ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

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お待たせしましたm(__)m
この話から新章の蒼き魔女の迷宮編に入りますね。
引き続きこの章も頑張って書きます!!

では、投稿です。
本編をどうぞ。


蒼き魔女の迷宮
蒼き魔女の迷宮Ⅰ


空気が蒸し暑く(よど)んでいた。 絃神市内を循環する市営のモノレールの車内の中。

窓の外には太平洋の海洋が広がり、海岸沿いの高架を走る車両を朝の陽射しから遮るものは何もない。

真夏のような強い陽射しが、車内を容赦なく射し込んでいた。

 

「暑っちー……家で冷房に当たってたいな……」

 

「悠君。 シャキッとする」

 

声をかけてきたのは、悠斗の未来の妻、暁凪沙だ。

ちなみにだが、休日は、悠斗と凪沙はほぼと言っていいほど一緒にいるのだ。

一言で言うと、半同棲に近い。

 

「わっ!?」

 

モノレールが緩やかなカーブに差しかかり、遠心力で凪沙が悠斗の胸の中に飛び込んでくる。 それを悠斗は優しく抱きとめる。

 

「大丈夫か? 凪沙」

 

「う、うん」

 

凪沙の頬が僅かに赤みを帯びているのは、悠斗から見ても明らかだった。

今日のモノレールは、学生や通勤客がいつもの倍は乗車していたのだ。

 

「やっぱり、波朧院フェスタの影響か?」

 

「うん、そうかも。 この時期は、絃神島を観光する人がいっぱいいるから」

 

波朧院フェスタとは、毎年十月の最終週に開催される絃神市最大の祭典だ。

花火大会や野外コンサート、仮装パレードなど様々な企画が催され、全島あげての祭りになるのだ。

もちろんこの時期に観光客が増える理由はある。

魔族特区である絃神島は、通常、企業や研究機関の関係者及びその家族以外の訪問を認めていない。 なのでこの祭りは、一般の観光客やジャーナリストはもちろん、堂々と魔族特区に入れる千載一隅のチャンスなのである。

悠斗はしみじみ呟いた。

 

「俺がここに来て一年と半年は経過したんだな」

 

「悠君と知り合ってから一年も経ってたんだね。 長いようで短かったね」

 

「だな。 ここに来てよかったと思ってるよ。 凪沙に会えたしな」

 

「そっか。 私も、悠君に会えて幸せだよ」

 

悠斗と凪沙は、朝から桃色の空間を展開してたのであった。

その影響か、乗客の皆様の口内はとても甘そうだ。

モノレールが学校の最寄り駅に到着し、ぞろぞろと車内から人が下りていく。

悠斗と凪沙は、離れないように手を繋ぎながら下車をした。

 

「ふぅ、今日のモノレールは通勤ラッシュ的な感じだったな」

 

「うん、そうだね」

 

それから改札を潜り、いつもの道を通って学校を目指す。

その間悠斗は、凪沙の歩幅と合わせて登校した。

 

「じゃあ、凪沙は中等部に行くね」

 

手を振り、踵を返して凪沙は中等部の校舎へ向かった。

悠斗は、凪沙の後ろ姿が見えなくなるまで、見守るようにしていた。

 

「さて、俺も行きますか」

 

そう言い、悠斗も高等部の校舎へ向かった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

波朧院フェスタが開催されるのは十月最後の週末で、彩海学園はその前日から休校になる。

吹奏楽コンクールや展覧会など部活がらみイベントに参加する者、町内会主催の屋台などに労働力として駆り出される者、バイトに精を出す者、或いは単に客として祭りを満喫する者。 スタイルは様々だが、絃神市内の学生にとって波朧院フェスタの期間は、それなりに慌ただしい時期なのだ。

まあだからこそ、問題を起こす生徒がいないようにと、学校側からの注意事項が多いのだが。

だが、教壇の上に立っていたのは、人工生命体(ホムンクルス)のアスタルテだった。

何でも、那月は痴漢騒ぎの巡回に行っているらしい。 なので、代理としてアスタルテが教壇に立っている、ということだ。

その時だった。 悠斗の机の回りを男子が取り囲んだのだ。

 

「なあ、悠斗。 お前さ、波朧院フェスタのイベントに何出るか決まってるのか?」

 

「いや、何にも出るつもりはないけど。 てか、俺は祭りを楽しむつもりだ。 回る人決まってるしな」

 

回る人とは、当然凪沙のことである。

悠斗と凪沙は、休日にこの約束をしていたのだ。

 

「そんなこと言わないで、うちでバイトしないか? もちろんバイト代も弾むぜ。 時給二五〇〇円でどうだ?」

 

「いや、バイトより売り子のほうがいいぞ。 今なら特典として利益の二割、いや、三割をバイト代としてくれてやる」

 

「待て待て、波朧院フェスタといえば、伝統のビーチバレー大会のこと忘れてないか?」

 

「いやいや、祭りの華と言えば、ミスコンだ。 悠斗には特別に審査員席を用意する。 だから、テティスモールステージにくるんだ」

 

隣の席の古城に目を向けて見れば、悠斗と同じ質問責めにあっていた。

おそらく、悠斗が参加する種目には凪沙が、古城が参加する種目には雪菜がくっついてくるという考えだろう。

まあ、凪沙に手を出そうとした奴に、悠斗の制裁が待っていることは、クラスの男子は重々承知してる。

数ヶ月前、凪沙が忘れ物を届けに来た時、クラスの男子が凪沙を軽い気持ちで口説こうと思ったのだ。

その時、悠斗の殺気が凄まじかった。 クラスの男子(大人しい奴は除く)限定で、警告として殺気を送ったのだ。

この時クラスの男子は悟った。 神代悠斗の逆鱗に触れたら生きて帰れないと。

悠斗は片手を振った。

 

「悪ぃな。 俺はその子と二人だけで回りたいんだわ。 だから遠慮するわ」

 

「そ、それはやはり、暁の妹さんなのか!?」

 

「そ、そうなのか!?」

 

そう言いながら、男子が詰め寄ってくる。

悠斗は息を吐いた。

 

「まあな。――古城も凪沙から聞いてるだろ?」

 

古城は此方を振り向き、

 

「ん、ああ。 聞いてるぞ。 楽しんでこいよ」

 

「てことなんだ。 だから無理だな。 すまん」

 

クラスの男子は眼を丸くした。

 

「な、なんだと。 兄公認か!?」

 

「つ、付き合ってるって噂は本当なのか!?」

 

「いや、付き合ってないぞ。 いつも一緒にいるだけだ」

 

この時、クラスの女子の心の声が重なった。

 

「(((いや、それって付き合ってるに入ると思いますけど)))」

 

古城も男子の勧誘を受けていたが、誰かと約束をしていたらしく断っていた。

というか、雪菜、浅葱でないということは、誰なんだろうか?

 

「暁ィー、神代ォー、あんたらにお客さんだよ」

 

古城と悠斗を呼んだのは、同じクラスの棚原夕歩。

その背中に隠れるようにして、透き通るような銀髪の少女が立っていた。

中等部の制服の下、ハイネックのアンダーシャツを着ており、教会のシスターを連想される。

中等部三年、叶瀬夏音だ。

古城と悠斗は席から立ち上がり、夏音の元へ向かった。

二人は、自分たちが注目されている事に気づかず、夏音に話かける。

 

「おう、叶瀬。 学校に来てたのか。 体調はどうだ?」

 

「はい、もう大丈夫です。 凪沙ちゃんが良くしてくれます」

 

「そうか。 凪沙がいるなら心配ないな」

 

悠斗は安堵の息を吐いた。

 

「悠斗先輩。 私のことは夏音と呼んでください、でした。 私だけ、名前で呼ぶのは――」

 

「あー、確かに一理あるわな。 てか、それって凪沙の入知恵か」

 

夏音は頷いた。

 

「はい、でした。 名前で呼ぶなら、名前で呼ばれないと、だそうです」

 

悠斗は苦笑した。

 

「なるほどな。 これからもよろしくな。 夏音」

 

「よろしくお願いします、でした」

 

夏音は、ぺこりと頭を下げてから、古城を見た。

 

「お兄さんも、助けてくれてありがとうございました」

 

「いや、あれはほぼ悠斗が助けたもんだぞ。 まあでも、ありがたく頂戴するよ」

 

古城が、夏音に本題を聞いた。

 

「今日はどうしたんだ? わざわざ、オレと悠斗に挨拶をしに来てくれたのか?」

 

「はい。 お兄さんにお願いがあってきました」

 

「お願い? オレに?」

 

古城が意外そうに聞き返す。 夏音が恥じらうように顔を伏せた。

 

「はい、あの……」

 

夏音が声を落として言い淀み、クラスメイトたちは息を殺して彼女の言葉を待つ。

やがて夏音は勢いよく顔を上げ、緊張気味の声で古城に尋ねた。

 

「今日の夜、お泊りに行ってもいいですか? お兄さんのお宅に? 悠斗先輩も一緒に来てください」

 

「ああ、オレは別に構わないけど。 悠斗はどうする? 久しぶりにオレの家に泊まるか? 凪沙も喜ぶしな」

 

「んー、そうだな。 凪沙にはいつも世話になってるしな。……よし、今日は暁家に泊まるわ」

 

悠斗と古城は平然な態度で答える。

 

「ちょっと待った!」

 

古城と悠斗が振り向くと、浅葱の手首を強引につかんで、二人一緒に手を挙げた築島倫と藍羽浅葱の姿が映った。

 

「あたしたちも一緒にお邪魔していいかな、暁君、神代君」

 

古城と悠斗に向って、倫がニッコリ笑って告げる。

 

「別にいいよな、古城?」

 

「ああ、別に構わないぞ」

 

浅葱は何が起きたのか解らないまま、了承した古城たち、微笑む倫を、高らかに挙げられた自身の腕を見比べ、そして叫んだ。

 

「えええええぇーっ!?」

 

波朧院フェスタ開催まであと二日。 祭りの気配は、徐々に盛り上がりを見せていた。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「夏音ちゃん、退院おめでとう!」

 

クラッカーを鳴らしながら叫んだのは、凪沙だ。

テーブルの上に並んでいる料理は、悠斗と凪沙が協力して作ったものだ。

 

「あ、あの」

 

全身のあちこちに紙吹雪をつけたまま、夏音が恐縮した表情で周囲を見渡した。

 

「すみませんでした、皆さん……私なんかのためにこんな」

 

そう。 七〇四号室の暁家で、夏音の退院パーティーを行っているのだ。

 

「なに言ってんの。 今日は夏音ちゃんが主役なんだから、はい、座って座って。 食べて食べて。 このサラダ自信作なの。 クルミとピーナッツとゴマを使った自家製ドレッシングだよ。 こっちは棚屋の絃神コロッケ・デラックス。 そっちが凪沙&悠君、特性レッドホットチリビーンズ・グランドフィナーレ。 もうすぐハイブリッドパスタも茹で上がるから」

 

「あ、ありがとう」

 

凪沙の勢いに引きずられたのか、夏音もぎこちなく微笑んだ。

夏音の隣に座っていた基樹が、さっそく料理に箸を伸ばす。

 

「おー、美味いなこれ。 さすが凪沙ちゃん。 また腕を上げたんじゃないか」

 

「ほんとね。 古城の妹にしとくのはもったいないわ」

 

冷製スープを口に運びながら、浅葱幸せそうに頬に手を当てた。

 

「でも、ここまで美味しく作れたのは、悠君のおかげでもあるんだ」

 

凪沙は笑いながら悠斗を見た。

 

「俺は、味見と指摘しかしてないぞ」

 

「でも悠君、それが的確だったから、美味しい料理ができたんだよ」

 

「まあ、うん、そうかもしれんが」

 

そう言ってから悠斗は食事を再開した。

浅葱は、古城と夏音の関係について聞いていたが、古城と雪菜がすらすらと説明をしていた。 こういう時の為に口裏を合わせていたのだ。

ちなみにだが、凪沙は事件の詳細は知らないが、夏音が戦いの渦に飲み込まれていたことは知っている。 それを、悠斗と一部の人間が助けたことも。

数分経過したころ、古城の部屋を物色していた倫が姿を現した。

手に持っていたのは、アルバムだ。

 

「アルバム発見。 見てもいい?」

 

「いいけど、そこにあるのは小学生の時のやつだから、別に面白くないと思うぞ」

 

女性陣は興味をそそらるように、倫の回りに集まっていく。

 

「小さい暁君だ。 今とあんまり変わらないのね」

 

アルバムをめくった倫が愉しそうに眉を上げ、雪菜がしみじみと感想を述べる。

 

「先輩にも小学生の時代があったんですね。 かわい……い?」

 

「なんで疑問形なんだよ!? そこは素直に褒めるところだろ!」

 

だが、悠斗は居心地が悪くなり、不意に立ち上がった。

 

「悪い。 少しのぼせちった。 涼んでくるわ」

 

悠斗はそそくさに部屋を立ち去った。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

絃神島の夜の気候は、意外に涼しい。

そんな中悠斗は、近場のベンチに座り顔を上げ夜空を見上げていた。

 

「…………思い出か」

 

悠斗には思い出になることが一つもないのだ。

おそらくだが、顔も知らない両親に眷獣を託され、小さな時から旅をし、眷獣と協力しながら様々な国を転々としていた。 時には戦い、時には姿を隠した時期もあった。

なので悠斗は、思い出が一つもないのだ。 悠斗は、ほぼ戦場に身を置いていたのだから。

その時、誰かが悠斗の隣に座ったので、悠斗は隣に座った人物を見た。

 

「悠君。 どうしたの?」

 

「凪沙か。……俺には思い出がないなって。――まあ、この一年で思い出はできたけどな。 でも、古城や凪沙のように、小さい時のものはないんだ。 俺は一人だったから」

 

悠斗がそう言うと、凪沙は悲しい顔をした。

 

「すまない。 暗くしちゃったな」

 

凪沙は言い淀みながら、

 

「じゃ、じゃあ、これからは凪沙と作っていこうよ。 凪沙は悠君を一人にしないよ。 絶対に君を離さないよ。 凪沙は、悠君が大好きだから」

 

悠斗は凪沙の片手を優しく握った。

 

「俺も大好きだぞ。 世界で一番な。 でもな、時々怖くなるんだ。 凪沙が、俺の手の届かない場所まで行ったらどうしようって。 眷獣たちを介して話こともできるけど、やっぱり不安なんだ」

 

凪沙は、コテンと悠斗の肩に頭を預けた。

 

「不安なのは凪沙も同じだよ。 悠君が戦いに行って帰ってこなかったらどうしようって。 ホントは、どこにも行ってほしくないんだよ。 ずっと凪沙の隣にいてもらいたいんだ」

 

「だけど――」

 

悠斗の言葉を、凪沙が遮った。

 

「うん、わかってる。 力ある者が、戦いを止めなくちゃならないって。 そしてその力を、悠君は持ってるんだよね」

 

「ああ、そうだな。 俺にはその力がある。 もしかしたら、死地に近い場所でも、飛び込まくちゃ行けない時も来るかもしれない」

 

「それでも、凪沙は待つ覚悟はあるよ」

 

「……女は男より強いって聞くけど、その通りなんだな。 俺も誓うよ。 どんなことがあっても俺は死なない。 絶対に君の元へ帰るって」

 

「絶対だよ」

 

「ああ、絶対だ」

 

そんな二人を、月明かりが照らしていた。




何というか、甘いね。
まあ、書いてたら甘くなってしまってた部分もあるんだが。
最後は、すこしシリアス?的な感じになりましたが。
悠斗君と凪沙ちゃんは、旦那さんと妻ですね(笑)

ではでは、感想、評価、よろしくお願いします!!



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