「まさか、姫路さんがFクラスだなんて……信じられん」
力なくよたよたと歩くDクラス代表の平賀。
「あの……さっきはすいません……」
平賀を打ち取った姫路も違う方向から歩み寄ってくる。
「いや、謝ることは無い。Fクラスを侮っていた僕達が悪いんだ」
ほぼ騙し討ちだったがこれも勝負。
姫路が謝る必要など欠片もない。
「ルールに従って設備を明け渡そう。ただ、こんな時間だから作業は明日で良いよな?」
これから平賀はあの教室で再び試召戦争ができるようになるまでの三か月間をクラスメイトに恨まれながら過ごさなければならない。勝てば英雄視されるのがクラス代表なのならば負ければ戦犯の様に恨まれるのもクラス代表なのだから。
「勿論、明日で良いですよね、坂本君?」
平賀に同情したのか姫路が雄二にそう聞いた。
その問いに雄二は姫路の予想しなかった返事をした。
「いや、その必要はない」
「あ?お前何言ってんだ?」
「俺にはDクラスの設備を奪う気はない」
それが当然のことであるかのように雄二は達哉の言葉にそう返した。
「忘れたのか?俺達の目標はAクラスだ。だから、Dクラスの設備に手を出す気はない。それに、もし、設備を奪ったらどこかのバカ達はDクラスの設備で妥協するだろうから余計にDクラスの設備には手が出せない」
『『『『…………………』』』』
目を逸らすほとんどのFクラスのクラスメイト達。
雄二の言うことは的を射ていたらしい。
「という訳で俺達はDクラスの設備には手を出さない。
だが、条件がある」
「一応聞かせてもらおうか」
「なに。大したことじゃない。俺が指示を出したらあれを動かなくして欲しい。
それだけだ」
雄二が指したのはDクラスの窓の外に設置されているエアコンの室外機。
だが、その室外機はDクラスの物ではない。
Dクラスの設備にエアコンはないから。
置いてあるのはスペースの関係でここに間借りをしている―――
「Bクラスの室外機か」
「設備を壊すから教師にもある程度睨まれるだろうが悪い取引じゃないだろ?」
悪い取引である筈がない。上手く事故に見せかければ厳重注意程度で済み、三か月間Fクラスの教室で生活するという地獄から逃れられるのだから。
「確かに悪い取引じゃないがどうしてそんなことを?」
平賀の疑問はもっともだ。
Fクラスの目標はあくまでAクラス。
だというのに何故Bクラスの、それもエアコンなどという直接関係のないものにダメージを与えるのだろうか。
「次のBクラス戦に必要でな」
「……そうか、では俺達Dクラスはありがたくその提案に乗ることにするよ」
「タイミングについては後日詳しく話す。今日はもう行って良いぞ」
「ああ、ありがとう」
じゃあ、と手を挙げてDクラス代表、平賀は去っていった。
「さて、皆!今日はご苦労だった!明日は消費した点数の補充を行うから今日のところは帰ってゆっくり休んでくれ!解散!」
雄二が号令をかけ、Dクラス戦は終了した。
「準備は全て整った……シュンがそう言ったのか?」
「ええ」
満月の月明かりの下。
二人の少年が酒を飲んでいた。
吉井明久と彼の舎弟である坂成達哉である。
彼らが居るのは東龍会本家の縁側。
丁度そこは明久達の寝室の近くでこうして話すことにあまり不自由はない。
「明久さん、俺は去年のあの騒動からあんたに忠誠を誓いました。
だから、いい加減に教えてくれませんか?あなたは一体――」
「何を企んでいるんだ、か?」
達哉の言葉を遮り明久が彼の言葉の続きを言う。
そして、明久は微笑みながらこう続けた。
「心配するなよ、真理達が居る限り東龍会相手に戦争は起こさねぇから」
それは逆に言えば真理達が居なければ戦争を起こしても構わないと言っているような態度。だが、そんなことは起こらないだろう。
明久を相手にしたらどうなるかなど二年前に充分味わったのだから。
「明久さん、すいません。俺は……」
「良いさ―――達哉、何度も言うけど俺は絶対に東龍会と戦う様な事には絶対にならない。だから、安心しろ、お前が東龍会と戦うようなことには絶対にならないよ。いや、絶対に俺がさせない」
達哉は東龍会を愛している。
東龍会は唯一の達哉の居場所だから。
二年前。達哉は両親や幼馴染や親友に見捨てられ孤独だった。
そんな時に明久と達哉は出会った。
色々な街に二人で繰り出した。色々な出会いをした。
その最中に明久が真理と出会い、恋をして、とある事情で東龍会に殴り込み、そこで色々あって二人は東龍会に入ることとなった。
それからというもの、毎日が楽しかった。
だから、東龍会とは戦いたくない。
自分を認めてくれた東龍会とは絶対に……
だが、もし明久が東龍会と戦うようなことになったのであれば達哉は明久と共に東龍会と戦う。
今の生活は明久がもたらしてくれたものだから……
「さて、俺はもう寝るかね。お前も寝ろよ?明日はテスト詰めなんだからさ」
明久はそう言いながら酒器を持って立ち上がる。
達哉も明久と同様に立ち上がった。
「はい。おやすみなさい、明久さん」
明久は「おう」と返事をして部屋に入り襖を閉めた。
う~ん……最近スランプ気味だなぁ……(元々作品の出来は最低だったけど……)
明久と真理の会話も全然ないし……
もう少し頑張って増やさないと……
という訳で、次々回ぐらいに明久と真理、それと真希とのデートを書こうかと思っています。
……本当に書けるかな……
すごく自分でも心配だ……
どんな風にしようかな……今から考えないと……
『デートはこんな風にすればいいんじゃね?』っていう風なコメントを送ってくれると嬉しいです。
では、また次回に。
p.s 物語の辻褄を合わせる為に5/8少しだけ修正を入れました。