「こりゃまた手酷くやられたね……」
「そうっすねぇ……」
そう言う二人の前には穴だらけになった卓袱台や折られたシャーペン。
犯人は推理しなくとも分かるだろう。
「まったく……正々堂々戦うってことを知らねぇのかねぇ……Bクラスの連中は」
壁に寄りかかりながらそんなことを言う篠笥。
そんな篠笥に達哉が敵意をむき出しにする。
「テメエはこの戦争サボってずっとこの教室に居たはずだろうが。何してやがった」
「寝てた」
篠笥が答えた瞬間、篠笥に向けられていたものが敵意から殺気に変わった。
「テメェ……マジでぶち殺すぞ……」
「やってみろ」
まさに、一触即発。
何かきっかけがあれば二人は殺し合いを始めるだろう。
その殺し合いを止められる人間はこの場にはたった一人しかいない。
「お前等やめろ」
この男、吉井明久以外は。
「こんな場所でケンカした所で何にもならねぇだろうが」
「俺はケンカしたい訳じゃねぇぜ?お前の舎弟がケンカ吹っかけてきただけだ」
篠笥の言葉で更に達哉の殺気が膨れ上がった。
それを感じ取って明久はため息を吐く。
―――この短気さえ治ればなぁ……
そう思う明久だが、今は思っていても仕方がない。
二人を止めなければ少なくともこの教室が吹き飛んでしまう。
「達哉、篠笥に殺気を向けるのはもうやめろ。
そんなに戦いたいんだったら俺が相手になるぞ」
明久の言葉に顔を真青にする達哉。
別に明久は殺気を込めていた訳ではない。
ならば、何故達哉は顔を真青にしたのか?
理由は簡単だ。明久の言った内容が恐ろしかったのだ。
達哉の実力は常人のそれと遥かにかけ離れているが明久の実力は達哉のそれを超越している。明久と戦うことになった時のことを考えると震えが来るほどだ。
「す、すいません!篠笥、マジで悪かった!もうケンカ吹っかけねぇから許してくれ!」
ものすごい勢いで頭を下げる達哉。
いきなり態度が変わったことに篠笥はおろか他のFクラスメンバーもついていけていない。
「い、いや、別に良いんだ。それより、坂本。これからどうすんだ?」
まるで誤魔化すかのように雄二に話を振る。
少し戸惑いながらも雄二はその問いに答えた。
「先程、Bクラスから協定の申し出があってな。
協定に乗っ取り午後四時には戦争を終了する」
「協定?あぁ、そんなもん結んだのか?」
「あぁ、体力勝負に持ち込んだら姫路が保たないからな。
雨宮が参加していたら良かったんだがどっかの誰かさんが参加させないし」
「……ごめんなさい」
何の反論もせずに謝罪する明久。
というか、何も反論はできない。
真理が参加していないのは明久の勝手なのだから。
「まぁ、そんな訳で今日の戦争は四時までだ。
それまでは各々戦死しない様にあいつ等を教室に押し込め」
「はいはい、了解。それじゃぁ、俺も参加するか」
「?どうしてだ?」
篠笥は『試召戦争には参加しない』と雄二に向かって啖呵を切った。
だが、今は参加すると言う
この矛盾に雄二は訝しんだ。
「俺も戦争に参加しねぇとは言ったけどこれから巻き込まれることもあるかもしれねぇからな」
「なるほどな、なら、明久達の隊に行け」
「了解、それじゃ、よろしくな。隊長殿」
そう言って篠笥は手を差し出してくる。
「あぁ、よろしく」
明久はその手を握った。
最初はいけ好かない男だと思ったが思ったより接しやすい男だったようだ。
「それじゃ、早速だけど急ぐとするか。前線で何かされてるかも知れねぇし」
「そうだね。相手はあの根本君だし」
「それじゃ、走ります?真理さんは明久さんがお姫様抱っこでもして」
「はぁ?何言って―――」
「達哉君いいこと言ったよ!さ、明久!カモン!」
達哉の言葉を遮って真理は手を伸ばす。
因みに余談だが『私を抱き上げて』は英語で『Pick me up』だ。
(なお、『Pick me up』には『抱っこ!』と言う意味もあるし、強壮剤と言う意味もある)
「はいはい、分かったよ」
苦笑しながら明久は真理を抱き上げる。
「マジでやりやがった……」
呆然とそう呟く篠笥。
そんな篠笥を尻目に明久と達哉は駆ける。
それも、常人ではあり得ない速さで。
「速すぎだろ……少しは他の奴のことも考えろよ」
そう呟きながらも篠笥は駆けだした。
それも、明久達とほぼ同じ速度で。
はぁ……本当に参りました……
執筆時間が三日に一度しかも一時間しか取れなくなってしまいました……
本当にどうしたら良いんだろう……
あぁ、それと、Bクラス戦を『前篇』『後篇』表示から『①』『②』表示に変えました。