ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

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こっちを先に書いてしまった……。
ええ、こちらの区切りが良いところまで書きます(^_^;)
それから他の書こうかとm(__)m
ご都合主義発動です(笑)

では、投稿です。
本編をどうぞ。


天使炎上Ⅵ

悠斗は、ラ・フォリアと共にいる理由を古城と雪菜に説明した。

 

「ま、そういうことなんだ。 まさか考え事をしてたら、お姫様と遭遇するなんてな」

 

ラ・フォリアが頬を膨らませた。

 

「お姫様じゃありません。 ラ・フォリアです。 紅蓮の熾天使」

 

悠斗は肩を落とした。

 

「わかったから、ラ・フォリア。 紅蓮の熾天使はやめてくれ……」

 

「悠斗は、最初からそう言えばよかったんです。――雪菜と古城も、殿下や王女はやめてください」

 

「ああ、わかった。 ラ・フォリア」

 

「え? いえ、ですが、しかし……」

 

古城は迷うことなく彼女を名前で呼んだが、雪菜は首を振っていた。

政府機関の雪菜は、そのような馴れ馴れしい距離間には抵抗があるのだろう。

雪菜は彼女の瞳を見て、諦めたような口調で言った。

 

「……わかりました。 ラ・フォリア」

 

「雪菜も、今後はそれでお願いしますね」

 

悠斗はこれを見て、やっぱり、一方的なお嬢様だなー、と思っていた。

 

「――――!」

 

その時だった。 悠斗が再び海を見たのは。

悠斗の中にいる眷獣たちが強い反応を示していたのだ。

だが、古城たちの反応はない。 もしかしたら、悠斗に関連しているかも知れない。

雪菜も海を見ながら、雪霞狼の刃を展開させた。

 

「船です」

 

そう告げる雪菜の視線の先には、水飛沫を撒き散らして進む黒い船が映った。

悠斗が破壊したの同じ、軍用の揚陸艇である。

 

「あの船……また機械人形(オートマタ)か?」

 

うんざりとした気分を味わいながら、古城が呻いた。

古城は眷獣を召喚しようとしたが、悠斗が古城を制止した。

 

「いや、待て。 あれには叶瀬が乗ってる可能性がある」

 

「なんで解るんだ?」

 

古城がそう聞いてくるが、悠斗にも解らないのだ。

船の甲板上に、見覚えがある影が立っていた。 ベアトリス・バスラーとロウ・キリシマだ。

キリシマの手には白い巨大な布切れ、停戦の示す白旗が掲げられていた。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

船が接岸したのは、先程機械人形(オートマタ)が上陸してきたのと同じ入り江だった。

最初に船を下りてきたのは、革製の真紅のボディスーツを身に纏っているべアトリス。

彼女に続いて、聖職者を思わせる男が上陸してくる。

最後に、大きな旗竿を担いだままキリシマが甲板から顔を出した。

 

「よう、バカップルとその保護者。 元気そうだな。 仲良くしてたか?」

 

「……ロウ・キリシマ……。 てめぇ、よくもぬけぬけと」

 

悠斗が古城を制止しながら、

 

「古城、そう怒るなって。 俺はあいつを利用したんだから」

 

キリシマは、悠斗の言葉を聞き呻いた。

 

「ぐふっ。 後からわかったんだが、おまえさんの眷獣は空が飛べるんだってな」

 

「まあな」

 

無防備に前に進み出たラ・フォリアが、黒服の男を見つめて言った。

 

「久しぶりですね、叶瀬賢生」

 

賢生は自身の胸に手を当て、恭しく礼をする。

 

「殿下におかれましてはご機嫌麗しく……七年ぶりでしょうか。 お美しくなられましたね」

 

「わたくしの血族をおのが儀式の供物にしておいて、よくもぬけぬけと言えたものですね」

 

冷ややかな口調で、ラ・フォリアが答えた。

しかし賢生は表情を変えない。

 

「お言葉ですが殿下。 神に誓って、私は夏音を蔑に扱ったことはありません。 私があれを、実の娘同然に扱わなければならない理由――今のあなたにはおわかりのはず」

 

ラ・フォリアの口調に、非難の声が混じる。

 

「いえ、むしろ実の娘同然なればこそ、と申し上げましょう」

 

悪びれない賢生の言葉を聞いて、ラ・フォリアは溜息を吐いた。

 

「叶瀬夏音はどこです、賢生」

 

「我々が用意した模造天使(エンジェル・フォウ)の素体は七人。 夏音はこれらの内三人を自らの手で倒し、途中で敗北した者たちの分も含めて六つの霊的中枢を手に入れました。 人が生まれ持つ七つの霊的中枢と合わせて、これで十三。 それらを結びつける小径は三十。 これは人間が持つ己の霊格を一段階引き上げるのに必要十分な最低数です」

 

賢生が丁寧な口調で告げる。

その言い淀みない言葉には、嘗ての宮廷魔道技師の趣があった。

そんな彼の一方的な説明を聞いて、雪菜が非難の声を上げようとしたが、それは叶わなかった。

膨大な魔力が、悠斗の体から洩れ出ていたからだ。

 

「……叶瀬賢生。 テメェは、娘同然の彼女に、こんな事の為に殺しをさせたのか。 人の命をなんだと思ってやがる……」

 

賢生は両腕を広げた。

 

「これも娘の夏音のため、夏音も喜んでるはずだ。 自身が神に近づけることによって」

 

悠斗は、賢生を睨みつける。

 

「それはテメェの一方的な理想だろうが、彼女の意志はどうなるんだ」

 

「夏音も喜んでいると言ったはずだ」

 

暫しの沈黙がこの場を漂う。

この沈黙を破ったのは、悠斗だった。

 

「……テメェは一発殴らないと、現実が見れねぇみたいだな」

 

「話はいいわよね。 あたしは仕事を終わらせて早くシャワーを浴びたわ」

 

酷薄そうに舌なめずりして、べアトリスは気怠げな視線を古城たちに向けた。

 

「だけど、あんたたちにはチャンスをあげるわ」

 

動いたのはべアトリスではなく賢生だった。

彼が黒服の懐から小型の制御端末を取り出し、それを見たキリシマが、甲板に積まれていたコンテナケースの蓋を開ける。

棺桶に似た形の気密コンテナだ。

その中で横たわっていた小柄な少女が、白い冷気を纏ったままゆっくり起き上がる。

患者着に似た簡素な衣服。 剥き出しの細い手足。 零れ落ちる銀髪。 そして醜い翼。

 

「――叶瀬!」

 

「叶瀬さん!?」

 

眠りから覚めた少女に向かって、古城と雪菜が同時に叫んだ。

べアトリスは、感情が瞳で眺めながら、

 

「第四真祖に、獅子王機関の剣巫。 あんたは、ただの吸血鬼かしら。 ともあれ、三人がかりで構わないからさ。 あの子と本気で戦ってやってくれる?」

 

べアトリスの言葉に、古城は怒りを通り越して唖然する。

 

「――っざけんな。 なんで俺たちがそんなことしなきゃなんねーんだよ!?」

 

「そんなこと、わかりきってるでしょうが。 売り込みに使うのよ。 我が社の“天使もどき”が、世界最強の吸血鬼をぶち殺しました――ってね」

 

「叶瀬さんを兵器として売り出すつもりですか」

 

「ちょっと違うけど、まあそんなに外れてもないわね」

 

クックッ、とやる気のない声で笑いながら、べアトリスは目を細める。

 

「戦う気がないってんなら、別にそれでも構わないわよ。 大人しく死んでもらうだけだから。 残念ね。 無事に生き残れたら、あんたたちは見逃してあげようと思ってたのに――それにほら、彼女はすっかりやる気みたいよ」

 

「なに……!?」

 

夏音の体から噴き出した異様な瘴気に気づいて、古城は愕然とした。

不揃いな翼を展開して、夏音がゆっくり浮上する。

目開けられた彼女の目に感情の色はなく、瞳孔は焦点を結んでいない。

これまで沈黙を続けていた悠斗が、口を開いた。

 

「ああ、戦ってやるよ。 戦って、彼女を元に戻せばいい話だろ」

 

「あなたはそれでいいのですか、賢生」

 

制御端末を握る賢生を見つめて、ラ・フォリアが問いかけた。

賢生は、彼女の視線から逃れるように背後を振り向き、端末に向かって呼びかける。

 

「起動しろ、XDA・7。 最後の儀式だ」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

翼を広げた夏音が浮上する。 その瞬間、古城の視界の片隅を銀色の閃光が駆け抜けていた。

閃光の正体は、雪菜が携えている槍、雪霞狼だ。

雪霞狼を構えた雪菜が弾丸のような勢いで跳躍し、その刃を夏音に突き立てる。

魔力を無効化し、ありとあらゆる結界を切り裂く降魔の槍。

夏音が魔術儀式で造られた人口の天使だというのなら、その魔術そのものを無効化してしまえばいい。 そう雪菜は考えたのだろう。だが――。

 

「くっ――!?」

 

夏音の肌に穂先が届いたその瞬間、弾き飛ばされたのは雪菜のほうだった。

突進した勢いで後方に吹き飛んだ雪菜は、雪霞狼を突き立てながら、無事に着地する。

 

「これは!?」

 

驚愕な表情で雪菜が呻く。

夏音は何事もなかったように空へと舞い上がる。

 

神格震動波駆動術式(DOE)……獅子王機関の秘奧兵器、七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)か」

 

雪菜が持つ雪霞狼眺めて、賢生は満足そうに呟いた。

 

「無駄なことだ。 人の手で生み出した神の波動が、本物の神性を帯びた模造天使(エンジェル・フォウ)を傷つけられる道理もあるまい」

 

「そんな……ことが……」

 

雪菜が唇を噛む。

悠斗が口を挟んだ。

 

「そうか。 同じ神の力なら対抗できるんだな」

 

そう。 悠斗が使役する眷獣は、神々の眷獣なのだ。

なので、テティスモールで対峙した模造天使(エンジェル・フォウ)に攻撃が通ったのだ。

雪菜は、制御端末を持つ賢生へと向き直り、再び駆け出した。

模造天使(エンジェル・フォウ)が止められないというのなら、それを制御してる術者を排除すればいい。

 

「――だから、あんたの相手はそっちじゃないっての」

 

気怠い口調でぼやきながら、雪菜の前にべアトリスが立ちはだかる。

噴き出す鮮血のような勢いで、彼女の手の中に出現したのは紅い槍。 べアトリスの身の丈を上回る長槍である。

 

模造天使(エンジェル・フォウ)は俺と古城でどうにかする。 姫柊はその吸血鬼のババアの相手をしてくれ」

 

「わかりました」

 

雪菜は駆け出し、ペアトリスと攻防戦を始めた。

古城も悠斗の隣に立ち、夏音と対峙した。

 

Kyriiiiiiiiii(キリィィィィィィィィィィ)――――!」

 

夏音の喉から甲高い絶叫が迸る。

人間の声帯では出せないであろう声。 悠斗には、この声は悲しみを帯びた悲鳴に聞こえた。

夏音を包み込む光が勢いを増し、彼女の体が、変貌を始める。

口腔を埋め尽くしていた牙が抜け落ち、あどけなかった顔立ちは、黄金律を体現した美貌へと転じていった。

不揃いだった醜い翼は、光り輝く三対六枚の美しい翼へと生え替わる。

その翼の表面には浮き上がったのは、巨大な眼球だ。

 

「これが……模造天使(エンジェル・フォウ)……」

 

夏音が放つ攻撃的な波動に圧倒されながら、古城が歯軋りした。

悠斗が苦笑しながら、

 

「いや、これは天使とは言わないな」

 

先程悠斗は強気に出ていたが、心の中では歯軋りをしていた。

悠斗は六体の眷獣従えているが、現状使役出来るのは、朱雀と青龍だけだ。

青龍の最大出力での攻撃は、夏音を消滅させてしまう恐れがある。

真祖レベルの攻撃は効かないと実証済みだ。 なので、加減が解らない。

この戦いでは、青龍が使えないことが解ってしまった。

朱雀の清めの焔で、全ての模造天使(エンジェル・フォウ)が浄化できる保証もない。

――だが、やるだけやってみるしかない。

悠斗は右手を突き出し、

 

「――降臨せよ、朱雀!」

 

朱雀は一鳴きし、夏音へ突進を開始した。

光り輝く天使と紅蓮の不死鳥が衝突するが、それは拮抗したままだった。

 

「ッチ、神々の位は同じってことかよ」

 

悠斗は舌打ちした。

本来ならここでアイツ(・・・)を召喚し、夏音をこの状態から切り離す(・・・・)ことが可能だ。

そしてその切り離した物を、古城の眷獣の最大出力で消滅させる。 だが、それは出来ない。

――ならば、弱った所を狙うしかない。 古城の眷獣、真祖レベルの攻撃になら確実に耐えられるはず。

 

「――飛焔(ひえん)

 

朱雀は、夏音と一定の距離を取り、首をS字に曲げて、神秘的な焔を放った。

この攻撃は、夏音が放った黄金の剣に相殺されてしまった。 だが、相殺されても夏音が弱まるまで続けるだけだ。

数分これを見ていた古城が、悠斗の前に出た。

 

「やめろ、叶瀬! 俺たちが解らないのか! 悠斗、オレがやる」

 

古城は片手を掲げた。

 

「――疾や在れ(きやがれ)獅子の黄金(レグルス・アウルム)双角の深緋(アルナスル・ミニウム)!」

 

「ッ!?古城、お前の攻撃は、叶瀬が弱った時に使うんだ!」

 

古城は早まってしまった理由は、このままでは島が消滅してしまうと感じ取ってしまったのだろう。 夏音を止めなければ、雪菜やラ・フォリアは、確実に命を落としてしまうのだから。

 

「叶瀬っ!」

 

雷光を纏った獅子の黄金(レグルス・アウルム)が、そして振動の塊である緋色の双角獣が、空に舞う天使へと突撃した。 それぞれが天災にも等しい真祖の眷獣の攻撃だ。

だが、この攻撃は、夏音の体を傷つけることはなかった。

蜃気楼のように肉体を揺らめかせただけで、すべての攻撃は模造天使(エンジェル・フォウ)をすり抜けていく。

引き裂かれた大気が軋み、稲妻が蒼穹を貫くが、夏音は無傷のまま悠然と飛び続けていた。

 

「無駄だ、第四真祖よ」

 

賢生が古城に呼びかける。

彼は達観したような表情で、夏音を見ていた。

自らが生み出した模造天使(エンジェル・フォウ)に対して、彼はなんの興奮も喜びも感じていないのだ。

 

「今の夏音は、すでに我らとは異なる次元の高みに至りつつある。 君の眷獣がどれほど強力な魔力を誇ろうとも、この世界に存在しないものを破壊することはできまい――」

 

「くっ……」

 

哀れみの眼差しで見つめられても、古城には賢生に言い返す余裕がない。

模造天使(エンジェル・フォウ)の六枚の翼が、巨大な眼球を古城と悠斗に向けたからだ。

陽光に似た圧倒的な輝きが、一片な影すら残さず古城と悠斗を照らし出す。

悠斗はその場から動くことは叶わなかった。 動いてしまえば、朱雀の守りから離れてしまうからだ。

 

「叶瀬――――っ!」

 

手を伸ばしながら、古城が吼えた。 直後、閃光が瞬き古城を貫いた。

全ての音が消滅した。

古城の心臓に突き刺さった光は、苛烈な衝撃と炎を伴って、人々の視界を真っ白に染める。

その純白の世界で、古城の体がゆっくり仰向けに倒れていく――

 

「古城!」

 

「先輩!」

 

雪菜とラ・フォリアが、吹き荒れる暴風に逆らいながら、倒れた古城に駆け寄る。

夏音の攻撃の爆心地は半球状に抉られ、溶けた岩肌が白く蒸気を吹き上げていた。

古城の肉体はズタズタに引き裂かれ、原形を留めてるのが不思議なくらいだ。

 

「先輩! 暁先輩――!」

 

雪菜が、倒れた古城に取りすがって名前を呼び続けていた。

そんな時、渦巻く暴風の中心にいた夏音が血の涙を流しながら慟哭していた。

 

OAaaaaaaaaaa(オアァァァァァァァァァァ)――!」

 

その慟哭が竜巻を生み出し、周囲の海水を凍りつかせながら暴風圏を広げていた。

 

「古城!――朱雀!」

 

悠斗は、すぐに古城たちを朱雀の焔の翼で包み込んだ。

取り巻く竜巻は完全凍りつき、巨大な柱と化していた。 螺旋状に渦巻く地上部分は直径十メートルに達し、尚も成長を続けている。

賢生たちの船もその内部に取り込まれ、島からの脱出は絶望的だ。

その吹雪の中、焔の翼に包まれた少年少女が取り残されている。

銀髪の王女と紅蓮の熾天使は、頭上に屹立する氷の柱を眺めていた。

 

「叶瀬夏音……あなたは……」

 

「これは……お前の想いなのか……」

 

夏音は、その透き通る氷の中で、慟哭しながら眠り続けている。

氷雪を纏う巨大な柱は、“バベル”と呼ばれた天を衝く聖塔によく似ていた。




古城君、フライングやで\(゜ロ\)(/ロ゜)/
まあ、数分待って変化がなければ、そうなるのも仕方ないと思うが。

てか、悠斗君の青龍が封じられちゃいましたね。
青龍の一撃は半端ないですからね。最大出力では、夏音ちゃんが消滅してしまいます(>_<)
朱雀だけでも厳しい。今後はどうなるのか?
さてさて、お待ちかねのあの子は次回に出る予定ですね。
新たな眷獣も出るのかな?

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