 

「し、死にたくない助けてくれミツマサっ!」

 

「ふ~っ、念のために言って置くが私は慈善家じゃあ無い。それなりの物は払って頂くが構わんね」

 

「む、無論だ、身に付けている物を売ればそれなりの金にはなるし。スイス銀行の方にもプールしている。庶民共から巻き上げた税金をな。ど、どうすればいい?!」

 

 にやりと気色の悪い悪党面が表情金を緩ませたところで、ニュースの臨時速報の続報が流れる。

 

『臨時ニュース。臨時ニュースです。本日午後麻布近くの繁華街で神聖ブリタニア帝国第八十八皇女マリーベル・メル・ブリタニア殿下、及び帰宅途中だった同国ナナリー・ヴィ・ブリタニア皇女殿下が罵倒され、ナナリー様は傷害まで負わされたとのことですっ。繰り返します、本日――』

 

「これは君か?」

 

「ち、違うっ、俺は知らなかっただけなのだっ、両殿下だと知らなかっただけなのだっ、これではもうブリタニアに帰れないっ」

 

「ん? まだ知らんのか? それ以前にもう君に返る場所など無いぞ」

 

「……へ?」

 

 見せられた新聞。そこには滅茶苦茶に破壊された我が邸と連れ出される奴隷共、更には南天と繋がっていたという証明たる蒼天双翼光環旗が映し出されていた。

 

 膝から力が抜ける。魂さえも抜けそうになる。

 

「し、知らないっ! 俺は南天と繋がっていたことなんて知らないぞっ!!」

 

「だが、君の領地が発起点なる36の所領が南天の思想に染まり、20の所領が奴隷貿易を行っていたと書いてある。どの様な弁明も通らんな。我が日本には民主共和党という南天の思想を広める合法政党が存在しているが、確かブリタニアでは大逆罪ではなかったか?」

 

 また呆れた様子の米内はだが、どこか余裕がある。なぜそこまで余裕があるのだろうか。

 

 ここまで追い詰められて、逃げ場も無くされ。また米内自身もロズベルト男爵家と関係があるというのに。

 

「簡単だ。私は大日本帝国の華族。ブリタニアの法には縛られんのだよ。皇帝が相手であってもな」

 

「で、では俺はどうなる?! ブリタニア貴族の俺には逃げ場が!!」

 

 あるとも。まるで悪魔のささやきの様な米内の言葉。

 

「ふむ……なあに、簡単な事だ」

 

 米内はここで手持ちを切った。

 

 彼の指の先にあるそれ。

 

「こ、航空チケット??」

 

「フランク。君は知らなかったようだが、君が不敬を働いた最初の一人、クルシェフスキーというだろう?」

 

「あ、ああ」

 

「このクルシェフスキー家、クルシェフスキー侯爵家と我が国日本は500年来の友好関係にあるのだよ。足利政権下で太い結びつきが出来今日にまで至っている。世に言うところの切っても切れない間柄だ。おまけに今ではブリタニアの四分の一が何らかの形でクルシェフスキーの影響圏にある」

 

「ん、あ……そ、そんな……。し、しかし、侯爵とは? そんな貴族階級が」

 

「聞いてなかったのか? なら、今一度言おう。男爵の上に子爵。子爵の上に伯爵。伯爵の上に辺境伯。辺境伯の上に侯爵。侯爵の上に公爵、そして公爵の上に大公その上にナイトオブラウンズ……まあ、自国の貴族教育はしていて当然なのだが、君のところはしていなかった……という訳だ」

 

 ロズベルトは米内にチケットを押し付けられた。

 

「そんなクルシェフスキーに喧嘩を売り、ヴェルガモン伯にも喧嘩を売り、この上で他の有力貴族の歴々に、皇女二人にまで不敬を働き一人には傷害を負わせた」

 

 米内の指は指し示す。ロズベルトが事件を起こした現場の中継地点が映し出されている画面を。

 

「……」

 

 遂にロズベルトは黙り込み、手の中にある航空チケットを目に収めていた。

 

「……、こ、これで、……これで俺は逃げられるのか?」

 

 もういい、逃げられればそれで。命あっての物種だと割り切る彼は、米内へと縋り付く。

 

「E.U.では駄目だな。彼処には日本・ブリタニアのスパイも多く入り込んでいる」

 

「それでは俺に逃げ場所は――」

 

「南天」

 

 息つく間もなく米内が口にしたのは、日ブ影響圏では口にすることさえ憚られる。特にブリタニアでは幾たびも南天の魔手によって国を災禍にさらされてきた為に。

 

「フランク、最終手段だが南天を目指すしか無いぞ? あの勢力圏にだけは日ブと言えどもおいそれと手は出せない」

 

 南天は国では無く国家群を表わす言葉だが、その南天が【全天に美しき白き世界へ】といった宗教的思想で完全統一されている為、南天は国家として見られている。そう、第一位【力のブリタニア】第二位【技術の日本】これに次ぐ第三の超大国【数の南天】と。

 

「し、しかし、南天に行けば俺は全てを失ってしまうっっ!!」

 

 スイス銀行にプールしているお金もお布施なりで失われよう。

 

 大体にして通貨自体が南天と他国とでは違い過ぎる。

 

「無駄だよ、諦めたまえ。クルシェフスキーを罵倒した時点で君の命運は尽きているのだよ。彼の大貴族の子の数は万と居る。有象無象が抗える相手ではない。だから君は己が身の安全だけを考えろ」

 

 自首しろと進めないのは生き汚いこの男に自首を勧めても無駄であるからだ。

 

 最後に残された手段、逃亡――。

 

「だ、旦那様あああッッッ?!」

 

 米内邸は戒厳令状態にある。

 

 邸宅の周りには多くの警備員が貼り込んで蟻一匹通せない様相を呈している。

 

 誰かが扮装して逃げ出すには持って来いの状態だ。

 

 誰もが通れない。誰も通さない。そんな米内邸。

 

「どうしたんだ騒々しいッッ!!」

 

 米内の計画。しかし、これを許してくれるほどには大日本帝国も神聖ブリタニア帝国並みに甘くは無かったのである。

 

「た、た、たったた、」

 

「たがなんだ。そんなにも震えて。もういい、私が出るッ!」

 

 玄関、SPを伴わず、腰に長剣・名を鬼丸国綱を刺した、腰まで届く三つ編みにされた明るい金糸の髪を揺らし、瞳は何処までも澄み渡る蒼。身の丈は170cm行くか行かないか。

 

 白い陣羽織、白の鉢巻を身に纏う、一見して女子高生にも見える少女。御年??歳。の女性が玄関でその王気も隠さずに立っていた。

 

 脇には多くの米内の私兵が居るのだが、誰一人としてその女性には手を出さない。否、手を出せない。

 

 この場に居る誰もがその女性が誰かを知っているから。

 

 米内は華族男爵だ。ブリタニア皇帝にすら日本ではひれ伏す必要が無い人間だ。

 

 だが、しかし。日本の大華族にはどうか? それも雲上人が相手ならばどうか? この答えはひれ伏さざるを得ない、だ。

 

 

 

 久方ぶりですね米内――

 

 

 

 優しい微笑みは誰しもが見惚れそうな一遍の悪意無きもの。

 

 米内光政を、華族男爵米内光政を呼び捨てに出来る人物。

 

 華族伯爵であっても小僧ならばさん付けをする程の権威を持つ米内を。

 

「な、あ……」

 

 固まってしまった。

 

 何故この御方が。このお人がこんな処に。供回りも連れずに立っているのか?

 

 下手な皇族よりも高い権威を持つこの御方がなぜ??

 

 更には。

 

 その人物の後ろより、ひょこっと顔を覗かせたのは。

 

 腰まで届く長い黒髪を二つに分けて髪先で結い、大きな翠玉色の瞳に、愛嬌のある微笑みを浮かべた。上が薄い桃色、下が赤のスカートなワンピースを纏う少女。

 

 位階では前者を上回り、権威では前者を下回る少女。

 

「宮中でのお茶会以来ですね米内卿♪」

 

 後者、大日本帝国第八皇女、皇神楽耶はチェシャ猫のように笑ってみせ。

 

「義輝お姉様。お返事がありませんね」

 

 前者、この大日本帝国にただ一家のみ存在する華族大公。

 

 

 

 

 足利義輝に問い掛けていた。

 

 

 

 

 

 

「遅いですね」

 

 成田でランペルージグループ社長、シャルル・ランペルージこと、神聖ブリタニア帝国98代皇帝シャルル・ジ・ブリタニアを待つ夢幻会会合重鎮、辻政信は、時計を見ながら指で手の平をとんとんと叩く。

 

 SP達はそんな辻の些細な仕草にも神経を尖らせていた。

 

「間に合いそうですか?」

 

 いらいらする辻に、既に合流を果たしていた嶋田が問い掛ける。彼の傍らには、今は彼の護衛として。嶋田の傍に張り付いている、ナイトオブトゥエルブ、モニカ・クルシェフスキーの姿があった。

 

「例のロズベルト男爵がその脚で米内のところへと向かったのなら最悪逃げられます。入国審査を厳しくするように通達はしておりますが、米内が米内にとって都合が悪いと判断したのなら逃がす方針で行くでしょうし」

 

 辻の言葉にモニカの白磁の頬が悪い色染まり行く。碧い瞳は濁りを帯びて。

 

 全部自分だ。自分の所為なのだ。彼の男をペンドラゴンで無礼討ちに処していればこんな事には。

 

 他の諸卿や、皇族方、ましてやナナリー殿下に怪我を負わせるなどという事は起こらなかった。

 

 そっと、考え込む自分を愛しい思い人である嶋田が抱き寄せてくれる。これさえも、この無上の喜びさえもが今の彼女には罰と感じるのだ。

 

「モニカさん……」

 

 思いつめるなと言っても思いつめてしまうモニカ。

 

 嶋田は嶋田で発端となったのは確かに彼女だが、この全ての業を彼女が背負う必要はないと考え。

 

「大丈夫。全部が全部モニカさんが悪いんじゃないよ。君だけが悪いんじゃない。だからどうか、そんな悲しい顔をしないでほしい」

 

「……嶋田さん」

 

 やれやれ。穢れなき高潔なる乙女が嘆いていては、こちらもチートを使わざるを得ませんね。

 

 確か、今日は陛下との会談……時間的には終わっているか。

 

 思案しながら口角を釣り上げた辻。

 

「勝負はまだ終わってはおりませんよ? フランク・ロズベルト君、米内さん」

 

 わが意を得たりと携帯電話を取り出し、あるナンバーを打ち込んだ。

 

 

 プ…、プルルルル……がちゃ

 

 

『???…??』

 

「あ、どうも唐突なお電話を差し上げてしまい、申し訳ございません。辻政信です……あ、はい、元気です。お気遣いいただき光栄の至りです。はい……はい、それでは御身は空いていると? はい、……いえいえ、助かりました。閣下も既にお耳にされているでしょうロズベルト男爵の件です……はい、彼奴の逃げ込みそうなところは米内光政邸です……」

 

 隣で見ていた嶋田は、辻の電話相手が誰かに直ぐ気が付いた。

 

 辻が閣下と呼び、遜りつつも気軽に話す。

 

 上帝陛下、御帝、皇族がた、夢幻会関係者の上位者……あと一人。

 

(あの方か……)

 

 モニカさんによく似た外見の……

 

 ぎゅうううううう!! 抱き締めてくる彼女。ひたすらに強く抱きしめて。

 

「痛だだだだーッ!! ちょ、モニカさんッッ!!」

 

「いま、他の女性の事を考えていましたねッ!?」

 

「……。あ、ああ申し訳ありません、痴話げんかが発生しまして……では、御身は今空いていらっしゃると? では、ご足労願いたき儀が御座います。よろしいでしょうか?」

 

 

 ***

 

 

「ふう、これで取り逃がすことはないでしょう」

 

 取り逃がしたらクルシェフスキー卿が自分を責め続けるでしょうからね、と辻は思い、再びブリタニア勢待機の姿勢へ。

 

「つ、辻さん」

 

「ふふ、チートを使いましたので大丈夫ですよ」

 

「やっぱり足利大公を引っ張り出したのですね」

 

 アシカガという性にモニカは驚いた。

 

「アシカガとは足利将軍家の事ですか?!」

 

「それ以外の何処があるというのですか?」

 

 得意気に笑う辻。眼鏡の奥の瞳が半円を描いている。

 

「この状況で米内に勝手をさせないには権威を以て当たるしかないでしょう。特に武官の棟梁を持って行くのは効果が違うのです。足利大公家は日本を500年支え来た存在です。権威はけた違いですからねえ」

 

 

 




以上です。
本来の話ではブリタニア側が到着してから、足利大公家が動くという想定でしたがそんな悠長にしていては馬鹿男爵が逃げる可能性があると思いこの様にしてみました。
また、前話との違いや以前との相違が見つかったときは教えてくださると助かります。
何分にも遅筆で、前のお話から大分と時間がたっておりますので前話までの予習が出来ていない事があるため汗。

どのカップリングの恋愛が見たいですか?(いずれもそれぞれに書いております・また書いていきます。新しいカップリングも増える可能性あり。

  • 嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー
  • 嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア
  • 山本五十六×リーライナ・ヴェルガモン
  • 南雲忠一×ドロテア・エルンスト
  • 玉城真一郎×クララ・ランフランク
  • 玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア
  • 澤崎敦×井上直美
  • レオンハルト×マリーカ・ソレイシィ
  • 原作ルルーシュ×シャーリー・フェネット
  • ルルーシュ(休日)×ミレイ
  • オデュッセウス×皇神楽耶
  • ジェレミア×ヴィレッタ・ヌゥ
  • 枢木スザク×ナナリー・ランペルージ
  • コーネリア・ランペルージ×ギルフォード
  • 高麗大佐×奥様(書けたら(-_-;)
  • 鳩川雪夫×ストーカー女(書けたら(-_-
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