ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

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こ、更新です……。
今回も?ご都合主義満載ですね(笑)

では、投稿です。
本編をどうぞ。


暁の帝国
暁の帝国


同棲が始まり、翌週の月曜日。

悠斗はベットから上体を起こし、大きく伸びをした。 隣では、結い上げた黒髪を下ろし、可愛いパジャマ姿で眠る人物。 そう、――凪沙である。

 

「……俺の方が早いとか、安眠しすぎだぞ」

 

そう言いながら、悠斗は凪沙の頬をツンツンと突いた。 それに応じるように、んん……。と凪沙は甘い声を洩らした。

凪沙の寝顔を見ていたい悠斗だが、今日は月曜日であり、学園の登校日である。

この時悠斗は、何で休日じゃないんだ……。と呟き、名残惜しそうに凪沙の肩を揺すった。

 

「凪沙、起きてくれ。 今日は学校だぞ」

 

「んん…………え、学校!?」

 

凪沙はバネのように上体を起こし、悠斗を見る。

悠斗は苦笑し頷いた。 どうやら凪沙は、完全に休日だと思っていたらしい。

 

「ご、ご飯作らないと。 どど、どうしよう!?」

 

凪沙は慌てふためいた。

そんな凪沙の姿を見て、悠斗は新鮮だな。と思っていた。 普段彼女はしっかりしているので、このような姿は珍しいのだ。

 

「ゆ、悠君は洗面所に行ってね。 凪沙、制服に着替えちゃうから」

 

「いや、一緒に寝たんだし。 別に――」

 

「そ、それとこれは別なの!」

 

「そ、そうなのか?」

 

「そうなの!」

 

悠斗は渋々ベットから降り、女心は今一解らない。と思いながら部屋を出て、洗面所へ向かったのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

洗面所で洗顔等を済ませてから、悠斗は凪沙と変わるように自室へ赴き、制服に着替えリビングへ向かった。

悠斗がリビングに入ると、バターの香ばしい匂いが鼻孔を擽る。

テーブルの上に置かれた皿の上には、こんがりと焼けた食パンに、トロトロしたバターが塗られている。 その皿の隣には一杯のコーヒーだ。 簡素な料理だが、かなり旨いだろう。

 

「ご、ごめんね。 こんなのしか作れなくて……」

 

エプロン姿の凪沙はしゅんとした。

だが悠斗は、左右に頭を振った。

 

「いや、全然構わないぞ。 凪沙が作った物は、何でも旨いしな」

 

「そ、そうかな」

 

「そうだぞ。 今度一緒に何か作るか?」

 

「いいね、それ採用!」

 

そう言いながら、エプロンを外した凪沙と、悠斗は椅子に着席し手を合わせ、いただきます。と音頭を取ってからパンを口に運ぶ。

 

「食パンにバターが染み込んでかなり旨いぞ。 良い奥さんになるな」

 

「もう、わたしは悠君の奥さんだからね。……いや、ちょっと早いかな」

 

凪沙は頬を僅かに朱色に染め、まだ結婚式も挙げてないしね。と恥ずかしそうに呟く。

悠斗も、そ、そうだな。と歯切れ悪く答えたのだった。 まさに、二人だけの空間が形成されていたのだ。

朝食が終わり、自身が使用した食器を流しに置き水につけ、ソファーに置いたバックを肩にかけてから玄関へ向かい靴に履き替える。

 

「古城と姫柊は、上手くやってかな?」

 

「……古城君、雪霞狼を使われなければいいけど」

 

「確かに、第四真祖でも雪霞狼は洒落にならないしな」

 

だが、次の凪沙の言葉で、悠斗は僅かに動揺する事になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「――ねえねえ、朝のキスは?」

 

「……おバカ」

 

そう言って、悠斗は凪沙の額を右手人差し指で小突き、凪沙は、あうっ。と甘い声を洩らした。

悠斗は、まったく。と言いながらマンションの鍵を閉め、悠斗と凪沙エレベーターに乗り込み、到着した一階ロビーで、暁古城と姫柊雪菜と合流し学園を目指した。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

通り慣れた歩道を通り、改札を潜りモノレールへ乗り込む。

悠斗が手摺を握ってる古城を見ると、かなりお疲れのようだった。 まあ、大体の予測が出来るんだが。

 

「……古城。 雪霞狼を使われたのか?」

 

「……あ、ああ。 オレの安眠中に、『早く起きないと殺しますよ』って脅されたんだ」

 

悠斗と凪沙の予想通り、雪霞狼が使われていたのだ。

これから古城は、雪菜の尻に敷かれる事になるだろう。

 

「せ、先輩が起きないからです。 な、何回も起こしたんですよ」

 

雪菜が言うには、古城は一度目を覚ましても、二度寝をして起きる気配がなかったらしい。

なので、雪霞狼を使用した。と言う事だ。

モノレールが最寄り駅に到着し、古城たちはいつものように改札を出て、学園に繋がる歩道を歩き、学園の校門前に到着した。

 

「それでは、凪沙ちゃんとわたしは中等部の校舎へ向かいますね」

 

「またね。 古城君、悠君」

 

「おう」

 

「またな」

 

悠斗と古城は、凪沙と雪菜の背中が見えなくなるまで見送り、悠斗と古城は高等部の校舎に入り、昇降口で上履きに履き替え、自身の教室である二年B組へ向かった。

ともあれ、こうして授業を受け、昼休みとなった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

昼休み。 古城たちはパンを買う為、食堂へ向かっていた。

悠斗を挟むように、古城、基樹と歩いている。 途中、渡り廊下に差し掛かった時に、基樹が口を開いた。

 

「お、姫柊ちゃんだ」

 

基樹の視線の先には、階段を下りてくる雪菜の姿があった。 誰かを探しているのか、周囲を見回しながら食堂の方向へ向かって行く。

そんな雪菜の背中を見て、基樹が感心したように呟く。

 

「相変わらず綺麗な子だなー……。 一人だけ住んでる世界が違うっつか。 可愛いし、細いし、顔小ちっちぇえし。 あと、ちょっと天然入ってるあたりがなんとも」

 

その直後、古城たちの視界の中で、雪菜がガラス製のドアにぶつかった。

ごん、と鈍い音が、少し遅れて聞こえてくる。 雪菜は顔を押さえて蹲り、小刻みに肩を震わせる。

 

「……いや、あれは天然入り過ぎだろ。……何やってんだ、あいつは」

 

古城は悠斗に、だよな?と同意を求めたが、悠斗は眉を寄せていた。

玄武の能力は、対処の気配を感じる事ができる。 そう、雪菜が纏っている気配に、――第四真祖(・・・・)の気配も感じるのだ。

 

「悠斗、どうしたんだ?」

 

「……いや、何でもない」

 

「そ、そうか? ならいいが」

 

古城と悠斗は、雪菜の元へ駆け寄った。 痛たたたた、苦悶する雪菜の背中に、古城は心配そうに声をかける。

 

「大丈夫か、姫柊?」

 

「あ、はい。 なんとか……」

 

赤くなった鼻の頭を押さえて、涙目の雪菜が顔を上げた。 そして、自分を見下ろす古城と悠斗に目を合わせ、驚いたように口を開く。

 

「って、え? 古城君、悠斗君」

 

「……古城君? 悠斗君?」

 

普段とは違う雪菜の口調に、古城と悠斗は不審げに眉を寄せた。 古城をこのように呼ぶのは、母親と凪沙だけだ。 要するに家族だけである。 また、悠斗君と呼ぶのは、古城の母、深森だけである。

それに気付いた雪菜は、慌てて頭を下げた。

 

「あ……すいません、失礼しました。 暁先輩、神代先輩」

 

「いや、気にするな」

 

「オレの呼び方もどうでもいいだけどさ……。 それよりも、姫柊は怪我をしてないか?」

 

「はい、問題ありません。……このドアって、まだ自動じゃなかったんですね……」

 

そう言って雪菜は、学食の入り口ドアに恨みがましい視線を向けた。

また、この時悠斗は、ほぼ確信に至っていた。

雪菜の恰好であるがやんちゃさを覗かせ、第四真祖の気配、未来予知のような言葉、家族特有の呼び方。 この雪菜は、――――未来人(・・・)だ。

 

「(……はあ、あいつなら創れそうだしな……)」

 

悠斗は一端思考を停止させ、再び雪菜を見た。

それにしても、本物の雪菜と瓜二つだ。

 

「まあ、あんま金のない学校だしなぁ……」

 

のんびりと歩いて追いかけてきた基樹が、古城たちの代わりに答える。

雪菜は、そんな基樹を怪訝顔で見上げて、

 

「もしかして、矢瀬先輩ですか? え? 嘘!?」

 

「なんだよ、今更。 そんな他人行儀な」

 

驚愕する雪菜を見下ろし、基樹が苦笑した。 しかし、雪菜は呆然と目を見開いたまま、

 

「だ、だって……痩せてますし」

 

「え? オレ、最近そんな太ってたか?」

 

基樹が戸惑ったように呟く。

雪菜は、基樹の頭をじっと見つめて、

 

「それに、髪の毛もふさふさ……」

 

「は? ちょっと待った。 オレの将来が不安になる発言は止めてくれる!?」

 

つんつんに逆立てた髪を押さえて、焦った口調で言い返す基樹。

 

「す、すいません。 でも、髪の毛を染めたりするのは、少し控えたほうがいいかと……その、頭皮へのダメージが……」

 

「そうだぞ。 姫柊の言う通り、基樹は将来ハゲになるな。 てか、太ってハゲとか――」

 

いつものように便乗する悠斗。

 

「って、やめてくれ。 悠斗が言うと本当になりそうだから。 で、でも確かに、絃神島は紫外線がきついしな」

 

基樹が、悠斗と雪菜の忠告を聞き、真剣に考え込む。

妙にズレた会話を聞いていた古城は、困惑気味に雪菜の顔を覗き込み、

 

「どうしたんだ、姫柊? さっきから変だぞ?」

 

そう言って、古城は雪菜の額に手を当てた。 雪菜は、古城をきょとんと見返し、少し面白そうに唇の端を上げる。

 

「え……と、先輩? わたしに触ってます?」

 

「ああ、悪い。 気に障ったか?」

 

「いえ、全然。 ただちょっと、聞いてた話と違うなと思って……。 わたしたち、普段からこんな風に仲良くしてました?」

 

悠斗は、なるほど。と頷き、再び便乗する事に決めたのだった。

 

「もちろんだ。 人目を気にしないで、いつもイチャイチャしててな。 この間なんか、血を吸ったんだぞ。 それも、――数え切れないほど」

 

「ほほう。 神代先輩、そこの所詳しく聞きたいんですが。 どのようなシチュエーションで?」

 

「そうだな。 最初はキーストーンゲートで、姫柊の肩に牙を――」

 

古城はかなり慌てて、雪菜と悠斗の会話に割り込んだ。

 

「ちょ、ちょっと待てー! そ、それは仕方なかっただろっ! オレが死にかけたたり、色々あってな――」

 

「ま、そんな事だと思ってましたけど。 まったく、いやらしい雪菜(ヒト)ですね」

 

他人事のような雪菜の呟きに、古城は訝しげに目を細めた。

その直後、古城たちの背後から、冷ややかな声が聞こえてくる。 少し舌足らずでありながら、奇妙な威厳とカリスマ性を感じさせる口調だ。

 

「――なにを騒いでる、暁、神代。 こんな所で発情されると、通行の邪魔だぞ?」

 

「発情してねーよ! 教師のくせに何言ってんだ、あんたは!」

 

古城を見上げていたのは、南宮那月だ。 西洋人形を思わせる幼くも愛らしい容姿に、レースをふんだんにあしらった豪華なドレス。

自称二十六歳の、古城たちの担任教師である。

 

「な、那月ちゃん……?」

 

雪菜は目を丸くして、那月の頭頂部に手を置いた。 そして、ぐりぐりと那月の頭を撫でさする。

 

「ホントに、那月ちゃんなんですね……。 まるで、成長してない、かも……」

 

「ほう。……ちょっと見ない間にずいぶん偉そうな口を叩くようになったな、転校生?」

 

こめかみを引き攣らせながら、那月が握っていた扇子を振った。 額の中心に不可視の衝撃を受け、あうっ。と雪菜は大きく仰け反る。

 

「貴様……。 この感触は……」

 

扇子を握る自分の右手を眺めて、声を硬くしたのは那月だった。 那月は空間制御を得意とする魔女だ。 彼女に触れた一瞬で、雪菜の正体を見破ったのだ。 “空隙の魔女”の異名は伊達ではないと言う事だ。 また、悠斗も、雪菜の言動等で正体を見破ったのだが。 額を押さえて呻く雪菜を睨みつけ、那月は、おもむろに雪菜の胸に手を伸ばす。

 

「ちょ、ダメです! やめてください……!」

 

那月に思い切り胸を揉み出かれた雪菜が、身をよじりながら悲鳴を上げた。

悠斗はこの時、やりすぎだぞ、那月ちゃん。と呟いていた。

 

「な、那月ちゃん……。 公衆の面前で流石にそれは……!」

 

古城は、那月の暴虐を見かねて、無理やり彼女たちを引き離した。

那月は、ちっ、と舌打ちをして、忌々しげな視線を古城に向けた。 一方の雪菜は、両腕で胸元を庇いながら、ホッと息を吐いていた。

 

「あ、雪菜ちゃん! ずっと学食で待ってたのに、こないから心配したよー。 あれ、古城君、悠君? 矢瀬っちも久しぶりー!」

 

不意に近くで、悠斗が聞き慣れた声が聞こえた。 声の主は、雪菜と同じ中等部の制服を着た少女だ。 ショートカット風に無理やり纏めた長い髪が、彼女の動きに合わせて揺れている。

 

「あ、そうだ。 悠君のせいで、ちゃんと纏められなかったんだよ」

 

「凪沙、あれは俺のせいじゃないだろ……」

 

これを見ていた雪菜は、唖然としたように立ち竦んで、

 

「え?凪沙おばさん!? 若……っ!?」

 

「お、おば……!?」

 

出会い頭の雪菜の一言に、凪沙がショックを受けてしまった。

 

「ひ、ひどいよ、雪菜ちゃん……。 たしかに、凪沙はよく喋りすぎて田舎のおばあちゃんみたいって、たまに言われたりするけど……」

 

「あ! ち、違うの、おばさん、今のは……。――あ、やば。 あっち(・・・)で言ったら怒られるんだっけ……」

 

雪菜の最後の呟やきは、悠斗にしか聞こえなかった。

それを聞いた悠斗は、苦笑したのだった。

 

「ほらまたおばさんって言った!」

 

雪菜から発せられない言葉を受けて、凪沙はかなりダメージを負ったのだった。

 

「うぅ、浅葱ちゃんどうしよう……」

 

動揺で足元をふらつかせた凪沙が、隣にいた友人にすがりつく。 弱った猫のように甘えてくる凪沙を、よしよしと抱き止めたのは、校則ギリギリまで飾り立てた制服に、隙のないメイクと華やかな髪型。 そんな彼女に気づいた雪菜は、驚愕の声を洩らす。

 

「え!? 浅葱ちゃん……って、博士(ドク)!?」

 

「はい?」

 

雪菜にまじまじと凝視され、浅葱は不思議そうに小さく首を傾げた。 だが雪菜は、ふらふらと前に出る。

 

「本当に博士(ドク)なんですね……。 今とは全然、イメージが違うけど」

 

至近距離から浅葱を見詰めて、雪菜は異様な熱意を込めて独りごちる。

 

「ひ、姫柊さん? どうしたのって……? ちょと、古城、悠斗。 如何にかしなさいよ!?」

 

「ど、どうしましょう、先輩。 博士(ドク)がすごく可愛いです。 美人だし、若いし、スタイルもよくていい匂いがして美人だし……ギャル系って聞いてたから、てっきり、もっとケバくておかしい恰好をしてるかと……うぅ!?」

 

言い終える前に雪菜は俯いて、突然激しく咳き込んだ。 口元を押さえた彼女の掌に、深紅の染みが広がっていく。

 

「すいません。 思わず興奮してしまって……」

 

苦しげに言い残して、雪菜が校舎裏へと走り出す。

 

「あ、待て! 姫柊」

 

そんな雪菜を古城は追いかけた。

雑然とした昼休みの渡り廊下に、呆然と立ち尽くす浅葱たちが取り残される。

 

「(……はあ、吸血衝動で鼻血が出るのは、父親譲りかよ……)」

 

そう思いながら、悠斗は肩を落とした。

この時悠斗は、神々特有の魔力を感じた。 どうやら、悠斗もお呼びのようだ。

悠斗は那月の隣まで移動し、

 

「……那月ちゃん。 俺もお呼びのようだわ」

 

「ふん、お前もか。 これから起きる事には目を瞑ってやる」

 

「助かる、行ってくるわ」

 

そう言ってから、悠斗はグランド方向へ歩いて行く。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

悠斗がグランドの端に移動すると、そこには彩海学園の制服を身に纏った少年が佇んでいた。

制服は、何処からか盗んで来たらしい。 顔立ちは悠斗に似ており、凪沙の幼さが混じった容姿である。

 

「お前が俺を呼んだのか? 名前を聞いていいか?」

 

「ああ、オレの名前は、神代翔斗(かみしろ しゅうと)だ」

 

「んじゃ、翔斗。 力試しがしたい。でいいのか?」

 

翔斗は頷いた。 どうやら翔斗は、この時代の悠斗と力試しがしたかったので、未来からやって来た。という事だ。

 

「そうか。――炎月(えんげつ)!」

 

悠斗は四方に、紅い結界を張った。

これなら、魔力が洩れる事も、攻撃の余波で周囲を破壊する事もないのだ。

 

「……すごいな。 眷獣も召喚せずに、巨大な結界が張れるなんて」

 

「褒めても何も出ないぞ。 さて、やるか」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

悠斗と翔斗は、左手を突き出した。

 

「――降臨せよ、黄龍!」

 

「――疾い(こい)神々の暴竜(バハムート)!」

 

悠斗の隣には、黄金の龍が召喚され、翔斗の隣には、頭部に鋭い二本の角を持ち、漆黒の翼を持った龍が召喚された。 どちらの眷獣も、神々の最高位だ。

僅かな沈黙が流れる。

 

「――浄天(せいてん)!」

 

「――黒炎の息吹(ブラック・ブレイズ)!」

 

黄龍の凶悪な口から放たれた光の渦と、神々の暴竜(バハムート)の口から放たれた漆黒の渦が衝突し拮抗したが、神々の暴竜(バハムート)が放った漆黒の渦が押され、神々の暴竜(バハムート)に直撃し、神々の暴竜(バハムート)は後方結界寸前まで押された。

 

「……攻撃が拮抗するとはな。 翔斗、お前強いな」

 

「そりゃそうだよ。 父さん(・・・)から修行つけてもらってるんだ」

 

「そうか」

 

再び、黄龍と神々の暴竜(バハムート)は、臨戦態勢に入った。

悠斗と翔斗の間にも、緊張が走る。――――が、それは結界内に入って来た少女の言葉より中断されるのだった。

 

「――おいで、妖姫の氷蒼(アルレシャ・グラキエス)

 

悠斗と翔斗は、目を丸くした。

そう、凪沙が怒ってるのだ。 その証拠に、結界内が徐々に凍っている。

 

「……な、凪沙」

 

「……か、母さん(・・・)

 

凪沙はニッコリ笑い、

 

「悠君、翔君。 なにやってるのかな?」

 

「……ち、力試しをな」

 

「……そ、そうなんだ。 母さん」

 

悠斗は翔斗がそう言うが、吹雪は増すだけだ。 やばい。と思い、悠斗と翔斗は眷獣を異空間へ還した。

 

「「す、すいませんでした――――ッッ!!」」

 

その場で土下座を決め込む、悠斗と翔斗。

これを見た凪沙は溜息を吐いた。

 

「……凪沙もだけど。 学園で眷獣さんを召喚しちゃダメだよ」

 

そう言って、凪沙も眷獣を異空間へ還した。

 

「もう、ホントにおバカさんたちなんだから。 金輪際、学園で眷獣さんは召喚しないこと。 いい?」

 

「りょ、了解です。 凪沙さん」

 

「わ、わかりました。 母さん」

 

悠斗と翔斗は立ち上がり、

 

「父さん、母さん。 数分だけど、会えてよかった」

 

「そうか。 行くのか」

 

「凪沙も話せて嬉しかったよ」

 

翔斗の下半身が、徐々に淡い粒子となっていく。 翔斗は、ありがとう。と言い残し、完全な粒子となって元の世界に戻って行った。 翔斗が粒子となって消え、残された物は脱ぎ捨てられた制服だけだ。 撒き散らされた青白い火花や、魔力の余韻も完全に消えていた。

 

「行っちゃったね」

 

「ああ、そうだな。 でも、きっとまた会えるさ」

 

「ふふ、それもそっか。 それじゃあ、午後の授業も頑張ろうか」

 

「そだな。 んじゃ、頑張りますか」

 

制服を拾い上げた悠斗は、凪沙は歩幅を合わせて、皆が待つ食堂へ歩き出した。

翔斗と会える日を楽しみにして――。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

青白い閃光に包まれて、裸の少年が姿を現す。 その少年は、幼さを残した吸血鬼の男の子だ。

片膝を立てて座る少年の周囲には、金属製の魔具が無数に配置され、複雑な魔法陣を造り上げている。 その魔具からは伸びるケーブルは几帳面に束ねられ、小型のパソコンに繋げられている。 パソコンの前に座っているのは、端整な顔立ちに、華やかな髪型の女子高生だ。

 

「おかえり、翔斗。 実験お疲れさま」

 

翔斗は立ち上がり、飛ぶ前に置いた、彩海学園中等部の制服に袖を通す。

既に零菜は帰還し、萌葱から受け取ったトマトジュースを煽っていた。

 

「で、どうだった。 二十年前(・・・・)の世界は」

 

萌葱は、翔斗にそう聞いた。

 

「……ああ、楽しかったよ。 父さんと母さんもほぼ同い年だったし、父さんと力試しする事と、母さんにも会えたし」

 

翔斗は、もう一回会いたいな。と言ってから零菜に聞く。

 

「零菜はどんな感じだったんだ?」

 

「楽しかったよ。 わたしと同い年だった頃のママの様子もわかったし、それに死ぬ前の、元気だった頃のパパと会って話も出来たしね」

 

遠くを見るような表情で呟いて、零菜は寂しげに微笑んだ。

 

「いやいやいやいや、死んでないから。 あんたは今朝も古城君と会って普通に話してたでしょ。 ていうか、あの吸血鬼(ヒト)は殺しても死なないでしょうが」

 

そうツッコミを入れたのは萌葱だ。 零菜は、冗談です。と言いたげに悪戯っぽく舌を出す。

 

「あ、そうだった!?」

 

翔斗が急に声を上げた。

何事だ。と言うように、萌葱が口を開く。

 

「どうしたの?」

 

「今日はキャベツとキュウリの収穫日だったわ。 早く行かなきゃ、父さんと母さんに怒られる……」

 

萌葱は溜息を吐いた。

 

「……そんな事。 あの二人なら、少し遅れても許してくれるわよ。 にしても、紅蓮の織天使と、その血の従者が畑を耕すとか。 どんだけシュールなのよ」

 

「ま、まあそうだね。 でも、父さんと母さんは自由に生きたいんだって」

 

「……自由すぎる気がするけどねぇ」

 

零菜が窓辺へと近づいて、研究室を覆っていたブラインドを勢いよく上げた。

眩い陽射しが、薄暗い研究室の中を照らし出す。 窓の外に広がっているのは、一面の朝焼けと、視界を埋め尽くす広大な街並みだった。 そこは、絃神島と呼ばれていた土地だ。 四基の超大型巨大浮体式構造物(ギガフロート)によって構成された人工島。 金属と樹脂、魔術によって造られた魔族特区。 しかし今やこの街を、絃神島と呼ぶ者はいない。

かつて小さな絃神島は、二百倍近くまで拡張され、四国に匹敵する面積を手に入れている。 五十六万人だった人口は、既に四百万人を超えていた。

そしてなにより、この土地は、既に日本の領地ではなく、独立自治区の地位を与えられているのだ。 世界で四番目の夜の帝国(ドミニオン)の地位を。

そう、その帝国の名は、――――暁の帝国(ライヒ・デア・モルゲンロート)




神代家の眷獣強すぎだわ。凪沙も神々の気配は感知出来ちゃうんです(笑)
てか、悠斗君はチートすぎですね(>_<)

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