ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

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読者の皆様。明けましておめでとうございます(^^ゞ
はい、新年をボッチで迎えた舞翼です゚ヽ(○゚´Д`゚○)ノ゚

今年も頑張って更新するので、よろしくお願いします!!
そしてそして、記念すべき100話です(^O^)

では、新年初の投稿です。
それではどうぞ。


咎神の騎士Ⅸ

「暁古城──我々は君を不老不死の呪いから解き放ち、人間としての死を与えてやる」

 

 安座真が冷厳な口調で告げてくる。

 真祖として一人で何千年も生き続けるくらいなら、人間として死ね、と古城に伝えているのだ。

 馬鹿げた理屈ではあったが、魅力的な提案でもあった。 永劫の孤独と、先の見えない不安。 それは一人で抱え込むのには、あまりにも重すぎる荷物だ。 安座真はその終わりなき苦悩から、古城を解放しようとしている。

 だから邪魔をするな、と古城に言っているのだ。

 

「考えようによっては、まあ、悪くない提案だよな……あんたの言うことが本当なら」

 

 安座真の主張の正当性を、古城は認めた。 不老不死の力など、古城が望んで手に入れたものではない。 それを捨て去ることに抵抗はなかった。

 

「先輩……!」

 

 自暴自棄とも取れる古城の呟きを聞いて、雪菜が怒りを露にする。

 雪菜を見て、古城は曖昧な苦笑を洩らした。 雪菜こそ、第四真祖抹殺の任務を与えられて古城の監視を続けているのだ。 彼女が怒るのは理屈に合わない。

 

「グレンダを渡せ、第四真祖。 我らには“器“が必要だ。 人工島管理公社に対抗する為に」

 

 安座真が要求を口にし、古城の顔が強張る。

 

「人工島管理公社……だと? 絃神島になんの関係が……!?」

 

 ゴォン、と遠雷に似た轟音が聞こえてきたのは、その直後だった。 着陸間際の旅客機のような巨大な飛行物体が、立ちこめる雲の中から降下してくる。

 

「先輩! あれは……!?」

 

「なんだ!? 輸送機か……?」

 

 灰色に塗られたその機体は、軍用の輸送機によく似ていた。 だが、機体側面に設置された無数の砲門は、ただの輸送機のものではあり得ない。

 その禍々しくも巨大な機体は、グレンダたちのいる山小屋を目がけて高度を下げている。

 

「自衛隊特殊攻魔連隊の切り札……AC-2対地攻撃機(ガンシップ)だよ。 今は聖殲派(我々)のものだがね」

 

 安座真は、淡々と告げてきた。

 輸送機として設計された機体に、大量の武器弾薬を積み込む事で、通常の航空機にはあり得ない重武装と大火力を与えられた局地制圧用の攻撃機。 それを操縦しているのは、銀黒色のローブを纏った女だ。

 

「まさか、あの機体を素体にして傀儡(ゴーレム)を──!?」

 

 安座真たちの目的に気づいて、雪菜が表情を凍らせる。

 女の能力は、兵器の持つ性能をそのまま受け継いだ傀儡を造り出す事が可能にする。 装甲車が素体の傀儡(ゴーレム)ですら、普通ではあり得ないほどの堅牢さと攻撃力を持っていた。 だとしたら、対地攻撃機(ガンシップ)を素体に生み出した傀儡(ゴーレム)が、どれほどの火力を持つか想像もつかない。

 しかも彼らは、古城の眷獣の攻撃を無効化することができるのだ。 魔法無効化障壁に唯一対抗できる“雪霞狼”も、空を飛ぶ傀儡(ゴーレム)には届かない。

 

「話は終わりだ、暁古城。 グレンダを置いてここから立ち去れ」

 

 安座真が騎士兜を装着し、飛龍(ワイバーン)が巨大な翼を広げる。

 

「あんたの話は少しだけ魅力的だったよ、安座真三佐」

 

 古城が牙を剝きながら獰猛に笑った。

 

「だけどオレは、あんたが仲間をあっさり殺したのを見てる。 聖殲派のせいで、負傷した無関係の隊員も大勢いたはずだ。 あんたは信用できねーし、そんな相手にグレンダは渡せねえな。 それに、オレは孤独で生きていく事はない。 オレには、規格外な親友がいるしな」

 

「そうか……残念だよ、第四真祖」

 

 安座真が構えた騎槍が、古城の心臓に向けられる。

 そして彼は宣告した。 初めて生の感情を剝き出しにした声音で──、

 

「ならば、魔族に堕ちたままここで死ね!」

 

 構えた騎槍から、轟音と共に弾丸が放たれた。 グレンダを傷つけたものと同じ漆黒の球体だ。

 古城はその球体を回避しない。 回避すれば球体は山小屋に当たり、中にいる唯里たちが巻き込まれるからだ。

 古城は、右腕を掲げて荒々しく吼える。

 

「──疾く在れ(きやがれ)、一番目の眷獣、神羊の金剛(メサルテイム・アダマス)!」

 

 古城が、右手を襲う激痛に耐えて召喚したのは、光り輝く神羊だった。 眷獣を取り巻く無数の金剛石の結晶が、攻撃を防ぐ盾となる。

 漆黒の球体と激突した結晶は次々とぶつかり合って方向を変え、結晶が弾丸と化して、あらゆる角度から安座真を襲う。

 だが、その金剛石の弾丸は、安座真が展開した漆黒のオーロラに阻まれる。

 一切の厚みをもたない黒い膜が、染みこむように空間を侵蝕し、世界そのものを塗り替えていくのだ。 音もなく闇の中に吞み込まれ、眷獣の攻撃が無効化されていく。

 

「あの黒いカーテンみたいなやつか……!」

 

 古城の眷獣を無効化する騎士の力に焦りを覚えながら、一方で古城は密かに安堵していた。

 “聖殲の遺産”で武装しているとはいえ、安座真は人間だ。 まともに眷獣の攻撃を浴びれば、ほぼ確実に死ぬ。 相手が殺人者だからといって、古城が彼を殺していい理由にはならない。 たとえ彼の目的が、全ての魔族の抹殺にあるとしてもだ。

 

「──先輩は、グレンダさんたちの護衛をお願いします! 安座真三佐は私が!」

 

 攻撃を躊躇う古城の傍から、雪霞狼を構えて雪菜が跳んだ。

 安座真が放つ銃弾を撃ち落とし、雪菜は距離を詰めていくが、

 

「邪魔だ、剣巫!」

 

 安座真が飛龍(ワイバーン)に攻撃を命じた。 飛来する飛龍(ワイバーン)に阻まれて、雪菜の攻撃は安座真に届かない。

 

「姫柊──!」

 

 雪菜を援護する為に駆け出そうとした古城の頭上で、対地攻撃機(ガンシップ)が咆吼した咆哮した(・・・・)。 上空を旋回する巨大な機影は、航空機の形を保っていなかった。 龍族化したグレンダや飛龍(ワイバーン)を遥かに上回る巨体、そして九つの首を持つ多頭龍(ヒュドラ)もどきだ。 対地攻撃機(ガンシップ)の火力をそのまま受け継いだ多頭龍(ヒュドラ)もどきが漆黒の炎を吐く。

 

「黒い砲弾……だと!」

 

 神羊の金剛(メサルテイム・アダマス)が、障壁を展開した。 だが、無類の硬度を誇る金剛石の結晶が、多頭龍(ヒュドラ)もどき砲撃の前にことごとく砕けていく。 安座真の騎槍の銃撃と同じだ。 多頭龍(ヒュドラ)もどきの砲弾には、魔力無効化能力が与えられている。

 障壁を破られて、無防備になった古城を漆黒の砲弾が襲い、巨大な球体が古城の全身を吞みこむ寸前、眩い閃光が虚空を薙いだ。

 

六式降魔剣・改(ローゼンカヴァリエ・プラス)──起動(ブーストアップ)!」

 

 六式降魔剣・改(ローゼンカヴァリエ・プラス)を構えた唯里が、古城の前に着地する。 唯里の剣撃が生み出した空間の断層が、漆黒の砲弾を防いだ。 砲弾の魔力無効化能力で疑似空間切断の効果は失われるが、そのときには砲弾そのものも消滅している。

 

「唯里さん……!?」

 

「ごめんなさい! でも、あんなのが相手じゃ、隠れてても無駄だと思って──」

 

「ああ、いや……そうだな。 助かった。グレンダは?」

 

「だー!」

 

 周囲を見回す古城の背中に、パーカー姿のグレンダが、ばふ、という効果音とともに跳び乗ってくる。 グレンダの身体の軽い感触に、古城は戸惑いの表情を浮かべ、

 

「ええと……古城くんの後ろが一番安全だと思って……」

 

 古城に、伏し目がちに答えてくる唯里。 古城にくっついていろとグレンダに指示したのは、どうやら唯里だったらしい。 だが、グレンダが文字通り古城に密着するとは、唯里も予想していなかったのかもしれないが。

 

「それはいいけど、まずいな、このままじゃ──」

 

 頭上の多頭龍(ヒュドラ)もどきを見上げて、古城は焦燥を覚える。 次に砲撃を受けたら、唯里にも防ぎきれないはずだ。その前にあの巨大な傀儡を倒さなければならない。

 

「くそっ! 疾く在れ(きやがれ)――獅子の黄金(レグルス・アウルム)龍蛇の水銀(アル・メイサ・メルクーリ)!」

 

 古城が呼び出したのは、雷光の獅子と双頭龍だ。 それらは宙を舞う多頭龍(ヒュドラ)もどきに殺到し、その巨体を撃ち落とそうとする。

 その攻撃を防いだのは、多頭龍(ヒュドラ)もどきの頭上に立つ女だ。 彼女はローブの隙間から漆黒のオーロラを広げて、多頭龍(ヒュドラ)もどきの全身を覆い尽くしたのだ。

 激突の衝撃が多頭龍(ヒュドラ)もどきを揺らしたがそれだけだ。 魔力を封じられてしまえば、第四真祖の眷獣といえども、多頭龍(ヒュドラ)もどきを破壊しきれるものではない。

 だからといって飛龍(ワイバーン)を撃ち落としたときと同じ手段は使えなかった。 多頭龍(ヒュドラ)もどきとの距離が近すぎる。 この状態で眷獣を暴走させたら、古城たちも無事では済まないし、安座真たちを確実に殺してしまうだろう。

 

「ダメか……!」

 

 多頭龍(ヒュドラ)もどきが轟然と炎を放った。 古城の眷獣たちがそれぞれ攻撃を放って、飛来する漆黒の砲弾を相殺する。 それでも防ぎきれない砲弾が古城たちの頭上へと降り注ぐが──、

 

 

 

 

 

 

 

「――虹色の絨毯(カラー・ガーデン)

 

 古城たちの前に、神龍(シェンロン)が放った虹色のカーテンが展開され、注がれる砲弾を一部を除き(・・・・・)呑み込んだ。

 大規模な力を前にして、古城たちと、安座真の動きが止まる。

 古城が後ろを振り向きそこにいたのは、古城たちとは距離を取り戦闘になっていた悠斗と凪沙だ。――だが、悠斗の衣服と凪沙の巫女装束はボロボロだ。

 紅蓮の翼、氷結の翼の具現化が解けようとしている。 この事から、先程の戦闘の凄まじさが窺えた。 そして、悠斗と凪沙は、古城たちの隣まで移動した。

 

「……古城、苦戦しすぎだ」

 

「……でも悠君。 凪沙たちならともかく、魔力攻撃を無効化するってことは、古城君とは相性最悪なんだよ……」

 

 そう言って、凪沙は溜息を吐く。

 そして、古城たちの目前に雪菜が着地した。

「無事ですか、先輩! 唯里さん!」

 

雪菜(ゆっきー)……!」

 

「姫柊! 飛龍(ワイバーン)は……!?」

 

 雪菜は前方を指差した。

 飛龍(ワイバーン)は、片翼と胴体を深々と抉り取られて、地上でのたうち回っていた。 多頭龍(ヒュドラ)もどきの砲撃に巻き込まれたのだ。

 ──多頭龍(ヒュドラ)もどきの砲撃に巻きこまれる位置に、絨毯(カーテン)が展開されておらず、飛龍(ワイバーン)を巻き込んだ。といった方が正しいか。 いや、多頭龍(ヒュドラ)もどきの見境の無い攻撃とも言えた。 だが、直撃ではないので消滅はしていないが、戦闘不能だろう。

 

「……紅蓮の織天使(神代悠斗)紅蓮の姫巫女(暁凪沙)。 あの方たちを退かせるのは予想する事ができなかった。――貴様らの力は、危険すぎる……」

 

 飛龍(ワイバーン)を盾にした、安座真が忌々しそうに呟く。

 

「いや、知らんから。 てか、蓮夜の親父の形見を、奴に返せ。 俺、あいつと戦うと精神がすり減るんだよ」

 

「……うん、凪沙も同感。 美月ちゃん、強すぎるもん……」

 

 次に、悠斗と蓮夜、凪沙が美月と戦闘になれば、必ず勝利をもぎ取れる。とはいかない。 このままでは、次は敗北するだろう。

 次の戦闘までに、今以上の力をつけておく必要があった。

 

「貴様らの戯言など聞く耳もたない――第四真祖! 貴様もだ!」

 

 そう言って安座真は、漆黒のマントを広げた。

 しかし滲み出した闇色のオーロラは、虚空を覆い尽くすこともなく、安座真の足元の地面に音もなく吞み込まれていく。

 戸惑う古城たちの足元に、暗い影のような染みが広がった。 その染みは、厚みを持たない無数の刃になって、地中から古城、悠斗、凪沙を刺し貫こうとするが――、

 

「――凪沙!」

 

 悠斗は凪沙を押し飛ばした。 おそらくこれは、異境(ノド)の侵蝕だ。

 ――異境(ノド)の浸蝕とは、咎神カインが放逐されたとされる異世界だ。 そして“聖殲”によって、統べるべき神を失った、虚無の世界。

 

「先輩!」

「古城くん!?」

 

「悠君!」

 

 雪菜と唯里、凪沙が、驚愕に目を見開く。 地中からの見えない攻撃には、未来視の力を持つ彼女たちも反応できず、悠斗に限っては、先の戦闘で疲労が溜まり、超直感、気配感知の使用が不可能だったのだ。

 

「ぐ……はっ……!」

 

 古城の全身を貫いた闇色の刃は吸血鬼の力も奪っていた。 自らの眷獣を呼び出すこともできず、古城は声もなく鮮血を吐く。 背負っていたグレンダを突き飛ばし、彼女を救うだけで精一杯だ。

 全快の悠斗ならば、異境(ノド)の侵蝕に抗う事は可能だろうが、先の戦闘で、体力(魔力)が大半奪われているので、抗う事ができなかったのだ。 そして悠斗も、全身を闇色の刃で貫かれ、力を奪われていった。

 

「ッチ!」

 

 古城と悠斗の足元に広がった闇は、大気をも侵蝕して全身を包みこんだ。

 

「唯里さん……グレンダを連れて……逃げ……」

 

「(……悪ぃ凪沙。 時間稼ぎ頼む)」

 

 自分に駆け寄ってくる唯里を、古城は目の動きだけで制止し、悠斗は凪沙に『必ず戻って来る』というメッセージを残した。

 雪菜が“雪霞狼”で異境(ノド)の侵蝕を打ち消そうとするが、侵蝕速度のほうが速かった。 古城たちは闇の中へと溶け込み、漆黒の澱みだけが残される。

 

「──沖山一尉」

 

「了解」

 

 安座真の指示を受けた沖山が、多頭龍(ヒュドラ)もどきの上から跳び降りて来る。 安座真がグレンダを確保するまでの間、一人で雪菜たちの相手をするつもりなのだ。 

 沖山にとって、凪沙は脅威に映るが、先の戦闘でほぼ満身創痍。 神龍(シェンロン)の具現化も解けている(・・・・・)のだ。 ちなみに、凪沙の眷獣(青龍)は、美月たちとの戦闘終了時に解けてしまっている。

 凪沙が眷獣(四神)召喚となれば、一度が限界だろう。 そして、継続時間も短いはずだ。

 

「……雪菜ちゃん、唯里さん。 私が時間を稼ぎます」

 

 雪菜は解っていた。 凪沙は体力(魔力)が限界に近いということに。

 凪沙は、先程の悠斗の言葉を信じているのだ。――時間を稼げば、必ず悠斗が助けに来ると。

 雪菜は、無謀すぎる。と思った。 凪沙はほぼ満身創痍の状態であり、敵は、安座真に沖山、多頭龍(ヒュドラ)もどきだ。

 

「私も残ります。――唯里さんは、グレンダさんを逃がしてください!」

 

「凪沙さん、雪菜(ゆっきー)……!」

 

 凪沙、雪菜の背中を見て、唯里の瞳に迷いが浮かんだ。

 おそらく、凪沙と雪菜が力を合わせても、安座真と沖山、多頭龍(ヒュドラ)もどきの相手は、五分五分だろう。 なので、負ける可能性も捨てきれないのだ。

 だが、唯里までもがここで倒れたら、グレンダを護る者がいなくなる。

 どうすればいい、と苦悩する唯里の前で、グレンダは思いがけない行動に出た。

 

「うぅ──────っ!」

 

 地表に残された漆黒の澱みに──古城(・・)が吞み込まれた虚無の闇へと、グレンダは自ら飛び込んだのだ。 グレンダの姿が消えた直後、収縮を続けていた闇は完全に消滅する。

 彼女が着ていたパーカーだけが、ぱさり、と音を立てて地面に落ちた。

 

「グ……グレンダ!?」

 

「なに……!?」

 

 驚いていたのは、唯里たちだけではなかった。安座真も、予期せぬ結末に呆然としている。

 

「“器”が自ら異境(ノド)に飛び込んだ……だと……馬鹿な……!」

 

 自失したような口調で、安座真が呻く。

 咎神の騎士の力をもってしても、闇の侵蝕に巻きこまれた存在を元に戻すことできない──その冷徹な現実を、絶望に震える彼の声が示していた――。 

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ――とある辺境の村。

 だが、空は紅く、緑が茂る草木は枯れ、周囲の建物は破壊され焼け落ちている。 巨大な災厄に襲われた直後か、戦火に焼きつくされたような光景だ。

 

「どこだ……ここは?」

 

 悠斗は、異境(ノド)に侵蝕され、虚無の闇に吞まれた。 そして気づいた時には、この世界に一人で立っていたのだ。

 

「……天剣一族のなれの果てとでもいうのか……」

 

 悠斗が振り返ると、正面にある老人の人影が立っていた。

 悠斗は目を細め、その人物を観察する。 そして、ある人物の顔と一致した。

 

「……嘘だろ。 天剣一族の祖じゃねぇかよ……」

 

 悠斗は絶句した。

 なぜ先祖がこんな所にいるのか? 悠斗の考えでは、古の昔、天剣一族は天部と力を合わせ、咎神カインと対立していたのかもしれない。

 

「───……───────」

 

 悠斗の存在に気づいた彼は、何かを伝えるべく唇を震わせた。

 だが、その言葉が声になる前に、男の姿は薄れ消えていき、彼が消え去る直前、何かを指差した。 同時に、悠斗が立っていた場所も、細かな光の粒と化して静かに消滅を始め、闇に吞まれいく。

 今の悠斗は、異境(ノド)に侵蝕に飲み込まれそうになる。 悠斗は、僅かな神力で浸食に抗う。 だが、悠斗が力尽きるのは時間の問題だろう。

 

「……何だあれ?」

 

 彼が指差した場所が、光を放ち、異境(ノド)に侵蝕に抗っている。 悠斗は闇をかき分け、その場へ急いだ。

 光輝いていたのは、蒼く透き通る刀身をもつ刀だ。

 その刀の名は――鏡花水月(きょうかすいげつ)。 天剣一族の宝剣(・・)である。

 おそらく、祖はこの宝剣を使用し、異境(ノド)に侵蝕に抗いながら戦い、異境(ノド)の中に宝剣を突き刺し、命を落としたのだろう。

 

「……この刀、神格振動波(・・・・・)を生み出しているのか? てか、雪霞狼は(・・・・)鏡花水月を基(・・・・・・)にして作られたのか?」

 

 悠斗のこの考えは、あり得ない話でもない。 だが、この話が事実だという確証もないのだ。

 闇に刺さった宝剣を抜くと、悠斗の全身が神格振動波の結界に護られ、異境(ノド)の浸蝕を打ち消した。

 悠斗が、宝剣を軽く一振りすると、異境(ノド)に侵蝕の闇が切り裂かれる。 これに比べたら、神通力の刀がちっぽけに見えてしまう。

 悠斗は嘆息し、

 

「……どんだけ規格外な宝剣だよ」

 

 悠斗の考えでは、自身の神力を宝剣に送り込む事で、神格振動波は本来の威力を発揮する。――異境(ノド)の闇を切り裂き、凪沙たちの元へ帰還する事ができるだろう。

 ――悠斗は、自身の神力を宝剣に注ぎ込み、振り上げる。

 

「――――切り裂け!」

 

 剣を振り下ろし、悠斗は光に包まれた――。




……うん。悠斗君にチートが付与されましたね(^_^;)ちなみに、鏡花水月は異空間に仕舞う事が可能ですね。
宝剣は、簡単にほいほいと出す事はないですね。まあ、今回は例外かもしれませんが。

ではでは、次回もよろしくお願いします!!

追記。
今年も、“ストライク・ブラッド~紅蓮の織天使~”をよろしくお願いしますm(__)m
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