「昨日言っていた作戦を実行する」
翌朝、登校した明久達に雄二は開口一番そう告げた。
「作戦じゃと?まだ開戦時刻は先ではないのか?」
現在の時刻は八時三十分。協定により開戦時刻は九時だ。
「Bクラス相手にじゃない。Cクラスの方だ」
「ほう、それで何をするのじゃ?」
「こいつを秀吉に着てもらう」
そう言って雄二が学生鞄から取り出したのは文月学園の女子の制服。
文月学園の女子の制服はそのデザインの良さから他校の生徒や一部のマニアからも人気が高い。しかし、雄二は一体どこでどうやってこの制服を手に入れたのだろうか。
「それは別に構わんが儂が女装してどうするんじゃ?」
そこは男として存分に構うべきだ。
「秀吉にはこいつを着て木下優子として、Aクラスの使者を装ってもらう」
秀吉には双子の姉が居る。
『木下優子』
文月学園に在籍する限り、彼女の名前は学年主席の霧島翔子や学年次席の姫路瑞希、学年三位の久保利光に次いで頻繁に耳にする。
学力で優秀な姉の木下優子、演劇部のホープである木下秀吉。
この姉弟の名前を知らないこの文月学園には者は居ない
「と、いう訳だ。秀吉、準備をしてくれ」
「う、うむ……」
頷き秀吉は雄二から制服を受け取り、その場で生着替えを―――
「待て、木下」
「そうそう、ここで着替えんなよ」
始めようとしたところで達哉と篠笥に止められた。
「ここには女子も居るんだ。着替えるんだったら別の場所で着替えろ」
そう言って篠笥は秀吉の首根っこを掴み猫の様に運び、達哉は秀吉の着替えを運ぶ。
その二人の行動に秀吉の生着替えを期待していたFクラスのメンバーからバッシングを受けるが二人は気にせず外へ出た。それから約十秒後三人は帰ってきた。
「着替え終わったぞい。ん?皆二人を睨んでどうしたのじゃ?」
ほとんどのFクラスメンバーは達哉と篠笥に殺気を向けていた。
もっとも、二人は全く気にしていないが。
「さぁな、それよりさっさとCクラスに行くぞ」
「うむ」
雄二が秀吉を連れて教室を出て行く。
それを見て篠笥は自分の席に戻り、横になり、達哉は明久の元へ近づいた。
先程まで何も言わなかった明久だが、どうやら考え事をしていたらしい。
「明久さん、どうしたんですか?」
達哉に声をかけられて明久はハッと我に返った。
それから、周囲を見渡し、雄二達が居ないことに気づいた明久は問いかける。
「雄二と秀吉は?」
「Cクラスの教室に行ったよ?」
「Cクラス?何で?」
どうやら考え事のし過ぎで何も聞いていなかったらしい。
雄二達がCクラスに行った経緯を説明する。
「どうする?私達もCクラスに行く?」
そう尋ねると明久は首を横に振った。
「別に大丈夫でしょ。大丈夫じゃなかったら雄二が行く時点で誰かに声をかけてるだろうし。雄二が帰ってくるまで僕は寝てるよ。真理、悪いけど――」
「うん、いいよ」
真理は頷くと明久に抱き着き、明久を押し倒す。
その時にFクラスのほとんどのメンバーが明久に殺気を向けたが達哉の睨みにより全員が顔を逸らした。
(肉布団じゃなくて膝枕をして欲しかったんだけどな……まぁ、嬉しいから良いけど……)
恐らく明久の本当の要求を分かっているのだろうが敢えてこちらを選んだのだろう。
だが、これも案外悪くないと思いながら明久は目を閉じた。
それを確認し真理も目を閉じた。
と、その時だった。
♪♪♪~♪♪~♪~♪~
明久のズボンのポケットからそんな音楽が鳴り響いた。
明久の携帯のメールの着信音だ。
「誰だよ……」と文句を言いながらポケットから携帯を取り出す。
ディスプレイに表示されたのは知らないアドレス。
間違いメールか迷惑メールだろうかと考えたが、もしかしたら知り合いがアドレスを変えたという趣旨のメールを送って来たのかもしれないと考えてメールを開く。
メールの内容を見て明久は目を見開いた。
「真理、悪い。少し退いてくれ」
明久の言う通り素直に退く真理。
体を起こして達哉の方を向く。
「達哉」
「はい」
「お前に行って欲しい場所がある」
「どこへ?」
達哉の問いに明久は一瞬何故か躊躇ったような表情を見せた。
だが、すぐに明久は口を開きその場所の名前を言った。
「――旧図書室だ」
更新遅いうえに短くて申し訳ありません……
Bクラス戦は次回で終わりです。
そして、次回には新たなオリキャラが出てきます。