ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

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今回は話が進みましたです。
まあ、ちょっとしかですが。

では、投稿です。
本編をどうぞ。


戦王の使者Ⅷ

その爆発をクリストフ・ガルドシュは、ネットワークを経由したリアルタイムの中継画像で見ていた。

軍用無線機を使って、部下に聞いた。

 

「状況を報告しろ、グリゴーレ」

 

『こちら、グリゴーレ。 正解(ビンゴ)ですよ、少佐。 サンプルは動き出しました』

 

ナラクヴェーラに乗り込んでいたガルドシュの部下が、興奮気味に叫んでいた。

神々の兵器と呼ばれたナラクヴェーラの正体は、意志を持った機械の獣だ。

一度起動してしまえば、自らの判断で敵対する者を攻撃し、殲滅するのだ。

 

「戦闘の継続は可能だな?」

 

『こちらは楽なものです。 高みの見物ですからね。 この島が、こいつの攻撃にどこまで保つかわかりませんがね』

 

グレゴーレはそう言って、猛々しく笑った。

黒死皇派が手に入れた制御コマンドは、『はじまりの言葉』だけだ。

なので、動き出したナラクヴェーラはもう止まらない。

 

「了解だ、グレゴーレ」

 

無線を切ったガルドシュが、浅葱たちの方へゆっくりと顔を向けた。

浅葱は、タブレットPCに映し出された中継画像を、放心した表情で見つめていた。

ナラクヴェーラが閃光を放つたび、巨大な爆発が増設人工島(サブフロート)を揺らす。

燃え上がる装甲車。 逃げ惑う特区警備隊(アイランド・ガード)の隊員たち。

その惨劇を引き起こしたのは、浅葱が解読した起動コマンドだ。

その事実が、浅葱を動揺させているのだろう。

 

「――ということだが、まだなにか質問があるかね?」

 

そんな浅葱たちを無表情に眺め、ガルドシュが聞いた。

沈黙を続ける浅葱の代わりに、雪菜が口を開いた。

 

「なぜですか?」

 

「……なぜ?」

 

「どうしてあなたたちがここにいるんです?」

 

「我々の目的はすでに説明したと思ったが?」

 

「いいえ、そうではなく。 なぜアルデアル公があなたたちに協力したのか、ということです」

 

ガルドシュが眉を小さく上げた。

瞳にも、僅かな驚きの色が浮かんだ。

 

「そうか。 服装が違うから解らなかったが、君はあの夜の、第四真祖の同伴者だな」

 

「ここは“オシアナス・グレイヴ”の中なんですね」

 

雪菜は溜息を吐いた。

そして、正体を気づくのが遅れたのも雪菜も同じだ。

ヴァトラーに招待を受けたあの夜、給仕を務めていた彼の執事――。

捜していたガルドシュは、最初から雪菜たちの目の前にいたのだ。

 

特区警備隊(アイランド・ガード)の人々が、どれだけ調べても黒死皇派のアジトを発見できなかった理由は、それが外交官特権に守られた船の中にあったら、ですね」

 

「これ以上隠す意味はなさそうだな」

 

そうガルドシュは呟き、部下たちに窓の外を開けるように命じた。

塞がれていた窓が開くと、その向こうには広がっていたのは、陽光に煌めく海面だった。

水平綿上に浮かんでいるのは、絃神島の人工的な島影だ。

雪菜たちの現在地は、絃神島の沖合約十メートルといったところだろう。

 

「船の……中……」

 

眩い陽射しに目を細めて、浅葱が弱々しく声を出す。

 

「戦王領域、アルデアル公ディミトリエ・ヴァトラー所有の船の中だよ」

 

そうガルドシュが説明した。

戦王領域貴族の絃神島訪問については、一般市民にも報道されている。

なので、浅葱もヴァトラーの名前を知ってるはずだ。

 

「なぜですか。 なぜ、獣人優位主義の黒死皇派は、戦王領域貴族であるアルデアル公と敵対関係であるはずです。 ましてや彼は、あなた方の指導者だった黒死皇を殺害した張本人なのに――」

 

「そう。 だからこそ、魔族特区の警備隊も、この船を疑おうとはしなかった。 この船の乗組員の約半分は、我ら黒死皇派の生き残りだ。 しかし、ああ見えてヴァトラーは貴族だからな。 自分の船に乗り組んでる船員の素性など、いちいち詮索したりしない。 船員を雇った船の管理会社の責任、ということになるだろうな」

 

雪菜が眉を潜めた。

 

「アルデアル公は、なにも知らなかった、と言い張るつもりですか。 そんなことして、彼になんのメリットが?」

 

「不老不死の吸血鬼の考えなど知ったことではないが、おそらく奴は退屈だったのだろうな」

 

「――退屈?」

 

「そうだ。 だからナラクヴェーラとの戦いを求めた。 真祖をも倒しうるやもしれぬ神々の兵器。 暇を持て余した吸血鬼にはちょうどいい遊び相手だ。 その前に第四真祖がナラクヴェーラと戦うなら、それも一興。 どう転んでも、奴の退屈は紛れるというわけだな。――紅蓮の熾天使も、似たようなことを言ってたと思うが」

 

「そんな……」

 

ガルドシュは絃神島に被害を出さないことを条件に、制御コマンドの解析を要求してきた。

ナラクヴェーラはすでに動き出している。

その無差別な破壊をやめさせる為には、浅葱が制御コマンドを解析するしかないのだ。

黒死皇派が、自由にナラクヴェーラを使用するとわかってもだ。

 

「さすがはテロリストね。 最ッ低だわ」

 

「スーヴェレーンⅨは、この奥だ。 必要なデータはすでに揃えてある。 ネットワークも繋がっているので、好きに使ってくれて構わない」

 

「どのみち私には、選択肢はないってわけね。 いいわ。 だけど、この貸しは高くつくわよ」

 

浅葱の罵倒を意に介した素振りもなく、ガルドシュは部下を引き連れて部屋を出て行く。

ガルドシュは振り返り、

 

「君の能力を疑うわけではないが、できるだけ急いだ方がいい。 制御コマンドを手に入れる前に絃神島が沈んでしまっては、我々としても困ったことになるのでね」

 

「言われなくてもやってやるわよ――!」

 

浅葱が憎々しげに叫びながら、部屋の奥にある扉を乱暴に蹴り開けた。

そこは、生鮮食品を保存する冷蔵室であった。

ただし、部屋の中には置かれているのは鮮魚や生肉ではなく、スーパーコンピュータである。

回路を冷却するために冷やされた部屋の中へと、浅葱が自暴自棄になったように入っていく。

その刹那、思いがけない方向から声がした。

 

「――焦るな、娘」

 

眠っていたはずの凪沙の口から聞こえた声は、冷たく澄んだ声だった。

短く結い上げた髪が解けて、腰近くまで流れ落ちている。

 

「心を乱すな。 おまえとその機械(ガラクタ)の性能なら、滅び去った文明如きの書きつけを読み解くのに、さして時はかかるまいよ」

 

「凪沙……ちゃん?」

 

普段とは別人のような凪沙に、浅葱は戸惑いながら声をかける。

雪菜が驚愕の表情で首を振った。

 

「いえ、違います……。 この状態は、神憑りか……憑依……?」

 

「ふふ、そうか。 おまえも巫女だったな。 獅子王の剣巫よ」

 

凪沙はそう言って、愉快そうに笑った。

 

「ならばおまえにもわかっていよう。 心配せずとも、あの坊やたちが時を稼いでくれる。 そこの娘の策が練り上がるまでの時をな」

 

「あなたは……いったい……!?」

 

雪菜が鋭く眼を細めて聞き返すが、凪沙はなにも答えない。

無言のまま静かに瞼を閉じ、ゆっくりと崩れ落ちた。

床に激突する寸前の凪沙を、雪菜が抱きとめた。

そして、あることに気付いた。

そう。 凪沙の体が、焔の鎧に守られていることに。

 

「(これは、朱雀の焔?――)」

 

朱雀の焔を纏っていれば、大規模な爆発に巻き込まれても無事あり、纏っている本人が敵と判断した相手は、直接触れることは出来ないのだ。

つまり、凪沙は、悠斗が守っていたのだ。

 

「(神代先輩は、凪沙ちゃんの守護神ですね――)」

 

雪菜はこんな状況にも関わらず、苦笑してしまった。

浅葱がおどおどしながら、

 

「今のは、なに? 誰なの?」

 

浅葱の質問に、雪菜は左右に首を振った。

雪菜にも、なにが起こったのか解らなかったのだから。

 

「藍羽先輩。 携帯電話を貸していただけますか?」

 

「それはいいけど、なにする気?」

 

浅葱が、スマートフォンを放り投げてくる。 それを雪菜は左手でキャッチした。

船が絃神島に近づいたので、携帯の電波も繋がるようになったのだ。

 

「まさか、あの紗矢華さんに限って、先輩とややこしいことになるとは思えないですけど――」

 

雪菜は暗記してる番号に電話をかけ、通話口に耳を当てた。

回線が繋がり、古城たちの声が聞こえてくる。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

撒き散らされる真紅の閃光を眺めて、ヴァトラーは拍手を喝采した。

 

「あれがナラクヴェーラの“火を噴く槍”か。 まあまあ、いい感じの威力じゃないか」

 

そんなヴァトラーを鬱陶しげに睨んで、古城が苛々と地面を蹴る。

悠斗に限っては、殺気をヴァトラーだけに放っている状態だ。

だが、ヴァトラーはそれを受けても、笑みを崩していないが。

 

「ああくそ。 なんであんたがここにいるんだ。 自慢の船はどうした!?」

 

「ああ。 実はオシアナス・グレイヴを乗っ取られてしまったねェ」

 

ヴァトラーは飄々とした口調で言う。

すると、悠斗が殺気の乗った声で言った。

 

「……貴様、黒死皇派と最初からグルだったんだろ」

 

「サァあ、なんのことかナ。 僕は命かながら逃げてきたんだヨ」

 

「……テメェ、ここでナラクヴェーラと共に破壊してやろうか」

 

「フフ、イイね。 僕は君とのダンスを楽しもうかナ。 ナラクヴェーラより楽しそうダ」

 

これを見ていた那月が、悠斗の気を静めるように言う。

 

「落ち着け。 お前と蛇遣いがここで暴れたら、この島が沈むぞ」

 

悠斗は大きく息を吐いた。

 

「……すまん」

 

「ザンネンだな。 まァ、僕も全快の君とダンスを舞いたいしネ。 いまの天使は、力の約三(・・)割くらいしか出せてないダロ。 無理に封印を解いたら、暴走しちゃうしネ。 あ、そう言えば、逃げてくる途中でこんなの拾ったんだが」

 

ヴァトラーは、足元にあったボロ布のような物を前に放った。

湿った音を立てて転がったのは、高校制服を着た男子生徒だった。

ツンツンに逆立てた短い髪と、首にぶら下げたヘッドフォン。

 

「や、矢瀬!?」

 

「も、基樹!?」

 

「あれ、もしかして知り合いだった?」

 

ヴァトラーは、古城と悠斗の反応を見て、愉快そうに笑った。

 

「さて、と。 まァ、安心してくれ。 ナラクヴェーラは、僕が責任を持って破壊するヨ」

 

「テメェは引っ込んでろ。 てか帰れ! 殺すぞ!」

 

「船は乗っ取られたって言ったじゃないカ。 僕の天使よ」

 

「ああもうっ! お前らは仲良くできねぇのかよっ!」

 

古城は、悠斗とヴァトラーを交互に見てから怒鳴った。

その時、古城の携帯電話が着信音を鳴らした。

 

「ああ、くそ。 誰だよこんな時に――」

 

ぼやきながら古城は携帯を取り出し、表示された発信者に息を呑む。

 

「浅葱か!?」

 

『……わたしです、先輩』

 

勢いをこのんで叫んだ古城の耳元で、なぜか不服そうな雪菜の溜息が洩れてくる。

 

「え!? 姫柊?」

 

思わぬ不意打ちに古城は狼狽した。

 

「無事なの、雪菜!? 今どこにいるの!?」

 

古城の耳元に顔を押し付けて、紗矢華が叫んだ。

さすがに雪菜のことになると反応が早い。紗矢華は、古城と密着状態になっていることに気付いていない。

 

『はい、無事です。 今は“オシアナス・グレイヴ”の中です。 藍羽先輩や凪沙ちゃんにも怪我はありません』

 

この情報を聞いた悠斗は、もの凄く大きな安堵の息を吐いた。

朱雀の加護があっても、とても心配だったのだ。

 

「そうか。 とりあえず、こっちにいるよりは安全そうだな」

 

雪菜が呆れたように息を吐く気配がした。

 

『やっぱり、ナラクヴェーラの近くにいるんですね』

 

「あ、ああ。 悠斗と煌坂も一緒だ」

 

『またそうやって、勝手に危ない場所に首を突っ込んで、先輩は自分が危険人物という自覚があるんですか。 神代先輩もです』

 

「いや、姫柊さん。 俺は力をコントロール出来るぞ」

 

『そんなこと言って、また力を暴走させそうになったんじゃないですか?』

 

「うっ」

 

悠斗は図星を突かれ、言葉に詰まった。

 

『それに、紗矢華さんが一緒にいて、なにをやってたんですか』

 

「いや、それはなんていうか、まさかあれが出てくるなんて俺たちも思ってなくて」

 

「ゆ、雪菜たちが誘拐されたっていうから、心配で……」

 

明かに機嫌を損ねている雪菜の叱責に、古城と紗矢華が言い訳をする。

 

『でも、ちょうどよかったです。 先輩がた、ナラクヴェーラが市街地に近づかないように、しばらく足止めをしてください』

 

「……足止め?」

 

『はい。 藍羽先輩が今、ナラクヴェーラの制御コマンドの解析をしてくれています。 それが終われば、現在の無秩序な暴走は止められますから』

 

「浅葱が……なるほど、そういう話か……」

 

古城が重々しく頷いた。

詳しい詳細は解らないが、古城は雪菜たちが置かれた状況を理解した。

黒死皇派は、浅葱を利用してナラクヴェーラの制御コマンドを解析しようとしてる。

浅葱が暴走したナラクヴェーラを止める為の制御コマンドを調べている、ということは今の段階では、黒死皇派もナラクヴェーラを制御できないことになる。

 

『足止めだけでいいんです。 無理に破壊しようとして、被害を拡大するような真似だけはやめてください』

 

「わかった。――悠斗も聞こえてたよな?」

 

「足止めでいいんだな。 そういうことなら、了解だ」

 

『はい、先輩がたもお気をつけて』

 

そう言い残して通話が切れる。

古城は携帯電話をポケットに入れながら、破壊された監視塔を見た。

ナラクヴェーラは瓦礫に埋もれたまま動かないが、何一つ、危機は去っていなかった。

 

「那月ちゃん、特区警備隊(アイランド・ガード)の撤退状況は?」

 

増設人工島(サブフロート)からはギリギリ脱出できたようだね。 負傷者の数も予想したほどじゃない」

 

古城の問いに答えたのは那月ではなく、ヴァトラーだった。

 

「わかった。 だったら、あいつは俺たちが相手をする。 捕まってる浅葱たちを頼む、那月ちゃん」

 

那月は古城に指示をされて不機嫌そうな顔をしたが、反論しなかった。

了解した、ということでいいのだろう。

 

「他人の獲物を横取りするのは、礼儀としてどうかと思うな、古城」

 

ヴァトラーはそう言って、やんわり抗議の声を上げる。

 

「それを言うなら、他人の縄張りに入り込んで好き勝手してるあんたのほうが礼義知らずだろ。 俺たちがくたばるまで引っ込んでろ、ディミトリエ・ヴァトラー」

 

「ふゥむ。 そう言われると、返す言葉もないな」

 

ヴァトラーはあっさりと引き下がった。

 

「それでは、領主たる君に敬意を表して。 手土産をひとつ献上しよう。 君たちが気兼ねなく戦えるようにね。――“摩那斯(マナシ)”! “優鉢羅(ウハツラ)”!」

 

「なっ!?」

 

ヴァトラーが解き放った膨大な魔力の波動に、古城は言葉を失った。

ヴァトラーの背後に出現したのは、全長数十メートルにも達する二匹の蛇だ。

荒ぶる海のような黒蛇と、凍りついたような水面のような青い蛇。

蛇遣いの異名を持つヴァトラーの眷獣だ。

それらが空で絡み合い、一体の龍の姿へと変わる。

 

「二体の眷獣を融合させた!? これがヴァトラーの特殊能力か!」

 

「まったく、出鱈目(でたらめ)な能力だ。 お前の力は」

 

荒れ狂う眷獣を姿を見て、古城が硬い声を出し、悠斗は溜息を吐いていた。

 

「僕の天使には言われたくないネ。 君は、この眷獣を一撃(・・)で吹き飛ばしたンだから」

 

ヴァトラーは荒れ狂う龍を降下させ、そして、増設人工島と絃神島本体を連結するアンカーをガラス細工のように破壊した。

これにより、増設人工島はゆっくりと洋上を漂い始めた。

 

増設人工島(サブフロート)を、絃神島本体から切り離したのか……!?」

 

ヴァトラーの目的に気付いて、古城が顔を上げた。

ヴァトラーがニヤリと笑う。

 

「これで、市街地への被害を気にせず、思うさま力が使えるだろ。 せいぜい僕を愉しませてくれたまえ」

 

「あ、ああ……」

 

その時、悠斗が、まだ脱出できてない特区警備隊(アイランド・ガード)が建物の中にいるのに気付いた。

恐らく、脚を負傷してしまい、避難ができなくなってしまったのだろう。

悠斗は瞳を閉じ、今解放できる魔力を解放した。

 

「――降臨せよ。 朱雀!」

 

悠斗の隣に、莫大な魔力を持つ朱雀が召喚された。

 

「なっ!?」

 

古城はこれを見て、再び言葉を失った。

悠斗から、ヴァトラー以上の魔力の波動を感じたからだ。

 

「――炎月(えんげつ)

 

悠斗の指示に従って、朱雀は特区警備隊(アイランド・ガード)が避難してる建物に結界を張った。

そしてこの結界は、ナラクヴェーラの直接攻撃にも、数十回は耐える事ができる。

 

「ふぅ、これであそこに避難した人は安全だ」

 

これを見ていたヴァトラーが、愉快そうに笑った。

 

「やはり、僕の天使は規格外ダよ。 力を封印しても、それだけの魔力を出せるなんテネ」

 

紗矢華が叫んだ。

 

「ナラクヴェーラが動き出したわ、暁古城!」

 

耳元で聞いた紗矢華の声に、古城が慌てて振り返る。

周囲の瓦礫や鉄骨を蹴散らして、ナラクヴェーラの本体が姿を現した。

高さはおよそ七、八メートルほどの六本足を持った戦車である。

全体的な印象としては、エビのような甲殻に覆われた巨大アリ。

楕円形の胴体に、判球型の頭部が埋もれるような形で密着しており、その先端には触覚のような副腕が二本生えている。

 

「古城。 やっぱり、ここは任せてもいいか? 必ず戻ってくるから」

 

「凪沙のことが心配なんだな」

 

「ああ、安全ってわかっても、黒死皇派がまだあの船にいるかもしれないしな」

 

「そうか、わかった。 凪沙たちを頼んだ」

 

悠斗は朱雀の背に跨り、

 

「おう、任せろ。 こっちは頼んだぞ、古城」

 

「ああ」

 

拳を打ち付け合った後、悠斗は朱雀と共に、オシアナス・グレイヴ目指して飛翔を開始した。




はい、悠斗君は魔力を封印してても結構なチートですな。
ええ、朱雀も真祖レベルの眷獣ですよ。
そして、悠君は凪沙ちゃんの守護神やー。
後、電話の件は、途中からスピーカーに切り替えてます。

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