ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

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更新が遅れて申し訳ない……。週初めに投稿しようとしたんですが、風邪で寝込んでました(-_-;)
てか、戦闘回とか難しすぎましたね、はい。……すんません、いい訳ですね。

では、どうぞ。


タルタロスの薔薇 Ⅵ

 島の上空を覆い尽くす魔法陣からは、今も眷獣たちが召喚され続けていた。

 その眷獣たちを、悠斗の宝剣と凪沙の刀、そして“黄龍”と“青龍”の攻撃で消滅させるが、一向に減る気配がない。 眷獣を迎撃、しかし新たな眷獣が生み出される。――この繰り返しだ。

 戦況的には悠斗たちが押しているが、それがいつまでも続かない事は悠斗と凪沙は理解している。 強大な力を有しているとはいえ、力を行使するという事は、精神力と体力を消耗するのだ。 守護を解けばある程度負担が軽減する事ができるが、奴らの攻撃が直撃すればあの世行きだろう。

 

「きりがねぇな。 凪沙、まだいけるか?」

 

「大丈夫。 まだ余裕はあるよ」

 

 悠斗は、そうか。と頷く。 まあ確かに、凪沙は人間から“血の従者”になったのだが、今までの経験と日々のトレーニングが功を制しているのだろう。 また、悠斗の計算では、時間は十分稼げるはずだ。

 だが、絃神島上空を覆う魔法陣に、異様な変化が起きていた。

 全ての薔薇の花弁が散って、四つの球体へと変化して、大きな種子を形作った。 “タルタロスの薔薇”の最終形態。 咲き誇る真紅の花弁が散り、新たに種が生み出されたのだ。

 夥しい数の薔薇の眷獣たちは、四つの種子に魔力を奪われ千涸びるように次々と消滅し、種子たちが取り込んだ魔力量は、悠斗の予想を遥かに超えている。

 その異常な量の魔力を内包したまま種子が割れ、出現したのは四体の化身だった。

 一体は猛禽のようであり、一体は鰐に似た姿。 一体は龍に似て、最後の一体は虎に酷似している。 いずれも全長二メートル超える眷獣たち。 吸血鬼と同じく、濃密な魔力の集合体だ。

 

「……冗談、だろ」

 

 悠斗の声が珍しく罅割れていた。――四聖獣。 奴らは、悠斗に馴染み深い眷獣だったからだ。

 東西南北――四基の超大型浮体式構造物(ギガフロート)で構築された絃神島は、風水術の応用を用いて人工島の安定化を図っていると言われている。 卓越した風水術師の千賀が、その事実を知らないはずもない。 そして、“タルタロスの薔薇”の術式は、絃神島の構造を利用し千賀が協力して生み出したものなのだ。 そしてそこには、悠斗の四神の特性も混じっている。

 悠斗は、ものは試しだ。と内心で呟いた。

 

「――雷神槍(らいじんそう)!」

 

 悠斗がそう言うと、“黄龍”が凶悪な口から稲妻が凝縮された鋭い“神槍”が四聖獣たちへ向かうが、それは直前で消し去った。

 ――玄武の特性である魔力無効化である。

 

「……悠君。 やっぱり、物理攻撃じゃなきゃダメなのかな?」

 

「ああ。 千賀の野郎、俺たちの四神の特性まで取り入れてやがる。 てか、解析しやがった」

 

 最悪だな。と嘆息する悠斗。 それにしても、悠斗たち対策がここまで進んでいたとは、予想外過ぎた。

 物理攻撃となれば、眷獣たちの突撃攻撃、宝剣と(得物)の攻撃位である。

 

「凪沙の刀じゃ、少し不利かも」

 

 まあ確かに、今の戦闘で刃が欠けてきている。 神通力が宿ってるとはいえ、物理消耗がある刀は不利なのは間違えない。

 凪沙は刀を異空間に仕舞い、呪文を唱える。

 

「――天を統べる青き龍よ。 我の矛になる為、我に力を与えたまえ。 汝、我を導き槍となれ。――稲妻の神槍(ライトニング・スピア)

 

 凪沙が両手で握るのは、青龍そのもの(・・・・・・)が武器となった槍。 この稲妻の槍は、数万ボルトの稲妻により形成されているので、宿主以外の者が触れると身を焦がす。しかも、稲妻は天然ものなので魔力無効化の能力を受ける心配もない。 そう、物理攻撃に適した槍なのだ。

 凪沙は右手を掲げ、眷獣を召喚させる。

 

「――おいで、白虎! 玄武!」

 

 凪沙の傍らに召喚されたのは、純白の白い虎。 亀の甲に蛇が巻き付いている神獣。

 そして悠斗が、右手を突き出す。

 

「――降臨せよ、麒麟!」

 

 悠斗が傍らに召喚したのは、黄金の縦髪を靡かせる神獣である。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「二人は、四聖獣の玄武と白虎をお願い!」

 

 凪沙の問いに答えるように、白虎と玄武は咆哮し、玄武は“四聖獣の玄武”の足を止める為突撃し、白虎も“四聖獣の白虎”の次元切断(ディメンジョン・セェヴァル)を無効化するように突撃して爪と爪が衝突し金属音を奏る。……もはや、怪獣映画のような惨状だ。 それでも、絃神島周囲に凪沙が結界を張ってくれたので、沈没する。という心配はないのだが。

 残るは、“四聖獣の朱雀と青龍”。 朱雀に対峙するのは凪沙で、青龍に対峙するのは悠斗である。

 そして、空を断ち切るように“四聖獣の朱雀”から鋭い爪が振り下ろされ、

 

「――っ!」

 

 凪沙は槍でそれを受け止め、爪を弾き返し、隙を作った所で背後へ飛んだ。

 今の一撃はかなり重い。 眷獣の武器ではなかったら押し潰されていただろう。 今の衝撃で額に切り傷が入り、一筋の血液が流れる。

 それを見た悠斗は、声を張り上げる。

 

「凪沙ッ!」

 

 凪沙は額を袖で拭い、

 

「だ、大丈夫。 掠り傷だよ」

 

 そうか。と、悠斗は安堵し、

 

「麒麟! 四聖獣の朱雀の足止めを頼む!」

 

 麒麟は一鳴きし、“四聖獣の朱雀”に息吹の攻撃を仕掛けるが、流石守護の化身と言うべきか“麒麟”の攻撃は寸前の所で阻まれている。 そして、“四聖獣の青龍”が襲ってきそうな所を、“黄龍”が足止めをしてる状況だ。 正に、同力の衝突と言ってもいいだろう。

 

「……凪沙。 一か八か、やってみるか?」

 

 確かに、全快の悠斗たちの“宝剣”や“雷槍”の力を上乗せすれば、四聖獣たちを押し退ける事ができただろうが、大量の眷獣を相手にした後で今の戦闘だ。 体力と精神力の消耗が凄まじい。

 

「……わかった。 自信はないけど」

 

「……いや、そこは『自信がある』だろう。……まあ、俺も自信なさげの言葉だったかも知れんが」

 

 悠斗は両手で宝剣を握り締め、宝剣に神力を流し込み、凪沙も雷槍に魔力を込めていくと、“宝剣”は蒼く発光し“雷槍”は稲妻が勢いを増す。

 

「はッ!」

 

「行っけ――!」

 

 悠斗の宝剣からは一つの槍を形成し、雷槍からは電撃の塊が四聖獣たちの元に飛来するが、それは跡形も無く消え去る。 四聖獣の玄武の常時無効化能力だ。 

 

「……今思うと、玄武の力ってチート染みてるんだな」

 

 まあ確かに、今の眷獣たちも物理攻撃しか届かない。

 

「……うん。 今のは反則だよ」

 

 そして、“四聖獣の白虎”と白虎の均衡が崩れ、白虎は次元切断(ディメンジョン・セェヴァル)によって切り裂かれ消滅し、玄武も“四聖獣の玄武”に押され気味だ。

 こうなったら、最終手段か?と、凪沙と悠斗が思考していた時、――後方から声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

「全てを食らい尽くす、漆黒の大蛇よ。 我を守護し、我の声に応え降臨せよ!――八岐大蛇(ヤマタノオロチ)!」

 

 すると、蛇の八つの頭が、“四聖獣の青龍”と“四聖獣の朱雀”を押し退ける。そしてこの眷獣は、夜光美月(やこう みつき)が行使する眷獣だ。

 ということは、奴も居るはずだ。

 

()い――暴君の神龍(ウロボロス)!」

 

 悠斗の背後で、漆黒の龍を召喚したのは夜神蓮夜(やがみ れんや)である。

 

「――暴食者!」

 

 飛翔した暴君の神龍(ウロボロス)は、“四聖獣の玄武”の体半分を食い千切った。――次元捕食(ディメンジョン・イーター)だ。 この能力は、第四真祖の眷獣、“龍蛇の水銀(アル・メイサ・メルクーリ)”と同等なものと見ていいだろう。 四聖獣の玄武は、体の半分を食われて戦闘不能状態であるが、魔力無効化能力は継続中である。

 そして、美月が凪沙の隣に、蓮夜が悠斗の隣に立つ。 それから数秒後、力を使い果たした玄武は消滅し、暴君の神龍(ウロボロス)は蓮夜の傍らに着地する。

 

「派手にやられてるな」

 

「……コイツ(四聖獣)らの“前座”で消耗しすぎただけだ。 お前の助けがなくても、何とかなった」

 

 蓮夜は「ふん」と鼻で笑い、

 

「水を差して悪かったな。 ところで神代悠斗、お前のその剣は何だ?」

 

 蓮夜が見ているのは、悠斗が携える“鏡花水月”だ。

 

「あ、ああ。 天剣一族に代々伝わる宝剣だ。 俺の“切り札だった”ものだ」

 

「まあそうか。 オレに見られた以上、切り札じゃないって事か」

 

「ま、そういう事だ」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 凪沙の隣に立った美月は、凪沙の顔を覗き込む。

 

「凪沙、大丈夫?」

 

「な、何とか。 助けに来てくれてありがとう」

 

 美月は頭を振り、

 

「ううん。 友達だから当然だよ」

 

 そう、美月は神力を感じ取り、凪沙の救援に来たのだ。……あれだ、悠斗はオマケみたいなものである。 まあ、今後どうなるかは不明だが。

 そして、美月の傍らに立つのは、八つの頭がうねうねと動き、八本の尾を持つ巨大な蛇、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)だ。

 

「――いくよ、凪沙」

 

「――いつでも、美月ちゃん」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「今の戦闘で解ったと思うが、あいつらの動力源は絃神島の“龍脈”だ」

 

 蓮夜の言う通り、それは戦闘不能状態になった“四聖獣の玄武”が現していた。

 そう、先方の蓮夜の攻撃は、“四聖獣の玄武”が吸い取る龍脈の“(コア)”ごと空間を食ったので、現状を作る事ができたのだ。

 

「ああ。“(コア)”を潰せばいいんだな」

 

「そうだ、不意打ちはもう効かない。 オレと美月で四聖獣の白虎を止める、次元切断(ディメンジョン・セェヴァル)は面倒な相手だからな。 神代悠斗は、四聖獣の青龍を頼んだ。 朱雀は、暁凪沙が何とかするはずだ」

 

 ああ。と、悠斗は頷く。

 

「――行くぞ」

 

「――了解」

 

 悠斗は“縦髪を靡かせる麒麟”は引き連れ、四聖獣の青龍の元へ、蓮夜と美月は“八岐大蛇(ヤマタノオロチ)”、“暴君の神龍(ウロボロス)“を連れ、四聖獣の白虎の元へ、凪沙は“黄金の龍(黄龍)”を連れ四聖獣の朱雀の元へ向かったのだった。

 後は簡単な作業だ、眷獣たちが物理的に“四聖獣たち”の動きを止め“(コア)”を剥き出しにし、悠斗は宝剣で、凪沙は雷槍で、蓮夜たちは眷獣で、それを破壊するだけだ。“(コア)”が破壊され、龍脈の根源が消失した四聖獣たちは動きを止め煙のように消え去り、完全に“タルタロスの薔薇”は機能を停止(消滅)したのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 一方その頃、ディセンバー探索に向かっていた古城たちは、巨大傀儡(ストーンゴーレム)の相手をしていた。 そして、窮地に陥りされそうになった時、救援に駆け付けたのは八卦封陣を内部から解析した“舞威媛である、煌坂紗矢華と斐川志緒”。“剣巫である羽波唯里”だ。

 

「暁古城! 術者を見つけたわ! 三時の方向、距離六千二百!」

 

 紗矢華が、“六式重装降魔弓(煌華麟)”の呪矢を再装填しながら古城に向かって叫んだ。

 その隣では、斐川志緒が“六式降魔弓・改(フライクーゲル・プラス)”を構え、連続して呪矢を巨大傀儡(ストーンゴーレム)に向かって放ち、召喚される巨大傀儡(ストーンゴーレム)たちを消滅せ、羽波唯理が“六式降魔剣・改(ローゼンカヴェリエ・プラス)”で空間ごと切り裂く。そこから数メートル先では、古城が“獅子の黄金(レグルス・アウルム)”で巨大傀儡(ストーンゴーレム)を吹き飛ばし、雪菜が“雪霞狼”で切り裂く。

 

「――距離六千二百?」

 

 古城は、紗矢華の言葉を受け眉を寄せる。

 そこにあるのは、海上に僅かに残された土地だけだ。 島の半分以上は海中に沈んでおり、三日月型のような歪な形をしてる場所。 壊れかけたビルだけが立ち並んでいるその場所は、人工管理公社からも見放されている廃墟だ。

 

「――人工島・旧南東地区(アイランド・オールドサウスイースト)……廃墟区間か!……すぐ向かわねぇと!」

 

「でも、暁古城! この状況はどうするのよ?」

 

 紗矢華がそう古城に言う。

 確かに今の状況は、巨大傀儡(ストーンゴーレム)に囲まれて身動きが取れない状況だが、古城と雪菜は苦笑した。

 

「いえ、龍脈が徐々に切り離されていくのを感じます」

 

「ホント、自力で“薔薇”を破壊するとかチート染みてるぞ」

 

 直後、巨大傀儡(ストーンゴーレム)は煙のように姿を消した。

 ともあれ、“薔薇”を破壊できたのは、悠斗たちだけの力ではない。 蓮夜たちの力が有ってからこそだ。 でもまあ、古城はまだこの事を知らないので、蓮夜たちを数に入れていないのは仕方ない。

 そして雪菜は古城の隣に立ち、古城は眷獣召喚を解いた。

 

「行きましょう、先輩」

 

「ああ。 グレンダ、まだ飛べるか?」

 

 グレンダは「だぁ!」と謎のガッツポーズを取りながら頷いた。

 

「唯里さんたちは待っててくれ。 消耗が激しいだろ」

 

 確かに、今の戦闘で呪力をほぼ使い果たしてしまい、走るのがやっとの状態だ。 現状でついていっても、戦闘の邪魔になるのは確かだろう。

 紗矢華は古城を睨み、

 

「暁古城。 雪菜に何かあったら許さないから」

 

「ああ。 その時は呪い殺してくれて構わないぜ」

 

 するとグレンダは、着ていた服を脱ぎ捨て、出現した鋼色の龍族(ドラゴン)が古城たちを背に乗せて空へと舞い上がって行った――。




“薔薇”をどうにかしちゃうとか、悠斗くんたちはチート過ぎますね。四聖獣も原作よりかなり強く設定しましたからね(笑)
ちなみに、玄武の重量等は張った結界でなんとかなってます。

次回も頑張って更新します。では、また次回m(__)m

追記。
悠斗君の宝剣は、物理消耗とかそういうのには例外です。天然ものの、神格振動波が宿っていますからね。
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