では、投稿です
本編をどうぞ。
悠斗は、目的地に歩を進めながら、那月に事情を説明していた。
――そう、凪沙と
「と言う事なんだ」
「ほう。 暁凪沙が、お前の眷獣を使役出来るようになってるとはな」
だが、これで逆探知が出来たのだ。
凪沙が眷獣を召喚しなければ、探索に時間がかかっていたのは事実だ。
「此れで、暁凪沙もチートの仲間入りだな」
「いや、凪沙には限界がある」
凪沙は人間なので、魔力を持たない。 体力だけで眷獣を使役するしかないのだ。
「そうか……。 叶瀬夏音を守るので精一杯。という事でもあるのか。 だが今は、彼女に賭けるしかないぞ」
「ああ、わかってる。 だから、俺たちが行かなきゃならなんだ」
目的地には、古城と褐色の肌の浅葱が立っていた。 おそらくこの浅葱は、ニーナ・アデラードが錬金術で形成したのだ。
「ほう。 お前がニーナ・アデラードか」
「……那月ちゃん。 それに、悠斗もいるのか!?」
思わず声を洩らした古城を、那月は無言で日傘で殴りつける。
畳んだ日傘の直撃を受け、古城は顔面を抑えて仰け反った。 那月は、不機嫌そうにニーナを睨みつける。
「その古の練金術師さまが、なぜ藍羽の顔をして偽乳を盛っているかは気になる所だが……。 お前の趣味か、暁古城?」
「違ェよ。 つか、そんな事を言っている場合じゃなくて――」
「ふん。 事情は全て把握している。 やはり、緊急時には神代が役に立つな」
那月の視線が、悠斗に向けられる。
「悠斗が?」
「面倒な話は後だ。 今は彼女たちを助けに行くのが先だ」
悠斗の言葉に、古城は顔を強張らせた。
「……まさか」
「……そうだ。 午前七時発の東京行き。 彩海学園の、宿泊研修生を乗せたフェリーだ。――凪沙たちを乗せた船だ」
悠斗がそう言うと、古城は弱々しく首を振り、顔を青くした。
二ーナが、不機嫌そうに口を挟む。
「だから、なのかもしれんな。
「そうか……あの船には、叶瀬が……!」
少なくても天塚が知る中では、夏音は絃神島での最高クラスの霊能力者だ。
そして、ニーナは重々しく頷く。
「天塚の狙いが夏音だけだとは限らぬ。 あの雪菜という娘も優れた霊媒であろう?」
ニーナが言う通り、強力な霊媒者が狙われると言う事は、凪沙も例外ではない。
凪沙は、魔力が行使できなくても、眷獣が召喚できる時点で強力な巫女だと確定してるのだ。
「まずい……姫柊は雪霞狼を持ってないんだ!――那月ちゃん、フェリーまで跳べないのか?」
「無理だな。 わたしには遠すぎる。 空間制御の本質は、距離をゼロにするのではなく、移動にかかる距離をゼロする魔術だ。 一瞬で移動できると言うだけで、肉体は同じ距離を徒歩で移動したのと同じだけの負荷がかかる。 数キロが限界だ」
「魔術も万能じゃないってことか……。 いや、悠斗の眷獣は空を飛べるんだろ!?」
「……飛べるが、圧倒的に速度が足りない。 まあ大丈夫だ。 最高の乗り物があるらしいぞ」
「神代の言う通り、航空機も手配済みだ。 都合よく、機体を提供してもいいと言ってくれる、親切な連中がいてな」
那月の言う、航空機は普通ではない乗り物なんだが……。 悠斗は、結界を周囲に展開し耐える事が可能だが、古城はどうなのだろうか……。
「
那月は小さく息を吐いた。
「そうしてもらおう、偽乳。 神代は問題ないが、暁は心配だからな」
「……那月ちゃんは、一緒に来ないのか?」
訝しげに聞き返す古城を見上げ、那月は素っ気なく頷いた。
「わたしは、あとからヘリで追いかける。 不本意だが、お前たち意外に、あれに耐えられそうな奴の心当たりがなくてな」
「まあ見れば解るさ。 古城、……死ぬなよ」
「耐える? 死ぬ? 何のことだ……?」
何処か不穏な、那月と悠斗の言葉に、古城は嫌な予感を覚える。
那月は空間を歪めて
見渡す限り広がっているのは、
「……え?」
駐機スポットに停まっている航空機を見て、古城は度肝を抜かれた。
そう、恐ろしく巨大な航空機だ。
分厚い装甲に覆われた船体は、特殊金属の硬殻を備えた、軍用の戦闘飛行船。
氷河の煌きにも似た白群青の装甲は、黄剣の装飾に縁取られている。 船体に刻まれているのは、大剣を握る戦乙女だ。――そう、北欧アルディギア王家の紋章だ。
「なんだ、これ……飛行船」
古城は航空機を見て、気の抜けた声を洩らす。
『此れは、我がアルディギアが誇る装甲飛行船“ベズヴィルド”です』
立ち尽くす古城のすぐ近くから、笑いを含んだ優雅な声が聞こえてきた。
其れは、聞き覚えがある声だった。無自覚な気品を滲ませた高質な口調だ。
「この声……ラ・フォリア!?」
「いや、古城。 腹黒お姫様の間違えだぞ」
『思い出してくれた事を嬉しく思います。 お久しぶりですね、古城。――そ・れ・と。 わたくしは腹黒ではありませんよ、悠斗』
飛行船から吊り下げられたモニタに、美しい銀髪の少女が映し出された。 軍服の儀礼服に似たブレザーには、黄金の装飾が輝いている。
――ラ・フォリア・リハヴァイン。 北欧アルディギア王国の王女である。
ラ・フォリアは、後半の言葉で唇を曲げたのだった。
また、ラ・フォリアの陰に隠れて、飛行船から下りて来た人影があった。 見知らぬ女性三人組だ。 ラ・フォリアと同じブレザーを着ているが、派手な装飾はない、実用的な軍服である。
「あんたたちは――」
「アルディギア聖環騎士団ユスティナ・カタヤ要撃騎士、以下三名であります。 ラ・フォリア・リハヴァイン王女の命により、王妹殿下の護衛を務めておりました。――尤も、紅蓮の織天使様には、我々の存在が露見していたようですが」
玄武の気配察知から逃れる事は不可能だ。 絃神島に隠密に潜り込んでも、露見するのは当然である。
しかし、天塚のように、途中で気配を変える存在は例外だが。
「まあな。 で、お前らは夏音の護衛って事でいいんだよな?」
「その通りです」
夏音は、アルディギアの前国王の隠し子だ。 つまり、現在の国王の腹違いの妹なのである。 ラ・フォリアとは、叔母と姪の関係なのだ。
『夏音はアルディギア王家の一員です。 彼女の立場や能力を悪用しようと、好計を巡らす者が現れないとも限りませんから』
ラ・フォリアが少しだけ声を潜めて言う。 飛行船のスピーカーは指定性らしく、ラ・フォリアの声は、古城たちにしか聞こえてないらしい。
「だけど、叶瀬はそんなこと何も言ってなかったぞ?」
「古城のアホ。 本人にバレないように、護衛してたに決まってるだろうが」
その点では、姫柊と対照的だな。と悠斗は付け加えた。
其れを聞いた古城はげんなりしてしまった。 その気持ちは解らなくもない、幾ら美女とはいえ、四六時中一緒にいるのは精神的によろしくない。
『ユスティナは有能な要撃騎士団ですから、夏音の日常生活に干渉することなく、陰から密かに気険を排除してたのでしょう。 ユスティナは親日家で、特に忍者の大ファンなのです』
「忍者……?」
胡乱な眼差しを向ける古城に向かって、ユスティナは神妙に掌を合わせた。
拝み倒すように、頭を下げてくる。
「忍! いたずらに名誉を求めることなく、その存在を陰に隠し、主君の為に命を賭ける。 ジャパニーズ・ニンジャこそまさに騎士の規範。 自分も今回、任務を機に騎士道を極めるべく研鑚して参る所存であります」
「は、はあ。 どうも」
古城は曖昧にお辞儀を返し、悠斗は、濃い奴が出て来たな……。と溜息を吐いた。
ふと気づけば、モニターの中のラ・フォリアは、懸命に笑いを堪えてるような表情を浮かべていた。
――悠斗の言う通り、腹黒お姫様である。
「夏音を護衛してたって事は、天塚の事は、俺たちより早く掴んでいたはずだ」
このままでは話が進まないと思った悠斗は、無理やり話題を変える。
ラ・フォリアは、は、はい。と首肯した。
『そうです。 早い段階で事情は掴んでいました。 南宮攻魔官と協力して、夏音の護衛に当たっていたのですが、残念ですがわたくしたちは、魔族特区の外には干渉できません』
そう言って、ラ・フォリアは目を伏せた。
「ですから、古城、悠斗。 二人の力をお借りしたいのです」
「鼻からそのつもりだ。 彼女を助ける為なら、――俺は地獄に行く覚悟もあるしな。 どんな事でもやってやるよ」
悠斗は、凪沙を救う為なら、この身が焼かれても構わないとも思っている。 悠斗にとって彼女は、全てを包んでくれる光なのだから。
『ふふ、彼女は幸せ者ですね。 嫉妬してしまいます』
「ま、俺が好きでやってる事なんだがな」
悠斗は、いつもの口調でそう言う。
「この飛行船で、叶瀬たちの所まで乗せて行ってくれるのか?」
「違うぞ、古城。 この飛行船と、青龍の速度は同じだ。 別の乗り物に決まってるだろ。 だろ、ラ・フォリア?」
ラ・フォリアは、悪戯っぽく笑った。
『悠斗の言う通りです。 一刻の猶予もない現状では、“ベズヴィド”は遅すぎます――ですので、これを使います』
「これ……?」
古城は強い悪寒に襲われながら呟いた。 よく見ると、飛行船の武器格納庫らしき部分が開いて、奇妙な装備が姿を現していた。
艦隊ミサイル発射機に酷似した、装甲ボックスランチャーだ。
「これ……って、まさか……その発射台に載ってるやつのことか?」
『我が聖環騎士団が所有する試作航空機、“フロッティ”です』
超然とした口調で、ラ・フォリアが告げる、しかし古城の目からはどう見ても、
「ちょと待て!? どう見てもこれは航空機じゃないだろ! ただの、巡航ミサイル発射管だろ!」
『「試作型航空機(だ)(です)」』
ラ・フォリアと悠斗が断言する。
『本来は偵察用の無人機ですが、搭載してた観測機器類を外して、中に人間を詰めこめ……いえ、乗り込めるようにしました。 巡航速度は時速三千四百キロメートル。 計算によれば百五秒で目的地に直撃……いえ、到達します』
「直撃!? 直撃って言ったよな!? わざとらしく訂正したけど、直撃って!?」
古城は、声を裏返して叫んだ。 時速三千四百キロメートルと言えば、概算で凡そ、マッハ二・八。 ジェット戦闘機でも、其処までの速度が出せる機体は多くないのだ。 完全に超音速巡航ミサイルである。
「古城。 時間がない、早くしろ」
「ちょ、待て。 心の準備が――」
ビビりまくる古城とは裏腹に、ニーナはこの航空機に感心していた。 不滅の液体金属生命体である彼女は、ミサイルの中に詰め込まれても問題ないのだろう。 どうやら、古城も覚悟を決めたらしい。
『夏音のことを頼みます。 古城、悠斗』
最後にラ・フォリアが真摯な眼差しを向けてきた。
彼女の碧い瞳を見つめ返して、古城は苦笑。 悠斗は頷いた。
「じゃあ、那月ちゃん。 悪いけど、こいつを家まで連れてってやってくれ」
抱きかかえたままの浅葱の体を、古城が那月に押しつける。
「やれやれ。 教師にサボりの片棒を担がせるとはいい度胸だな」
そう言いながら、那月は浅葱を受け取った。
古城はそれを確認して歩き出す。 タラップに足をかけた時、
「ちょっとお待ち、第四真祖の坊や」
意外な声が古城を呼んだ。 雪菜の師匠が操る使い魔――骨董品屋にいた猫だ。
「ニャンコ先生!?」
古城は、声がした方向に視線を巡らせた。
走り込んできた連絡車から、煌坂紗矢華の顔をした少女が降りてくる。 露出度高めのメイド服をきた彼女の肩には、黒猫がちょこんと乗っていた。
また、少女の背中には、黒いギターケースが背負われている。
「古城、すぐに済ませろ。 現場に急行するぞ」
悠斗の真剣みを帯びた口調に、古城は頷く事しか出来なかった。 悠斗はタラップに足をかけ、弾頭部に潜り込む。
数分後、ギターケースを持った古城も中に入って来た。 その背には黒いギターケースが背負われていた。 縁堂縁から託された雪霞狼だろう。
『古城、悠斗。 無事を祈っています』
「ああ、任せろ」
「叶瀬たちの事は任せてくれ」
其れを最後に、ミサイルは発射されたのだった。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
叶瀬夏音はフェリーの船首に一人で立っていた。
背部には、見渡す限りの青空と、紺碧な海。 透き通るような銀髪が陽光の下で舞っている。
絵画のように美しい風景だが、夏音の表情に余裕はない。
白いコートを着た錬金術師が、彼女を追い詰めるように甲板に立っているからだ。
「鬼ごっこは終わりだよ」
微笑みながら、両腕を広げて天塚が言う。
奇術師を思わせる赤白チェックのネクタイと帽子。 彼の左手には、金色に輝く髑髏が握られている。
夏音は彼から逃げるように後ずさる。 しかし、彼女の背中は、手すりにぶつかってしまった。
手すりの向こう側には、海面だけが広がっている。 その先は、もう逃げ場はない。
「いい判断だね。 ここなら、乗客を巻き込む心配はないし、僕も隠れてあんたに近づくことができない。 その気になれば、海に飛び込んで死を選ぶこともできる。 まあ、そんなことをしても全部無駄だけど」
天塚は嘲笑った。
「供物になる霊能力者はあんただけじゃない。 獅子王機関の剣巫や。――眷獣を使役してた彼女とかね。 あんたが死んだら、そっちを代わりにするだけさ。 それに
天塚の右腕が銀色の刃に変わっていく。 天塚が一振りすれば、夏音の命は絶たれてしまうだろう。
しかし天塚は、今は夏音を殺す意思はない。 彼の目的は、夏音を
「まだ、思い出せないのですか」
夏音が唐突に問いかけた。
「……なに?」
「わたしはあなたの事を覚えていました。 修道院のみんなが殺された時のことも」
夏音は真っ直ぐ天塚を見詰めている。 その表情には怯えがない。 ただ、悲しみを漂わせてるだけだ。
「あなたは、可哀想な人でした。 自分が騙されていることにも気づかない」
「なんのことだよ?」
天塚が苛々と聞き返す。
その声には、動揺が含まれていた。
「
「決まってるだろ。 人間に戻るんだ、あいつに喰われた僕の半身を復活させてもらうんだよ! でなきゃ、誰が奴のいいなりになるものか!?」
天塚はそう言って、コートの襟元を引き裂いた。 金属生命体に侵食された不気味な右半身が露になる。
「だったら教えてください。 あなたは、一体誰でしたか?」
「え?」
「あなたが人間だったというなら、そのころの思い出を聞かせてください。 あなたがいつ、どこで生まれて、どんな風に生きてきたかを」
夏音が言い終わると、短い沈黙が訪れた。
天塚は何も答えない。 答える事ができないのだ。 その事実が、天塚をじわじわと追い詰めていく。
「黙れよ……叶瀬夏音……」
天塚が絞り出すように呟いた。
「
「黙れぇぇええっ!」
天塚が怒声を放ち、刃と化した右腕を夏音の心臓目がけて突き出される。
手加減のない一撃である。 夏音はそれを避ける事はできない。
「――
夏音の周囲を囲むように出来た紅い結界が、天塚の右腕を圧し折ったのだ。
「――
天塚と夏音の中央を割るように、煌びやかな焔が通った。
天塚は後方に跳び、再び夏音を攻撃しようと触手を放つが、其れは、夏音の前に着地したもう一つの人影に阻まれる。
また、凪沙は高く飛ぶのは不可能なので、雪菜の肩に手を回していた。
「雪菜ちゃん、凪沙ちゃん……」
「よかった、間に合って」
「危機一髪ってところだったね」
夏音の安全を確認して、雪菜と凪沙は安堵の息を吐く。
「よくよく邪魔をしてくれるな、君たちは……。 まあいいよ、おかげで探す手間が省けた」
天塚が額を掻きむしりながら、荒々しく笑った。
金属製の甲板をグニャリと融かして、無数の刃が飛来したのだ。 雪菜のナイフでは、この刃を全て弾くのは不可能だ。
「――
飛来した刃は、周囲に張った紅い結果に弾かれるが、無数に降る刃は止む気配はない。
対して、凪沙の体力はじわじわと削られていく。
「君の力は確かに強い。 だが、君の眷獣もその力も、体力があってのものだ。 体力が尽きればどうなるかは解るよね。 君たちには、逃げ場がなんだよ」
天塚が勝ち誇ったように呟いた。 そして、その言葉は事実だった。 天塚に対抗している結界も、そう長くは持ちそうにない。 誰かに助けを求めようにも、此処は太平洋の真ん中に位置している。 天塚が雪菜たちを始末するまでの僅かな時間で、この船まで辿り着く。 そんな手段などあるずもない。
だが――。
「え?」
雪菜はどこか抜けた声を洩らした。
視界に、信じられないものが映ったのだ。
「なんだ……?」
驚く雪菜の視線につられて、天塚が背後を振り返る。 彼もそれを見た。
水蒸気の尾を牽きながら、海面スレスレを突き進む灰色の飛行体を。 容赦なくフェリーの船体を貫通しようとする兵器の姿を――。
「馬鹿な!? 巡航ミサイルだと!?」
其れを確認した時にはもう遅かった。 アルディギア王国、試作型航空機フロッティの巡航速度はマッハ二・八。 人間の視界に映った時には、其れは目標地点に到達しているのだ。
巡航ミサイルが直撃すると思われた瞬間、其れは銀色の霧に姿を変えて、フェリーの船体を突き抜けた。 やがて実体化したミサイルは、フェリーから遠く離れた場所で海面に激突し、砕け散って沈んでいく。 残されたのは、埋め尽くす濃霧だけ。
「この霧……!? まさか!?」
大気に溶け込む強烈な魔力の波動に、雪菜は叫ぶ。 フェリーを包むのはただの霧ではない。 濃霧の中に浮かび上がるのは、実体のない巨大な甲殻獣。
第四真祖が従える十二の眷獣の一体。 ありとあらゆる物体を霧へと変える四番目の眷獣、
ドンッ!と耳をつんさぐ轟音と共に、フェリーの船体が木の葉のように揺れた。
巡船ミサイルが出す衝撃波が、一瞬遅れて襲ってきたのだ。
その衝撃が収まった時、フェリーの甲板には新たな人影が出現していた。 銀色の濃霧が集まって実体化したのは、パーカーを羽織った少年と、褐色肌を持つ制服の少女。 制服姿に、漆黒の黒髪を揺らす少年だ。
「――痛ってェ……ああくそ、着地ちょっとミスった。 てか、結界で身を守るとかズりぃぞ。 オレにもやってくれよ!」
額から流れ落ちる血を拭って、古城はゆらりと立ち上がる。
「わ、悪い。 忘れてた」
立ち上がった悠斗は、悪びれなく言う。
「嘘つけー! 『古城は第四真祖だから問題ない。』とか思ってたんだろ!」
古城は頭を掻きむしりながら、そう答えた。
「おお、正解だ。 どうして解った?――いや、愚痴を言うのは後だ!」
悠斗は走り出し、凪沙の元へ駈け出す。
其れとほぼ同時に紅い結界も解け、凪沙は片足を突けた。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
悠斗は片足を突け、凪沙と視線を同じにした。
「……悠君のバカ。 来るの遅いよ」
悠斗は凪沙に、開口一番に怒られてしまった。
それを聞いた悠斗は、
「……も、申し訳ない」
と、謝る事しか出来なかったのだ。
「でも、時間稼ぎは十分だったみたいだね」
「ああ、ありがとう。 助かったよ」
凪沙がいなければ、夏音が殺されていた確率はかなり高かったのだ。
悠斗は立ち上がり、凪沙の右手を取り、優しく引っ張り上げた。
「さて、化け物退治と行きますか。 凪沙は休んでていいぞ」
「ううん、――わたしも戦う。 戦う力ならまだあるから」
悠斗は、凪沙の確固たる瞳を見て頷いた。
「そうか。 俺の傍からは離れるなよ」
「わかった。 じゃあ、行こうか」
「だな。 スクラップの時間だな」
悠斗と凪沙。 最強の二人の戦いが始まろうとしている――。
凪沙ちゃんも本格的に参加ですね(`・ω・´)
チート戦闘になる予感(笑)
てか、凪沙ちゃん。雪菜より強いのはほぼ確定かも……。
ではでは、感想、評価、よろしくお願いします!!