バカとテストと召喚獣と……   作:SSSS

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三話 根拠

Aクラスへの宣戦布告。

それはこのクラスにとっては現実味の乏しい提案にしか思えなかった。

 

『勝てるわけがない』

 

『これ以上設備が落とされるなんて嫌だ』

 

『姫路さんがいたら何もいらない』

 

否定的な声が教室のいたるところから上がる。

確かに誰が見てもAクラスとFクラスの戦力差は明らかだった。

文月学園に点数の上限が無いテストが採用されてから今年で四年。

この学園のテストは一時間と無制限の問題数が用意されており能力次第でどこまでも成績を伸ばすことが出来る。

また、科学とオカルトと偶然により完成された『試験召喚システム』はテストの点数に応じた強さを持つ『召喚獣』を換び出して戦うことのできるシステムで、教師の立会いの下で行使が可能となる。

その中心にあるのが、召喚獣を用いたクラス単位の戦争――――試験召喚戦争と呼ばれる戦いだ。

その戦いで重要になってくるのがテストの点数なのだがFクラスとAクラスの点数は本当に桁が違う。

正面からやりあうとしたら一人に対して五、六人、相手次第では十人も用意しなければならない。

 

「そんなことはない。勝てる、俺が勝たせてみせる」

 

そんな圧倒的な戦力があるのも関わらず雄二はそう宣言した。

 

『何を馬鹿なことを』

 

『出来る訳が無いだろう』

 

『何の根拠があってそんなことを』

 

否定的な意見が教室中に響き渡る。

 

「根拠ならあるさ。このクラスには試験召喚戦争で勝つことの出来る要素が揃っている。それを今から証明してやるよ」

 

不敵な笑みを浮かべ、壇上から皆を見下ろす雄二。

 

「おい、康太。畳に顔をつけて姫路と雨宮のスカートを覗いてないで前に来い」

 

「はわっ!」

 

「私は見えないようにしてるから大丈夫だよ。明久♪」

 

そう言って明久の頬にキスをする真理。

その瞬間Fクラスの生徒ほぼ全員が殺気立つが、それを超える殺気を達哉が向けた為に一瞬でその殺気は止んだ。

 

「つ、土屋康太。こいつがあの有名な寡黙なる性識者(ムッツリーニ)だ」

 

若干の冷や汗を流しながら紹介する雄二。

 

「……!!(ブンブン)」

 

ブンブン、と首を振って雄二の紹介に首を振る康太。

ムッツリーニと言うのは康太の別名だ。

 

男子からは畏怖と畏敬を、女子からは軽蔑を以て挙げられる。

 

『ムッツリーニだと……?』

 

『馬鹿な、ヤツがそうだというのか……?』

 

「姫路のことは説明するまでもないだろう。皆だってその力はよく知っているはずだ」

 

「えっ? あ、私ですかっ?」

 

「ああ。ウチの主戦力だ。期待している」

 

もし、試験召喚戦争に至るとしたら彼女程頼りになる戦力は居ないだろう。

 

『そうだ。俺たちには姫路さんがいるんだった』

 

『彼女ならAクラスにも引けをとらない』

 

『ああ。彼女さえいれば何もいらないな』

 

先程から姫路に向かってラブコールを送っている者が居る気がするがそれは置いておいて。

 

「木下秀吉だっている」

 

木下秀吉。あまり学力では名前を聞かないが他のことでは有名だ。

演劇部のホープであるとか、双子の姉のこと等。

 

『おお……!』

 

『ああ。アイツ確か、木下優子の……』

 

「当然俺も全力を尽くす」

 

『確かになんだかやってくれそうな奴だ』

 

『坂本って、小学校の頃は神童とか呼ばれてなかったか?』

 

『それじゃあ実力はAクラスレベルが二人もいるってことだよな!』

 

教室中の雰囲気が良くなってきた。

 

「それに雨宮真理。彼女はAクラス並みの学力を持っている」

 

『雨宮さん、吉井と別れて俺と付き合って下さい!』

 

『いや、待て。俺とだ!』

 

『いやいやいや!俺とだろ!』

 

『ふざけんな!俺とだ!』

 

「……ふふっ」

 

真理が微笑んだ。

その笑みはその体系や顔に相応しいものではなく、妖艶な女の笑みだった。

真理は想像したのだ。

 

 

 

 

――――もし、彼等全員が明久だったならば、と。

 

もし、彼等全員が明久だったなら全員で殴り合い……いや、殺し合いに発展するだろう。

もしかしたら全員で真理を愛でるかもしれない。

真理としてはどちらでもいい。

真理にとって大切なのは明久が真理のことを愛してくれることなのだから。

 

「どうしたの?真理」

 

明久が真理の顔を覗き込む。

明久の顔を見た瞬間、真理は大胆な行動に出た。

 

「んっ!?」

 

明久の唇に自分のそれを重ねたのだ。

 

『『『『吉井ィィィィィィッ!』』』』

 

それを見て一斉に殺気立つFクラスメンバー。

全員鎌や金属バッドなどの凶器を手にしている。

だが次の瞬間、全員の殺気が一瞬で止んだ。

その代りそれを上回る殺気が教室に流れる。

 

パリン!パリン!パリン!パリン!

 

軽い音をたてながら窓が割れていく。

その次に教室にある全ての卓袱台がビキビキと悲鳴をあげる。

 

「良い殺気を放つようになったじゃねぇか……達哉」

 

獰猛な笑みを浮かべ、真理を抱き寄せて呟く明久。

彼の視線の先には一人、クラスメイトを睨み堂々と佇む達哉が居た。

 

「お前等……そう言う物は脅しの道具じゃねぇんだぞ……?」

 

そう言って一歩、クラスメイト達に近づく達哉。

それを見てクラスメイト達は一歩後ずさる。

 

「そう言う物は人を殺す為にあるんだぜ?そんな物引っ張り出して何をしようとしてたんだ?」

 

そう言って達哉はまた一歩踏み出す。

クラスメイト達は先程と同じように後ずさる。

それが三度繰り返された時だった。

 

「達哉、落ち着け」

 

明久が達哉に声をかけた。

 

「ですが、明久さん……いや、分かりました」

 

渋々と言った様子で自分の席に座る。

それから数秒後、呆然としていた雄二がハッと我に返る。

 

「あ~コホン。更にうちのクラスには二人のジョーカーが居る」

 

『だ、誰だ!?ジョーカーって!』

 

『お、教えてくれよ!』

 

『そ、そうそう!』

 

クラスの雰囲気を戻す為に一つ咳払いをして宣告する雄二。

その宣告を聞いた瞬間にクラスメイト達が一斉に雄二にものすごい勢いで質問した。

 

「その二人とは、吉井明久と坂成達也だ。この二人のことは『去年の騒動』で知っている奴がほとんどだろう」

 

雄二がそう言うと生徒Cが手を挙げて、立ち上がりながら雄二に質問する。

 

『あ~、良いか?俺、去年の終わり頃に転入してきたから知らねぇんだけど……この二人有名なの?』

 

「あぁ、そう言う奴も居るか。なら、説明してやるよ。今の日本には四つの巨大な極道組織がある。まず、一つ目は構成員十万人という四つの組織の中で最も構成員の多い清龍会。二つ目は四つの組織の中で最も海外マフィアとの交流を頻繁に行っていて資金面では最も潤っている宏正会。三つ目は四つの組織の中で最も警察との騒動が多い盛虎会。

最後に構成員は二万人と四つの組織の中で最も少ないが、『極道界の切り裂き魔』『極道界の阿修羅』『風切り』等の極道界の有名人が数多く居る東龍会」

 

それら四つを挙げてから少し間を空ける雄二。

それから獰猛な笑みを浮かべ

 

 

 

「吉井明久はその東龍会次期会長で、坂成達也は明久の補佐だ」

 

そう言い放った。

 

「分かったか?その二人がジョーカーと言われる理由が」

 

「ん~、分かったけど俺、試召戦争には参加しねぇよ?」

 

「「「「………は?」」」」

 

クラスメイトCの言葉を聞いて『こいつは何を言ってるんだ?』と言う顔をするFクラス生徒ほぼ全員。雄二はそんな生徒Cを睨み付けながら問う。

 

「何故だ?」

 

雄二はかつて悪鬼羅刹と言われた程の実力者だ。

その雄二の睨みは並みの者ならば一瞬で失禁し、腰を抜かすようなものであったが生徒Cは怯む様子もなく答える。

 

「このクラスでAクラスに仕掛ける資格がある奴なんざ数人位しか居ねぇだろうが。

それを分かってねぇ奴等のお遊びに付き合っていられる程俺は優しくねぇんだよ」

 

「……お前、名前何だ?」

 

「篠笥八虎」

 

「覚えたぜ、お前の名前」

 

「勝手に覚えとけ」

 

睨みあう二人(と言っても一方的に雄二が睨んでいるだけだが)

Fクラスのクラスメイトほぼ全員が二人の間に入れない。

入れるとしたら達哉と真理と明久だけだろう。

だが、達哉は机に突っ伏し夢の国へと旅行中。

真理は明久にくっつくことに夢中で見向きもしない。

つまり、今の二人を止められるのは明久だけになる。

明久もそんなことは承知しているのでとりあえず二人に声をかける。

 

「二人とも、少し落ち着きなよ」

 

「明久、俺は落ち着いている。落ち着いた上でこいつをボコしてやろうと考えてるだけだ」

 

「俺も落ち着いてるぜ。そいつとは違って喧嘩なんてしようとは思ってないけどな」

 

「……はぁ」

 

二人(と言うより雄二)の言葉に盛大なため息を吐く明久。

正直、もう放っておこうかなとそんな思考が頭の中に浮かぶがそれはできない。

何せ、このまま放っておけば痛い目に遭うのは雄二なのだから。

 

「雄二、試召戦争に参加するかどうかは本人の自由なんだから強制しちゃいけないよ」

 

「……ちっ」

 

明久の言葉を聞いて小さく舌打ちをする雄二。

それから一つ咳払いをして雄二はクラスメイト達に告げた。

 

「色々な騒動があったがまず、俺達の力を証明する為にDクラスを征服しようと思う明久!お前にはDクラスへの宣戦布告の使者になってもらう。無事大役を果たせ!」

 

上位クラスへの宣戦布告使者は大抵が痛い目に遭う。

雄二は勿論それを知っている。

知っていて尚、明久に命ずる理由は二つ。

明久ならば怪我をしないのと嫌がらせ、という理由だ。

 

「分かったよ。それじゃ、行ってくるから真理は……聞かなくてもいいか」

 

真理の答えは聞かなくても分かっている。

明久が居るのならば真理は戦場にだってついて行く。

真理の居場所は明久の傍であり、そこを離れる等あり得ないのだから。

 

「明久さんが行くなら俺も行きます」

 

言いながら立ち上がる達哉。

達哉がついてくるのは単に心配しているからだ。

 

 

 

明久がやりすぎないかどうか。

 

『そっちかよ』等と言うツッコミが聞こえてきそうだが達哉は大真面目だ。

明久は相手が誰であろうとも売られた喧嘩は絶対に買う。

そして、Dクラスの生徒達はFクラスと言う最底辺のクラスから喧嘩を売られた場合それを最大級の侮辱だと考えるだろう。

そうなった場合例え明久の正体を知っていたとしても襲い掛かってくる。

そして、明久はそれを喧嘩を売られたと捉えて応戦するはずだ。

そうなると戦争が開戦する前にDクラスのほとんどの生徒が病院へ運ばれることになるだろう。それだけは絶対に避けなければ。

 

「うん、それじゃ、行こうか」

 

立ち上がりながら言う明久。

こうして明久はDクラスへと向かうことへなった。

 

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