ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

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今更だが、お気に入り1000件を超えました!やったね、舞翼。
……こほん。それはさて置き、書きあげました。
てか、この章は難しいです……(汗)ゴッチャになってないか不安だなぁ……。

では、投稿です。
本編をどうぞ。


焔光の夜伯Ⅵ

悠斗と古城は、アヴローラを連れてMAR棟を後にし、中庭までやって来た。

警備ポット等は、ヴェルディアナに押し付けるような形になってしまったのだが。 とはいえ、悠斗には悪気は一切なかった。

ローブを羽織り素性を隠しても、アヴローラの格好は余りにも不格好すぎた。 見方によっては、少年の二人組が少女を攫っている構図……にも見えなく無いのだ。

 

「(……性犯罪者じゃねぇかよ)」

 

悠斗は盛大に溜息を吐いた。

 

「な、なあ、何が起こってるんだ? 説明してくれよ?」

 

古城は、まだ困惑から抜け出せていなかった。

悠斗は頬を掻きながら、

 

「いいけど。 アヴローラの恰好を如何にかしてからだな」

 

「……アヴローラ?」

 

古城は疑問符を浮かべた。

 

「十二番目の焔光の夜伯(カレイドブラッド)、アヴローラ・フロレスティーナ。 この子の名前だ」

 

悠斗がそう言うと、古城はアヴローラの姿を眺めたが、アヴローラは悠斗の右足に摺り寄って行く。

 

「わ、我に(みだ)らな視線を向けるな……!」

 

アヴローラは弱々しく抗議した。 言葉遣いは高圧的だが、頼りない口調のせいなのか、あまり偉そうに感じない。

 

「だそうだ、変態」

 

「変態言うなっ! あれは不可抗力だ!」

 

古城の叫びを聞き、アヴローラは肩をビクッと上げた。 声に怯えたように、アヴローラは悠斗の右足を壁にして隠れてしまった。

 

「アホ。 アヴローラが怯えただろ」

 

「わ、悪い。 そ、そうだ。 凪沙の奴が……」

 

古城は担いでいたバックを下ろして、その中から荷物を取り出した。 どうやら、妹にクリーニングを頼まれた制服らしい。

 

「こっちの方が、今よりはマシになるだろ」

 

「あ、う……よ、よかろう」

 

アヴローラは、制服を受け取った。

アヴローラが制服に着替える為、古城も背を向けたが、着替えが終わる気配が一向に訪れない。

数分経過すると、今にも泣き出しそうなアブローラの声が聞こえてくる。

 

「あ、暁古城よ。……汝に(いまし)めの(びょう)穿(うが)つことを許そう」

 

古城は振り返り、怪訝そうな顔をする。 おそらく、アヴローラの言葉の意味が解らないのだろう。 なので、悠斗が解説する。

 

「変態。 アヴローラは、ボタンを留めて欲しんだと」

 

「変態呼びは止めてくれ……」

 

古城は溜息を吐いてから、制服のボタンを留めていく。 十二番目の血の従者なのか、アヴローラは、古城に懐いているらしい。

その時だった。 医療棟の建物内部から、サイレンが鳴り響いたのだ。 ヴェルディアナが眷獣を呼び出して対抗を始めたのだろう。

 

「此処に居たら、島の警備隊と鉢合わせる。 移動するぞ、説明はそれからだ」

 

「ま、またかよ……」

 

古城は、落胆するような声を上げた。

悠斗は周りを警戒するように、古城はアヴローラの手を握り歩き出した。――三人の出会いが、運命の歯車を回し始めたのだ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

悠斗たちは、アヴローラを連れて海沿いの歩道を歩いていた。

アヴローラは周囲を見渡し、ビルや行き交う自動車を眺めては、ふぉぉ。と驚嘆したような声を上げている。

 

「……オレが、十二番目の焔光の夜伯(カレイドブラッド)、アヴローラ・フロレスティーナの血の従者?」

 

焔光の夜伯(カレイドブラッド)。 古城はこの名前は知っていた。

第四真祖。 世界最強の吸血鬼。 一切の血族同胞を持たない、世界の理から外れた怪物。 古城には、アヴローラは頼りない少女にしか見えない。 また、自分の事を知る神代悠斗と言う人物も気になった。

 

「それに、この子は狙われてるのか?」

 

「まあな。 詳しい説明は身内に聞け。 俺が教えられるのはここまでだ」

 

悠斗は重要な事は伏せて、古城に今の状況を伝えた。

あの事件の詳細を、悠斗が話す訳にはいかないのだ。 悠斗は、あの現場に居合わせたに過ぎないのだから。

 

「お、おう。って、そうじゃなくて、狙われてんのかよ!」

 

「さっき言ったろ。 この子は、十二番目の焔光の夜伯(カレイドブラッド)って。 まあ心配するな。 殺りに来たら、殺り返すだけだ。……例外なく、な」

 

「ぶ、物騒な言い方するな。 ま、まあ、神代が普通じゃないくらい解るが」

 

「……その辺は詮索するな」

 

悠斗と古城が振り返ると、アヴローラはガードレールに凭れてグッタリしていた。

古城は慌ててアヴローラの元へ向かうが、悠斗はアヴローラがそうなった原因が解った。 そう、アヴローラは空腹なのだ。

 

「き、飢餓(きが)の衝動が、我を襲って……」

 

そう言ってアヴローラは俯き、頬を朱色に染めていた。 恥ずかしい感情は持ち合わせているらしい。

 

「腹が減って動けないだってよ」

 

「あー、……やっぱそうか」

 

「俺も食うぞ。 あ、言っとくが、暁の奢りな」

 

「は?……お、お前、中坊から金を毟り取る気かよ!?」

 

絃神島北地区(アイランド・ノース)は、企業や大学の研究所街がある所為か物価が高い。 中学生では、痛い出費になるのだ。 古城は脱力してから、アヴローラを抱きかかえた。 それから、近くの交差点を渡った。 古城が向かった目的地は、『るる家』のアイスクリーム屋だ。

悠斗は、ショーケースに陳列されたアイスクリームを見て、ほう。と声を上げて顔を近づけた。 以前来た時よりも、アイスの種類が豊富になっていたのだ。 アヴローラも、ふぉぉ。と興奮気味に小鼻をひきつかせている。

古城は、そんな二人を見て呆れ顔だ。

 

「……で、どうすんだ。 奢るぞ」

 

「……んっ!」「これだな」

 

悠斗が注文したのは、ストロベリーとポッピングシャワーのコーン二段重ねで、アヴローラは、今日のおすすめだ。

古城もアヴローラと同じ物を注文し、アイスを受け取って店内のテーブル席に座った。

 

「……くそッ。 痛い出費だぜ」

 

悪態を吐く古城とは裏腹に、悠斗とアヴローラは満足そうだ。

アイスを舐めたアヴローラは、大きな青い瞳を見開いた。 どうやら、かなりお気に召したらしい。

 

「ら、楽園の果実如し!」

 

「旨いよな、るる家のアイスは」

 

悠斗の言葉に同意するように、アヴローラは小刻み何度も頷く。

 

「う、うむ。……暁古城。 ほ、褒めて遣わす!」

 

「お、良かったな、暁。 主人が褒めてくれたぞ。 流石、血の従者だな」

 

「人を犬みたく言うなッ!」

 

アイスを全て食べ終わった悠斗は、今後どうするか考えを巡らせていたが、それはすぐに中断する事になる。

僅か数秒で、黒装束を身に纏い、獣の頭骨の仮面をつけた男たちに囲まれたのだ。

 

「……なんだよ、あんたたち」

 

「十六時三十八分四十四秒――十二番目と接触。 同伴者二名。 同伴者を無力化の上、十二番目を確保する」

 

先にアヴローラを庇った古城は、男に横殴りされ、数メートル程吹き飛び、コンクリートの堤防に激突する。

 

「古城――!」

 

アヴローラが大きな悲鳴を上げ、悠斗はアヴローラの前に立つ。

 

「アヴローラ、暁はお前の血の従者だ。 だから、心配するな」

 

「……う、うん」

 

アヴローラは、涙目で頷いた。

攻撃系統の眷獣は召喚できない。 此処には大勢の民間人も居るのだ。 召喚可能な朱雀の守護では、この場は意味を成さない。 ならば、現状での眷獣攻撃だけだ。

 

「――閃雷(せんらい)!」

 

悠斗は左手を掲げ、黒装束のみに稲妻を落とす。 だが、殺せるまでの威力は、今の悠斗では出す事はできないのだ。

だが、足止めには十分だ。

 

「暁、アヴローラを頼んだ!」

 

「お、おう!」

 

古城は、アヴローラの手を引いて走り出す。 この騒ぎで、周りの人々は避難したようだった。

悠斗は左手を突き出す。

 

「――降臨せよ、玄武!」

 

悠斗は、傍らに玄武を召喚させた。

 

「――無色(むしょく)!」

 

玄武に巻き付いた蛇が黒装束たちを食らい、無に還していく。 眷獣召喚により、悠斗の存在が露見してしまったが、アヴローラを守る事ができれば安いものだ。 また、これは牽制にもなるだろう。――十二番目(アヴローラ)の傍には、紅蓮の織天使がついていると。

 

「……はは、こんな所で会えるとはな……。――――紅蓮の織天使」

 

声の主は、無精髭を生やした長身の日本人だ。 色褪せた革製のトレンチコートに中折れ帽。 その肩には、かけ紐で、火炎放射器に似た奇妙な銃が下げられている。 古城はその男を呆然と見て、悠斗は踵を返した。

 

「……そうだな。――――死都帰り(・・・・)暁牙城(・・・)

 

「よくアヴローラを護ってくれたな。 感謝感激オレ元気ってな」

 

寒いギャグを言い、暁牙城は楽しげに笑い続けたのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

牙城が古城たちを引き連れて訪れたのは、絃神島東地区(アイランド・イースト)にある小さな港であり、自家用の小型船舶を係留するマリーナだ。

桟橋には、小型のヨットやボートが五十隻ほど停泊している。 牙城は、その一隻に乗り込んだ。

 

「早く乗れよ、小増ども。 遠慮するな」

 

「そうか。 なら、遠慮なく」

 

悠斗は、牙城が乗る船に乗り込む。 古城とアヴローラも、悠斗に続いた。 牙城は船室から食料を運んでくる。 パンとベーコン、コンビーフ、冷えたビール。 それを、後部デッキのテーブルに広げた。

悠斗は牙城と向かいように座り、古城も悠斗の隣に腰を下ろす。 その隣に、アヴローラが怖ず怖ずと座る。 牙城は、アヴローラにサンドイッチを手渡した。

 

「……わ、我に供物を捧げるか、人の子よ……」

 

空腹を訴えていたアヴローラが、目を輝かせてそれを受け取り、食べていいか、と古城の顔を窺ってくる。 よく噛んで食えよ、と古城は促した。

このやり取りを見てから、悠斗が口を開く。

 

「で、暁。 話すのか?」

 

「え? 何を?」

 

悠斗は牙城に言ったつもりなのだが、古城が反応してしまったらしい。 確かに、暁が二人居るのだ。 区別をつけないと、どちらも反応してしまう。

 

「混合しちまうな。 そうだな。 暁古城は、暁。 暁牙城は、死都帰りって呼ぶ」

 

「おいおい。 小増は名前でもいいじゃねぇのかよ、紅蓮の織天使」

 

そう言いながら、牙城はビールを飲む。

 

「悪いな。 俺が名前で呼ぶ人物は、この世で一人しか居ないんだわ」

 

悠斗が名前で呼ぶ人物。

それは、――南宮那月だけだ。 悠斗は信用した相手ではないと、名前で呼ばないのだ。

 

「なるほどなぁ。 お前、過去に色々あったんだなぁ」

 

「まあな。 あんたが想像してる倍以上だと思うぞ」

 

牙城は口笛を吹く。

 

「それはご苦労なこって」

 

「親父! 説明してくれよ!」

 

どうやら、古城は痺れを切らしてしまったらしい。

牙城は、古城の怒声を知らぬ顔で受け流し、何気ない口調で聞いてくる。

 

「小増、何所まで知ってる?」

 

「あ、ああ。 オレが焔光の夜伯(カレイドブラッド)の血の従者と、アヴローラ名前、女吸血鬼が戦王領域の貴族で、アヴローラを眠りから覚ました張本人って事だけだ」

 

「ほぼ全部だぞ、それ。 つか、そこまで知ってるとか、お前どんだけだよ」

 

「教えてくれたのは、神代だ」

 

そう言って、牙城は悠斗を見た。

 

「あの事件の事は言ってない。 あれは、あんたが教える話だ」

 

「……ったく、律義だねぇ」

 

牙城は、古城に向き直った。

 

「そうだなぁ。 あの姉ちゃんの事からか。 彼女、ヴェルディアナは、オレの古い知り合いの妹だ。 姉は、お前と凪沙、お姫様を護って死んだ。 で、その直後に、紅蓮の織天使が助けた」

 

「……オレと凪沙が、死にかけた事件の事を言ってるのか?」

 

古城は、声を低くして聞いた。

 

「死にかけたわけじゃねぇ。 正真正銘、お前は死んだんだ(・・・・・)。 そして生き返った。 第四真祖の血の従者としてな。 事件の遭った直後の記憶が無いのはそのせいだ。 でだ、第四真祖の血の従者ってのは――」

 

牙城は頭を振った。

 

「あー、そうだった。 小増は、血の従者の意味を知ってるんだったな。 紅蓮の織天使、代わりに話してくれ、オレが許可する」

 

牙城はビールを飲み干し、新たな缶のプルタブを開けた。

それを見て、悠斗は嘆息した。

 

「その日、遺跡が襲われたんだ。 テロリストにな。 名前は――黒死皇派。 結果、暁牙城以外の遺跡チームは全滅。 調査員も、半数は死んだ。 その時、暁古城も黒死皇派に殺された。――遺跡内部でな。 でも、お前は生きてる」

 

「……凪沙が(・・・)、オレを生き返らせたんだな」

 

「そうだ。 暁凪沙が、暁古城、お前を生き返らせた。 でも、どうやって生き返らせたんだ? 死都帰りなら解るだろ?」

 

「凪沙は、アヴローラとの交信が成功した直後に襲われた。 この時点で、第四真祖は凪沙に憑依してたんだ。 第四真祖が小増を助ける義理はない。 凪沙が小増の生き帰りを願い、無理やり第四真祖の力を引き出し生き返らせた。 つまり、今も凪沙は、第四真祖は憑依したままって事になる。 凪沙は今も、霊能力を使い続けてる(・・・・・・)だよ、小増」

 

「俺が精神負担と考えたあの症状は、第四真祖に取り憑かれた代償と言うべきものだな。……ああ、なるほど。 アヴローラは第四真祖の意識の一部って事か?」

 

幾ら優秀な霊能力者でも、第四真祖の意識を全て受け入れる事は不可能だ。

だからこそ、アヴローラが目覚めたのではないだろうか?

 

「(……仮に、第四真祖が魂だとすると、アヴローラは何者だ。 監視者? 魂の器?って事は、焔光の夜伯(カレイドブラッド)の意味も違うのか? 意識の一部が宿ってるから、柩から目覚める事ができたのか? 暁妹の第四真祖をアヴローラに戻したら、アヴローラが本当の第四真祖?)」

 

牙城と古城が何かを話していたが、悠斗の耳には届かなかった。 また、悠斗がどんなに考思を回しても、結論が出る事はなかった。

悠斗は、何かを感じ取り立ち上がった。

 

「……何か来るぞ」

 

「紅蓮の織天使も気づいたか……。 お出ましだな」

 

牙城は気怠げに立ち上がり、銃を掴み上げた。

アヴローラも奴らの正体に気づき、小刻みに体を震わせていた。 アヴローラが見詰めているマリーナの海壁に、見慣れない人影が立っている。 スーツを着た痩身の中年男性だ。 その両脇には、黒装束の護衛が二人。 先程襲ってきた奴らの仲間だろう。

彼らの背後には、小柄な少女の姿もある。 少女の髪は金色。 瞳は焔のような青白い輝きを放っていた。 妖精めいた儚い美貌は、古城の隣で震えている少女とそっくりだ。

悠斗はすぐさま理解した。 あの少女は素体だ。 アヴローラを含め、十二ある焔光の夜伯(カレイドブラッド)の一つだ。

悠斗は、彼女の防護服に刻まれた数字を言った。

 

「……九番目(・・・)焔光の夜伯(カレイドブラッド)か」

 

悠斗の呟きは、風のように消えていった――。




悠斗君っ。頭の回転が速い!てか、眷獣を召喚しちゃいましたね(-_-;)
まあ、本当なら色々とヤバいと思うんですが、この頃の悠斗君は、全然気にしてませんからね。
まあ、戦闘員と非戦闘員は、区別はちゃんとしてますけど。戦闘員ならば、慈悲は与えん!的な感じです。

え?アブローラ名前呼びじゃんかよ。ってのは突っ込まないでね(^_^;)

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