時は少し進み、新校舎の階段の踊り場。
そこに、二人の少年が居た。
「いきなり呼び出して何のつもりだ?―――根本」
現在試召戦争の相手のクラス代表である根本からの呼び出し。
それが先程のメールの内容だった。
「お前に頼みたいことがあって呼んだんだよ、吉井」
ニヤニヤといやらし笑みを浮かべながらそんなことを言う根本。
やはりか、と明久は内心で呟く。
呼び出しのメールが送られた時から何となく予想はしていた。
と、すると、根本はこちら側を従わせる手札を持っていることになる。
さて、どんな切り札か……
そんなことを考えている明久に根本はとあるものを差し出した。
「……封筒?」
そう、何の特徴のただの封筒だ。
訝しむ明久に根本は開けてみろよ、と言う。
明久はその指示通り封筒から中身を取り出す。
そして、明久はその中身を見て固まった。
「驚いたか?」
いやらしい笑みのままそう尋ねてくる根本。
根本が渡してきた封筒の中に会ったのは写真。
それもただの写真ではない。
それに映っていたのは―――
「俺は驚いたぜ。まさか、神聖な校舎で淫行を行う奴が居るなんてなぁ」
先日Dクラスに宣戦布告した際に明久、真理、真希の三名で働いた淫行の証拠だった。
「この写真をばらまいたらどうなるだろうな?
まぁ、退学は免れないよぁ?」
その言葉に明久の身体が震える。
それを見て根本はさらに続ける。
「頼みって言うのは簡単なことだよ。坂本を倒してほしいんだ。お前なら簡単だろ?」
そう言って明久の肩に手を置く根本。
本来、根本はこの脅迫を真理にするつもりだった。
だが、先日明久達を罠に嵌めたようとした時に明久が圧倒的な操作技術を以て自分のクラスの生徒を倒したと聞いて気が変わった。
――点数は高いが一度も召喚獣の操作をしていない者よりも点数は少し下がるが圧倒的な操作技術を持った者の方が確実ではないか?
そう思って今に至る。
「安心しろよ、この頼み事を終えれば写真は処分してやるからよ」
まぁ、勿論嘘だけどな、と内心で呟く根本。
根本は少なくともこの文月学園に在学中は明久を自分の操り人形にするつもりだ。
写真さえあればそれも可能の筈。
「………」
――だが、
「………」
――根本恭二は
「………」
――吉井明久と言う男を
「………」
――理解していなかった。
「………フッ」
「……?」
唐突に笑みを浮かべる明久。
そのことに根本は訝しむ。
(今の話のどこに笑う要素があった?こいつは俺に追い詰められている筈だ)
だと言うのに、何故目の前の男は笑う?
何故自分はこんなにも――
――震えている!?
「根本、お前は今自分が俺を追い詰めてると思ってるだろ?」
「じ、実際そうだろうが!この写真をばらまけばお前はや雨宮や新山は退学を免れないんだぞ!?」
それなのに何故明久は余裕なのか。
根本には分からない。
「くっくっく……そうか、なら
「!?」
そんな明久の言葉に根本は驚愕する。
――まさか……いや、そんなバカな!?
「根本、知ってるか?俺の一番好きなことはな……」
―――そんなことあり得る筈がない。そうあり得る筈が……
「卑怯な手を使って勝った気になっている奴を絶望のどん底に叩き落とすことだ!」
その言葉で根本は完全に察してしまった。
そう、ここまで全てが吉井明久の掌の上であったと言うことを。
だが、根本恭二は負ける訳にはいかない。
学力最低クラスのFクラスに負けるなど自分のプライドが許さない。
「こ、この写真はお前だけじゃなく雨宮や新山を退学に追い詰めることができるんだぞ!?何でそんなに余裕なんだ!?」
当然の疑問。
その疑問に明久はとあるものを差し出した。
「携帯?」
「俺のだ。開けてみろよ」
明久に言われて根本はゆっくりと明久の携帯を開く。
「んなっ!?」
驚愕の表情を浮かべる根本。
明久の携帯の画面に表示されていたのはとある画像。
根本恭二の恋人である小山友香が椅子に縛られている画像だった。
次回、明久がかなり悪役っぽくなります。