序章
その昔、私は人間だった。アニメ、漫画、ゲーム、映画、小説、オカルトが大好きなただの人間の少年だった。
しかしある日、原因不明の病に倒れ、そのまま人生に幕を下ろした。まだ16歳という若さで……。
私の魂はそのまま天国に上ったのだが、そこで白いローブを着た老人に「君、もし良かったら私の弟子にならんか?」と声をかけられた。突然の事に私は酷く混乱した。
なんとか落ち着いて話を聞くと老人は創造神と呼ばれる神なのだという。声をかけたのは、今神界で若手不足が深刻な問題となっており、その解決策として子供達の魂を勧誘して立派な神に育て上げる事になったのと、自身も丁度弟子が欲しかったからだという。
それを聞いた私はこのまま天国でボーッとしてるのも何だし何より神様になれるチャンスだと考え創造神の弟子になる事を決めた。元々物作りが大好きで、戦闘とか暴力が大嫌いな私にとって創造神はもってこいだ。
創造神つまり師匠から、彼が着ているのと同じローブを渡されそれに着替えると、早速修行を行なった。なにせ覚えなきゃいけない事が山ほどあるからだ。これが生前なら一生掛けても無理だったろうが、もう死ぬ事の無い魂だけの存在だ。時間はたっぷりある。そう、"たっぷりあった"のだ。
───なのに何故気付かなかったのだろう。自分の容姿に、ある変化が起きている事に……。
その時私は、かなり苦労しながら初めて"世界"の創造に成功した。修行を始めて約六百年、星の数だけ試行錯誤を繰り返し、ようやく成果が出せたのだ。師匠から「見事だ、これで君はもう立派な神の仲間入りだ」とか「これなら一人立ちしても大丈夫」などいろいろ褒められて最高の気分になった。あの言葉を聞くまでは……。
「修行中、容姿が猫になったのには驚いたが心配はいらん。動物の姿をした神は沢山いるからのう」
───────……は?
私は創造力を使い、即座に鏡を作って自分の容姿を見た。そして驚愕した。そこに映っていたのは、二本足で立って白いローブを着た"灰色の猫"だったからだ。
「…………ぇええええええ!!!!」
最近妙に視界が低くなったような気がしてたが…え、なんで猫になってんの?私人間だよ?最初ここに来たときちゃんと人の姿してたよ!?いつこんな姿に変化したんだ??!というか師匠、気付いてたんならなんで教えてくれなかったの?
「それは修行に支障を来すと思ったからじゃ。自分が段々猫化している事を気にしてたら集中出来んじゃろ」
「ま、まぁ確かに」
だから修行を終えた今日、教える事にしたのか。
「それにいつか自分で気付くだろうと思ってたんじゃが、よほど集中してたのかまったくそんな様子は無いし」
本当に何で分からなかったかったんだろう?いや、それより今気になるのは…。
「なんで私、猫になっちゃったんですか?」
師匠に聞いてみた。
「確かな事は言えんが…恐らく"あれ"が原因じゃろう」
「あれ?」
それはいったい?
「君修行中、動物創りまくってたじゃろう。特に猫を。その時自分も猫になりたいな〜とか思わなかったか?」
「…あ!」
そういえば生命創造の練習の際、生前大好きだった動物、特に猫を大量に創ったな。そして確かに思っていた。
「その思いが無意識に自分の体を猫に創り変えたんじゃ。創造力によってな」
「…ま、マジですか」
「しかも余程強く思ったのかもう元の姿には戻れんようじゃ」
「そんな…」
こればかりは師匠でもどうする事も出来ないらしい。まぁ別に構わんがな。
こうして私は猫の創造神【ザールム】として神々の仲間入りをする事になった。
ちなみに名前は、修行をやりこんだせいで生前の名前を忘れてしまったため、師匠が新しくつけてくれた。